「……」
モノリスコード会場の地下深く。そこにマルガムはいた。新人たちを退場に追い込み、もう一高の優勝の芽はない。と思っていたのだが、まさか代理を出すとは。だが今度こそ。と思っていた時、
《エナジーマル!》
「っ!」
目の前にエナジーマルになった宝太郎が現れ、マルガムを掴みそのまま押し出す。地面を進み、会場から離れたところで地面から吹き飛ばすと、両者地上で睨み合う。
「ディープマリナーか。考えたな」
「なるほど。さすがにバレましたか」
マルガムから人の姿に戻ったラケシスは息を吐く。
ディープマリナーは、ビークル系の潜水艦型のケミーだ。
水陸問わず潜り、移動できる。
「渡辺先輩の体勢を崩したのも、モノリスコードで避難を妨害したのもディープマリナーの能力だな?」
「あら、流石ケミーについては詳しいんですのね」
ラケシスは悪びれる様子はなく、爪を見ている。
「なんでこんなことを!」
「別に私たちとしてはこんな大会なんて興味もないんですけど、一高に勝たれると賭けに負けるとかで」
「賭け?」
「えぇ、九校戦の勝敗で賭けをしている者達がいましてね。ただ一高人気が高すぎて胴元がこのままだと大損。でももしここで一高以外が勝てば、胴元が賭け金独り占め。これでお分かりかしら?」
「なるほど。そいつらの命令でお前たちも暗躍してたってのか」
「冗談を。私達はドレッドの試運転をする場所を求めてたところ、利害が一致しただけですわ」
ただ残念。とラケシスは言い、
「実際来てみたら、ドレッドで暴れて九校戦が中止になって賭け自体がなくなるのも、また問題らしく、そのせいで暴れるのはお預けな上に、雑用までさせられる羽目になりましたわ」
「ふざけんな!」
《スチームホッパー!》
宝太郎は飛び上がると、ラケシスに襲い掛かるが、ラケシスはそれを避けてマルガムに変化。
「別にいいじゃありませんの。人間なんて幾らでもいるんですから少しくらい死んだって」
「っ!」
宝太郎は歯をグッと噛み締め、ガッチャージガンを構える。
「死んでいい奴なんているわけないだろぉ!」
ガッチャージガンを乱射するが、ラケシスは地面に潜って避け、背後から機雷を投げてきた。
それを転がって避け、背後で爆発するのを感じながらケミーカードを出す。
「ならこっちだ!」
《メカニッカニ!ゴルドダッシュ!》
「変身!」
《ガッチャーンコ!ゴルドメカニッカー!》
宝太郎はカードをドライバーの装填し、新たな姿に変身。全身が金色に輝き、一回り大きくなった姿となった宝太郎は、両腕の主砲から連続で砲弾を発射。
地面が爆発し、その衝撃でラケシスは上に吹き飛ばされた。
「がはっ!」
「これで決める!」
宝太郎はドライバーを操作し、必殺技を発動。
《ゴルドメカニッカーフィーバー!》
エネルギーを貯め、必殺技に体勢に入った瞬間、
「ハァアアア!」
「なっ!」
ドレッドの姿で飛び蹴りを放つクロトーの一撃で吹き飛ばされた。
「ラケシス、何をしてる」
「別に一人でもどうにかなりましたわ」
そんなやり取りをしつつ、ラケシスとクロトーは同時に襲い掛かってくる。
「くっ!」
《アッパレスケボー!》
宝太郎は素早く姿を変え、ガッチャートルネードを取り出して猛攻を受ける。
受け流し、避けていく宝太郎だが、二人がかりで来る攻撃に、手数で押されていく。
「ふん!」
「グッ!」
そして隙を突いて、クロトーの拳が宝太郎を殴り飛ばした。
一方その頃、
「くっ」
達也は決勝戦の対戦相手である、一条に苦戦を強いられていた。
一条の魔法をくぐり抜けるが、ドンドン押されていきジリ貧に。
その時だ。一条の放った魔法が、達也に襲いかかる。
避けられ続け、油断すれば一瞬で間合いを詰め、こちらに来るであろう達也との戦いの緊張感から、一条は出力の調整をミスってしまい、明らかなオーバーパワーの魔法だ。
例え魔法自体の殺傷力が低めでも、発動者の実力で幾らでも底上げはできる。故に一条は威力を抑えて撃っていたのだがここにきてそれを間違えた。
砂塵と爆音が響き、
「お兄様!」
深雪が観客席で思わず立ち上がる。
(みゆき?)
魔法で吹き飛びながら、達也はぼんやりと考える。
深雪の声であることは間違いない。
例え数万人の喧騒の中でも、深雪の声を聞き分ける自信がある。
そんな深雪が泣きそうな声で叫んだのだ。
(心配するな深雪)
必ず勝つ。そう深雪に誓った達也は、ボロボロの身体で強引に立ち直し、一条の方を見る。
『っ!』
砂塵が上がりすぎて周りは気づかないが、戦いの中にいた一条と、宝太郎の代わりにカメラで撮影していた雫は、目を見開く。
本来それは光を灯す物。だが達也のそれは、光の一切を飲み込む漆黒。
達也の体から黒い炎が巻き上がり、
「おおおおおおお!」
達也の右手に集まった黒い炎は、達也の突きに合わせて拳を形作り、一条に向かって飛んでいく。
「がっ!」
そのまま遥か後方に吹っ飛び、背後の岩に叩きつけられ、そのまま意識を失うのだった。
《ドレッドブレイキング!》
クロトーはドライバーを操作して必殺技を発動し、ラケシスと一緒に飛び上がる同時に攻撃を放つ。
「っ!」
宝太郎は立ち上がり、二人を迎え撃つ。
「これで!」
「終わりですわ!」
こちらに来る攻撃をどうすればいいか考えるが、すぐには思いつかない。だが、
「っ!」
脳裏に雫とほのかの顔が浮かぶ
勝つために必死に努力し、九校戦を戦う2人の姿。
「負けるか」
相手二人を睨みつけ、宝太郎の手から光が溢れる。
その光が剣の形を作り、
「おおおおおおお!」
その剣を振ると、凄まじい衝撃波を生み出し、クロトーとラケシスを吹き飛ばした。
「ぐっ!」
「何だ!?」
吹き飛ばされた二人は驚きながら立ち上がり、宝太郎も呆然としながら手のものを見る。
それは青色の片刃の剣。
「これは」
その時、宝太郎に映像が見えた。そう。この剣は、
「そうだこれは、エクスガッチャリバーだ!」
宝太郎はその剣に、ホッパー1のカードを装填。
《ホッパー1!》
「はぁああああ!」
剣を掲げ、二人を見据えると、
「はぁ!」
剣を横薙ぎ一閃。
《ホッパー1ストラッシュ!》
「逃げるぞラケシス!」
「えぇ!」
凄まじい斬撃を飛ばしたが、クロトーはラケシスの手を引き撤退。爆発は起きるが、倒すには至らなかった。
「クソ。もうちょっとだったのに」
宝太郎はため息をつくが、改めてエクスガッチャリバーを見る。
初めて見る筈なのに、頭に情報が流れ込んでくる感覚。
これは初めてドライバーで変身したときと同じだった。それにこの剣で見えた光景は、攻撃だけじゃなかった。この剣は……
「ってボーっとしてる場合じゃないな。早く撤退しないと人が来ちゃう」
宝太郎はそう言い、急いでその場をあとにするのだった。