「うぉむ」
さて、入学式は講堂にて行われるのだが、宝太郎は座る場所を探していた。
前の方はまだ空いているし、雫やほのかも前の方にいるのだが、特に明言されているわけじゃないが、前のほうが一科生。後ろのほうが二科生で固まっている。
何となく、そういったところでも差別意識はあるのだろう。
なので二人と別れて後ろの方で探しているのだが、これが中々見つからないと思っていたら、
「こっち空いてるぞ」
「ん?あ!」
声を掛けられ、その方を見ると、何と校門前で妹に言われていたやつがいた。そしてショッピングモールの件でも出会い、ここでも出会うとは中々の遭遇率だ。運命すら感じる。とはいえ驚いて声を上げてしまい、相手は少し怪訝な顔をしたが、
「ごめんごめん。ありがとう。俺は瀬乃 宝太郎。宝太郎で良いよ。そっちは?」
座りながらそう問うと、
「司波 達也だ。達也でいい。宜しく」
互いに自己紹介を済ませていると、
「あの」
『ん?』
別の方向から声を掛けられ、二人は振り返ると、そこには二人の少女がいた。
メガネを掛けた大人しそうな少女と、赤毛の活発そうな少女の二人で、
「席を探してたんですけどお隣良いですか?」
「あぁ。構わない」
達也に許しを貰い、隣に座る二人。
「あ、アタシは千葉エリカ。エリカでいいわ」
「柴田美月です。美月でいいですよ」
「司波達也だ。達也で構わない」
「瀬乃宝太郎。宝太郎でいいよ」
続いて新たな女子二人とも自己紹介を済ませていると、入学式が始まった。
粛々と話が進み、
「アレが生徒会長か」
宝太郎がボソッと呟く。
七草真由美。現生徒会長にして、十師族七草家の長女。
十師族とは、
ナンバーズは強力だったり独自の魔法体系を持っているものが多く、その中でも選りすぐりの十の家。それが十師族だ。その中の一つの家。それが七草家だ。
そして十年前の事故までは、ケミーの研究は十師族が合同で行っていた研究だったらしい。ただ、十年前の事故でそれは凍結され、研究は闇に葬られた。事故の責任者、瀬乃 風雅の名を残し。
十年前。なにがあったのか。よくわからないまま潮に保護され、今まで生きてきた。
なにがあったのか。何故父は死んだのか。あの事故は本当に父が起こしたものなのか。何もかもが謎に包まれている。
「宝太郎さん?」
「ん?」
すると美月が恐る恐る訪ねてきて、
「どうかしましたか?凄い怖い顔してましたけど」
「え?あぁ〜。お腹すいたなぁって」
アハハハハと返す。まさかそんなに怖い顔をしてたとは……
と思っていると、生徒会長の次は生徒総代である。つまり、達也の妹だ。
「確か達也。妹と校門の所で言い合ってたよな」
「見てたのか。まぁ色々な」
遠くを見る達也に、宝太郎は笑う。
名は深雪というらしく、スラスラと読み上げていく。この大人数の前だと言うのに、一切動揺や緊張は見られない。のだが、
「この新たな学び舎では、同じ生徒として別け隔てなく学び、高めあいたいと思っています」
『っ!』
深雪の言葉に、達也は体を強張らせる。
「お前の妹。中々肝座ってるなぁ」
「後で言わなくてはだな」
「え?」
美月は理由が分からず、首を傾げていると、
「だって入学式でそうそう別け隔てなく〜ってそりゃねぇ」
「どういうことエリカちゃん」
エリカは笑って言いながら、
「ま、美月はそれくらい純粋でいればいいのよ」
「???」
そんな二人のやり取りを見ながら、宝太郎と達也は苦笑いを浮かべるのだった。