「おーっす」
「お、風邪ひき男がきたぞ」
そんな感じでからかってくるレオに、
「レオは風邪とか引かなそうだもんな」
「おうよ」
「なんとかは風邪を引かないって言うしね」
「あんだと!?」
レオとエリカのじゃれ合いを尻目に、達也を見ると、
「そうそうに風邪というのも運がないな」
「はは、だなぁ。2日も寝込んじゃったよ」
ほのかと雫には今度何か奢らなきゃ。と言うと美月が、
「そういえばお二人も看護しなきゃ〜ってここ2日急いで帰ってましたからね」
「あぁ。助かったよ。一人暮らしで風邪はしんどすぎる。隣の部屋にほのかがいて助かった」
「ふぇぇ!?」
宝太郎の言葉を聞き美月が飛び上がる。
「と、隣の部屋?」
「うん。俺が住んでるマンションの隣の部屋にほのかがいるんだよ。んで雫がほぼ毎日泊まりに来てるんだよ」
ワハハと笑う宝太郎に、思わず美月は達也に、
「何でしょうこの気持ちは。モヤモヤするというかまどろっこしく感じるというか」
「美月。きっとみんな同じだ」
「え?」
何の話?と宝太郎は首を傾げつつ、
「そういえば達也」
「何だ?」
「ほのかたちから聞いたんだけど、2年の壬生先輩を言葉責めしたって」
「それはガセだ」
割としっかりとツッコまれた次の瞬間、
【皆さん!!!!!】
「いっ!」
突然校内放送が入り、あまりの音量に宝太郎は驚き、美月に至っては転びそうになった。
「なんだなんだ!?」
【失礼しました。私達は校内差別を是正するために立ち上がった有志です!】
音量を直し、放送を聞いていると、喋りだした。
「有志だぁ?」
意味がわからず、宝太郎は首を傾げていると、
「すまん呼び出しだ」
達也は立ち上がりつつ携帯を見て、
「風紀委員から?」
「あぁ」
こういう時も呼び出されるんだから大変だなぁ……と思いつつ、宝太郎と美月は手を振って見送るのだった。
「じゃあ3日後に七草会長とその有志同盟の公開討論会を行うんだ」
「らしいよ」
自室に帰ってきた宝太郎と、ほのかと雫は各々リラックスした体勢で過ごしていた。
平穏無事なこの時間は3人の憩いの時間なのだが、今日は3人とも難しい顔をしている。
「差別かぁ。ないといえば嘘になる……のかなぁ?」
「例えば違いがあるとすれば、先生の有無とか」
「でもそれは現実問題として、教員不足だろ?」
魔法師はまずそもそもの数が少ない。そのうえ、教職につくよりももっと稼げる仕事はいくらでもある。教職につく魔法師は一握りだ。
そうなれば教職は常に不足する。
更に魔法科高校は全国に9校あり、その少ない教員を取り合っている状態だ。
そして宝太郎が通う第一高校は在籍数も東京にあるために多く、全員を見れないというのが実情。
「後はまぁ一科生から見下されるような視線……とかぁ?」
「私達は一科生とか二科生とか気にしたことないけど実際感じるの?」
「あぁ。結構二科生俺を見下すような視線は向けてくると思う。でも気にしない人も結構いるよ。人それぞれって感じ」
うぅん。と3人で天井を仰ぐ。どれだけ考えても、正解なんてわかりやしない。
「ただそれもだけどさ」
「ん?」
宝太郎が話を切り出すと、ほのかが見てくる。
「この間のマルガムといい、今回の一件といい、何か起こりすぎてるっていうか」
「全部繋がってるのもじゃないかってこと?」
「分かんない。でも偶然にしては問題が起き過ぎてる」
確かに、そう雫は頷くと、
「警戒しといたほうがいいかな」
「一応当日は俺外にいるよ。何かあったら変身して飛び込むから」
分かった。と雫が牛乳を一口。それを見て宝太郎は、
「でも雫牛乳好きだよなぁ。ってか乳製品全般?」
「まぁ……」
雫はそう言ってほのかを見る。
「ん?」
ほのかはどうしたのかと雫を見るが、雫はほのかの胸を凝視していた。
「まだ成長期……」
とだけつぶやき、再び牛乳を飲むのだった。
「ちっ!ガッチャードのガキが。やはり出てきたか」
「クロトー。そんな暴れないでくれます?」
黙れラケシス!とクロトーと呼ばれた女性は吠える。すると、
「喧嘩しないで。二人とも」
「アトロポス」
そこに小柄で幼い見た目の少女が現れた。
「ケミー回収作業は進んでるみたいだけど」
「だがガッチャードに邪魔されてて折角ケミー集めてもこれでは」
クロトーと呼ばれた女性が言うとアトロポスは、
「構わないよ。最終的にドライバーごと回収すれば良い。あの方もそう言ってたしね」
アトロポスは試験管の薬品をビーカーに移しつつ言い、
「そろそろこれも完成する。ここまでくれば九校戦までには間に合う。所詮今回は開幕の合図でしかないんだから」