オラリオで斬魄刀打つ転生者の話   作:オリ斬魄刀の小説増えろ

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感想欄で凄く良い指摘があったので、説明がてら閑話として投稿。

今後も感想欄でいいアイデアがあったら一切遠慮なくパクらしてもらいます!

リア10爆発46さん、エトルリアさん、誤字報告ありがとうございます。


閑話。暗黒の時代

 

「ふぎぎぎぎぎ…………!!」

 

 ここはオラリオの隅っこ、神時代となって久しい昨今、すっかりとその意義を失った教会。

 

 神そのものがわんさか降りてきたこの下界では偶像はその意味を成さなくなり、教会や聖堂といったものは廃れていった。

 

 この教会もその煽りを受けて半分廃墟に近かったのだが、何故かほんの一月前より確実に廃れて……というか、半分解体されかけていた。

 

 というのも、その一ヶ月前に『ある理由』から街中の冒険者や神々が押し寄せたせいで哀れなる教会は隙間風吹きすさぶ廃墟となってしまったのだ。

 

 それが、【ヘスティア広告ぶち上げ事件】。

 

 神々の思惑に乗せられた炉の女神ヘスティアが最後の最後でそれらを全部ひっくり返したという、この件を神々に聞けば「まーヘスティアってそういう(やつ)だから〜」という答えが返ってくるであろう事件だ。

 

 そして、この事件が起こった神会で決められたルールがある。

 

 そのルールに関しては前々回を参照して頂きたいが、その中に一つの条項がある。

 

「ぬぬぬぬう…………!!」

「……あの、ヘスティア様? そろそろ……」

「ぬぬぬうああぁぁあ!!!!」

「うわっビックリした」

「……アーディ、面倒ですし、もう我々で持っていっても良いのでは……?」

「……リオン。目の前にいるの、神様だからね? ……分かってると思うけど」

 

 その条項とは、

 

 

 

【ヘスティア・ファミリア】は、純利益の一割をギルドに納める事とする。

 

 

 

 コレである。

 

「ふぬぅぅぅ!!! 僕らの……僕らの……ボクのバイト代二年分近くが……!! くっそぉ──!! ギルドめ! ウラノスめェェェ!!!」

 

 細かい事情は前々(以下略)であるが、要するに【ヘスティア・ファミリア】はその団員である鍛冶師オーエツを眷属とする限り、永久にその利益をギルドに差し出さなくてはならないのだ。

 

 そして、今日が契約履行一回目。

 

【ヘスティア・ファミリア】結成から、今日でちょうど一月が経っていた。

 

 

 

「まだやっとるのか……」

「あっ、オーエツさん!」

「ああ、オーエツさん。来てくださりましたか」

「すまんのう、ウチの神が……ホレ、主神殿よ。行くぞ……ギルドへ」

「にぎゃー!!! やめっ、ヤメローッッ!!」

 

 オーエツが神々や冒険者から受けまくった受注をこなす為に日に十五時間近くを刀鍛冶に費やして……それでも、どれだけ調子が良くて【鍛冶】スキルをフル活用しても、一日に二本刀を打つのが限界であり、また【銀筒】などの受注もあり、そちらにも時間を取られ……結局、彼女等の一月の利益はおおむね三千万ヴァリスとなった。

 

 その一割、つまり三百万ヴァリスが詰まった袋とごねる主神を背負ったオーエツは、肩の上でむくれる彼女の首に金庫の鍵(【ゴブニュ・ファミリア】にローンを組んで製作を依頼した、地下を掘って作った大手ファミリアも愛用する金庫。計算上レベル四までの攻撃には耐えうる……らしい)を掛けさせてから廃教会……最早廃墟教会となった我が家の扉を締めた。

 

「では、護送を頼むぞ。【ガネーシャ・ファミリア】、【アストレア・ファミリア】」

「まっかせて下さい!」

「力を尽くしましょう」

 

 オーエツは、この暗黒期においても都市の秩序と安寧を願う、二つのファミリアの精鋭に頭を下げた。

 

象神の詩(ヴィヤーサ)】アーディ・ヴァルマ……レベル三。

 

【疾風】リオン……レベル三。

 

 どちらも、今のオーエツでは及びもしない強者達。

 

 しかし、いくら暗黒期と言えども明るい時間の大通りではそこまでの事が起こるわけもなく、護送は実に穏やかに和やかに進んだ。

 

 

 

 

「だから、何度も言っとるだろうに……俺の境遇でこの程度で済んどるのは温情だと」

「うぎぃ〜〜〜!!」

「ご機嫌斜め三十度って感じだね、ヘスティア様……じゃが丸くん食べます? 買いたてですよ」

「食べる」

「ワオ現金!」

 

 オーエツの背中におぶさりながらも相変わらずぶーたれているヘスティアと、ソレを宥めるオーエツにアーディ。

 

 そんな二人に反し、リオンはどちらかと言えばヘスティアの意見に賛同しているように見受けられた。

 

「……しかし、ヘスティア様の意見も分かります。何故何も悪い事をしていない貴女方がこんな罰金紛いの上納金を納めなければならないのです? 本来の売上税は納めているという話ではないですか。そこから更に一割など……」

「確かに、俺達は何も悪い事はしとらんな。悪い事をしとるのは神々……ひいてはギルドだ」

 

 ギルドが悪い。

 

 そう言い切ったオーエツは、こんな所でギルド批判に入るのかと驚いた面々を差し置いて話を続ける。

 

「この場合の悪い事というのは、要するに『不正()を分かった上で見逃す』事だ……本来、不正は正されるべきだ。例外は極力認めるべきではない。ブレーキが利かんくなるからな……しかし、俺には【斬魄刀(コレ)】があった」

「噂のレベルが上がる剣ですね」

「私達も貰えるんだよね!? これから先の売上の護送を請け負う報酬で!」

 

 オーエツの腰に差されている、ナイフのような刀を見た二人はやはり冒険者なのだろう。その話題に強く食いついた。

 

「この刀の有益性がある以上、神々に俺は殺せん……しかし、それでは神々の面目が立たん。それに、周りからは不正(ズル)をしているように見えるであろう俺に対する人々の反感も多かろう。ソレを抑える為にも、俺達はギルドの……ひいては神々の下に置かれているというアピールが必要だ……『アレだけ苦労しているのなら』と思われるような、な」

「ついでに言うなら、ボクに巨大ファミリアを作って欲しくないんだよ、神々(あいつら)は……だって、オーエツがこれ以上の新技術を開発しちゃった時、ボクにオーエツ以外の眷属が居なければ、その技術はファミリア外に流すしか無い……逆に、ボクに百人くらい眷属が居れば、ファミリア内で技術の独占もできちゃうからね……全く、誰が自分の稼いだ魔石の値段が問答無用で一割引されるファミリアになんて入りたがるもんか」

 

 彼女の中にはそういう算段もあったのだろうか。

 ぶっすぅ〜〜っとした表情を隠しもせず、ヘスティアはそう愚痴った。

 

「ボクがコレを断れないってのもまたタチが悪いよ……」

「……断れない? 断れたのですか?」

 

 まさかの発言に驚いたように目をパチクリさせるリオンに、ヘスティアは「無理だよ」と呟いた。

 

「タチが悪いのが、コレが僕達を守るための法にもなってるって事」

「この金は正確には【ヘスティア・ファミリア】ではなく、そこに所属する俺に掛けられているモンだ。だから、もしも俺の技術を独占しようとするようなファミリアが現れ、主神殿を天界に還し、俺に無理矢理【ステイタス】を刻めば……今度はそのファミリアに一割上納の義務が与えられる。そして、俺の技術を独占する事に価値を感じる程のファミリアとなれば……その一割は相当な負担となる」

 

 オーエツの技術がどれ程のものであっても、オーエツは二人居ない。手は二本しか無い。暗くなったら眠くなるし、一日の作業量には限界がある。

 

 オーエツ個人の能力で、数十人、下手をすれば百人以上眷属の居るファミリアの純利益の一割を埋める程の利益を出すなど、どうやっても不可能だ。

 

「この上納金がある時点で、俺達は『潰して取り込む』よりも『潰さずに外部から利用する』方が価値のあるファミリアになっちまっとるのさ……尤も!」

 

 オーエツは素早くヘスティアと袋を地面に下ろし、首元から取り出した【銀筒】を建物の上に投げ放つ。

 

 それは、丁度屋根の上からオーエツに向かって飛び降りた瞬間の人間の目前にあり。

 

大気の戦陣を(レンゼ・フォルメル・)杯に受けよ(ヴェント・イ・グラール)!」

 

 オーエツの詠唱によって、その【銀筒】は秘められた力を発揮する。

 

聖噬(ハイゼン)!!」

 

 一つ投げられた銀筒から、オーエツの詠唱に応じて一条の光が差し、それは頭上からの襲撃者の脇腹を完全に貫通した。

 

「ぎゃあッ」という声が響いたと同時に、リオンが懐に忍ばせていた短剣を路地裏に続く道へと投げ、アーディが油断なく武器を構える……

 

 

 ……が。

 

「…………二人だけ……だったようですね」

 

 暫く静かになった大通りの中心で武器を構えていた三人だが、ソレ以降誰も来なかった事でリオンがナイフを投げた路地裏へ向かい、やがてベッタリと血の付いたナイフを持って帰ってきた。

 

「……リオン、私はこの襲撃者を調べるから、貴女はギルドに行って早く用を済ませてきて。オーエツさん、ヘスティア様、私はちょっとの間護衛抜けるね」

「……うん、分かったよ」

「うむ」

 

 先程までの呑気な顔とは違う、憲兵の顔を覗かせてアーディがそう言う。

 

 それに素直に頷いて、三人は気持ち早足でギルドへの道のりを再開した。

 

「……大通りなら安全、とはいかんか」

「これから先、輸送の日時やルートも研究されていくでしょう。次回はもう少し人員を増やします」

闇派閥(イヴィルス)……」

 

 振り向いた視界からはもう見えない、顔を全て隠した人間を思い出してヘスティアは顔をしかめる。

 

 その顔を見て、リオンは言った。

 

「ヘスティア様……貴女は優し過ぎる。自分に襲い掛かってきた者に対して、そんな顔を向けるべきではない」

「……うん、ごめんね」

 

 そう言いつつも、ヘスティアはもう見えない闇に染まってしまった子供の姿を追うことを止められなかった。

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