おまわりさん、キヴォトスにて   作:神倉棐

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「誰もが手にする、青春のカケラ」

 

 

サンクトゥムタワー正面、中央公園

 

公園全域に張り巡らされた、かつてキヴォトスの「外」を二度焼き払った大戦に勝るとも劣らぬ塹壕と砲兵陣地。

銃撃戦や爆発音が鳴り止んだ日はない(当たり前の日常)とまで称されるキヴォトスでも、史上類を見ない「戦場」と化した首都D.U.中央公園前広場。

 

 

「総員傾注!」

 

 

隊長格なのだろう、各々身に付けた制服の異なる少女たちが整列したその場に、所々包帯が見え隠れしてはいるが完全装備の少女が発した号令が響き渡る。

 

 

ヴァルキューレ警察学校

SRT特殊学園

ハイランダー鉄道学園

プロメテウス消防学校

アビドス高等学校

百鬼夜行連合学院

クロノススクール

 

 

この(戦場)に集った、各々所属の異なる生徒たち。そんな少女たちの視線を一身に受けて、整列した彼女たちの目前に立った既に満身創痍で、(銃弾1発で死んでしまう)それでも己の足でしっかりと地を踏む(のに、それでも最前線に立ち続ける)「大人」は一度少女たちを見渡した後に口を開く。

 

「おはよう、諸君!

君たちに伝えたいことがある」

 

そんな男の第一声、男の伝えたい事に少女たちは耳を澄ます。

 

 

 

「─── 1時間後、諸君はキヴォトス史上最も重要な作戦に参加する。

連邦に仇なす者を、首都圏に破壊と混沌を齎した叛乱軍を打ち倒す作戦となる。

 

我々は学園も、人種も異なるが、我々は共に闘い、苦しみ、そして多くの戦友が倒れていった。

 

信じるものの為に、自由の為に戦い抜いてきた。

 

今日この日、我々は最後の戦いに結集する。

この首都を開放し、市民に、友人に、そして家族に平和な日々──青春を取り戻すために。

我々の勝利は民主主義の砦の存続とともに、人類(キヴォトス)史が継続する限り、永く残り続けるだろう─── 」

 

 

 

嵐の前の静けさのように静まり返った空間に、目の前の大人から発された声が朗々と浸透する。

そんな大人の声に、ある少女はその手に握る傷だらけ盾を強く握り締め、ある少女は得物である散弾銃を、拳銃を、小銃を持った手で確かめるように握る。

冬を目前とした冷え切った空気とは対照的に、その空間の熱量は高まってゆく。

 

「勝利は、我々のものである!

 

取り戻そう、人々に平和を。

勝ち取ろう、我々の自由と未来を。

 

平和は、青春は君たちのものである!」

 

蟠りがない、訳ではない。

組織や個人の真意や思惑はどうあれ、それでもなお集った彼女たちは今この時この場所で、目の前にいる「大人」の下で真に団結したのである。

 

 

 

「さあ諸君、砕かれた青春の物語(ブルーアーカイブ)を取り戻そう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───同時刻

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

首都D.U.幹線道路1号線上

 

サンクトゥムタワー南方、30km地点

 

傷だらけの幹線道路に並べ立てられた、これまた傷だらけの装甲戦力の先。

雑多に並んだ歴戦の少女たちの視線の先には、巌の如く巨大かつ重厚な機械仕掛けの蜘蛛が鎮座する。

 

「───時は来た」

 

そして、その怪物の頂点に佇んでいた黒衣白面の少女は、粛々と眼下に集った少女たちに向け演説する。

 

「皆様、私は破壊と略奪を──それ以上の地獄(戦争)を望んでいます。

皆様、私に付き従う連邦の叛逆者の皆様方。

貴女方は一体何を望んでいますか?」

 

 

 

『───応報せよ』

 

『応報せよ』

『奴らに報いを』

『応報せよ!』

 

見上げた頭上から降る問いに、誰ともなく地により見上げざるを得ない少女たちの慟哭にも似た声色の返答が溢れ出す。

 

───応報せよ。天上にて、誰かを救うこともなかった傲慢者共に

 

これは落伍者(見捨てられた者)の、落伍者(はぐれもの)による、落伍者(復讐者)のための戦争(八つ当たり)

大事(キヴォトスの未来)のために小事(目の前の弱小自治区)を切り捨てた、連邦生徒会(連邦生徒会長)に対する反抗行為。

 

「宜しい、ならば征くのみです。

栄華のため、我々を見捨て、忘れ、夢物語に夢中な連中を叩き起こします。

天上より髪の毛をつかんで引きずり降ろし、眼を開けさせ思い出させましょう?

炎と灰を。

奴らに裏切りの代償(奪われる痛み)を味あわせてやる」

 

母校(あるべき居場所)を失い、悪い大人や世界によってただただ腐り、食い潰されて行くのみだった彼女たちにもたらされた、孤坂ワカモが送ったたった1枚の檄文。

 

“安寧に溺れた奴らに、一発喰らわせる”

 

ただ、それだけの文言により決起した彼女たちは口々にそう叫ぶ。

 

『応報せよ』

 

『応報せよ』

 

『応報せよ』

 

何故なら、世界(青春)はこんなにも息苦しい。

 

 

 

「───前進(焼き払え)

 

 

 

 

遂に、賽は投げられた。

 

 

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