はっく・あんど・すらっしゅ!   作:Crimson Wizard

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ごめんなさい他作品もちゃんと上げます。……今度。


酔っ払いとの出会い

 

いつもの仕事帰り。珍しく陽の落ちる前に帰路に着く事の出来た俺は内心かなりテンションが上がっていた。

見慣れた景色だが、まだ明るい時間という事もあり普段通勤以外では通らない道が少し新鮮に見える。

 

ふはは……久々の早上がり!そして何と、明日は休み! 今日はオールで溜め込んだ今期アニメ達を消化するぞー!

 

「だ、誰か水……み、水を……おえぇ」

 

ん?何だ、行き倒れか?道のど真ん中で這いずってる幽霊みたいな奴がいるんだが……てかあれじゃ車に撥ねられちまうぞ。

うわぁ……でもあれに話し掛けるのかなり勇気が居るんだが。

 

でも、このまま見捨ててニュースなんかに出てきたら寝覚めが悪いし……ああもう!

 

「あの、大丈夫ですか?気分悪いなら肩貸しますから、せめて車道から移動しましょう。」

 

「んぁ?おにーさんられ?」

 

どうやら話が通じないタイプの酔っ払いの様なので無理やり担いで歩道側に寄せる。

 

「ちょっとここで待ってて下さい。」

 

そうして俺は近くのコンビニで酔い止めと水を買ってあの酔っ払いの元へと戻った。

 

「……。」

 

こいつ、人が酔い止め買ってきてやったのにまたパック酒呑んでるんだが。俺は苛立ちながら無言でパック酒を取り上げる。

 

「あぁ〜!?わらしのおしゃけ!わらしの生き甲斐を奪うなぁ〜!んぐぅ!」

 

俺は無理やりこの酔っ払いの口の中にペットボトルをぶち込んで水を飲ませる。

……警察を呼ぶか?いやでもこの辺交番無いし、こんな事で他人に迷惑かけるのもなぁ。

 

「お姉さん、話通じます?」

 

「……ぷはぁ!うん、二日酔いで気分悪いけど意識はハッキリしてきたかも〜」

 

「じゃあついでにこれも呑んで下さい。酔い止めです。」

 

「えぇ〜?悪いねぇお兄さん、初対面なのに良くして貰っちゃって。」

 

いや、さっきの所あんまり車通らないだけで普通に車道だからな。周りの人ガン無視決め込んでたけど、正直気持ちは分かるわ。

 

「それで、家は何処です?一人で帰れますか?」

 

「家?んー。ねーお兄さん。……ここ何処だっけ?」

 

……スゥー。なぜ俺は貴重な自由時間を捨ててこんな面倒事に首突っ込んでるんだろうか。

 

「とりあえず、迎え来てくれそうな人居ますか?居ないなら俺が交番まで連れて行きます。」

「えぇ〜!?もう交番は勘弁だよぉー。迎えも多分来てくれないし……」

 

……もう?コイツさては常習犯だな?んー。まあこれ以上俺の貴重な時間が無為に過ぎてくのは看過できないので、とりあえず連れて帰るか。

 

「よいしょっと。」

 

「うぉ!びっくりした〜。ん?お兄さんもしかして私の事お持ち帰りしようとしてる?」

 

「うん。このまま話してても埒が明かないし、とりあえず家まで連れて帰るから、酔いが覚めたら自分で帰ってくれ。」

 

「うあお……」

 

こいつ酒臭っ!?とりあえず、帰ったらシャワー浴びてもらおう。こんな匂いが部屋に染み付くの嫌だし。

と、俺はいつも以上の疲労感を抱えながら何とか自分の家へと辿り着いた。

 

 

 

 

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「さて、ここが俺の部屋だ。狭くて悪いな。……とりあえず風呂入ってくるから、俺が上がったらアンタも入ってくれ。酒臭い。」

 

 

私、何してんだろ。

えーと、昨日は確かライブの後打ち上げに行って、二次会行って……二次会からの記憶が無い!まあいいや。

 

てか、改めて考えるとどういう状況なんだろ?とりあえず鬼ころ……あれ。ポケットに入れてたのが全部無くなってる。

まさか!あの子に私のお酒全部取り上げられた!?

 

酔いが覚めて来て少し冷静になると……私今お持ち帰りされてる!?とんでもない状況だったりする!?

いやでも、あの子のあの表情…… 私を軽蔑した目で見る時の志麻と同じだったような……。

というかこの部屋……普通のワンルームマンションみたいだけど……お!ギターあんじゃん!あの子も弾いてんのかな。

ん?よく見るとパソコンデスクにはMIDIキーボードあるし、ベースも壁にぶら下がってる。

 

あれ、私のスーパーウルトラ酒呑童子EXはどこに……あ、最初に打ち上げした飲み屋かも……

 

それにしても……改めて見ると、ガッツリ音楽齧ってる感じの部屋だった。

 

「うーん。それにしてもあの子はどんな音楽やってんだろ。」

 

 

 

 

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「ふぅ……」

 

やっぱ仕事終わりはシャワー浴びないとな。俺潔癖症とまではいかないけど少し神経質な所あるからな。汗かいたまま寝ると頭痒くなるし……

俺は身体を拭いてパンツを履くとそのまま脱衣所を出る。

 

「……え!?」

 

「ごめんお姉さん、寝間着こっちにあるから。」

 

何故か固まっている酔っ払いのお姉さん。

……流石に初対面の男がほぼ全裸で出てきたら驚くか。まあ俺としては意識無くなるまで呑んで道端で這いずり回る神経の方が驚きだけど。

 

俺はそうして寝間着、といってもただの短パンと半袖シャツだが。を身に着けると思い出した様にお姉さんに声を掛ける。

 

「お姉さんもシャワー浴びて来てくれ。女性にこんな事を言うのも気が引けるが、酒臭い。」

 

「ぐはっ!?」

 

いや、改めて見るとどういう格好?キャミソールにスカジャン?それに靴は下駄だったし……どういうファッション?

 

「あ、あのぉ……少し酔いが覚めてきたから、お酒呑んでもいい?」

 

「いいわけないだろ馬鹿野郎。」

 

何言ってんだこいつ。酔いが覚めたんなら帰れよ。

 

「うっ、そんなに言わなくてもいいじゃん!」

 

「いやあんたさ、下手したら明日のニュースに載ってたんだからな?

車道で這いずってるのどういう神経してるの?轢いたら運転手が可哀想じゃん。前科着くんだぞ?」

 

「うぅ……ごめんなさい。」

 

本気で反省している様なのでこの位にしてやるか。

 

「なあお姉さん、さっきあんたおぶった時は酒臭すぎて気付かなかったけどさ、飯ちゃんと食ってるか?」

 

「……え?」

 

そう。この酔っ払い、さっきは疲れてたのと臭すぎて気付かなかったが信じられないくらい軽かった。

 

「……ううん。お金ないし、基本的には鬼ころ飲んでる。」

 

「は?あの安酒だけか?馬鹿じゃないのかあんた。その内栄養失調で倒れるぞ。」

 

「うー、だってお金ないんだもん!」

 

「威張って言う事じゃないからな?」

 

はあ……折角今日はアニメ見ながらポテチでも食べようと思ってたのに。

 

「とりあえず、俺の晩飯のついでになんか作ってやるから。先にシャワーでも浴びてきてくれ。タオルと着替えは置いてるから。」

 

 

 

 

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久しぶりに本気でお説教されちゃった……しかも多分だけどかなり年下の子に。

お酒も抜けてきちゃったし、そもそもここ何処なんだろ。東京……だとは思うけど。

 

はぁ……それにしてもあの子、初対面の私にこんなに親身になってくれるなんて。

かなりイケメンだったし……目付き怖かったけど。性格もあんなだし、さぞモテるんだろうなあ。陰キャ時代のイマジナリー彼氏みたい。

しかも料理も出来るなんて。あーあ、やってらんねぇー!シャワーでも浴びてくるか!

 

 

 

 

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「わあお!」

 

「ま、本当は明日する予定だったけど、豚キムチ鍋だ。好きなだけ食ってくれ。」

 

「うぉー!うまそ〜!いただきます!」

 

……どんだけ腹減ってたんだよ。考えられないな、飯食わないなんて。酒飲む時もツマミの方が減るタイプだから尚のこと理解出来ねぇ。

 

「なぁ、お姉さん?」

 

「んー?美味しいよ?」

 

「それはどうも。……じゃなくて、今更だが、自己紹介しとこうぜ。一緒に飯食ってんのに互いに名前も知らないのはアレだしな。」

 

「私?私は廣井きくり!誰よりもベースとお酒を愛する天才ベーシストだよぉ!」

 

情緒不安定だな……さてはまだ若干酒残ってんな。ん?

 

「そのベースは何処だ?」

 

「昨日飲み屋に忘れました〜。何処の飲み屋かも分かんなーい。」

 

……一瞬で矛盾したんだが。下手したらもう売り飛ばされてるぞ。

 

「俺は……山田(きょう)だ。苗字は好きじゃなくてな。下の名前で呼んでくれ。」

 

まあ特に深い理由がある訳じゃないが、有り触れた苗字だし周りに山田が多すぎて大体周りから下の名前で呼ばれてる。

 

「おお〜きょうくんって言うんだね!ね、今度私のライブ来てよ。音楽やってるんでしょ?私、こう見えてもインディーズでは結構人気のバンドなんだよ?」

 

「人気?なら金には困らないんじゃないか?」

 

そうして俺は純粋な疑問を口にすると

 

「あー、いつも泥酔状態でライブするから、機材ぶっ壊してその弁償で消えてるの〜。」

 

……もうそこまで生活に支障が出るなら酒やめろよ。

 

「断酒は」

 

「むーりー!絶対むり!今でもお酒抜けてきて若干不安なのに断酒なんてしたらライブどころか会話も出来なくなっちゃうよ〜」

 

……悲しい。ただひたすらに悲しい。これがアル中の末路か。

 

「ま、まあ程々にな?身体に良くないぞ。」

 

「ところで、君はどんな曲を聴くの?弾く方もイけるんでしょ?」

 

「……」

 

……まあ音楽は好きなんだが、最近は専ら聞き専だ。前組んでたバンドは好きだったんだが、メンバーが全員就職するっていうから俺も仕方なく就職した。

インディーズだったけど……レーベルから勧誘は来てたしかなり人気ではあったと思う。まあ……そのせいで一度税金関係でやらかしたが。

あーあ。あのままバンドやってればこんな毎日働かなくて良かったかもしれないのに。

 

「……?どうしたの、聞かれたくなかった?」

 

「いいや?俺は雑食だ。邦ロックが好きだが、アニソンやボカロなんかも聴くしなー。」

 

「ふ〜ん。ねぇ、なんか弾いてみてよ。」

 

弾けるか……?もうかなり長い事弾いてないぞ。

 

「いや……俺はいいよ。それよりベースあるからおね、……きくりさんが弾いてよ。」

 

「……?まあいいけどさぁ〜」

 

と、軽い感じで弾いて貰ったが確かに演奏技術はピカイチだった。インディーズと言っていたが、技術でいうならプロと遜色ない。

アンプに繋いだ訳でも無いからぼんぼんと軽い音がするだけだが、その分技術が際立って見える。

 

「おお〜!凄いな、自称凄腕ベーシストじゃなかったんだな!」

 

「……えぇ。そこも疑われてたのか、私。」

 

先程までのご自身の醜態を省みてもろて。

 

「ん?気付いたらもう鍋なくなってるよ。三人前作ったんだけど、よく食べるじゃんきくりさん。」

 

「いやぁ〜普段食えない分食い溜めとかなきゃだからさ!」

 

「冬眠前の熊かよ、酒買う金あるならその金で飯食え。」

 

と、二人でだべっていると気付くとそろそろ午前が近い。そっか。なんだかんだ俺も人との関わりに飢えてたんだな。

 

「きくりさん、布団出すからそっちで寝てくれ。悪いけど俺環境変わると寝れないから。」

 

学生時代から不眠症なのだ。お陰で薬飲んでも寝れない時もある。翌日が凄くキツイ。

 

「いやぁ〜ほんと、色々とありがとね!今度ちゃんとお礼するから!」

 

「まあ……期待せず待っとくよ。」

 

そうして、夜が明けた。

 

 

 

 

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「……あの、すみませんスマホの充電器貸して貰えますか?充電無くてバンド仲間と連絡取れなくて。」

 

……誰?

 

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