はっく・あんど・すらっしゅ!   作:Crimson Wizard

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休職中やる事無いので投下。


酔っ払いの恩返し

 

「うぇーい!きょうく〜ん!お礼しに来たよぉ〜」

 

「きくりさん……お礼って具体的に何?」

 

相も変わらず鬼ころ片手に出来上がってるきくりさん。近所の人に知り合いだと思われたくないんだけど……

 

「わらしのライブチケットだよぉ〜!今日この後ライブあるから〜」

 

……今日?もうそろそろ17時なんだけど。俺明日仕事なんだけどなぁ。

 

「で、ライブって何時から?」

 

「ん〜?今日は17時半からだねー」

 

「もうすぐ17時なるけど?」

 

「うぇ?」

 

という事で急遽きくりさんのホームであるライブハウス、新宿FOLTに大急ぎでやって来た。

 

「やっほー!銀ちゃーん!お客さん連れてきたよー!」

 

「あ?」

 

ものすごく治安悪そうな顔をしているおっさんが居た。

 

「あら!廣井の知り合い?凄いイケメンじゃない!あんたも隅に置けないわね!」

 

「いやぁ〜それほどでもあるよねぇ〜!えへへへ」

 

この見た目でオネエ系?凄いギャップだな。

 

「どうも、山田京です。今日はそこの酔っ払いを拾った時のお礼としてチケット貰ったので見に来ました。」

 

「ご丁寧にありがとう!アタシ、吉田銀次郎37歳でーす!廣井が迷惑かけたみたいでごめんね〜?」

 

「いえ、吉田さんの責任では無いので。」

 

「もーう!堅苦しいわねぇ。銀ちゃんって呼んで?」

 

距離の詰め方えぐ……

 

「分かりました銀ちゃん。で、そこの酔っ払いはライブあるみたいですけど大丈夫なんですか?」

 

俺がそう言うとハッとした銀ちゃんはすごい勢いできくりさんの首根っこを掴むとそのまま裏に消えていった。

 

そのままドリンクを買って後ろの方で開演を待っていると演奏が始まり、幕が上がりステージからきくりさんの姿が現れた。

普段あまり聞くことの無いサイケデリック・ロックで、かなり変拍子な曲調だがきくりさんのベースはまるで音の壁。

岩下さんのドラムがこの荒れ狂う曲調の全てを支えていて、ギターのロジカルな音色がスリーピースバンド特有の音の薄さを感じさせない。

 

きくりさんの酒にやけた声も上手く曲に組み込まれているようだ。……カッコイイ。

 

 

 

 

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「きょうくーん!私のライブどうだったー!?」

 

その後、きくりさんに控え室に連れてこられ、このような質問をされた。

 

「めっちゃカッコよかったですよ!私生活終わってるバンドマンに貢ぐ人の気持ちが分かったような気がします。」

 

「でしょでしょー?……あれ、これ褒められてる?」

 

「褒めてます褒めてます。」

 

当然、控え室には他のSICKHACKのメンバーも居て、岩下さんとギターの方に話し掛けられた。

 

「山田さん、来てくれたんですね。」

 

「岩下さん。凄くカッコよかったですよ!」

 

「ワタシはワタシは!?どうだった?」

 

そう聞いてくるのはSICKHACKのギタリストである……えーと、

 

「勿論カッコよかったですよ。えー、確か……」

 

「イライザ!ワタシ、清水イライザ!」

 

「どうもご丁寧に、山田京です。」

 

「キョウくんネ!ヨロシクだよ!」

 

可愛いなこの人。

 

「今日はきくりさんから誘われたんで来たんですけど、皆さん想像以上で、凄くいい経験が出来ました、ありがとうございます。」

 

「そう言ってもらえて良かったです。これからもよろしくお願いします。」

 

やはり岩下さんは常識人っぽいな。この人いないとこのバンド成立しなそう。なんて思っていると突然きくりさんが大声を上げた。

 

「あー!そうだ、きょうくんも打ち上げ行こうよ!今日は私が奢ってあげるからさぁ」

 

「いや、俺も行きたいんだけど明日仕事だし……」

 

「良いんだよ仕事なんて!サボっちゃえ!」

 

流石きくりさん。バンド以外じゃ絶対食っていけない人の言う事は違う。

 

「こら廣井、山田さんが困ってるだろう。無理強いするものじゃない。」

 

「やだぁ!きょうくんも連れてくー!」

 

……子供だ。いや、実際は子供よりタチの悪い酔っ払いなんだけど。

 

「……じゃあ明日仕事休むから、奢ってくれよ?」

 

「やったー!流石きょうくん!話が分かる。」

 

なんて言って休もうか。まあ、今まで真面目に出勤してたからサボりを疑われる事は無いだろう。

 

「じゃあちょっと会社に電話するから待っててくれ。」

 

 

 

 

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「うぇーい!みんなライブお疲れぇーい!かんぱーい!」

 

「「「「乾杯!」」」」

 

「それにしても山田さん、仕事まで休ませて本当にすみません。」

 

「いいんですよ。普段から真面目にやってるんで、会社からも特に何も言われませんでしたし。」

 

「キョウくんはお仕事何してるの?」

 

とイライザさん。俺の仕事かぁ……

 

「普通のサービス業ですよ。一時期は俺もバンドマンでしたけどね。」

 

「えぇ!?きょうくんバンドやってたの!?なんてバンド?」

 

きくりさんが驚いた様子で騒ぎ立てた。

 

「H&Sっていうバンドです。そこそこ知名度はあったんですけど、メンバーが就職するって事で解散しちゃいました。」

 

「ハクスラって、あのビジュアル系のハクスラですか!?」

 

「はい。あのハクスラです。」

 

「……あれ、調べてみたけどきょうくん居なくない?」

 

「え、ボーカル俺だけど?」

 

「「「え?」」」

 

なんで皆そんな驚いてるんだ?ビジュアル系だから見た目が違うのは当たり前じゃん。

 

「でもこれ金髪だしメイクも……」

 

「普段からそんなメイクしないし、金髪も就職する時に黒に染めたんだよ。」

 

「というか、山田さんあんなに売れてたなら印税で働く必要無いのでは?」

 

……それはそう。作詞作曲も編曲も俺だし、バンド時代の貯金はかなりの額がある。

 

「まあ、貯金はあるんですけど働かなくなるとダメ人間になりそうなので仕方なく働いてます。」

 

「はぁ……まだ若いのに偉いなぁ山田さんは。廣井にも少しは見習って欲しいですよ。」

 

「ちなみに、キョウくんは何歳なんデスカ?」

 

「俺は今年で23ですね。」

 

俺がそういうと岩下さんはきくりさんと俺を見比べた後に大きくため息を吐いた。

 

「ま、まあきくりさんもほら……ライブの時はカッコいいし。」

 

「それ以外が終わってるんですよ……」

 

どうしよう。ライブ以外褒められる所を思い付かない。

 

 

 

 

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その後、途中参加してきた銀ちゃん達となんだかんだ楽しく呑んで……

 

「おろろろ……」

 

路地裏できくりさんがこうなってます。

 

「どうするのきくりさん。岩下さん達帰っちゃったけど。」

 

「おぶってください……」

 

「背中で吐いたら捨てていくからな?」

 

「……あい」

 

こうして、またしても俺は酔っ払いを引っ提げて自宅に帰ることになったのだった。

 

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