少し時間を巻き戻し、講堂を何者かが襲った直後、達也と深雪は、図書館を駆け上がる。
「お兄様。大丈夫ですか?」
「あぁ」
すると深雪は足を止め、
「お兄様はここでお待ちを」
「何を言っている。そんなことはできない」
「ですが!」
1年前、兄は力を失った。
兄は、生来得意とする魔法が二つあった。
現代魔法で最高難易度を誇る魔法【分解】と【再生】。
その二つこそ兄の真の力だった。だが一年前、突如現れた謎の男は言う。
「成程。まだ原作が始まる前の世界だったのか。まぁ良いさ。その力、いただこうか」
そう言われた次の瞬間、兄は力を失った。何をされたのかも分からず兄は本来の力を奪われたのだ。
他にもいくつか力はあり、それは奪われなかったのだが、まるでその力だけ削り取られたかの如く、力を失った。
この二つの魔法がなくとも、兄は誰よりも強い。だが、その二つは兄の強さを支えていたのも事実。
力を失ったことを知っているのは、本人以外だと自分だけだ。誰にも言えない秘密。だからこそ、危険な場所に行ってほしくない。そう考えているのだが、
「そんなことは出来ないよ深雪」
達也はそう言いながら、行き先を見る。
「それに、俺にもやることがある」
それだけ言い、深雪を連れて走り出すのだった。
「……」
魔法科高校の図書館には、奥には持ち出し禁止の魔法に関するデータがある。
現代において、魔法に関する研究などはなによりも貴重なものだ。だからこそ、魔法大学等での研究データは、本来閲覧するのも難しい。しかし、高校であれば、一部ならば許可を得れば見ることができる。
それはつまり、大学のライブラリに繋がっていると言うことであり、ハッキングなどでデータを抜き取れるのだ。
だが何故こんな事を?そう彼女、壬生沙也加は考える。
彼女は二科生で、その差別撤廃のために動いていた。だが、これが何のためなのか分からない。と思っていると、
「そこまでだ」
『っ!』
壬生と仲間たちが振り返ると、そこには達也と深雪がいた。
「くそ!」
一人はアンティナイトの指輪を発動。
アンティナイトと言う特殊な鉱石で作られたこの指輪は、魔法師の魔法発動を妨害し、使えなくする事が出来る。
そして魔法が使えない所に、仲間達が飛び掛かった。
対魔法師の鉄板だ。だが、
「え?」
飛び掛かった仲間は凍りつき、動かなくなる。
「な、何故アンティナイトの影響下の中で!」
魔法力が強ければ可能ではある。だがそれは、そんな魔法力余程の上位。十師族とかクラスだ。
「く、くそ!」
だがその中、アンティナイトを発動させていた男は、達也に飛びかかるが、一瞬で投げ飛ばされ、壁に叩きつける。
「壬生先輩。もうやめましょう。こんな事は」
「っ!」
達也はそう言いながら壬生を見る。
「何でよ」
壬生はワナワナと体を震わせ、
「何で貴方はそんなに自信を持っていられるの!」
達也はその言葉に目を伏せ、
「自信なんてありませんよ」
「え?」
「ただ、妹に恥じぬ兄でいたい。それだけです」
その時だ。
「あらあら。美しい兄妹愛ですわね」
「?」
達也が入口からした声に振り返ると、そこには一人の女性がいた。
「お前は」
「御機嫌よう。私は冥黒の三姉妹の一人ラケシス。一応今回のテロ行為の協力者ですわ。折角色々お手伝いしたのに、あっさり鎮圧されて残念です」
爪を見ながら、どうでもよさそうに言うラケシスに、達也は眉を寄せる。
「成程。色々気になることを知ってそうだ。教えてもらおうか」
「あら、デートのお誘いかしら?」
デートと言う単語に、深雪はラケシスを睨みつけた。
「悪いが、そういったのに興味はなくてね」
達也はそう言って鎮圧しようと、ラケシスとの間合いを詰める。だがラケシスはフワリと飛び上がって避ける。
「凄まじい速さですわ」
ラケシスは着地すると、足元が凍りだす。
「邪魔ですわね」
ラケシスは憮然としながらいうとケミーカードを出した。
「ケミーだと?」
「えぇ」
「ゲンゲンー」
ラケシスはそのままケミーを取り込み、マルガムへと変わると、氷を吹き飛ばした。
「さぁ貴女もよ」
「え?」
ラケシスは更にケミーカードを取り出すと、壬生に投げる。
「いや!」
「アッパレー!」
壬生は逃げようとするが、それよりも早くケミーカードを取り込んでしまい、マルガムになってしまった。
「マルガム二体か。笑えないな」
達也は深雪の手を引き走り出す。
「ここだと狭い。一旦下がるぞ」
「はい」
「逃がしませんわ」
追ってくる二体のマルガムから逃げながら、広場に出るとそこに降り立つ。
「あら、もう諦めたんですの?」
「いや、ここなら暴れても問題ないからな」
はい?とラケシスが首を傾げた時、
「ウィール!」
「っ!」
入口をぶち破り、一台の車が乗り込んで来る。
「きたかマッドウィール」
達也はマッドウィールと呼んだ車型のケミーに積んである大剣を取ると、マッドウィールもカードになる。
《ガキン!》
大剣を展開し、マッドウィールのカードを装填。
《マッドウィール!》
そして戻し構える。
《ゴキン!》
「鉄鋼!」
《ヴァルバラッシュ!チューンアップ!マッドウィール!》
するとオーラ状のマッドウィールが現れ、達也と融合。
機械にも似た、紫と白で作られた姿へと変わった。
「ケミーを利用するのはお前だけじゃない。俺はこのヴァルバラッシャーにより、安定したケミーとの融合やその力の利用ができる」
「まさかただの魔法師がそんな物を作り上げるなんて。面白いですわ!」
ラケシスはマルガムに指示しマルガムは達也に襲い掛かる。
「はぁ!」
マルガムの斬撃を大剣・ヴァルバラッシャーで受け止め弾きながら切る。その合間を縫ってラケシスが空から来るが、ヴァルバラッシャーについている銃口からビームを発射して撃ち落とした。
更にヴァルバラッシャーの一撃を撃ち落としたラケシスに放つが、
「むっ」
マルガムがそこに割って入り、達也の一撃を止めた。
「はぁ!」
だがそれを強引に押し込んで吹き飛ばすと、
「成程。厄介ですわね」
ラケシスは飛び上がると、
「ここで怪我を負うのも馬鹿らしいですし、さっさと引かせて貰いますわ」
「待て!」
逃げようとするラケシスに銃口を向けるが、マルガムに邪魔をされ、その間に逃げてしまった。
「仕方ない」
達也はマルガムを吹き飛ばし、切りつけて吹き飛ばす
「仕方ない、さっさと終わらせるか」
達也はヴァルバラッシャーのレバーを操作し、
《スクラップ!ヴァルバラブレイク!》
ヴァルバラッシャーにエネルギーを集め、突っ込んできたマルガムに突き刺して、そのまま振り回して壁に叩きつけると、そのまま壁を突き破り、そのまで吹っ飛んでいった。
「よし」
ケミーをカードに封印して確認。
「深雪。俺はこのままさっきのラケシスを追う。お前は裏から出るんだ」
「裏からですか?」
あぁ、と達也は言いながら外に出ると、離れた建物の上からこちらを見ている影。
(あの時のショッピングモールで見たやつか)
見たところ、敵対する意思はないだろう。ショッピングモールでも深雪が助けられていたのだし。
だが、
(あれはケミー2体と人間1人の三すくみによる完全な調和か。俺のヴァルハラドよりも高出力且つ多用な使い方ができる。一体何者だ?)
だがそれよりもラケシスの行方が優先だ。
そう判断し、達也はラケシスを追うのだった。