「そういえばそろそろ九校戦だなぁ」
授業の休み時間。レオがそんな事を呟いた。
二科生にとっては、直接参加することはないのだが年に一度、全国にある魔法科高校が一同に会し、魔法技術を競い合う。それが九校戦である。
「雫が九校戦オタクだから毎年連れ回されてたんだけど、今年は選手として出てみせるーって意気込んでたよ」
「雫なら大丈夫でしょ?実技なら深雪に次ぐレベルだし」
宝太郎の言葉に、エリカが言う。
実際、一年の中では、深雪、雫、ほのかの3人が実技の面では上回っており、ほぼ確実に九校戦の選手に入れるだろう。
「まぁ私達も応援には行きたいですね」
「流石に実技主体の九校戦はアタシ達出ることないだろうしね」
「わからねぇぞ?達也とか選ばれるかもしれないじゃん」
「流石にそれはないだろ」
アッハッハッハ、と皆で笑った。その次の日、
「九校戦のエンジニアスタッフに選ばれた」
『ズコー!』
全員で思わずズッコケたのは、余談である。
「ん?」
そんなある日、廊下を歩いていると、宝太郎は見覚えのある背中を見つけた。
「深雪?」
「宝太郎君?」
声を掛けられ、振り返った深雪の手には、書類の山が積まれていた。
「おいおい持つよ」
重そうだったので半ば強引に書類を奪うと、深雪は敢えて抵抗せず渡してきた。こう言うときに素直に渡してくるのはありがたい。
「しかしすごい量だな」
「そうですね。デジタル化が進んだ現代でも、こういった紙媒体も使われていますから」
並んで歩きながら、生徒会室に?と聞くと、深雪は頷く。
「こう言うのは達也がやると思ってたよ。深雪に重いものはーって」
「お兄様は今エンジニアチームの方で大忙しですから」
と、少し寂しそうな深雪に、宝太郎は苦笑い。
「あ、一応正式発表前だけど九校戦選手おめでとう」
「雫やほのかからですか?ふふ、ありがとうございます」
笑みを浮かべながら歩く深雪。まさに歩く姿は百合の花である。
深雪は恐ろしいくらい美人だ。それは宝太郎も思う。だが、不思議とそれ以上の魅力は感じない。
そういう意味では、エリカや美月のほうがドキマギさせられることが多いくらいだ。
っていうか、
「何か顔についてる?」
何やら深雪にジッと見られ、宝太郎は困惑していると、
「あぁごめんなさい。宝太郎君って初めて見たような気がしなくて」
「うぅん」
それは少し、宝太郎も思っていたことだ。深雪とは初対面な感じがしない。
不思議と穏やかな気持ちにはなるのだが。
「今世紀初頭に流行ったナンパの常套句みたいだな」
「まぁ」
宝太郎は笑って言うと、深雪は頰を膨らませて抗議をしてくる。
それを見て更に宝太郎は笑い、深雪は益々怒るのだった。
「完成だ」
とある部屋の一室にて、アトロポスは完成した物を持ち上げる。
「ついに完成したのか」
「うんクロトー。ガッチャードも、人間も滅ぼす最強の兵器。ドレッドライバー」
アトロポスはそれをクロトーに渡し、
「本番は九校戦だよ」
「あぁ、任せておけ」
クロトーは笑みを浮かべながら、力強く頷くのだった。