「きゃああああああ!摩利様ぁああああああ!」
宝太郎がカフェの支払いで内心、血の涙を流した次の日、遂に九校戦本戦が始まった。最初はバトルボードで摩利が出るのだが、容姿と実力が相まって、熱狂的ファンが多数ついているとのこと(雫談)。
その為、
「あのぉ、後でその映像って貰えます?」
「え?」
摩利を宝太郎が撮ろうとしてたら、私も私もと一気に来てしまい、
「後で販売するので今度お願いしまーす」
と雫が整理して追い返す羽目になった。恐ろしきファン心理だ。
「俺には縁がないからなぁ」
九校戦に出場することはない宝太郎がそう言うと、
「そう?もしかしたらあの舞台のど真ん中で会場中から声援を受けながら戦えるかもよ?」
「ありえねぇなぁ」
ほのかに返しつつ、宝太郎は録画を開始。
試合も同時に始まり、摩利がスタート。後続を引き離し、あっという間に単独トップだ。
巻き返すのは不可能な程距離を取り、摩利はそのままぶっちぎりの一位になる。
「最早高校生レベルじゃないな」
「多分今年も優勝だね」
摩利の実力を冷静に分析する達也と雫は、そんな事を呟く。
一方その頃、
「クソ。やはりだめか」
とある部屋の一室にて、一人の男が机を叩いた。
「どうする。新人戦では一高がぶっちぎりだったじゃないか」
「だがまだミラージ・バッドとモノリス・コードがあるが、この本戦でも一高を引きずり下ろしておかねば」
「特に渡辺摩利は点数配分の高いミラージ・バッドにも出る」
と男達が話していると、
「くだらん」
それを聞いていたクロトーは吐き捨てるように言うと、
「くだらんとはなんだ。大体お前が最初の時に一高を潰せていっ!」
男がクロトーに噛みついた瞬間、クロトーが首を絞めながら片手で持ち上げる。
「もう一度言ってみろ」
「がっ。ぐっ」
持ち上げられた男がジタバタすると、
「クロトー。やめて」
「……ちっ」
男を放り捨てると、クロトーは舌打ち、そして止めたアトロポスは、
「僕達は別に君達が何を目的にしてようと関係ないし興味もないけど、計画が上手く行かないのまで僕達のせいにしないでもらおうか。僕達はケミーも貸すし、仮面ライダーの対応もする。だけどそれ以外はしない。そのはずだよ」
「ゲホッ!ゲホッ!……くっ」
苦々しそうに男が息を整えるが、別の男は口を開くと、
「ま、まぁまだ策はある。まずバトルボードの決勝戦だ」
そして再び九校戦会場。決勝戦では勿論摩利も人気だが、
「海の七高って異名があってね。七高の選手も注目」
「なるほどなぁ」
摩利にカメラを合わせながら、スタート時間を待つ宝太郎に、解説する雫。
それと共に笛が鳴り、スタート。先程とは違い、摩利に七高の選手はしっかり付いて来ていた。
だが徐々に摩利が差を作る。だが最終コーナーで、巻き返しができる場所だ。と皆が思った時、
「危ない!」
誰かが叫んだ時、七高の選手が突如カーブで速度を上げ、制御を失い摩利に突っ込んで来た。
「っ!」
摩利は咄嗟に七高の選手を助けるべく、魔法を起動させようとしたが、
「なっ!?」
突然水面が凹んだような感覚に陥り、摩利は姿勢を維持しようとするが、その一瞬が命取りだった。
七高の選手がそのまま摩利に突っ込んで激突し、二人共壁に叩きつけられる。
「摩利!」
観客席で悲鳴に似た声を上げる中、
「宝太郎。残念だがその映像は販売中止だ」
「だろうな」
達也の言葉に頷きながら、宝太郎は大きく息を吐くのだった。