魔法科高校の劣等生 ガッチャードクロス   作:ユウジン

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それでも戦うため

「ん?」

 

ほのかのバトルボードから次の日。廊下を歩いていた宝太郎だが、ベンチで項垂れている人物を見つけた。

 

「確か里見」

「ん?おぉ、瀬乃じゃないか」

 

さっきまで項垂れていたスバルだったが、急に芝居がかった動きをしてくる。

 

「惜しかったな」

「うむ」

 

スバルは先程までクラウド・ボールと言う競技に出ていたのだが、惜しくも決勝戦敗退の2位という結果だった。

 

「流石に一色は強かったよ。僕もまだまだ精進が足らないな」

 

ハッハッハ。と笑うが、

 

「めっちゃ悔しそうな顔してたぞ」

「いいかい瀬乃。時には言わぬが花と言う言葉もある」

 

里見は少し引きつった笑みを浮かべつつ言いながらも驚き、

 

「っていうか、よく僕を見つけたね」

「え?」

「僕は先天的に認識阻害の魔法を使えてね。さっきも発動させてたんだが」

「BS魔法か」

 

先天的に特定の系統の魔法を得意とし、異様に適性が高い人間がいるのだが、それをBS魔法師と呼び、その得意な魔法をBS魔法と呼ぶのだが、スバルはその一人だったらしい。

 

「通った所で項垂れてたらなぁ」

「普通に見つかってたとは」

 

スバルは頬を掻きつつ、照れくさそうに笑う。それを見た宝太郎は、

 

「まぁ悔しいなら悔しいで良いだろ」

「そうなんだけどねぇ」

 

試合は録画の関係で見てたが、序盤はスバルが押していたくらいだ。だが少しずつ追い付かれ、追い抜かれ、それて差をつけられて負けた。

 

「地力の差が出た、と思ってるよ。才能もあって、それを支える努力も怠っていない。私はそれに劣った。それだけさ」

 

と笑うスバル。だが、それが空元気なのは明らかだ。なので、

 

「よしっ!里見。ちょっとこっち来てくれ」

「え?あ、ちょっと」

 

宝太郎はあるきだし、スバルは驚きつつも、それに付いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは?」

 

会場から連れ出され、裏手の人気がないところに来る。

 

「ここなら人が来ないからな」

 

と宝太郎は言うと、スバルはますます眉を寄せた。すると、

 

「うわぁあああああああああ!」

「ひゃ!」

 

急な叫びに、スバルは飛び上がる。

 

「ほら、里見も」

「え?え?」

 

スバルがポカンとすると宝太郎は、

 

「何か悔しかったりもやもやする時は叫ぶに限る!うおぉおおおお!」

「わ、わぁあああああ……」

「声が小さい!うぉおおおおおお!」

「わ、わぁああああああ!」

「もっともっとぉ!」

「わぁあああああ!!!」

 

腹の底から声を出し、

 

「クソぉおおおお!あのまま勝ててたはずだろぉおおおお!急に何か覚醒しやがってぇえええ!最初は様子見かぁあああああ!」

「お、おぉ」

 

いや君が冷静にならないでくれ。とスバルはツッコミつつ笑い、

 

「確かに声を出すのは良いな。君もよくやるのかい?」

「昔はよくやってたかな。雫やほのかと違って俺魔法の才能ないし」

 

劣等感がなかったと言えば嘘になるし、何も思うところがなかったと言えば偽りである。

 

だがそれでも、3人でいるのは楽しい。

 

それも事実だ。

 

「そっか。そうだよね」

 

とスバルは何も言わずに肯定してくれた。そして、

 

「よし、元気も出たし、これで最終日のミラージ・バッドも頑張れそうだ」

「そっか、里見はミラージ・バッドも出るのか。ほのかも出るみたいだし頑張れよ」

「あぁ、ただ君はその前に明日のアイスピラーズ・ブレイクじゃないか?雫が出るんだし」

 

確かにそうだ。1高からは、雫と深雪とエイミィが出場するので、目が離せない。

 

「それじゃあ私は行くよ」

「おう」

 

と言って立ち去ろうとしたスバルは振り返ると、

 

「あぁそれと、スバルでいいよ」

「そうか?じゃあ俺も宝太郎でいいよ」

 

わかったよ宝太郎。と言い、スバルは今度こそ帰っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてそんな事があった次の日、アイスピラーズ・ブレイク当日。雫は着物姿で立っていた。

 

アイスピラーズ・ブレイクは、服装に規定がなく、そのため一種の仮装大会になっていて、雫の格好もそのためだ。そして雫は気合十分と言った風情で、フンスっと鼻を鳴らす。

 

「緊張はなさそうだな」

「全く無いわけじゃない。でもそれ以上に、ワクワクする感じ」

 

試合前のヒリ付くこの感じも、全身に滾る気持ちも、何もかもが心地よい。意外とこういう時好戦的なのは雫の方だったりする。しかし、

 

「ねぇ宝太郎」

「なに?」

 

と言って、雫は両手を広げて来る。意味が分からずポカンとしていると、

 

「ハグ」

「はい!?」

 

急な提案に、宝太郎は驚いて後ずさるが、雫は気にせず一歩詰めてくる。

 

「な、なにいって」

「ほのかがしたって言ってた」

 

なんで言うんだよ、と宝太郎は内心文句をいうが、雫とほのかの間には宝太郎に関しては秘密はなしと言う盟約が交わされているので当然であった。

 

「と言うわけでハグ」

「は、はい」

 

雫に促され、抱きしめる宝太郎。

 

ほのかに比べて肉付きは劣るが、ほのかの甘ったるい匂いとは違い、爽やかな女性特有の匂いが鼻を刺激し、力を込めたら折れてしまいそうな程細い。

 

だがそこには確かに、女性特有の柔らかさもある。

 

「宝太郎」

「な、なに?」

 

密着する関係上、耳元で囁かれるように声を掛けられ、心臓が早鐘を打つ。

 

「私は負けないから」

「そうか」

 

雫は大人しそうに見えて負けず嫌いだ。勝負事になったら熱くなるし、結構意地も張る。

 

そんな彼女が見るのは優勝だけだ。

 

「じゃあ、行ってくるね」

「あぁ」

 

宝太郎から離れ、達也に調整してもらったCADを携えて会場に向かう。その背中を見送りながら、宝太郎は静かにエールを送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みに、

 

「雫の匂い……」

「き、気の所為では?」

 

と言うほのかとのやり取りがあったとかないとか。

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