「いちち」
「これでよしと」
雫に消毒してもらい、手当てを受ける宝太郎。
「それにしても危なかったね。まさかクロトーとラケシスの二人と相手になっちゃうなんて」
「そうだな」
治療が終わり、上着を着直しながら言うと、
「あ、そうだ。何か剣が出てきたんだけど」
「全くそこだけだと意味がわからないんだけど」
宝太郎はエクスガッチャリバーを取り出し、雫に見せる。
「うぅん。見たことない。お父さんに聞いてみるね。もしかしたら昔の文献に残ってるかも」
「ありがとう」
そんなやり取りをしていると、雫が宝太郎の手を握って来た。
「ごめんね」
「何が?」
理由がわからず、宝太郎が困惑していると、
「宝太郎しか変身できなくて、ずっと危ないことを宝太郎に任せっきりでさ」
「別に気にすることじゃないって。俺がやりたくてやってるんだから」
宝太郎は気にしてない。寧ろ本当にやりたいことだと思ってるだろう。だがそれでも、
「私も変身できたらなぁ」
「いやいやいや」
そんなまさかと宝太郎が苦笑いを浮かべていると、
「たいへんたいへん!」
とほのかが部屋に飛び込んできて、
「あ……」
「ん?」
ほのかは見た。宝太郎と雫が手を握り合っている今の光景。
「ず……」
「ず?」
「ずるい!」
何の話!?と宝太郎が驚いていると、ほのかは正気に戻り、
「ってそうそう。犯人が捕まったの!?」
「え?」
ほのかが言うには、先日モノリスコードの新人戦を勝ち抜いた達也が、本来の仕事である技術スタッフとして、CADを預けに行った際、大会運営スタッフの一人をぶん投げたらしい。
「その後捕まって、バトルボードで七高の選手のCADに細工したり、モノリスコードでの細工も認めたんだって」
「なるほど。意図しない魔法の発動や、意図した魔法の不発なんかはそいつらのせいだったのか」
その他選手への直接の妨害工作はラケシスが補助していたという感じだろう。
「ただ運営側も相当慌ててるみたい」
「だろうね。今回の件は大きな騒ぎになると思う。スポンサー企業も多数いるし、まさか細工を許してたなんて」
「あとそれに」
宝太郎はその話で、ラケシスが話していた事を思い出して話す。
「え?各校の勝敗で賭けをしてる奴らがいる?」
「あぁ」
それを聞いた雫は考え込み、
「恐らく、賭けをしてるとしたら、相当大きな賭け事になってるはず。そうじゃなきゃ態々妨害なんてしない」
もう何もなければいいけど、とそれを聞いたほのかが言うが、それが叶うことはない。
「くそっ!忍び込ませたやつは捕まったのか!?」
「あぁ、そしてミラージバットは一高優勝。モノリスコードも十文字家の者が出るそうだし、おそらく優勝は確実だろう」
「おいどうするんだ!このままでは組織への上納金がなくなるぞ!」
仕方ない。と男は言い、
「もうすべてを壊してくれ」
「いいの?」
「あぁ、いっそ賭けも何もかも無くしてしまえばいい九校戦で大惨事が起きれば、賭けはうやむやにできるからな」
アトロポスはそれを聞くと頷き、
「わかった。全部めちゃくちゃにしてあげる」
「勝者・第一高校!」
モノリスコード本戦。克人率いる一高チームは圧倒的な強さで勝利を収めた。
「何も起きないな」
宝太郎達は少しホッとしていた。何事もなくこのまま終わってくれ。そう願っていたのだが、
「きゃあああああ!」
『っ!』
声に聞き覚えがあった宝太郎はその声の方を見ると、エイミィがスバルに抱きついていた。
だがその視線の先にいたのは、マルガムだ。
「こ、こっちに来るな!」
スバルがエイミィをかばうように手を振るが、気にせずマルガムは来る。
見てみれば、会場各地にマルガムが現れ、暴れていた。その数5体もいる。
一気にパニックなった会場。
「くっ!」
宝太郎は席を飛び出すと、人をかき分け、スバルたちのところにいたマルガムを蹴り飛ばす。
「なんだってんだ。ふざけんなよ」
こんなタイミングよく、マルガムが現れるわけがない。頭がよくない自負がある宝太郎でもわかる。これは意図的に、マルガムを暴れさせたのだと。九校戦をめちゃくちゃにするために。
「そんなことさせるか!」
「宝太郎!」
雫が叫ぶ。宝太郎だってわかっているのだ。こんな人の目があるところで変身すれば、確実に宝太郎がガッチャードであることがバレる。なにせマルガムを写そうと、様々なカメラが今動いている。その結果、今会場の大画面に宝太郎も映ってしまっていた。
だが今どこか人のいないところに行って変身して戻る時間にはない。
「ごめん雫」
と言うが、
「違う!」
「え?」
驚いて宝太郎は雫を見ると、雫はサムズアップして、
「面倒ごとは後で考えよう。だから全力で行ってきて」
「……あぁ!」
宝太郎はニッと笑って前を見る。
「良かったの?」
「ほのかだって知ってるでしょ?」
あの目をした宝太郎は止まらない。
「だから私達も覚悟決めるしかない」
「だよねぇ」
しょうがないが、そういうところが好きになったのだから仕方ない。と二人揃って笑う。
そして宝太郎はガッチャードライバーを腰に装着。
大画面に映ったそれに、会場が更にざわつく中、
「あらいいのかしら?こんな所で変身して」
と言って現れたのはラケシスだ。だが宝太郎は驚かず、
「あぁ。ここはな、大切な場所なんだ」
「はぁ?」
たかが九校戦に。とラケシスが笑うが、
「皆必死だった。勝ったり負けたりして、喜んだり泣いたり、皆全力出して走ってたんだ。それをどっかの誰かの金稼ぎのために利用されていいわけがない!だから俺が九校戦も、皆も守る!ホッパー1!スチームライナー!行くよ!」
「ホッパー!」
「スチーム!」
宝太郎はケミーカードを取り出し、ドライバーにセット。
《ホッパー1!スチームライナー!》
それから手で三角形を作り出し、正面で構えると、
「変身!」
《ガッチャーンコ!スチームホッパー!》
スチームホッパーに変身した宝太郎を見て、スバルとエイミィは、
『へ?』
と固まり、
『嘘ぉ!?』
エリカたちも目を見開き、
「あの時のガッチャードとか言う不審者は瀬乃だったのか」
「みたいね」
と話し合う摩利と真由美。
会場も困惑の空気が流れるが、
「はぁ!」
宝太郎は気にせず飛び出すと、マルガムを蹴り飛ばして試合会場に落とす。
「良し!」
スチームホッパーの跳躍で離れたところにいるマルガムを蹴り落としていくが、
「はぁ!」
「っ!」
ラケシスもマルガムに変化して宝太郎を爆撃しようと機雷を投げるが、
「え?」
「な!」
突然機雷が別の場所からの銃撃で爆発。
その方を見ると、達也がヴァルバラッシャーを構えていた。
「すまない深雪」
「いえ。お兄様が望むように。ご武運を」
あぁ、と達也は頷くとマッドウィールのカードを出す。
「本当ならこんな目立つ行為はしたくないんだが、この状況では深雪を連れて避難もできない。それにこの数のマルガムを宝太郎一人では荷が重すぎるし、恐らくドレッドも来ているんだろう?ならばここは共同戦線を張ったほうが安全だ」
《ガキン!マッドウィール!ゴキン!》
「鉄鋼!」
《ヴァルバラッシュ!チューンアップ!マッドウィール!》
ヴァルバラドになった達也はラケシスに掴みかかると、強引にぶん回してそのまま放り投げると、ヴァルバラッシャーを叩きつけて会場に向かって弾き飛ばした。
「お前が紫星人だったのか」
「まぁな。とはいえ説明はあとだ。あっちの2体はおれがやる」
「わかった!」
宝太郎は達也とは逆のマルガムを見るが、人混みをかき分け、あそこまで行くとなると、と思うと、
「宝太郎君!これ!」
「お?」
すると、ほのかがカードを投げてくるのでそれをキャッチすると、
「成程これか!」
「そういうことか。なら俺は」
達也もカードを取り出し、
《ホークスター!サボニードル!ガッチャーンコ!ニードルホーク!》
《ガキン!ゲキオコプター!ゴキン!ヴァルバラッシュ!チューンアップ!ゲキオコプター!》
二人で空に飛び上がると、宝太郎は棘を発射しながら、ガッチャートルネードを手にマルガムに飛びかかる。
素早い連続切りで怯ませ、ドロップキックで追撃すると、そのまま観客席から落ちていき、
「はぁ!」
飛び降りてマルガム達を追いかけ、一方達也は、
「ふっ!」
ゲキオコプターの力で空を飛び、ヴァルバラッシャーの銃撃。飛び降りてマルガムを掴むと床に叩きつける。
そこにもう一体のマルガムが襲いかかるが、それをヴァルバラッシャーで受け止め、ゲキオコプターの力でついた腕にある機銃で撃って攻撃し、動きが止まった所で床に叩きつけて転がっているマルガムの足を持って振り回して、もう一体のマルガムに叩きつけて会場に落とした。
「行くか」
そしてゲキオコプターを解除して、達也も飛び降りた。
「くっ!」
ラケシスは立ち上がると、
「いつまで寝てるの!いきなさい!」
マルガムたちも慌てて立ち上がり、ラケシスの指示で宝太郎と達也に襲いかかる。
《メカニッカニ!ゴルドダッシュ!ガッチャーンコ!ゴルドメカニッカー!》
マルガム達に、両腕の主砲を発射し、マルガムを吹き飛ばすと、
《ゴリラセンセー!バーニングネロ!ガッチャーンコ!バーニングゴリラ!》
真っ赤なガッチャードに姿を変えた宝太郎は、マルガムを炎を纏った拳で殴り飛ばす。
「十文字先輩!下がっててください!」
「……わかった」
十文字は一瞬考えたが、マルガム相手では力になれないと考え、チームの目配せして下がる。
その間に達也も駆け出し、ヴァルバラッシャーで切り飛ばし、後ろから来るマルガムに後ろ蹴り。
《スクラップ!ヴァルバラブレイク!》
《バーニングゴリラフィーバー!》
怯ませたマルガムに達也はヴァルバラシャーの一撃を叩き込み、宝太郎のバーニングゴリラフィーバーの発動とともに作り出した巨大な炎の拳でマルガムを殴り飛ばし撃破。
「この!」
そこにラケシスが機雷を投げ爆発。
《ガッチャーンコ!アッパレスケボー!》
しかし爆炎の中から飛び出した宝太郎は、
《ケミーセット!トルネードアローー!》
ガッチャートルネードにスチームライナーのカードをセットし、矢を発射。
「ガッチャ!」
爆発したマルガムからケミーをゲットし、
「お!もしかしてお前達ガッチャするんだな!?」
「ツッパリー!」
「ドクターコゾー!」
良し!と宝太郎はドライバーにカードをセット。
《ツッパリヘビー!ドクターコゾー!ガッチャーンコ!ドクターヘビー!》
宝太郎は薬品の入ったフラスコを空中に放り投げると、ガッチャージガンで撃ち抜き、薬液を降らせ、マルガム達を怯ませる。
「宝太郎!バーニングネロを貸してくれ!」
「わかった!」
《ガキン!プラント!ゴキン!プラントバースト!》
バーニングネロのカードを投げ、達也はそれをキャッチし、ヴァルバラッシャーに装填。
炎を纏った刃を振るうと、薬品に引火して爆発を起こした。
「良し!」
爆風に乗って飛んできたケミーカードをキャッチしたが、
「危ないですわね」
ラケシスは近くのマルガム2体を盾にしていたらしく、マルガムは倒れると、ケミーカードに戻るが、ラケシスが強引に掴む。
「はぁああああ!」
「っ!」
そこに空中から飛び降りながら、
《スチームライナー》
「変身!」
《ドレッド・零式》
飛び降りてきたクロトーはドレッドに変身し、襲い掛かる。
「遅いですわよ!」
「突入合図前にお前が行くからだ」
とクロトーは宝太郎を殴り飛ばし、達也を蹴る。
『くっ!』
地面を転がり、宝太郎は構えるが、既に間合いに入ってきていたドレッドの連続パンチ。
「宝太郎!」
達也が援護しようとするが、機雷が飛んできて足止めを食らう。
「邪魔はさせませんわよ!」
するとラケシスは持ったケミーカード2枚を体内に取り込み、更に禍々しい体になっていく。
「ケミーの多重錬成か」
「ゴォオオオオオ!」
突っ込んでくるマルガムを、達也は避けながら距離を取ると、
「それをできるのはお前だけだと思うな」
《ガキン!ガッツショベル!ゴキン!ヴァルバラッシュ!チューンアップ!ガッツショベル!ガキン!ゲキオコプター!ゴキン!ヴァルバラッシュ!チューンアップ!ゲキオコプター!》
両腕にそれぞれガッツショベルゲキオコプターの武装を装着したヴァルバラドになり、ラケシスに殴りかかる。
「この!」
飛ばしてくる機雷を、達也はガッツショベルで掘り起こした地面で防ぎ、ゲキオコプターで飛び上がると、上空から追撃。
(済まない宝太郎。援護にいけなさそうだ)
「がはっ!」
《ガッチャーンコ!スチームホッパー!》
殴り飛ばされ、吹き飛びながら、宝太郎は壁に足をつけ、ジャンプの勢いで飛び出すと、クロトーにキックの体勢に入りながら、
《スチームホッパー!フィーバー!》
渾身のキックを決めるが、クロトーはびくともせず、弾かれてしまう。
「弱い弱い弱い!」
「ぐっ!」
転がった体を踏みつけられ、何度も殴られ、宝太郎は苦しみの声を漏らす。
「はぁっ!」
しかし宝太郎も負けじとエクスガッチャリバーを取り出し、斬りつけて怯ませる。
そこからさらに追撃し連続斬り。
《ドレイン!》
クロトーはバレッドバーンのカードをドライバーに装填し、二丁拳銃を作り出すと発砲。
「あぶなっ!」
エクスガッチャリバーで弾くが、足を止めたところに、
《ドレッドブレイキング!》
「はぁ!」
その隙を突いたキックに、宝太郎は吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。
「がはっ!げほっ!」
咳き込みながらも立ち上がろうとするが、ダメージが大きく動けない。その中、ゆっくりクロトーは歩みを進める。
「さぁお前を殺し、ドライバーは頂こうか」
宝太郎はクロトーを睨むが、足が動かない。
その間に目の前に来るクロトー。もうだめだ。そう思った時、
『頑張れ!』
「っ!」
ざわつく会場の中でも、はっきり聞こえる声。その声の方を見ると、雫とほのかの叫び。
「頑張れ!宝太郎!」
「宝太郎君!立って!」
最初はたった二人の声援。
だがそれを聞いたスバルとエイミィも、
「頑張れー!」
「ファイトー!」
エリカやレオ、幹比古に美月も同じく声を上げる。
「宝太郎君ファイトー!」
「立てー!宝太郎ー!」
「宝太郎!頑張れ!」
「宝太郎君!頑張ってー!」
その声は伝播し、一人また一人と声を上げていく人が増えていき、あっという間に会場中が宝太郎に声援を送る。
「うるさい!黙れ黙れ黙れぇ!」
クロトーが叫ぶが、止まる気配はない。なのでクロトーは宝太郎を見て、
「さっさと黙らせてやる!」
と言い、宝太郎の拳を振り下ろすが、それを宝太郎は掴んで止め、
「力が漲る」
「何っ!?」
片手で押し戻しながら、宝太郎は立ち上がる。
「な、なんだこのパワーは!?」
「皆の声が、ドライバーを通して熱となって俺に力をくれる!」
宝太郎の胸の炉が輝き、エネルギーを生み出すと宝太郎の拳がクロトーの顔面を捉え、逆に吹き飛ばした。
そして宝太郎は息をたっぷりと吸い、空を見る。確証はないが、きっといる。そう信じ、
「ユーフォーエックス!」
宝太郎の声が響く。だが姿は見せない。それでも宝太郎は叫ぶ。
「俺は、人間もケミーも守りたい。皆の夢を守りたい!人間とケミーが共に生きる未来を創りたい!でも俺だけじゃダメなんだ。みんなの力が必要なんだ!だから俺に力を貸してくれ!ユーフォーエックス!もう一度俺を、人間を信じてくれ!」
その時だ。空から飛来した閃光は、宝太郎の眼の前に降り立つ。
「ユーフォー」
「ユーフォーエックス」
宝太郎は触れようとするが、電撃で拒絶される。だがそれでも強引に触れに行く。
「お前だって、本気で人間を見限ってなんかないくせに!」
「ユーフォー?」
「だってそうだろ?九校戦に向かう時に襲われた時、俺だけじゃなくて、他の皆も助けてた。本当に人間が憎いなら、俺だけを助ければよかったはずだ!」
「っ!?」
ユーフォーエックスは驚き動揺する。
「それでもお前が他の皆も助けたのは、まだ人間を憎みきれてないからだ。だから!」
放電を喰らいながら、宝太郎はユーフォーエックスの手を握る。
「俺と一緒に、戦ってくれ!」
「……」
ユーフォーエックスの放電が止み、
「ユーフォー!」
全身が発光。それが晴れると、一枚のカードになる。
「ば、馬鹿な。レベルナンバー10のケミーが、人間に従うはずが」
「従ったんじゃない。信じてくれたんだ。もう一度人間を、人とケミーの可能性を!」
宝太郎はユーフォーエックスのカードを手に、エクスガッチャリバーを折りたたんだ。
これはエクスガッチャリバーを手にした時に見た景色で見たもの。
そして宝太郎は、折りたたんだエクスガッチャリバーを、ドライバーに着けた。
《クロスオン!》
宝太郎は更に、ドライバーに着けたエクスガッチャリバーの部分に、ユーフォーエックスのカードを装填。
《マーベラスオカルト!》
「変身!」
《ガッチャーンコ!X!》
スチームホッパーの姿に、UFOの装飾がつく。そして、
《ユーフォーエックス!スーパー!》
「バカな。なんだその姿は」
「レベルナンバー10の力を借りた新しいガッチャード。名付けて、スーパーガッチャードだ!」