オラリオで斬魄刀打つ転生者の話   作:オリ斬魄刀の小説増えろ

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ぶっちゃけオリ斬魄刀とかいうジャンルにこんなに大量に感想来ると思ってなくて……感想返し疲れてきたのでちょっと休憩中です。またそのうち再開します。多分……

ワタリガニさん、誤字報告ありがとうございます。


閑話。神の思惑

 

 

「ねえオーエツ君」

「……うん? どうした主神殿……まさか、昼飯に食ったアスパラガスの筋がまだ飲み込めんのか?」

「いや違うよ!?」

 

 やけに深刻そうな顔のヘスティアがオーエツにそう話を切り出したのは、ギルドに金を渡してから一週間後の事。

 

 一度盛大にツッコミをして気分を切り替えた彼女は、夕食の手を止めてこちらを見たオーエツに、その心境をポツポツと零し始めた。

 

「僕らさ、この一月は新しい生活に慣れるのでいっぱいいっぱいだったじゃん?」

「そうさな。俺も中々鍛冶の時間が取れず苦労した」

 

 ウンウンと深く頷いて、ヘスティアの言に同意するオーエツ。

 

 しかし、当のヘスティアはそのオーエツの態度にシラーッとした目を向けるのみであった。

 

「……いやしてたけどね鍛冶仕事。どんなに忙しくても一日五時間してたけどね」

「足りんわ、その程度では」

「この鍛冶馬鹿……」

 

 いい加減に互いの性格も分かってきた彼女等二人はそこで一旦話を止め、一呼吸置く。

 

 ヘスティアはこれから無茶を言う。

 

 例え無茶でもやりたいことを貫く。

 

 だから、ここでオーエツを何とかして納得させなければいけないのだ。

 

「行くよ、オーエツ」

「来い、主神殿」

 

 一拍。

 

 そして────

 

 

 

「「【論戦(デュエル)】!!」」

 

 二人で暮らし始めてからの一ヶ月で取り決められた、ヒートアップし過ぎない為のターン制口喧嘩、論戦(デュエル)の幕が上がった。

 

 お互いにいいたい事がある場合はジャンケンをしたりもするが、今回はオーエツ側には何も無いので彼女が格好をつけたポーズで声を張る。

 

「僕のターンッ!! 自身の主張を宣言! 【鍛治店の売上を使って炊き出しとか寄付とかをやりたい】!!」

 

 コレが、この一月オラリオという都市を見てヘスティアが思い立った事だった。

 

 この荒んだ街、暗い人々の顔、痩せた子供達。

 

 それら全てがヘスティアの気に食わず、そして、それに対して何もしていない自分がより気に食わなかった。

 

 だからこそ、今のファミリアの収入は全てオーエツが担っている事を理解しつつ、恥を承知でその金を他者の為に使いたいと願った。

 

 そして、それを聞いたオーエツは。

 

「ああ、ええぞ」

「さぁオーエツ反論を……え、いいの?」

 

 ヘスティアの先攻ワンキルで論戦(デュエル)の幕が下りた。

 

「……え? 何で? お金かかるよ?」

「安心せい、二千万以上ある」

「僕の給料十年分以上だよ!? そんな簡単に使っていいって言ってもいいの!?」

「ええだろ、別に。他に使う事も無い……俺は冒険者ではないしな。生活費と、鍛冶の材料があればそれでええ。月に斬魄刀一本売れば十分に賄える」

 

 ……そこまで言って、オーエツはいや、と意見を翻す。

 

「壊れた教会の修理代金は要るな。まああの日(神会翌日)来た連中からは割増料金で受注しとるから、とりあえずその分だけ残してくれりゃ後は俺の方でどうにか修理を……」

「いやそんなに使わないよ!? 炊き出しの事何だと思ってるのさ!」

「慈善活動は金がかかるモンと相場が決まっとるからな」

「かもしれないけどさあ!!」

「継続的にやるのだろう? 大鍋も必要だな……どうせなら頑丈なのを俺が作るか」

「待ってちょっと待ってよ!?」

 

「給食室で使う感じのを……」と、何事か呟いて設計図を描き始めたオーエツを、ヘスティアは泡を食って止める。

 

「何でそんなノリノリなのさ!?」

「ノリノリで悪いか?」

「悪かぁ無いけどね!? 悪かぁ無いけど、僕は実は結構反対されるかなーとか思ってたわけだよ! なんでこんな大賛成なのさ!?」

 

 バンバンバンッと食卓を叩きまくるヘスティアの言に、オーエツは目を閉じ、優しい声音で言う。

 

「……主神の言う可愛らしい我儘を、何も聞かずに黙って叶える……そんな眷属に、私はなりたい」

「……ハァ」

 

 そして、ソレを聞いていたヘスティアはいよいよ怪しいものをみる目をしていた。

 

 だって、目の前の眷属は普段は優しくない……とまでは言わないが、ヘスティアの感情よりもこまごました理屈を重要視しており、先程のターン制口喧嘩などその最たる所である。

 

 そんなオーエツが、そんなフワッとした言動で自分に賛成するわけが無い。

 

 だって、ヘスティアの言う炊き出し等はハッキリとした『浪費』なのだ。自分の小遣い程度ならばともかく、大規模なソレにこの男が反対しない訳が無い。

 

 つまり、何かある。

 

 ヘスティアはそう考え、実際それは的を射ている。

 

「……何じゃいその目は」

「ずばり、その心は?」

 

 問い詰められたオーエツはもう一度目を閉じ、今度は実にいつも通りの顔で、いつも通りな理屈っぽい言動をする。

 

「気持ちの良い話では無いぞ」

「だろうね……僕に言い淀んだって事は」

 

 食卓に座り直したヘスティアを見やり、オーエツは静かに話し始める。

 

「端的に言うと、儲け過ぎだ」

「儲け過ぎ?」

「ああ。この御時世に、あまりにも稼ぎ過ぎた。こうなれば間違い無く周囲から要らん妬み嫉みを買う」

 

 その言葉には、何とも嫌な実感が籠っていた。

 

「俺も、ガレス達から不自由せんだけの潤沢な素材を貰うて居たから、故郷では何かと言われたもんだ……そして、今回はそんなものとは文字通りに桁が違う……額も、人数もな」

「……つまり?」

「冒険者は流石に手を出さんだろう。神ヘファイストスの睨みがあるからな……とても頼りないが、金を払っとる以上はギルドも多少なら後ろ盾となってくれるだろうさ……とても頼りないが……」

「言っとくけど、僕はまだちゃんと納得してないからな、アレ!」

 

 今度は別の部分で論戦(デュエル)が始まりそうになるのを手で抑え、オーエツは話を続ける。

 

「闇派閥は……なるようにしかならん。そもそも今睨まれているのかも、何をすれば睨まれんのかすらも分からん以上、対策の打ちようが無い。問題は……この都市の最大母数である民衆だ」

 

 目を閉じてそう言うオーエツに、ヘスティアは嫌そうな顔を隠しもしない。

 

 彼女は純粋な善意から民衆の手助けをしたかったのに、オーエツはその民衆を『危険因子』と断じているのだから。

 

「……泥棒……なら、まだ良い。最悪は、大多数が決起してこの本拠地(ホーム)に押し寄せ、略奪をしていく事だ」

「……そんな事……」

「ある。だからこそ、俺達は『略奪しない方が得だ』と思われる為に地域貢献というやつをしなきゃあならん。主神殿の意見は渡りに船だ」

 

 オーエツの身も蓋も無さ過ぎる意見に、ヘスティアはふくれっ面を向けるも、最終的には首を縦に振った。

 

「……べっつに、理由は何でもいいさ……それで街の人間(子供)達が一人でも、一日でも暖かく過ごせるなら……それで」

 

 それは、ヘスティアの……神の善意。

 

 プライドや見栄、名誉欲の無い、非常に純粋な愛情と献身。

 

 ……人の身では、決して持ち得ない物。

 

「……主神殿」

 

 だからこそオーエツは、その善意に心からの敬意を払う。

 

「普段の俺を知ってる貴女には嘘に聞こえるかもしれんが……俺は、貴女の眷属になれて良かったと……そう、心から思う」

「おや、知らないのかい? ……神に嘘は通用しないんだぜ?」

 

 そう、自慢するようにヘスティアは笑った。

 

 それから数週間後、ギルドといくつかのファミリアが連携して、週に二回程の炊き出しが廃教会で行われる事になる。

 

 女神自らが汗を流しながら大鍋をかき回して作ってくれる料理は、味こそ一流ではないものの、食べると身体が元気になると噂を呼び、オラリオ辺境の名物となるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ? 手を出すなだあ?」

 

闇派閥(イヴィルス)】と呼ばれる、世界に混沌を望む所謂邪神達のファミリアで作られた連合の参謀(ブレーン)、【殺帝(アラクニア)】ヴァレッタ・グレーデは目の前の神の神意をついつい復唱した。

 

「あんなムカつく偽善野郎共を何でほっとかなきゃいけねーんだよ。あんたどうした? 頭打ったか?」

「頭は打ってないし、僕は極めて正常だ……正常に、【ヘスティア・ファミリア】に手出しをするなと言っている……悪いけど、コレばっかりは呑んで貰うよ」

 

 その神意がどうにも変わらなさそうな事を理解したヴァレッタは、憮然とした顔で「理由は?」と聞く。

 

「理由? 理由ね……趣味!」

「分かった、殺すわ」

「まぁまぁまぁまぁ!!!! 真面目に説明するから!!」

 

 即座に部屋を出ようとした彼女を呼び止め、【邪神】はその胸の内を明かす。

 

「僕の目的は、バベルを破壊してダンジョン内のモンスターを世界中に解き放ち、混沌の時代へと世界を巻き戻す事にある……おっと、それは知ってるって顔だね。まぁ聞きなよ」

 

 彼女の苛立ち混じりの表情を面白そうに眺めながら、彼は話を続ける。

 

「要するに、僕は神におんぶに抱っこの状態じゃなく、子供達の力で……【人間】の力で、この世界を生きて欲しい訳さ……今の状況は、あまりにも子供に楽をさせ過ぎている。健全じゃない。もっと下界は、スリリングであるべきだ」

「だから?」

 

 あくまでも結論を急ぐヴァレッタに、いかにも「しょうがない奴め」とでも言うかのような顔で首を振る神。

 

「オーエツ君の斬魄刀(かたな)は、紛れも無く……彼が神の力を借りず、ドワーフに許された時間(寿命)の半分以上……四十年近くを費やして作り上げた、正真正銘の【人の力】だ……ここで消すのは、あまりに惜しい」

 

 そう言った神は、ニコリと笑ってヴァレッタを見つめる。

 

「勿論、【作戦】にまで彼の命の保全を組み込めとは言わない。オラリオを壊す過程で彼が死ぬなら、僕も大人しく諦めよう……ガッカリはするけどね……しかし、彼を殺す為の作戦を立てるのは、NGだ。それは許可できない」

「……チッ、分かったよ……けど、分かってるだろうが下っ端までの統率は不可能だぞ。闇派閥(私等)はそういう奴等じゃないからな」

「ああ、それは別に良いよ。別に周知徹底もしなくて良い。あまりに露骨にやると、僕らの弱味だと思われるからね……僕が止めるのは、幹部達(君達)の動きだけだ」

 

 頼んだよ、と言い残し、神は部屋を出る。

 

「……あんなクソ神に好かれるとは、【前世】とやらで余程の徳でも積んだのかねぇ?」

 

 ヴァレッタはそう言いつつも、新たなる作戦を練る。

 

「仕方がねえから、利用する方向にするか……斬魄刀、ねえ」

 

 ヴァレッタが、部屋にぽつんと置いてあったそれを手に取る。

 

『元持ち主の血に塗れた斬魄刀』を。

 

「……つかそもそも、どーやって使うんだよコレ」

 

 まずはそのへんの情報収集だな、とヴァレッタはそうつぶやき……

 

 そして一週間後、『使い物になるには平均十年近い鍛錬が必要*1』という情報を手にした彼女は、「ゴミじゃねェーかッ!!!」と斬魄刀を壁に叩きつけた。

*1
現在のサンプル人数:オーエツ一名のみ




まだまだ評価は低い斬魄刀。

別に身を削るような危険の中で魂を研ぎ澄ませてきた訳では無いオーエツで十年なので、冒険者はもっとずっと解放までは早いです。

しかし、現状は平均十年(n=1)です。

……何で神はそんなのに盛り上がってるかって?

いや、自分がやってるゲームで新しいコンテンツ出たらまずは触ってみるでしょ?
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