キヴォトスの何処かにて、
「さて、では始めましょう?」
暗い昏い空間に浮かび上がった和装の少女。
「築きに築いた栄華の都、上辺だけ綺麗な夢物語」
手には歩兵銃、腰に銃剣、額に白い孤面を付けたその黒い長髪の少女は、誰に聴かせるともなく言葉を語る。
「そんなもの」
まるで祝詞を詠うかの如く粛々と紡がれた言葉は、一転して何処か狂気を交え朗々と高らかな「
「壊しましょう?奪いましょう?」
まわる、回る、周る、廻る
「汚し、犯して、踏み躙って」
荒事など似つかわしくないはずの白い細指の先で、その対局たる歩兵銃はまわる。
「欲の赴くまま、獣のように」
額に付けた狐のお面、その縁を一度さらりと指先でなぞった少女は手慣れた手付きで弧面を顔に当てる。
「狂って、踊って、踊り狂って」
鬼さんコチラと、手を叩く。リズム良く鳴らされた三拍子。でも本当の鬼は私です、と孤面の少女はくすりと嗤う。
「愉しみましょう?」
と、同時に彼女がいた暗闇に光が差す。
開いた扉、差し込んだ光に照らされた彼女のいた場所とは何処か放棄されたはずの格納庫。
庫内に鎮座した巨大なとあるモノを背に、予定通りの時間に集まりその扉を開けた集団を目にした少女は、弧面越しでも分かるほどに笑みを浮かべ宣言する。
「あまねく全てが、
開かれた大扉の先、そこにはこのキヴォトスの首都D.U.の摩天楼が広がっていた。
同時刻、首都D.U.ヴァルキューレ警察学校本校舎教官室
「失礼します。
「どうぞ」
白を基調に幾つかのデスクが並んだ、清潔感はあれど簡素な室内。秋と共に8ヶ月間の初任科課程を終え、1年の内残りの4ヶ月間を初任補修科課程に編入された尾刃カンナが訪れた本来なら幾人かのロボット教官らが詰めているはずの教官室には今、
「教官、今お時間よろしいでしょうか?」
「構わないよ。質問かな?」
唐突に現れた、キヴォトスの外から来た大人。
かの連邦生徒会長の信任を受け配属されて来た、ヴァルキューレ警察学校顧問にして己の所属クラスである「初任科第307期生」改め「初任補修科第49期生」の担任教官。
外でも警察官をしていたという、カンナから見て
「はい、先日の授業で取り扱った
「取り調べにおける被疑者の黙秘権に関する権利告知についてだね?」
「はい、そこで……」
とはいえ教官──「おまわりさん」が担任となって既に2ヶ月、BDを交えながらも
そんなカンナにとっても平和で平穏な日常。確かに銃撃戦は日常茶飯事だし、爆発音の絶えないキヴォトスではあるが、それでもいつまでも続くと思っていた彼女の日常は、直後教官室に鳴り響いた一本の電話で一変した。
「失礼……はい、こちら警察学校本校舎教官室です。……なんだって⁈」
《首都圏において大規模暴動発生、近郊を根城にするスケバンやヘルメット団を吸収しつつ暴動はD.U.外郭からサンクトゥムタワーに向け進軍を開始。たった今連邦生徒会長ならびに連邦生徒会防衛室長の連名により非常事態宣言と治安防衛出動が下命されました。
ヴァルキューレ警察学校一年の予備を含む全機動隊は出動せよ。との命令です》
《首都D.U.及び近隣地域にお住まいの皆さん、これからクロノススクール報道部より臨時ニュースをお送りします。
テレビ等の近くにいる方は、できるだけ多くの方に声を掛けてこの放送をご覧いただけるようご協力をお願いします。
先程、連邦生徒会統括室主席行政官は緊急記者会見を行い、非常事態宣言と共に首都D.U.における治安を維持し、予測される最悪の事態に備える為に連邦生徒会直下の即応可能かつ信頼のおける部隊に対し出動を命令したと明かしました》
《この決定を受けて現在配備が進んでいる部隊はヴァルキューレ警察学校警備局D.U.管区
《この戒厳とも類される状況において、現在施行されている連邦憲法では、法律上明確な戒厳についての情報は存在しません。その点に関し主席行政官は記者会見において──》