魔法科高校の劣等生 ガッチャードクロス   作:ユウジン

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断末魔

「ふむ」

「どうだ?」

 

達也は機械をパチパチしつつ、摩利の事故映像を確認するが、

 

「だめだな」

 

達也は一息ついてそういった。

 

「映像越しで見る範囲では異常はない。ただ単に七高の選手がスピードの制御を誤り、渡辺先輩に突っ込んだというな」

「うぅん。そうか。でも渡辺先輩が言うには、水が急に沈んだような感覚だったらしいぜ?」

 

摩利は暫く意識を失っていたものの、今は目を覚まし、話を聞いていた。その際に言われたのが、水位の異変だった。

 

「何かしらの魔法の可能性が高いな」

 

と達也が呟くと、誰かに連絡を取る。しばらくして来たのは、

 

「幹比古に美月?」

 

そう。この二人だ。

 

「幹比古は古式魔法に詳しく、美月は目がいい」

 

目がいい。というのが、眼鏡を掛けている美月に何故適切なのかと言えば、現代医療に掛かれば視力の低下はほとんど意味がなく、簡単に視力向上の手術が受けられる。ならば何故美月が眼鏡をかけているかと言うと、逆に見えすぎるからだ。

 

霊子放射光過敏症と呼ばれるそれは、一種の知覚障害で、霊子(プシオン)と言う物質を魔法師は知覚する能力が備わっているのだが、それが過剰に見えてしまうものだ。

 

見えすぎてしまうというのも考えもので、美月曰く強い光が見えているような感覚とのこと。

 

見すぎると目も頭も痛くなるため、普段は眼鏡生活というわけだ。

 

「でも何で古式魔法?」

「古式魔法は発動速度という点では現代魔法に劣るが、隠密性に置いては上だ。一見なにもない所でも、場合によっては可能かと思ったんだが」

「うん。可能だと思うよ」

 

映像を見ながら幹比古は頷き、

 

「ただこの映像だけだと難しいかな。それに水に干渉するなら、水の精霊と契約したり、準備にかなり時間と手間ひまがかかる」

 

なるほど、と達也が幹比古と話している間に美月も眼鏡を外して画面を見るが、

 

「ごめんなさい。私も見てみましたが特に異変は」

「流石に高性能カメラでも霊子はわからんかぁ」

 

美月が悪いわけじゃない。と宝太郎は言うが、美月はしょんぼりしていた。

 

「こうなったら明日からメガネを外して観戦しますね!」

「そ、それは美月が大変じゃね?」

 

と止めるが、なんかやる気を出してしまったのでもう止めても無駄だろう。こうなると止まらないのはある程度理解している。

 

「考えられるとしたら水面に何かしらの細工をした。それに加えて、恐らく七高のCADにも何かしたらの細工をしているかもしれないな」

「そんなこと可能なのか?運営チェックも厳しいのに」

「まぁそこをどうクリアするか。ではあるんだがな」

 

運営チェックだけじゃない。各校威信をかけてCADは調整をしている。そこにどう細工をするのか。そこが謎だ。

 

「とにかく更にチェックが厳しくなるはずだし、一度様子見するしかないだろうな」

 

達也はパソコンから視線を外しながらそう言う。まぁ実際、それ以外に現状は方法はないので、全員不安を抱えながら、その日を終えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、摩利の事故があっても、九校戦は続き、スピード・シューティング、クラウド・ボール、アイス・ピラーズ・ブレイクと試合は続き、順当に一高が勝利を収めていった。

 

何かまた事故が起きないかとヒヤヒヤしていたが、特になさそうで一安心。だがこの後には、ポイント配点が高いミラージ・バッドとモノリスコードがある。何も起きなければいいが。等と思いながら宝太郎が歩いていると、

 

「何で修兄様がいるんですか!」

「なんだ?」

 

急に聞こえてきた大声に、宝太郎が驚きながら覗くと、エリカと摩利、そしてその二人の間に立つように一人の男性がいて、エリカを宥めているようだが、

 

「アレは千葉修次さんだね」

 

すると背後から雫が現れ、顔を出しながら言ってきた。

 

「知ってるの?」

「うん。千葉修次って言えば、陸軍所属の千葉の麒麟児と呼ばれていて、近接なら世界でも十指に入るって言われてる。確かタイに剣術指南と言う形で留学してた筈だけど」

「へぇ」

 

と言いながら、大分向こうは(というかエリカが)ヒートアップしているようだ。

 

「仕方ない」

 

と言って、宝太郎はエリカのもとに向かうと、

 

「廊下に響いてるぞ」

「あっ。宝太郎くん」

 

エリカは宝太郎の登場にバツが悪そうな顔をする。

 

「と、とにかく修兄様はちゃんと自分の職務を遂行してください!」

 

と捨て台詞を残してエリカは走っていってしまった。

 

「えぇと、エリカのお友達かな?」

「あ、はい。瀬乃宝太郎っていいます」

 

きまりが悪くなった修次と宝太郎は、お互いにヘコヘコ頭を下げながら自己紹介をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど。渡辺先輩とエリカのお兄さんが恋人か」

 

お昼時に、宝太郎達は集まると、ランチを食べながら先程の話をする。

 

「何でも地元じゃ負け知らずだった渡辺先輩を負かしたのがエリカで、その後にお兄さんが渡辺先輩に剣を教えるうちに距離が縮まったんだと。いやぁ、大好きなお兄さんのキューピット役になっちまうとはねぇ。しかも相手は鼻っ柱をへし折った相手。何とも複雑だ」

 

と米を口に放り込み、

 

「しかし何だって家の周りにはブラコンばっかりなんだ」

「あら宝太郎さん。それは誰の事かしら?」

 

深雪がズイッと顔を近づけられ、宝太郎はヤベッと顔をそらす。

 

「べ、別に特定の誰かってわけじゃないって」

 

ダラダラ冷や汗を流しながら、言い訳をする宝太郎だったが、深雪がアラっと言って宝太郎の背後を見る。

 

他の面々もアッと背後を見ていた。

 

「ん?」

 

宝太郎も何事だ?と振り返ると、

 

「げぇ!エリカ!?」

「楽しそうね宝太郎くん」

 

にっこり笑って宝太郎の肩を掴むエリカ。

 

「い、いつから?」

「地元じゃ負け知らずだったからね」

「最初からかぁあはは」

 

もう乾いた笑いしか出ない。

 

「私ね今凄く体動かしたいの」

「そ、そうか。会場裏の雑木林なんかだと人が来ないぞ?」

「そっかぁ。でも私一人で木刀振ってもあれだから、相手してよ」

 

エリカの肩を握る手に力が籠もる。メキメキ言っててすごく痛い。

 

「お、俺剣とか握ったことないしなぁってかすごく力強いね」

「鍛えてるからね。それに大丈夫。剣持って立ってるだけでいいから」

「それサンドバックって言わない?」

 

宝太郎の抗議を見て、流石にサンドバックは可哀想かと、雫とほのかが擁護しようとしたら、

 

「おや宝太郎じゃないか。楽しそうだね」

「どう見たらそう見えるんだスバル」

 

スバルとエイミィもお昼を済ませたらしく、一緒に歩いていたところ、丁度宝太郎を見かけて声をかけてきたらしい。

 

するとエイミィは、

 

「あれ?二人共いつの間に仲良くなったの?」

「ちょっと色々……ね」

 

ニヤッと笑いながらエイミィに答えるスバル。それを見てエイミィはキャーキャー言っている。

 

「エリカ」

 

そんな光景を見ながら雫はほのかに声をかけ、

 

「程々にね」

「え?」

「たまには宝太郎君も運動したほうが良いと思うよ」

「え?」

 

なんか急に見捨てられた?と宝太郎は驚愕。エリカは許可が出たと言わんばかりに宝太郎を引きずって歩き出す。

 

「え?え?えぇええええええええ!?」

 

その後、雑木林から宝太郎の断末魔が響き、翌年から九校戦七不思議に、昼間から響く怨念の声として記憶されたとかなんとか……

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