少女を抱えて砂漠を進む事、およそ
遂に背後の忌々しい灼熱の陽光は地平にその半身を沈め、その空の大半が星空に塗り変わりつつある黄昏時。
彼らは未だ廃線路以外の人工物に巡り合うこともできず、ただただ東へと歩みを進めていた。
「はぁ……はぁ……」
日没間近、相変わらずクソ暑いことに変わりはないが、それでも直射日光がなくなれば多少涼しくはなる。しかしそれも完全に日が沈むまで、月が天頂に昇り切る頃には下手すりゃ気温は氷点下……その寒暖差は20度を超えるだろう。
「体調は……何とか持ち直してきたか」
とはいえ現状、悪いことばかりでもない。
一度立ち止まり少女を枕木の上に寝かせた彼は、直射日光を避けるべく被せた白いカッパの隙間から少女の額に手を当て体温を測りつつ残り僅かとなった水分──数少ない
「まだ油断はできないが……思った以上にタフで助かった……な」
自分の分を切り詰めてなお、遂に中身がカラになった
「ぐっ……」
しかしその一方で、幾ら「大人」であり一般人より身体を鍛えている「警察官」といえど、只人でしかない彼が碌な補給もなく少女1人を背負って砂漠を半日間流離い続けるには些か無理があった。
痛む頭とふらつく身体。
明らかな熱中症発症時の初期症状だが補給する水分すらない、それもあとどれほど歩けば街にたどり着けるかも分からない状況でこのままでは共倒れである。
「…………」
「……ああ、そうだな。俺は、警察官だ」
その筈だったのに、彼はどうしてもその選択──見知らぬ誰かを、少女を見捨てること──ができなかったのだ。
滅私奉公にしたって自己犠牲が過ぎる、そんなこと分かっている。
警察官だからって自分の生命を軽々しく投げ捨てて良い訳ではないことなど分かり切っている。
それでも、彼は「
「ぐっ……⁉︎……ん?」
ガクンと崩れた体勢を立て直すべく、折れそうな心と身体に喝を入れ立ちあがろうとした彼。しかしそんな彼は少女を寝かせていた枕木と鉄路が
「列車……救援か⁈」
出しっぱなしにしてあった無線機の救難信号、日本以外で通じるかは分からないままでも傍受してくれればあるいは、と微かな希望を掛けて垂れ流していた電波に誰かしらが気付いてくれたのではないかと考えた彼は鉄路の先に視線を向ける。
「あれは……」
細めた目の先、地平の向こう側で走行により巻き起こされたらしき砂煙と徐々に近づく走行音。
「何だ……何なんだ、アレは……⁈」
砂丘を越えて現れたソレ、廃線路を爆走する巨大な鋼の塊。昔、世界史の教科書見たことがある。かつて二度世界に挑み、そして敗北した欧州第三帝国が運用した「
「クソ、クソっ、動け……動いてくれ」
思うように動かない身体と、未だ意識を覚まさない少女。あっという間に目前に迫る列車砲に、最早彼らの線路からの完全退避は間に合わない。
「っ‼︎」
ヤケになったのか、本人の意思に関係なく無意識的に彼が手を伸ばしたのは腰に吊り下げられた、日の本では警察官だけが持つことの許された文字通りの「最終手段」。何故か更新された
「
警告の後、朦朧と半ば空白の意識の中であっても基本に忠実に構えて拳銃から放たれたのはたった1発の弾丸──.38スペシャル弾。
文字通り「鋼の塊」である重装甲が施された列車砲相手には、その装甲板にかすり傷ひとつ付けるのが
「──、──!」
構え狙って銃口から飛び出した赤熱の弾丸はただ、銀の尾を引きながら正確無比に