「ふわぁ」
深夜。エイミィは起きるとトイレに向かう。
結局あの後、旭のジムに泊まり込む事になった。マルガムが来たら現状宝太郎たちが出るしかない。
そして十三束はというと、
「あまい!」
旭にぶん投げられ、リングの床に叩きつけられる。
「ハァ、ハァ。もう一本!」
十三束は立ち上がり、旭に飛び掛かるが、簡単に受け止められぶん投げられた。
「よし。三十分休憩だ。冷やしておけよ」
「はい!」
旭は息を切らしながら言うと、近くのパイプ椅子に座る。流石に現役時代とまではいかないらしい。
「あれ?明智さん」
ジムの外にある水道で打った体を冷やそうと出てきた十三束は、エイミィの存在に気づき声を掛ける。
「お疲れ様」
「うん。ありがとう」
照れくさそうに笑う十三束は、水道から水を出すと頭から被る。
「凄いね。あんなに体酷使してるのに」
「そんなことないよ。寧ろ僕としてはずっとファンだった人とプロができるなんて光栄以外の何物でもないからね」
そう言って笑う十三束は、本当に楽しそうだ。学校で少し話したことはあるが、こんなふうに笑うところは見たことがない。
「そんなにファンだったんだね」
「うん。僕は魔法が使えないしね」
十三束の使えない。と言うのは語弊がある。
十三束鋼は、十三束家と言う百家の直系で、知識もあることながら魔法力も群を抜いている。
だが体質として、遠距離魔法が使えない(厳密に言えば、魔法を使う際のサイオンが自分の体から切り離せない)ため、十三束家独自の魔法を使えず、近接しか使えない。
そしてついた二つ名がゼロレンジ。ゼロ距離なら誰にも負けない。という意味であり、同時に遠距離では戦えないという嘲笑でもあった。
「だからかな。自分の体を限界まで追い込んで戦う。そんなプロレスっていう競技に憧れたのは」
自分の体をぶつけあう戦い。血と汗が沸き踊る。そんなプロレスと言う文化にのめり込んだ。
「だからこそ、許せないんだ。プロレスはただの暴力じゃない。観客を楽しませるエンターテインメント。それをただ暴れるために使うなんて」
そう言って拳を握る十三束にエイミィは笑う。何かおかしかったのかと十三束が見ると、
「ごめんごめん。おかしくなんkてない。ただ学校で見る十三束君っていつも難しそうな顔してるから、珍しいなって」
そう言われ、十三束は頬を掻く。確かにそうかも知れない。だがそんなに愛想が無いようなことはしてないはずだが。
なんて思っていると、思わずお互い笑う。するとエイミィは、
「ねぇねぇ、プロレスについてもっと教えてよ」
「そうだなぁ。旭さん以外にもオススメの選手はいてね」
エイミィからの質問に、十三束は答える。その話は休憩終わりまで続き、そして次の日の朝。
「やはりお前だったかゴーレム剛力」
「その名は捨てたよ」
明け方、リングで待っていた旭たちの前に、人間の姿のまま現れたゴーレム剛力。
「何故こんな事をする」
「決まってんだろ。お前をぶっ潰すためだ」
剛力は、そう言ってリングに上がる。
「俺は才能があった。誰も俺には勝てなかった。高々相手を怪我させただけで好き勝手言いやがって。そのくせ才能もねぇお前が新たなジムを作ったって聞いてな。だからぶっ潰してやることにしたのさ!」
剛力はそう言ってケミーカードを取り出す。
「やっぱりレスラーGのカード!」
「うぉおおお!」
剛力はレスラーGを取り込み、マルガムへと変貌。そしてその前に立ったのは、
「あ?」
十三束がリング上がり、マルガムと対峙する。
「おいおい、ガッチャードとかいうやつじゃないのかよ」
「アンタは、プロレスで倒す!」
そう言って十三束がマルガムとなった剛力に飛び掛かるが、生身の十三束ではパワー負けし、簡単に投げ飛ばされた。
「はん!こんなガキじゃ楽しめねぇなぁ!」
「まだまだぁ!」
しかし十三束は素早く立ち上がると、チョップを叩き込む。しかし、剛力には効かず吹き飛ばされる。
「人間のお前じゃ俺には勝てねぇ。諦めてリングを降りな!」
そう言って、剛力は十三束を掴むと、風車式バックブリーカーの姿勢に入る。
「僕は諦めない。どんなに苦しくても辛くても!リングに立ち続ける。それがプロレスだ!」
「なに!」
すると十三束は自ら飛び、バックブリーカーのタイミングをズラすとそのまま回避。
「バカな!俺の技をお前みたいなガキが避けるなんて!」
「旭さんはずっとお前を超える為、鍛錬を続けてきたんだ。もうお前の風車式バックブリーカーは通用しない!」
十三束はそう言って、後ろに飛ぶと、ロープを使った反動で飛び、ドロップキックを決める。
「バカが!マルガムの俺に人間の攻撃が効くか!」
と言った時、
「レスラーG!お前のレスラーなら、好き勝手されるな!レスラー魂を見せてみろ!」
十三束の言葉に共鳴するように、突然剛力の体に電流が走り、十三束のドロップキックでレスラーGと剛力の体が引き剥がした。
「うっそぉ!ガッチャードじゃないのに引き剥がしちゃった」
「多分十三束君とレスラーGの相性が信じられないくらい良いんだよ」
ほのかと雫が驚く中、突然マルガムから人間に戻った剛力は、十三束のドロップキックをまともに喰らって後ろに転がる。
「クソッ!こんなガキに」
「そうだ。お前はこんなガキのキックですら受け止められないほど弱くなったんだ!」
才能に溺れ、道を踏み外し堕落して生きてきた。そんな今のゴーレム剛力は、マルガムにならなければ殆ど実力を発揮できない程に弱くなっていた。
「黙れ!」
剛力は立ち上がったその時、
「全く。情けないな」
「お前は!」
宝太郎が驚く中、剛力の背後に現れたのはアトロポスだ。
「やっぱりケミーを渡したのはお前達か!」
「そうだよ。そしてオマケの実験をしようかと思ってね」
実験?と剛力がアトロポスを見ると、彼女は何とドレッドライバーを剛力の腰に装着。
「な、何だコレ!」
「煩いな。実験だって言ってるでしょ」
《スチームライナー》
アトロポスはそう言って剛力を強引にドレッドに変身させた。
「うそ!?」
「ドレッドライバーは誰でも変身が可能。ただ普通の人間だとどうなるのか分からなかったからね。折角だから使ってみようと思ってさ」
アトロポスがそういう中、ドレッドが歩みを進める。
「十三束!」
「え?」
宝太郎はまだ痛む腰をさすりながら、十三束に手を伸ばす。
「プロレスではタッチで交代。なんだろ?」
「……うん!」
十三束とタッチしてから宝太郎はリングに上がり、ガッチャードライバーを装着。
《ホッパー1!スチームライナー!クロスオン!マーベラスオカルト!》
「変身!」
《ガッチャーンコ!X!ユーフォーエックス!スーパー!》
宝太郎は一気にスーパーガッチャードになると、エクスガッチャリバーを手に走り出す。
「序でにこんな実験もしようか」
アトロポスがドレッドに指を振ると、操り人形の如く動いた剛力は、2枚のカードを出す。
《ゴリラセンセー!ドレイン!レスラーG!ドレイン!》
「複数のカードを!?」
同時に2つのケミーの力を同時に発動させたドレッドは、宝太郎に掴みかかる。
「くっ!」
宝太郎は掴まれつつもワープで逃げるが、
「いでで!」
まだ腰が痛むらしく、腰を擦りながら剣を振る。
しかし痛みを庇ったへっぴり腰の為か、ドレッドには簡単に弾かれ、殴り返された。
「まずい。このままじゃ」
雫がそういう中、
「レスラー!G!」
『え?』
レスラーGが浮かび上がり、十三束に話し掛ける。
「力を貸してくれるのかい?」
「G!」
頷くレスラーGに十三束は頷くと、レスラーGが輝きその光は十三束を包mんだ。
そしてそれが晴れると、
『えぇえええええ!?』
十三束サイズになったレスラーGが立っており、リングに飛び乗る。
「あ、あれ何雫」
「た、多分一種のマルガム化なんだと思うけど、ドライバーも使わずにケミーと融合するなんて」
そんな2人の驚きを他所に、十三束はドロップキックを叩き込み、ドレッドを吹き飛ばす。
「十三束?」
「鋼で良いよ。宝太郎」
「あぁ!」
鋼の手を借り、宝太郎は立ち上がると、吹き飛んだがロープの反動で戻るドレッドに、2人でラリアットを叩き込む。
『はぁ!』
更にダブルチョップを叩き込み、ドレッドを引かせると、
「フィニッシュだ!」
「よっしゃ!」
宝太郎は飛び上がると、鋼が両足を掴んで高速回転。
「うぉおおおおお!」
竜巻でも起こるのではと錯覚するほどの勢いで回転投げをし、宝太郎をドレッドに投げる。
「これで決める!」
宝太郎はエクスガッチャリバーを抜き、スイッチを押す。
《ユーフォーエックス!エクストラッシュ!》
エネルギーを込めた刀身で、ドレッドを切り裂くと同時に、ドレッドは爆発。すると煙が上がる中、
「残念。まぁいいデータは取れたかな」
落ちたドレッドライバーをアトロポスは拾い、そのまま姿を消す。
そして煙が晴れると、その中心にはゴーレム剛力が倒れており、
「勝ったね」
「あぁ!」
鋼と宝太郎はハイタッチをするのだった。
「これでよしと」
その日の夜。家にたどり着いた宝太郎の腰に湿布を貼る雫。
「はいあーん」
そしてうつ伏せから動けないので口にご飯を運ぶほのかがいた。
「結局剛力さんは逮捕か」
「まぁ当然だよね。今までの暴走したマルガムとは違い、意識的に襲ってたわけだし」
「うんうん」
そんなやりとりをしていると、
「そう言えば結局レスラーGは十三束くんについていっちゃったね」
「ほんと相性が良いんだろうねぇ」
あの戦いのあと、警察病院に運ばれる事になった剛力を見送り、解散する流れになったのだが、レスラーG十三束と一緒にいってしまった。まぁいざという時は貸してもらえばいいだろう。と宝太郎は思っているので、別にいいのだが。
「でも順当にケミーも集まってきたね」
「なんだかんだでもう半分以上は集まってるんだもんね。今年中には集まるかなぁ」
「そうだね」
一先ずさっさと腰を治さねば。と雫とほのかの会話を聞く宝太郎。
そんな宝太郎を見る影がある。
「ふむ」
その男は、背を向け歩き出すと、何もない空間からケミーが現れた。
「行かないの?」
「まだだ、クロスウィザード。準備はあと少しで終わる」
「ウィーヒッヒッヒ」
クロスウィザードと呼ばれたケミーはは笑う中、
「やっと見つけたぞ」
「ん?」
男の目の前に現れたのは、左右が赤と青の姿をした仮面ライダー。
「ここまで追ってきたのか。仮面ライダービルド」
「悪いが兵藤 一誠の遺産を回収させてもらう」
そう言って男に飛び掛かるが、クロスウィザードが展開した魔法陣に阻まれ、
「残念だが私は忙しくてね。ここでサヨナラだ」
それだけ言い残し、クロスウィザードと共に姿を消す。
「ちっ!」
「大丈夫か戦兎」
変身を解除すると、戦兎と呼びながら来る男が一人。
「あぁ、だが逃げ足が速いな」
戦兎は苦々しい顔をしながら空を見る。
「何としても、止めないとな」
「だな」
2人はそんなやりとりを交わし、その場をあとにした。
異なる世界の仮面ライダーと、そして強大な敵が待ち受けていることを、宝太郎達はまだ知らない。
次回!劇場版魔法科高校の劣等生劣等生 ガッチャードクロスVSハイスクールD×D Be The One!開幕!
夏休みが明け、夏も過ぎて世間ではハロウィンが近づく中、達也が全国高校生魔法学論文コンペティションのメンバーに選ばれる。
友人が選ばれ、応援する宝太郎達だったが、そこには悪意の手が伸びてきていた。
「この世界は間違っている。だがその間違いを正せる存在だった兵藤 一誠様は死んだ。だから私が正すのだ!」
「ウィーヒッヒッヒ」
謎のケミー、クロスウィザード。そして世界の崩壊を狙う最強の敵に、宝太郎達は立ち向かう。
そして、
「あなたは……一体?」
「俺はビルド。作る、形成するって意味でビルドだ。以後お見知り置きを」
仮面ライダービルドも参戦し、戦いはさらなる境地へ!
「何で、何で戦えるんだ!何の為に!」
「何かの見返りを求めて戦うのは、正義とは言わねぇぞ」
その男の背に見るものは、
「愛する人のために!」
「誓いのために!」
「大義のために!」
「愛と平和のために!」
「気合いと魂と!」
「心火を燃やして戦う!」
『それが俺たち、仮面ライダーだ!』
少年は今、仮面ライダーを知る。