魔法科高校の劣等生 ガッチャードクロス   作:ユウジン

39 / 41
奪われたケミー

「それでは話を聞かせていただきたい」

 

そう口を開いたのは、合流してきた十文字だ。

 

十師族がよく使うらしいホテルの大きな一室に集められた宝太郎達と、戦兎達が席を挟んで座っている。

 

「改めてアレはスマッシュ。兵藤一誠の遺産から作られた怪人だ」

「そもそもまずその兵藤一誠の遺産ってなんですか?」

 

真由美の問いかけに戦兎は頷くと、

 

「今から三年前、俺達は兵藤一誠と言う男と戦った。そして戦いの末に多くの犠牲を払って勝った」

「三年前?俺がそいつに襲われたのは一年前ですが」

「世界が違うと時間の流れも変わるんだ」

 

達也の疑問に戦兎は答えつつ、

 

「兵藤一誠は強大な力を持っていた。今でも勝てたのは奇跡だったと思う。だが撃破したのは良いものの、アイツの力はそれでは終わらなかった」

 

兵藤一誠を倒した後、その膨大な力は大小様々な形で結晶となり散らばった事に気づいた。

 

現在戦兎たちはその散らばった結晶を回収するため、様々な世界を回っている。

 

「結晶はそれ自体が膨大なエネルギーを持っていてな。そのお陰で飛んでった世界を追いかけるのは楽なんだが、この世界の結晶はかなり大きい。巨大な結晶は兵藤一誠の力を強く受け継いでいるんだ。あのスマッシュと言う怪物も、アイツが使っていた力が反映されているものだ。だがそれより厄介なのは、それ意図して使っているやつが居る」

「それが今回の黒幕だと?」

 

恐らくな、と十文字の質問に戦兎が答えると、

 

「その兵藤一誠は何者だったんですか?」

 

そう口を開いたのは深雪だ。まぁ気になるよな、と戦兎は続け、

 

「アイツは転生者と言うやつだった。元の世界で命を落とし、俺達の世界に転生してきた。物語の世界のキャラクター。いや主人公としてな」

「主人公ですか?」

「あぁ、俺達の世界が本来なら物語である以上、主人公になる存在がある。兵藤一誠はそういう立ち位置の人間だった。まぁ俺達が倒しちまったんだけどな」

 

そんな戦兎に摩利は顎に手をやりながら、

 

「そもそもなんだが、何故兵藤一誠は達也君を襲ったんだ?」

「兵藤一誠は様々な世界を周り、その相手がもつ力を奪い自身のエネルギーに変換していたんだ。それにより強大な力を得たんだ」

 

その事を聞いた深雪は息を呑み、

 

「つまり、もうお兄様の力は」

「すまないがもう返してやることはできないんだ」

 

そんな、と席に座る深雪の肩を優しく達也は触れ、

 

「良いんだ。元より奪われた時点で返ってくると思ってない」

 

そんな達也を見ながら戦兎は、

 

「おそらく今回の襲撃。それに黒幕の狙いが関わっていると思う」

「となるとコンペに参加させないことが目的……?」

 

真由美がそう結論を出すと、

 

「もしくはそのコンペ自体を無茶苦茶にしたいのか。だな」

 

ヴァーリがそう口を開き、

 

「そのコンペ、今からでも中止にできないのか?」

 

と匙が言うが十文字は首を横に振り、

 

「学生以外にも多くの企業が参加し、海外からも注目されております。中止は難しいかと」

 

だよなぁ、と匙は溜め息を吐く。

 

「だがコンペを中止させたいなら他の学校も襲撃に合ってるはずだ。何故ここだけ襲撃を受けた?」

 

サイラオーグの問いかけ。それに真由美達は宝太郎を見た。他の学校になくてこの学校だけあるもの。それは宝太郎、いや仮面ライダーの存在だ。

 

「狙いは俺だった?」

「さぁな。それはわからない。だが仮面ライダーの何かを狙って、と言う可能性もないわけじゃないからな」

 

戦兎の答えに宝太郎はハッとすると、

 

「そうだ。仮面ライダーだ!」

「ん?」

「いや桐生さん。仮面ライダー!仮面ライダーってなんなんですか?」

「何って、お前知らないで使ってたのかよ」

 

何か勝手につけられたっていうか……という宝太郎に戦兎は、

 

「仮面ライダーってのはな。ここだけじゃない。他にもたくさんの世界があって、その世界で戦う戦士の名前。それぞれが己の正義を胸に戦うヒーローだよ」

「ヒーロー?」

「そ、因みに俺はラブ&ピース。愛と平和の為に戦ってる正義のヒーローさ」

 

ニッと笑う戦兎。そんな顔に宝太郎は眉を寄せる。そんな漫画やアニメじゃあるまいしと。だが戦兎はそんな宝太郎に、

 

「いつかお前にも分かる時が来るよ」

「え?」

 

ドキッとした。まるで心を読まれたような、そんな感覚。だが勿論読んだわけではない。なにか感じるものがあった。それだけだ。

 

「とはいえまだ黒幕について分かってないことも多い。こっちでも他の仲間達が色々探ってはいるが中々違う世界だと勝手が悪くてな」

「それならばこちらとしてもお力を貸しましょう」

 

それは助かる。と言って十文字と戦兎が連絡先を教え合う。

 

「それは……」

「ビルドフォンって言ってな。世界が違っても使えるようにした俺のお手製さ」

「これ桐生さんが作ったんですか?」

「あぁ、俺は仮面ライダーであり、てぇんさい物理学者何でね」

 

意外とナルシストだな。何て宝太郎たちが思っていると、

 

「失礼します」

 

そこに人が来て、

 

「病院に運ばれた平河 千秋が目を覚ましたそうです」

「そうか、ならばすぐに話しを聞きに行ったほうが良さそうだな」

 

と言ってもこの大所帯で行くわけにもいかないか。となっていると真由美が、

 

「それなら私が行くわ。それと摩利と達也君と宝太郎君に、桐生さん。一旦コレで良いんじゃない?」

 

と提案してくれる。十文字はそれに反対はせず、

 

「お手数ですが桐生さん。宜しいでしょうか」

「構わない。じゃあ皆は引き続き調査を頼む。あ、龍誠は俺達と来いよ」

「お!やっぱり俺の力は必要だもんな!」

「いやお前みたいなバカ放置したら二度と合流出来なくなるでしょうが」

「あ?誰が馬鹿だ筋肉つけろ筋肉を!」

 

そこかよ!と再び内心宝太郎達がツッコミを入れた。

 

こうして、即席チームが発足し、真由美を先頭に病院へ行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかしこうしてみると俺等の世界より科学が発展してるよな」

「確かにな」

 

車の中で龍誠が口を開き、戦兎が同意する。それを聞いた宝太郎が、

 

「そちらの世界とは違うんですか?」

「そっちが確か2095年だろ?そもそもこっちは2025年だからな」

 

時間の流れが違っても年代はこっちが未来なのかと、益々困惑してしまう。そんな中病院に着くと、皆で院内を進んでいく。病院内は静かで、件の平河にはすぐに会えた。

 

「まだ目が覚めたばかりなので手短に」

「分かりました」

 

医者からの言葉に真由美が頷き入ると、平河は明らかな敵意を向けてきた。

 

「何のようですか?」

「平河さん。何で今回みたいな事件を起こしたの?」

 

その問いかけに平河は、

 

「別に、なんかムシャクシャしただけです」

「なっ」

 

真由美が思わず絶句する中、摩利が眉を寄せ、

 

「冗談は寄せ、アンチブロッカーに加えてあの怪物たち。ムシャクシャしたっていうのじゃ済まされないぞ」

 

すると平河は達也を睨みつけ、

 

「司波達也が悪いのよ!」

 

何を言っているのか分からず、皆で顔を見合わせると、

 

「九校戦のとき、ソイツはお姉ちゃんの異常に気づいていながら無視したのよ!そのせいでお姉ちゃんはっ!」

 

と叫ぶ。深雪が本戦に急遽参加することになったミラージバット。それに参加していた選手が確か平河だったはずだ。

 

しかし達也のせいと言うのは意味がわからない。

 

「恐らく何かしらのマインドコントロールを受けているな」

「ですね」

 

摩利と達也はそんな平河の様子を分析していると、

 

『っ!』

 

ドンっと病院が揺れた。

 

「何だ?」

 

戦兎が驚いていると、

 

「スマッシュだわ!」

 

マルチスコープで病院内を見た真由美が、席を立つと平河を置いて全員で部屋を飛び出す。

 

そのまま走って入口まで来ると、警備員を蹴散らすスマッシュと、その中心に大男がいた。

 

「呂剛虎か」

 

達也の呟きに摩利も反応し、

 

「対人戦では世界でも十指に入るとされる魔法師だな」

「どちらにせよ被害が出る前に倒すぞ!」

 

と戦兎と龍誠はビルドドライバーを装着し、

 

《マックスハザードオン!ラビット&ラビット!》

《ボトルバーン!クローズマグマ!》

 

「達也!俺達も!」

「あぁ!」

 

《ホッパー1!スチームライナー!》

《マッドウィール!》

 

戦兎達はレバーを回し宝太郎も構える。そして、

 

『変身!』

「鉄鋼!」

《紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!ヤベーイ!ハエーイ!》

《極熱筋肉!クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!》

《ガッチャーンコ!スチームホッパー!》

《ヴァルバラッシュ!チューンアップ!マッドウィール!》

 

変身を完了し、

 

「先輩達は避難の誘導をお願いします」

「分かった!」

 

上階から飛び降りながら達也が言うと、真由美達も頷く。

 

「やはり来たか」

 

呂剛虎は慌てる様子はなく、スマッシュ達に指示すると襲いかかってくる。

 

「フルボトルバスター!」

 

先輩は展開したフルボトルバスターでスマッシュを切り裂き、

 

「おらぁ!」

 

クローズマグマナックルを装着した拳でスマッシュを殴り飛ばし、

 

「万丈さん伏せて!」

「うぉ!」

 

咄嗟に伏せた龍誠の背後に向かって宝太郎のガッチャージガンによる銃撃で背後のスマッシュに攻撃。

 

「サンキュー!」

「いえいえ」

 

宝太郎はそう言って周りを見た時、

 

「ん?」

 

この戦いの中を優雅に歩いていく長髪の男性。

 

誰もその姿に違和感を持つことはなく、そのまま歩いていった。

 

「ま、待て!」

 

何か嫌な予感を感じ、宝太郎はそいつを追う。

 

「宝太郎!?」

 

達也が驚く中戦兎が、

 

「後は龍誠と頼む」

 

と宝太郎についていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいどうしたんだ!」

「今戦いの中を歩いて抜けていくやつがいたんです」

 

んなバカな、と戦兎も気づいていないようだ。だが確かに宝太郎は見た。見間違いなんかじゃない。

 

そんな宝太郎の様子に只事じゃない物を感じた戦兎も走ると、

 

「アレは!」

 

その男は平河の入院している部屋に入っていく。

 

「クソ!」

 

宝太郎はそのまま部屋に突撃し、ドアを蹴破ると中にいた男と平河がこちらを見た。

 

「ほぅ?何やら目敏い者も居たようですね」

 

そう言う男の前に立ち宝太郎を睨む平河。だがその瞳は黒く濁っている。

 

「成程。認識を阻害するタイプか。危うく騙されるところだったぜ」

 

戦兎がそう言いながらフルボトルバスターを構えると、平河が再びフルボトルを手にした。だがその数は2本。

 

「彼女は特にスマッシュとの相性が良くてですね。ぜひとも引き続き実験に付き合ってもらおうかと」

「やめろ!」

 

戦兎が止めるよりも早く、平河はフルボトルを2本刺し、再びスマッシュになってしまう。しかも最初よりも禍々しく鋭角なフォルムだ。

 

「来るぞ!」

 

戦兎と宝太郎の2人に飛びかかった平河は、部屋から吹き飛ばす。

 

「ちっ!」

 

戦兎は高速移動で壁を突き破りながら翻弄。そして背後に回って切り、再度高速移動で翻弄。

 

「なら俺も!」

 

宝太郎もエクスガッチャリバーをドライバーに装着し、ユーフォーエックスを装填した時、

 

「ウィーヒッヒッヒ」

「え?」

 

突如響いた笑い声に、宝太郎は驚きながらその方を見ると、

 

「ケミーの皆を返してもらうよ」

「なっ!」

 

突然衝撃波が宝太郎を襲い、壁に叩きつけられる。

 

「ガハッ!お、お前はっ!」

「良かった。皆を助けられた」

 

目の前のケミーの手には、宝太郎を吹き飛ばした時に奪い取ったらしきケミーカードがある。

 

「確かレベルナンバー10。クロスウィザード!」

「そうだよ。さぁ、残りのケミーも解放してもらおうか」

「っ!」

 

そういって襲い掛かるクロスウィザードの攻撃。だがそれをドライバーから飛びだしたユーフォーエックスは、クロスウィザードを止める。

 

「ユーフォー!」

「そうか。人間に洗脳されたんだね!」

 

と言ってユーフォーエックスを押し退けて衝撃波を放つ。

 

「ユーフォー!」

 

だがユーフォーエックスは全身を発光させ、その光は宝太郎と戦兎を包み込み転移させた。

 

「あ!クソ!逃げられた!」

 

悪態を吐くクロスウィザードに男は話し掛ける。

 

「残念でしたね。ですが今は一部でも助け出せたことを喜んでは?」

「言われなくても」

 

クロスウィザードは手元のケミーカードを見る。ケミー達は口々に宝太郎は悪い人間じゃないと伝えるが、

 

「そうか、皆も洗脳されちゃったんだね。待ってて、残りのケミー達も助けて、君達を正気に戻してあげるから」

 

そんなクロスウィザードを横目に男は平河を見ると、スマッシュの姿から人間の姿に戻る。

 

「無事に力を使いこなせているようですね」

「はい!公瑾様!」

 

平河はパァッと明るい笑顔を笑顔を浮かべた。その顔には一点の曇りもなく、心の底から心酔している。恋する乙女のようだった。

 

一方その頃病院から離れた場所に落とされた宝太郎達は、

 

「ここは?」

 

戦兎が驚きながら立ち上がると、

 

「あ、おーい戦兎!」

 

龍誠と達也も近くに落とされたらしく、ほぼ同時に真由美と摩利も来た。

 

「急に光ったと思ったら外にいたのよ」

「逃げ遅れてた人達も含めてな」

 

と言う2人に、宝太郎はユーフォーエックスを見ると、

 

「ユーフォー……」

 

エネルギーを使い切ったのかグッタリしていた。

 

「だ、大丈夫?」

「ユ〜フォ〜」

 

心配そうに見る宝太郎に、大丈夫だと言うユーフォーエックス。だが暫くは戦いは出来ないだろう。

 

「他のケミーの皆も捕まっちゃったし、どうしよう」

「一旦撤退しよう。ケミー達を奪い返すにせよどうするにせよ、今から戻るのは危険すぎる」

 

そう戦兎が言うと宝太郎達は頷く。

 

それからその場を離れつつ宝太郎は病院側を見ると、

 

(かならず助けるからね。皆)

 

と内心で言ってから、宝太郎も走り出すのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。