オラリオで斬魄刀打つ転生者の話   作:オリ斬魄刀の小説増えろ

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斬魄刀が出ます!!

前話、大規模に増補改訂しました!文字数一万字超えでヘスティアが泣いたり叫んだりヤケになったりロキがグダグダ考えてたりヘルメスがサボったりバベルが揺れたり廃教会が半壊したりします!

尚、今話ではヘスティアはヘファイストス・ファミリアにお邪魔してます。闇派閥怖いからね。

麻婆餃子さん、リア10爆発46さん、誤字報告ありがとうございます。


セルバン・ハルウッド

 ガコンッ、と、ドワーフが好んで使う大きな樽ジョッキが打ち合わされた。

 

「どエラい事になっちまった変わり者の親友との再会に」

「何時もとまるで変わらない頑固者の親友の躍進に」

 

 ここは【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)【黄昏の館】。

 

 その中庭兼練兵場の地面に直接座り込み、二人のドワーフがいくつもの樽と共に酒盛りをしていた。

 

 練兵場の周囲では取引を始めた頃と比べてすっかりと人数の増えたロキ神の眷属が、腫れ物でも扱うかのように遠巻きに二人を観察している。

 

「……ブハァーッッ!!」

 

 一人は茶髪と髭を伸ばし放題にしている、いかにもドワーフといった風貌のドワーフ、ガレス・ランドロック。

 

「……ッカァーッ!!」

 

 もう一人は、髭をキチンと剃り上げ黒髪の両サイドを綺麗に刈り込み、長く伸ばしたセンターの髪を全て後ろに流しているという、ドワーフにあるまじき清潔ななりをした、目を全て隠す大きなサングラスを掛けたドワーフ、オーエツことセルバン・ハルウッドであった。

 

 格好はまるで違う二人だが、互いに衆目には頓着せず大瓶一本分に近い容量のあるジョッキを一飲みで空にし、互いのジョッキを交換する。

 

「どの酒が良い?」

「故郷の酒を、もう一杯頼む! お前は?」

「任せる」

「任された! この街で手に入る一番うまい酒の味を知れい!」

 

 ドワーフの片割れ……近頃オラリオへ来た鍛冶師、オーエツはソレを聞き、蓋を完全に割り開いた、飲み残す気がサラサラ無い樽にジョッキを腕ごとガボガボと突っ込んで酒を汲み取り、もう片方のドワーフ……ガレスとソレを交換する。

 

 酒でビシャビシャになったジョッキも腕も、ボタボタと零れ落ちる雫も気にすること無く受け取り、服と手をベタベタと盛大に汚しながら再び一息で杯を乾かす。

 

「ッガハァ──ッッ!!」

「ンッハァ──!!!」

 

 コレこそが、豪放磊落を絵に描いたガレスでさえも普段のファミリアの飲み会では絶対にしない、ドワーフ流の、下品極まりない本物の酒盛りであった。

 

「故郷の酒は……ほん(本当)に、染みるのう! えぇ!? セルバンッ!!」

「この酒も、この世のモンとは思えん程に美味いぞ! ガレスッ! ソレと俺はこの街ではオーエツを名乗ると言っただろう!」

「そう簡単に呼び名を変えられるかいッ!! 何年来の付き合いじゃと思うとる!」

「ワハハハ!! 確かに!!」

「ガッハハハハ!!!」

 

 何がおかしいのか、笑い転げながら今度は自分の側の、自分で持ってきた酒樽に腕を突っ込んで酒を汲み取りそのまま呷る二人。

 

 全く同時にガツンッ!! と地面にジョッキを叩きつけた彼等は、顔を見合わせてまた何故か爆笑しながら再び別の樽にジョッキを突っ込んだ。

 

 

「フィン、今あのジョッキ、思いっきり土付いたやんな?」

「酒でジョッキも濡れてるから、確実に大量に付いたね」

「というかあの毛むくじゃらの腕ごと突っ込んでいるのだから、土程度は今更だろう」

「あーあーあーソーマんトコの酒をそんな雑にあーあー」

 

 

 馬鹿みたいに笑いながら馬鹿みたいに酒を飲む二人の馬鹿なドワーフを、近くに設置したテーブルから見つめているのは【ロキ・ファミリア】の頭が良い主神と最高幹部二名であった。

 

 もう一人の最高幹部であるガレスと笑い合っているのは彼等のファミリアの躍進の一助を担ってくれていた恩人なので、本当は迎賓室や食堂を使ってキチンともてなしてやりたかったのだが、当のもてなされるべき男が地べたを強く希望したので仕方無くこの練兵場に案内し、今に至るという訳だ。

 

「凄まじいのだな……ドワーフというのは」

 

 二人の間に置かれた、ガレスが購入してきたありふれた塩の瓶に代わる代わる手を突っ込んで塩を舐めながら酒を浴びるように飲みまくっている二人を見て、この街に来るまで下品とは無縁の生活を送ってきたハイエルフ(エルフの王族)のリヴェリアはいっそ感心したように呟いた。

 

 尚、一応歓迎の意を示す為に彼女が着いているテーブルにも酒類は置いてあるのだが、ドワーフ二人の馬鹿飲みに気圧されてか彼女含め誰一人としてそれらに手を付けてはいなかった。

 

 ちなみにリヴェリアの感心には、かつて出会ったばかりの頃に心底毛嫌いしていたガレスのガサツな部分は、彼なりに一生懸命自分の上品さに迎合しようとした結果だった事を今更ながら痛感した部分も含まれている。

 

「ドワーフは岩山に住んどるのんが多いからなぁ。湧き水やら雪解け水が常に使えるとも限らんし、酒を水代わりに飲むんは当然、ツマミを岩塩に頼るんも当然っちゅーわけなんかもなあ」

「種族の違いか。なるほどねえ……」

 

 残りわずかになったらしい樽を抱えて、大樽から直飲みし始めたアホとソレをジョッキをガンガン打ち合わせて囃し立てるアホを見て、リヴェリアは溜息を吐いた。

 

「全く以て理解できん」

「けど楽しそうやん?」

「ソレは見れば分かる」

 

 そう、頭が痛そうな表情で言うリヴェリアに、ロキはニヤニヤが止まらない表情で返す。

 

「ちゃうちゃう。ウチが言うとんのはジブンのことやで、リヴェリア?」

「……私が楽しそうか?」

 

 そう言われた彼女は、ついロキと同じだけの付き合いの長さがあるフィンに顔を向け、向けられた彼は肩をすくめた。

 

「少なくとも、僕らと出会ったばかりの君なら彼らを見守り続ける判断はしなかったろうね」

「それは……幹部としての責任があるからここを離れられないだけで……」

「僕が言ったのは、昔の君ならああいう行為は有無を言わせず実力行使で止めていたはずって事さ」

 

 ロキ程ではないもののからかうようなニヤつきを口元に浮かべた彼の言葉に、彼女は何かを言い返そうとして、しかし言葉が出てこずパクパクと空気を食すだけだった。

 

「やぁ、ホンマ可愛なったわあリヴェリアは! 昔も可愛かったけど!」

「かっ、可愛いだと!?」

「可愛いついでにウチの事も受け入」

 

 飛びついてきたロキを瞬速でテーブルに叩きつけて、少し赤くなった頬を抑えて呻く。

 

「別に良いじゃないか、それは成長だと思うよ」

「悪いとは思ってないが……」

 

 視線の先では、馬鹿笑いをしているドワーフが横にした空樽に乗ってゴロゴロとバランスを取りながら二樽目を乾かそうとしていた。

 

 

 

 

「お前達にコレを。主神からは許可を得ている」

 

 ガシャ、とテーブルに置かれた三本の刀。

 

 馬鹿なドワーフ二人による馬鹿馬鹿しい馬鹿騒ぎが終わった夜中、寝静まった【黄昏の館】の迎賓室にてすっかり酔いの覚めたオーエツが取り出したソレを、代表してフィンが受け取る。

 

 それは、既に【ロキ・ファミリア】の名義で数十本単位でオーエツに注文をかけている武器であった。

 

「コレが例の【最強の武器】かい?」

 

 刀を手に取った彼の問いかけに、オーエツは深く首肯する。

 

「武器の名は【浅打】。武器としての種別は【斬魄刀(ざんぱくとう)】となる。『魂で斬る刀』という意味だ……お前達に馴染みのある言い方で言うならば……『魂の魔剣』というところか」

「魂の魔剣……ね」

「今はただの刀だが、お前達がコレを絶えず身に着け共に生きる事でお前達の魂を刀身に写し取り、やがてはこの刀自身がお前達に『銘』を教えるだろう……それを聞けるかはお前達次第だが」

 

 その言い様に違和感を感じたロキは、首を傾げる。

 

「共に生きるやの、『銘』を教えるやの……自分、なんやこの剣の事生き物みたいに言いよんなあ」

「流石の慧眼だな、ロキ神」

 

 まさか肯定されるとは思っていなかったロキは驚くが、刀を渡された瞬間から『刀そのもの』よりも『何故自分達に刀を渡すのか』を考えていたフィンは、一足早く結論に辿り着く。

 

「…………魔石」

 

 フィンの一言にオーエツ以外の全員がハッとする。

 

 そしてオーエツはその言葉に頷いて刀の鞘を撫でる。

 

「魔石は即ちモンスターの命であり、魂と言える。俺はその魔石を実際の刀の製法のように幾重にも折り重ね、鍛え上げて不純物の無い一つの無垢な魂へと変え、それを刀としている。つまり……その刀は【人造魔物】とも言えるものだ……尤も完全に鋼に溶け込ませているから魔石は無いし、折れても塵に帰ったりはしないがな」

 

 そこまで言った後、オーエツは鞄から何やら【浅打】とは意匠の違うナイフのように短く分厚い刃の刀を取り出し、「抜いても?」と他の四人に了解を取る。

 

 オーエツに視線をやる三人が主神の方を向き、その主神はいまだかつて無い程に真面目な顔で頷いた。

 

 この時、ロキだけが理解していた。

 

(ファイたんが言うてたんはこういう事か……)

 

 ロキはそういった特色を持つ神々とは違い、子供達の魂を見ることに長けていない。

 

 故に【浅打】のまっさらでからっぽな魂をうまく感知できなかったのだが、オーエツの持つソレには、彼と臍の緒のような絆で繋がった、彼と全く同質の魂が間違い無くあることが理解できた。

 

(……ホンマ、とんでもない子が現れたもんやわ……マジで天界還ったら犯人見つけてしばき回したるからな)

 

 そんな神の内心など推し量れぬ他の子供達は、オーエツの刀に意識を集中させていた。

 

「刀に織り込まれた無垢な魂は所有者に触れる事で所有者とは独立した、独自の人格を得る……そして、刀の名と解号を知り、それを呼べば、刀は我々の魂に応えてくれる」

 

「見ていろ」

 

『振れ』

雛鎚(ひなづち)

 

 ズ、と。

 

 厚刃のナイフのようだった刀は、まるで陽炎が揺らめくように、そこに最初からその形であったように……ドワーフが片手で何とか振れる程度の大きさの鉄鎚となった。

 

 その光景にオーエツ以外の、四人が四人とも息を呑む。

 

「……最強の、武器」

「俺にとってのな」

 

 リヴェリアが思わずといったように零した言葉に律儀に応え、鉄鎚を一撫でする。

 

 すると、またもや幻か何かのように鎚は刀に戻った。

 

「この解放を【始解】と呼ぶ……斬魄刀の解放が成れば、その者の戦闘力は爆発的に増す。言うなれば自分と【斬魄刀】の二人がかりでの戦闘になるわけだしな」

「どうやって『銘』を聞くんだい?」

「銘を聞くまでに必要なのは【斬魄刀】との『対話』と『同調』だ。お前達に才能があれば、その内に向こうから話しかけてくるさ。ちなみに俺は十年以上掛かった……が、闘いをしない俺でそれだけだ。修羅場を潜ることの多いお前達ならもっと早いだろうと思っている」

 

 三人の冒険者は、そこまで聞いて、それぞれ同時に一本ずつ刀を手に取り、その感触を確かめるように撫でる。

 

「誰よりも早くお前達にコレを渡すのは、俺なりの感謝の証だ。お前達が送ってくれた魔石があったからこそ、俺はこの刀を完成させられた」

「アレはただの取引ではないか?」

「その取引がなければ、コレの完成はまだまだ何年も後になっただろうさ」

 

 笑ってそう言ったオーエツは、自分の刀……【雛鎚】を鞘に戻し、彼等に手を差し出す。

 

「なので特別に、材料費抜きの三本二百万ヴァリスで良いぞ」

「いや金取んのかーい!!」

「後日ウチの者に持って行かせるよ」

「ンで渡すんかーい!!」

「ワハハハハ!!!!」

 

 台無し過ぎるオーエツの台詞に、彼のノリに慣れているガレスの爆笑とロキのツッコミが虚しく響いた。




次回より、本編です。

とりあえずここからは隔日投稿目指すかなあ。
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