オラリオで斬魄刀打つ転生者の話   作:オリ斬魄刀の小説増えろ

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リリ登場回で彼女の年齢を五歳としていましたが、実際には現在大抗争の一年半前なので六歳が正解です。間違えてました、すまんね。

荒魂マサカドさん、誤字報告ありがとうございます。


二人の少女の朝。

 

 

 

「うむにゃ……」

 

 オッタル始解到達事件から凡そ一週間が経った頃。

 

 オッタルショックにより再びこの廃教会に押し寄せてきた神々と冒険者達を、オーエツが【電磁捕縛丸ゼタボルたん】とかいうアホみたいなネーミングセンスの謎武器の試し打ちに使ったりと種々の問題は起きたが、結果としてすっかりと落ち込んでいた斬魄刀需要は劇的な盛り返しを見せ、多くの神々や冒険者がゼタボルたんの電気に悲鳴を上げ、そして教会は二度目の崩壊を免れた。

 

 尚、現在この教会はオーエツの手によって敷地内の至る所に彼お手製の不審者迎撃装置が仕込まれた半要塞と化しているのだが、その開発経費は『研究費』で通してあるので今のところその事実を知るのは彼のみである。

 

「うんふふふふ、やめろよう皆……そんなに一杯来られたらステイタス刻めないよう……僕が失血死しちゃうだろんふふふふ」

「……おはようございます……」

「ぬへへえへ……うへへ」

 

 半年前、オーエツの手を取ったあの日からずっとこの廃教会の地下に居候しているリリは、毎日そうしているようにこの日もヘスティアの寝言で目を覚ました。

 

 オーエツによって作られたハンモックから音が出ないようにそっと抜け出し、どういう体勢なのか両腕を上に上げて片脚を大きく曲げている*1ヘスティアの色々とまろび出てしまいそうな部分を直し、毛布を被せ直す。

 

 ヘスティアの安眠を手助けした後は暗がりの中で水瓶から一杯の水を汲み、乾いた口を潤す。

 

「あっ……やだ……待ってオーエツ君、ソレしたらみんな出ていっちゃうから……待ってえぇ……」

「一体夢の中で何やらかしてるんですかねえ……」

 

 どうやら本日は悲劇的な結末に終わりそうなヘスティアの寝言を聞きながら硬く小さいパンと水でほんの軽く朝食を済ませた彼女は、寝言の結末を知りたい好奇心を抑えて地上へと繋がる戸を開いた。

 

「……行ってきます、ヘスティア様」

 

【ソーマ・ファミリア】所属レベル一冒険者、リリルカ・アーデの朝は早い。

 

 

 

 

 

 

「おはようございます、師匠」

「おう、今日も早いな」

「師匠ほどではありません」

「ンハッ、言うじゃあないか!」

「そんなに感心されるような事言ってませんけど……」

 

 リリルカ・アーデの朝は早く、その師匠であるオーエツことセルバン・ハルウッドの朝は更に早い。

 

 やることが無い日は大抵一日鍛冶場に籠っている彼は、朝は騒音が周囲の迷惑になる為鉄を打てないので銀筒の彫刻作業や打った武器の刃付けを行っている。

 

 そんな彼はこの辺りにて生活する人間の誰よりも早く起き、誰よりも遅く寝る。

 

 だからこそこの鍛冶場にはこんな朝に彼以外の人間が居る筈も無いのだが、今日はそこにもう一人居た。

 

「アスフィ様も、おはようございます」

「ええ、おはようございます」

 

 それは、【万能者(ペルセウス)】アスフィ・アル・アンドロメダ。【ヘルメス・ファミリア】の副団長である。

 

 約一年前、【ヘスティア・ファミリア】と【ヘルメス・ファミリア】の間で結ばれた技術協力の同盟であるが、実はその同盟は僅か一週間で座礁した。

 

 というのも、オーエツは手に入るだけの魔石製品を片っ端から分解して得た分の知識と、フィン達から手に入れていた有り余る魔石を使った実験によって得た知識という…………つまり、実質ほぼ知識ゼロの状態から魔道具を自己流で作っていた為に魔道具というものの仕組みを根本的にあまり理解しておらず、アスフィとの会話に全くついていけなかったのだ。

 

 アスフィは言った。『魔道具の初歩の初歩も解ってないのに何でこんな物が作れちゃうんですか!』と。

 

 オーエツは言った。『情熱だ』と。

 

 アスフィは頭を抱えた。『狂ってる……!』*2

 

 とまあそんな経緯から、オーエツは不定期で彼女による魔道具講座を受けているのであった。

 

 

 

「では、朝の訓練に行ってきます」

「おう、行って来い」

「いってらっしゃい……あっ違う! オーエツさん、ソコは不等積回路を使うんです! ソレ使わないと回路の集約部で魔力の滞りが起こって爆発しますよ!」

「なにィ!? ……ソレでいつも爆発してたのか……」

「経験済みなんですか!?」

「ウム……普段はなんやかんや削ったり足したりしてなんか上手いこと動くようになった回路を使っとるんだ」

「……こんないい加減な人が何であんな道具を色々と作れるのか……」

「情熱だ」

「ソレはもう何十回も聞きました!」

 

 胸を張るオーエツと胃を押さえるアスフィにもう一度挨拶をして、リリは鍛冶小屋を出て暗いオラリオを走る。

 

 そしてオラリオ市壁の根本に辿り着くと、自身の脚力と握力で梯子を三段飛ばしで登っていく。

 

「よっ、ほっ、と!」

 

 軽業師のようにピョンピョンと数十メートルの壁を登り切った彼女は、まだ日が明けていない事を確認し、軽くストレッチをする。

 

 そんな彼女に、後ろから声を掛ける者が一人。

 

「リリ」

「アイズさん」

 

 彼女こそが、リリのたった一人の友人であるアイズ・ヴァレンシュタインであった。

 

 リリが今年で六歳。アイズが七歳。同年代でレベル二を目指す者として……まぁ実力はアイズの方が遥か高みにあるのだが……違うファミリアでありながらも切磋琢磨……殆ど一方的にリリが鍛えられるだけだが……している仲だ。

 

「お待たせしましたか?」

「大丈夫。いま来たところ……だから」

「そうですか」

 

 しかし、最近ではソレも少し様相が変わってきていた。

 

「……じゃあ、始めますか」

「うん」

 

 彼女達が立っているのは市壁上にある歩哨用の通路。

 そこにオーエツが彫刻をミスした失敗作の銀筒を等間隔に三つ置くリリ。

 

「では、いつも通り」

「うん。取った筒の数が少ない方が、二人分のじゃが丸くんを買う」

「武器はそれぞれ一本だけ、鞘を着けたまま振るう事」

「体術は無制限」

「手加減したら────」

「────許さない!」

 

 二人の少女がそう言い切った瞬間、それぞれレベル一の中でも中位、そして上位に匹敵する速さで二人は市壁の上を走り始めた。

 

「ハッ!」

 

【ステイタス】の差でも、種族的な差でもアイズにどうしても劣るリリは、早速とばかりに走りながら彼女に鞘付きの斬魄刀を叩きつける。

 

 ソレをヒラリと躱したアイズは、返す刃を叩きつけようとして、既にその場にリリが居ない事に気が付く。

 

「お先にです!」

 

 見れば、自分が先程躱した斬魄刀の鞘には紐が付いていた。

 

 リリは、アイズに斬魄刀を叩きつけたのではなく投げつけたのだ。

 

 わざわざこの為に作ってきたらしい紐をキュルキュルとオーエツ仕込みの器用さで作ったらしいリールに素早く巻き直した彼女は、そのままスピードをグンと上げる。

 

「武器を投げるなんて……!」

 

 言いながら、アイズはスピードを上げ、すぐにリリに追いつき、後ろからそのちんまい尻に蹴りを食らわせる。

 

「ぷぎゃひ!?」

「武器は大事にしなきゃ駄目……だよ」

「してますよ! でりゃ!」

 

 同じファミリアの人間に聞かれていればお前が言うなと言われそうなセリフをほざいている、ついこの間まで武器を使い捨てにするような戦いをしていたアイズ。

 

 そんな彼女に向けて勢いよくターンしたリリは、今度こそ腰を入れて横薙ぎに斬魄刀(かたな)を振る。

 

 それを己の小人族用の刀で受けたアイズは、代わりに拳をリリの腹に叩き込んだ。

 

「ごっ……!?」

 

 小人族の軽い体重は格闘技術を本格的に学んでいないアイズの【ステイタス】任せの拳打で簡単に吹き飛び、そのまま市壁から落ちていく。

 

 ソレに目を向けずに疾走し始めるアイズの視線の先で、消えたはずの市壁の下からピョーンっと放物線を描いて戻ってきたリリが見えた。

 

「落ちたのに!?」

「残念! 落ちてませんよーだ」

 

 先程よりも開いてしまった距離で、先程も見たリールを巻き取るリリ。

 

 すると、アイズの後方……先程リリを落とした辺りからカラカラカラ、と音を立てて斬魄刀が彼女を追い抜き、再びリリの手元に戻っていった。

 

 リリは、アイズに落とされた瞬間市壁に刀を引っ掛ける事でスイングの要領でアイズの先を取ることに成功した。

 

 ソレを一連の動きで察したアイズは、ムキになって足を回しながら叫ぶ。

 

「……ズルい! 私もソレ欲しい!」

「私のでーす!」

 

 それからしばらく、アレやコレやと駆け引きを続けるも、【ステイタス】に優れたアイズは劣っている筈のリリを突き放す事が出来ず、市壁を丁度一周したところで一本目の銀筒はリリの手中に落ちた。

 

「〜〜〜ッッ、負けない……!」

 

 そう小さく叫んで駆け引きを全て捨てた【ステイタス】頼りの全力疾走を始めるアイズ……の脚の間に、リリの刀が差し込まれた。

 

「ペぎゅむ!?」

 

 勢いよく進められた脚の間に差し込まれた刀に引っ掛けられてビターン! とずっこけたアイズの横を、リリが「痛そォ」と呟きながらスタコラ通る。

 

「……うううぅぅ……」

 

 グッ、と上体を起こすアイズ。

 

 その瞳には、隠しきれない涙が滲んでいた。

 

「ううゔゔゥ〜ッッ!!!」

 

 唸りながら、泣きながら、それでも走るアイズ。

 

 しかし、攻撃ばかりを追い求める彼女など……防御も、逃走も、搦手も、何も考えず前に進むことだけを考えている彼女など、この街で物心付いた頃からあらゆる手段で己の身を護っていたリリからすれば、攻撃以外の全てが稚拙に過ぎた。

 

 確かに、真正面から相対すれば絶対に敵わないだろう。

 

 技の駆け引きといった点ではきっとリリのボロ負けだ。

 

 しかし、手段無用ならば……いくら戦闘の天才アイズ・ヴァレンシュタインと言えど、冒険者相手に危険な山を渡り歩いてきたリリにとっては一山いくらの冒険者と大して変わりはしない。

 

 戦闘技術が驚異的? 

 

 なら戦闘しなきゃ良いではないか。

 

「まぁ……その戦闘回避が難関なんですが」

 

 十Mほど後ろで起きる轟音。

 

 アイズ・ヴァレンシュタインの、全力のクラウチングスタート。

 

「うあぁぁぁぁあああっっ!!!!!」

 

 小人族用の剣を構えた状態での、リリよりも圧倒的に早いスピードによる吶喊。

 

 そのスピードのままにリリにタックルを決めようとしたアイズの目前で……

 

『ザッ!!』

 

 と。

 

 リリの姿が、強い擦過音と共に『消えた』。

 

「何処に!?」

 

 その現象に強い心当たりのあったアイズが追撃を警戒して素早く上下左右を見回した結果、タックルが空振りしてたたらを踏んだ自分よりも大分先を走っているリリを見つけた。

 

 いつもなら必ず来る追撃を警戒したアイズは足を止めてしまっていた為、既にその差はかなりのものとなっている。

 

「待て!!」

「待ちませーん」

 

 結局、アイズはこの日リリに良いように弄ばれ続け、日がしっかりと昇った頃には銀筒を三本全て取られたアイズは顔をシワシワにして彼女に朝一番の出来立てじゃが丸くんを奢った。

 

(……この屈辱、実戦訓練で必ず返す……!)

 

 木剣を使った実戦訓練ではアイズがリリをギタギタにヘコませ、今日のような手段無用の総合訓練ではリリがアイズをベコベコに伸す……というのが、ここ最近の二人の訓練の内容であった。

 

 以前はアイズが自身の【ステイタス】の暴力を使って、リリにベコベコにされながらも勝ちを拾う事が多かったのだが……その彼女が瞬歩練習靴(オーエツ命名拒否)を使い、アイズの繰り出す渾身の攻撃を避けられるようになってからはどうにも彼女の負け続きであった。

 

 

 

「アイズさん」

「……何、リリ」

 

 しょぼくれた顔で屋台にやってきたアイズの顔を見た屋台のおばさんが「あらァまたお兄ちゃんに負けちゃったのかいアイズちゃん? いっこオマケしてあげるから元気だしなよォ」と渡してくれたじゃが丸くんを両手に持って交互に食べながら、彼女は横に居る自分と同じ金髪のヒューマンの少年……つまりは魔法で変装したリリ……の方を向いた。

 

「何度も言いますけど、攻撃だけじゃその内に絶対にやっていけなくなりますよ」

「相手に何もさせなければいい」

「何もさせなければ。言葉にする人は多いですが、冒険者史上ソレを出来た人間は居ないと聞きます」

「……」

「私は、冒険者の中でも総合で言えば下の上の【ステイタス】です……アイズさんはきっと、中の中か、中の上といったところでしょう……そんな相手に、良いようにされてるんですよ、アイズさんは」

「…………」

「ねぇ、アイズさん……私が言うのもおこがましいでしょうが、きっとアイズさんには、ダンジョンに行くより先にもっと……」

「……何かさせる前に! ……倒す、殺す……殺さなきゃ、いけないの……!」

 

 リリの気遣わしげな(鬱陶しい)視線を振りほどくように彼女は語気を強め、立ち上がる。

 

 リリの顔は、今は見られなかった。

 

「……出来ると思ってんですか」

「やるよ」

「……本気で?」

「やる」

「……そう……ですか」

 

 二人の間を、沈黙が支配する。

 

「……さ、教会でちゃんと朝ごはん食べましょう? ヘスティア様が昨日のスープを温めてくれていますから」

「うん……ヘスティア様のスープ好き」

 

 こうして、二人は今日も微妙にすれ違う。

 

 

 

 力を求めるアイズ。

 

 力が必要なリリ。

 

 

 

 家族の愛を失ったアイズ。

 

 家族の愛など無かったリリ。

 

 

 

 数え切れないほどに沢山の人々に救けられているアイズ。

 

 たった一柱だけが救ってくれたリリ。

 

 

 

 順調に成長しながらも、心の何処かで人生を諦めているアイズ。

 

 どん底を這いずりつつも、心の何処かで人生を諦めきれないリリ。

 

 

 

 …………自身の中にある愛を、まだ自覚していないアイズ。

 

 …………自身の中にある愛を、まだ自覚していないリリ。

 

 

 

 この二人は、その環境や心根が多く違えど、その核にあるのは同じ力無き無垢な少女。

 

 故に二人は惹かれ合い、互いを友人と認める仲となった。

 

 しかし、二人は肝心な部分で互いを真の友と認めていない。

 

 リリはアイズを自分より圧倒的に強い、敵わない存在と思っていた。

 

 アイズはリリを自分と同じように力を求める、自分よりも弱い存在と思っていた。

 

 

 

 それぞれがそれぞれに、相手を対等な存在として見ていなかった。

 

 ……だからこそ、二人は肝心な部分で歩み寄れない。

 

 しかし下界の子供達の成長は、神々が驚く程に早いものだ。

 

 ……この二人が真の友となるまで、あとほんの少しの事である。

 

 

 

 

「只今帰りました」

「おう、おかえり。朝飯できとるぞ」

「あ、おかえりリリ君! あ、アイズ君も来たんだねえ! ありゃまあ顔に傷が出来ちゃってるじゃないか! こっちおいで!」

 

 リリとアイズの二人が教会に帰ってきた時、既にアスフィは帰っており、ヘスティアとオーエツが食事の用意をしていた。

 

 教会の外に作られた手製の炊事場で、コトコトとスープを煮込んでいたヘスティアが帰ってきた二人を見つけてパァと顔を明るくする。

 そして、顔に擦り傷を作ってきたアイズを見てササッと素早い手つきで彼女を引き寄せ、エプロンから愛用の救急セットを取り出す。

 

 ヘスティアはこの半年ですっかりと手当てが上手くなっていた。

 

「おやおや、掌にも怪我しちゃってるじゃないか! ……んふふ、今日も頑張って訓練してきたのかい?」

「うん……けど、リリに勝てないから……」

「んふふ〜、そっかそっか……負けて当然と思う勝負に悔しさなんて感じないもんさ。みんな、勝てるかもしれないと思ってるから悔しいんだ……そう思えるくらいに頑張ったねえアイズ君。ほれ、僕が頭を撫でてあげよう!」

 

 顔に擦り傷を負っているアイズが、ヘスティアの膝に乗せられて手当てをされ、ついでに甘やかされる。

 

 そんな二人を、リリは何かを言いたい顔で眺めていた。

 

 それはそうだ。

 だって、今日勝ったのはリリなのだから。

 

「……私も今日は頑張ったんですけど」

「うん? 撫でてやろうか?」

「師匠には言ってません」

 

 リリのそんな愚痴を聞いたオーエツが野菜を切りながら尋ねるが、彼女はソレを普通に切って捨てた。

 

 その冷たい反応に、逆にニヤリと笑ったオーエツは彼女に見えるスピードで瞬歩を使い背後に移動。

 

 それを見たリリが反射的に瞬歩で逃げる……が、その先にさらなる瞬歩で先回りしていたオーエツが彼女をその太い腕で捕獲した。

 

「よ〜〜〜しよしよしよしよしよし!!!! よおぉぉ〜〜〜しよしよしよしよし!!!! *3

「うぎゃああぁぁぁぁ!!!! 頭が鉄臭くなるぅ!!! *4

「ちゃんと手くらい洗っとるわ!! *5

「師匠の手は洗っても鉄臭いですもん!! *6

 

 ガッチリと抱きしめられて撫でくり回され、それにギャンギャン喚きながらもなんやかんやで少し嬉しそうなリリ。

 

 そんなリリを眺めながら、アイズは黙って手当てを受けていた。

 

 

 

 そんな事をしながらも食事の用意が終わろうという頃、また一人この教会へと人が入ってきた。

 

「おはようございます……何だアイズ、また負けたのか」

「ああ! おはようリヴェリア君! ほらアイズ君、リヴェリア君が迎えに来たよ?」

 

 リリがオーエツに面倒を見てもらっているように、アイズもまた師事を受ける存在が居る。

 

 それが、【ロキ・ファミリア】副団長のリヴェリアだった。

 

 

 教会の入口から入ってきたリヴェリアを見たアイズは、そのからかうような軽口から逃げるようにヘスティアの背中に隠れた。

 

「……ん」

「何だ、悔しいのか? ちゃんと戦闘以外の勉強もしないからそうなるんだ……なぁ、リリ?」

「ヴェ、私ですかぁ!?」

 

 リヴェリアに話を振られたリリは、しどろもどろになりながらも彼女の言葉を肯定する。

 

「そ、そ〜〜〜ぉですねぇ、まぁ、アイズさんは前進しか考えてないのでぶっちゃけ付け入る隙がありまくりといいますか……」

「けど私の方が強いもん!」

「だが、迷宮で同じように危機に陥った場合……生き残るのはお前ではなくリリだ」

「そんな事!」

「あるさ。戦闘だけに特化したお前は、その戦闘技術は多少なりとも見れたものでも冒険者としての総合力はリリの足下にも及ばん」

 

 ソコで引き合いに出すの止めてくれないかな〜等と思いながらも、リヴェリアの意見自体には異論は無い。

 

 アイズのような人間が長生きできる訳が無い。

 

 アイズは才能の暴力で並み居る全てを薙ぎ払っているようだが、そんなものはじきに通用しなくなる。

 

 その時何が身を助けるかと言えば、それはソレまでに溜め込んできた智慧なのだ。

 

 その事を、自身と他人と世界を通じて痛感しているリリは、黙って食事の配膳をするに留めた。

 

「ほらほらリヴェリア君! そういう話は後にして、とりあえずご飯食べようぜ!」

「……は。ですが、流石にアイズの面倒を見ていただいている上に私まで食事の世話になるわけには……」

「あ、いらない? ゴメンねもう注いじゃった」

「な……で、ではお代を……」

「昨日の残り物でお金なんか取る訳ないじゃん! ほらお椀持つ!」

「は、はい!」

「回れ右! 教会の中!」

「はい!」

 

 ヘスティアの強引さにタジタジになっているリヴェリアという珍しいものを見て多少なりとも溜飲を下げたアイズは、再び彼女の矛先が自身に向かないように黙って食事を教会の中に持っていった。

 

「……朝ご飯の後は、私の方がリリより多く活躍する」

「……そりゃ、そうでしょうね……」

 

 今日は、リリとアイズとリヴェリアの三人でのダンジョン探索の予定である。

 

「……あと、私もあの糸車が欲しい」

「アレは私のものです」

「便利そうだもん」

「私のものです」

「あと靴も」

「駄目」

 

 アイズのそれは、何となく姉の持ち物を欲しがる妹のような雰囲気を醸し出していた。

 

 まぁ、アイズの方が歳は上なのだが。

*1
オーエツ:「一粒三百M(メドル)……!」

*2
正解。

*3
怒りの爆速ナデナデ

*4
事実

*5
これも事実

*6
またまた事実




また更新始めます。
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