魔法科高校の劣等生 ガッチャードクロス   作:ユウジン

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一科生と二科生

「ギリギリ席あってよかったわね」

 

昼食時前に来たというのに、既に食堂は超満員。人で溢れかえり、座る場所を探すのも一苦労だ。

 

何とか全員で座れる場所を。見つけ、深雪が中々来ないので先に食べ始めている。

 

食事は現在はオートメーション化されており、ボタンを押せば機械が全自動で作ってくれる。

 

栄養バランスも完璧で、自炊なんてのは個人の趣味の範疇になっている。味もそこそこ悪くない。

 

すると、

 

「お兄様」

「深雪?」

 

少し遅れて深雪が来たのだが、その背後には何故か多くのお供までいた。そして宝太郎は携帯を取り出すと、

 

【何でお前らまでいんだよ】

【色々あって……】

 

 

見覚えのある顔の二人にメッセージを送ると、すぐに返事が返ってきた。

 

【最初にほのかが深雪をご飯に誘ったら、お兄さんと食べるって言うから、あのきれいな魔法を使うお兄さん?って聞いて深雪と意気投合してお兄さんと一緒でいいならってご飯を食べることになったんだけど】

【何故か先頭にいる森崎君とその仲間たちまでついてきちゃったのー!】

 

成程深雪とお近づきになりたい奴等まで来てしまったと。通りで人数が多いわけだ。

 

だがこの大人数が座れるような場所は空いてないぞ。と宝太郎が思っていると、

 

「おい二科生。これから俺達一科生が食べるからそこを空けろ」

「は?」

「あ?」

 

恐らく森崎と思われる少年の言葉に、エリカとレオが反応。同じような反応の仕方に、お前ら仲いいんじゃないか?と思ったが、言わずにおく。沈黙は金である。とにかく急いで食い切ったほうが良さそうだ。

 

「随分上から目線で言うじゃねぇか」

「当然だろう?二科生何だからもう少し慎ましくいたらどうだ?」

 

森崎は鼻で笑いながら言い、レオのコメカミがピクピクしている。ついでに森崎達からは見えていないが、こっちからみると丸わかりで深雪の機嫌が悪くなっている。

 

「ホッパー!」

『っ!』

 

だが次の瞬間、宝太郎の胸元からホッパー1の声が響いた。二科生の宝太郎を馬鹿にするなと言う抗議何だろうが、

 

「むぐっ!」

 

驚きで宝太郎は急いで食べていた食べ物を喉に詰まらせ、慌てて胸元から飛び出そうとするホッパー1を抑えながら水を飲み、

 

『……』

 

全員の視線がこちらに一点集中。雫やほのかはヒヤヒヤした顔をしている。

 

「い、いやぁ美味しいホッパー!」

 

宝太郎はヤケクソでホッパーホッパー言いながら残ったご飯を流し込み、

 

「いやぁ、ご飯食べたらトイレ行きたくなったホッパー!」

 

ホッパーホッパー言いつつ宝太郎は食器を持ち、食堂を飛び出した。

 

「俺達も食べたしいこう」

 

達也がそう言って席を立つ。

 

「いいのかよ達也」

「いいも何もここは俺達の場所ってわけでもないしな。これだけ混雑してるんだ。食べ終わったら席を空けたほうが良い」

 

まぁそう言うなら、とレオが渋々従い、エリカや美月も同じく食器を片付けて立ち上がった。

 

フン。と森崎が偉そうなことを除けば、この時はまだ何もなかったのだが、問題が起きたのは放課後のこと。

 

「深雪さんは達也さんと一緒にいたいと言ってるのに、何で二人の仲を引き裂くような真似をするんですか!」

 

放課後、深雪は達也と帰るべくこちらに合流しに来たのだが、案の定お邪魔虫森崎とその仲間たちまで来てしまい、あーだこーだーと言い合いになってしまった。

 

名目は一科生同士で交流を、と言っているのだが、深雪とお近づきになりたい感が出すぎている。

 

それに一番怒ったのが美月で、先述のセリフに繋がるのだが、よりそれで口論は加速。

 

「まぁ美月ったら。私とお兄様はただの兄妹なのに仲を引き裂くなんて」

 

深雪は何故か頬を赤らめていた。

 

【おいそっちのクラスメイトだろ。どうにかしろ】

【それができたら苦労しない】

【森崎君一科生とか二科生とかこだわりすぎて苦手なんだけどー!】

 

メッセージでこっそり雫やほのかとやりとりしつつ、どうしたものかと頭を悩ます。

 

だが次の瞬間美月が、

 

「一科生二科生って、今日入学したばかりの私達の間に何の差があるっていうんですか!」

 

そう思う気持ちもわかるが、悪手過ぎる。森崎はプライドが高く、自己顕示欲も強いタイプだ。そこでそんな事を言ったら、

 

「ならお教えてやるよ!」

 

と言って、拳銃型のCAD一瞬で抜くと美月に向ける。

 

森崎といえば、クイックドロウが有名な家だ。CADを抜くと同時に魔法を発動させ、目にも止まらぬ一撃を放つ。

 

「くっ!」

 

宝太郎は咄嗟に美月の前に立って庇う。流石にここで致死性の魔法はないだろう。

 

しかし、

 

「うぉおおおお!」

 

その前にレオが何と森崎に突進。CADに手を伸ばし、次の瞬間バキィ!っと言う音が響いた。

 

「あんた馬鹿じゃないの?起動中のCADに素手で触ったら怪我じゃ済まないわよ」

 

ま、この距離なら近接のほうが速いっていう考えだけは同感だけど、とエリカは警棒を肩に担ぎながら言う。

 

(はっや)

 

思わず宝太郎は舌を巻く。美月を庇おうと、そっちに気を取られていたとはいえ、一呼吸の間にエリカは警棒を抜き、森崎との距離を詰め、CADを叩き落としたのだ。

 

「まぁそうだけどってかお前今俺の手ごと叩こうとしただろ!」

「なんのことかしらオホホホ」

 

適当にエリカは誤魔化し、森崎達を見る。

 

「先に手を出そうとしたのはそっち何だから、別にいいわよね?」

 

なんてイケメン!っと褒めたくなったが、それどころじゃない。空気が張り詰め、今にも魔法合戦が始まりそうだ。

 

なんて時、

 

「あっ!」

 

ほのかがCADを操作。魔法を発動させようとする。

 

「あのバカッ!」

 

と宝太郎が言った瞬間、別の方向から飛んできた物が、ほのかがCADから展開した魔法式を撃ち抜き、魔法の発動を止めたのだ。

 

圧縮したサイオンを飛ばして魔法式を壊す技術は存在するが、繊細な操作が要求される。そうでないとほのかに反動で大怪我なのだが、それをさせずに行った人物がいる。

 

「何をしている!」

 

そこに響いた凜と声音。現れたのは恐らくサイオンを撃った七草会長と、声を発した主。確か渡辺摩利風紀委員長だ。

 

「自衛以外の魔法の使用は禁止されているのは知っているはずだ!」

 

摩利の怒声に、皆が萎縮する。その中宝太郎は考える。今の状態はほのかが魔法の発動をしようとして止められた状態。そしてこの雰囲気からして諍いの真っ最中なのは丸わかりだ。

 

「入学早々問題を起こして。全員事情聴取を取らせてもらうぞ。特に魔法を使った者にはな」

 

下手すれば警察沙汰だ。厳しい対応なのは当然かもしれないが、

 

「ま、待ってください!」

「ん?」

 

宝太郎は摩利の前に出ると、

 

「ほ、ほのかも悪気があったわけじゃないっていうか攻撃するつもりはなかったといいますか」

「それを証明する方法は?」

「こ、こいつはそんなじゃんやつじゃないからです!」

 

ズコッと周りにいた全員がズッコケそうになった。ただの主観である。余りに堂々と言うものだから摩利は面食らい、真由美は吹き出していた。すると、

 

「彼の言うことは間違ってないと思いますよ。彼女の発動しようとしていた魔法はただの閃光魔法です。攻撃性はありません。精々暫く目が眩む程度です」

「何故わかるんだ?」

「魔法式を見たので」

 

達也の返答に、摩利は眉を寄せ、

 

「魔法式を見た?君は展開中の魔法式を見て何の魔法かわかるのか?」

「えぇ、実技は苦手ですが分析は得意なので」

 

因みに言っておくと、展開中の魔法式を見て魔法を看破するというのは普通無理である。

 

「ならば随分殺気立っていたようだが?」

「森崎のクイックドロウが真に迫ってまして。最初はただ見せてもらうつもりだったんです。有名ですからね」

 

よくもまぁ出任せを淡々とと思うが、摩利は目を細め、

 

「それを信じろと?」

「それが真実なので」

 

シレッとしている達也と訝しむ摩利。すると真由美が、

 

「はいそこまで!」

 

パンっと手を叩いてストップを掛けた。

 

「真由美?」

「まぁこう言ってるんだから良いじゃない」

 

と言い、あっさり真由美はそれで納得し、摩利を押して行く。

 

「お、おい真由美!」

「まーまーまー」

 

真由美は一瞬こちらを見てしていったウィンクしてから去っていった。

 

「ぷはぁ」

 

緊張が解け、宝太郎はしゃがみ込む。

 

「ありがとう達也」

「いいさ」

 

と言い合っていると、

 

「おい」

「ん?」

 

森崎がやってきて、

 

「礼は言わないぞ」

「別に構わない」

 

森崎はギリっと歯を噛みしめると、

 

「いいか!司波さんは俺たち通る方が良いに決まってるんだ!それは彼女のためだ!」

 

と捨て台詞を残し、森崎は人を連れてどこかへ行ってしまった。

 

残った一科生は深雪と雫とほのか。深雪はともかく、何で二人は残ってるんだ?と言う空気になる中、

 

『ありがとうございました』

 

二人は達也に礼を言いながら頭を下げた。

 

「別に礼を言われるようなことは」

「いえ、お陰で友達が助かりました」

 

雫がそう言い、ほのかはペコペコしている。すると、

 

「そういえば宝太郎とは知り合いなのか?」

「まぁ腐れ縁みたいなもんかな」

 

宝太郎は立ち上がると、ほのかはパッと顔を明るくし、

 

「あ!宝太郎君もありがとう!渡辺先輩に意見する所もかっこよかったよ!」

 

何かキャーキャー言いながらトリップしているほのかを無視して、宝太郎はツカツカと近づくと、

 

「宝太郎君?」

 

首を傾げたほのかを前に、宝太郎は右手を掲げ、

 

「アホほのかー!略してアホかぁああああああ!」

「あいたぁああああああ!」

 

ゴス!っと言うほどの勢いで振り下ろされた宝太郎の空手チョップは、そのままほのかの脳天に直撃し、悲鳴を上げた。

 

「ちょっと宝太郎君!脳天チョップは酷くない!?」

「当然だアホ!お前危なく入学初日で退学になるかもしれなかったんだぞ!」

「で、でも……」

「でももへちまもない!どうせお前のことだから、こんなはずじゃないのにどうしようそうだとにかくまずは止めれば良いんだそうだえーい!だろうが!」

「す、凄い!宝太郎君!一言一句違わず言い当ててるよ!」

「凄くない!」

「いふぁふぁふぁふぁふぁふぁ!」

 

宝太郎にほっぺを引っ張られ、ほのかは雫に助けを求めるものの、

 

「チョップはどうかと思うけどだいたい宝太郎の言うとおりだよ。危なかった」

「うぅううううう」

 

何も言い返せずほのかは唸り続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程。小学校からの付き合いなのか」

「そうそう」

 

ケーキを頬張りつつ、宝太郎は達也に答える。

 

さて、あの後このままいても仕方ないと言うことで、帰りにある小洒落たカフェに来ていた。

 

今どきマスター自ら淹れてくれるコーヒーとケーキが非常に美味だ。

 

「まさか高校まで一緒とは思わなかったよ」

「だが魔法科に通うとなったら東京ならここしかないだろう?」

「いや、俺は元々一般高校に進学予定だったから」

 

へぇ?と宝太郎の言葉に、エリカが反応する。

 

「勿体無くない?一先ず魔法科出とけば魔法師系の仕事で食いっぱぐれることも無いし」

「そう言っても俺くらいの適性だと非魔法師に毛が生えた程度だからたかが知れてるんだよなぁ。それだったら一般高校に行って普通の青春とかでもいいかなって。一般科目の勉強したり部活したり彼女とかあいって!」

 

足の甲にある踏まれると痛いツボを左右から踏まれ、宝太郎は悲鳴を上げ、左右にいる雫とほのかを睨むが、知らぬ顔だ。

 

「別に一般高校に行っても彼女ができるとは限らない」

「うぐ!」

「そういうこと言ってるうちは無理だよ」

「ぐえっ!」

 

追撃まで入れられ、宝太郎は机に突っ伏す。それを見た他の面々は苦笑いしながら成程そう言うことかとなる。

 

「まぁまぁ宝太郎君は彼女がいなくても私たちがいるじゃない」

「えぇ……いふぇふぇふぇふぇ!」

 

なんか文句ある?とほのかはさっきのお返しとばかりに宝太郎のほっぺを引っ張る。

 

するとエリカが、

 

「だったら雫かほのか良いんじゃない?」

『っ!』

 

お前すげぇな!みたいな目でレオが見ているが、目を細め、ペルシャ猫みたいな悪戯笑みを浮かべるエリカ。ネタにする気満々である。

 

雫とほのかはケーキを食べる手を止めて

 

だが、

 

「いやぁないなぁ。ずっと一緒にいたし今更異性って感じしないわ」

 

アッハッハと宝太郎は笑い、スゥッと雫とほのかから表情が消え失せ、静かにCADを操作し、

 

「ブベ!アベ!」

 

空気を圧縮してぶつける単純な魔法なのだが、それを時間差で左右から頰にぶつけられ、往復ビンタを受けたようになる。

 

「な、なぜぇ?」

 

宝太郎はそう抗議するが、雫とほのかは怒って答えず、

 

「アタシから言っておいてなんだけど、宝太郎君最低だと思う」

「え?」

『うんうん』

「えぇ!?」

 

突然の最低発言に驚き、更に満場一致で同意されたことに宝太郎は更に驚くのだった。

 

因みに、マスターまで頷いていたのは余談だ。

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