オラリオで斬魄刀打つ転生者の話   作:オリ斬魄刀の小説増えろ

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斬魄刀はほぼ出ません


リリルカ・アーデ①

 

 ヒューマンの三分の二程度、百十C(セルチ)ぐらいの身長の、茶髪の少女がじゃが丸くんという名称の様々な味付けをしたマッシュポテトを固めて揚げた食べ物をモサモサ食べながらオラリオの中心街をテコテコと歩いていた。

 

 ちなみに今少女が食しているのはスルメイカ味。

 マズくないけど本物のスルメイカの方が普通に美味しいですね、と少女は冷徹な判断を下した。

 

 少女はこれから長旅でもするかのような、彼女自身の倍はありそうな大きな背嚢を背負って歩いていたが、その体幹にまるでブレはなく、重そうに揺れ動く背嚢に対し一切フラつきもせず、足取り軽やかに歩いていた。

 

 そんな彼女の腰には長さが明らかに身長に合っていない打刀が差されており、普通に差していては地面を引きずる形になるので、その鞘の端には小さなころ(・・)が付いている有様であった。

 

 そんなある種異様な少女は、陽の光を吸収するような真黒な極東の民族衣装を着て、その上から今度は真っ白な羽織を肩に掛けているという出で立ちも含めてあまりにも周囲から浮きまくっていた。

 

 しかし、浮いているのはなにもその服装のせいだけでは無い。

 

 少女の種族である小人族(パルゥム)、明るめの栗色の髪に白黒の装束という特徴。身の丈に合っていない武器。

 

 何よりも、(今は背嚢に隠れて見えないのだが)その羽織の背に染め抜かれた『ポップにデフォルメされた燃える骸骨』のエンブレム。

 

 それらが全て、この街ではたった一人の少女の事を指していた。

 

 リリルカ・アーデ十五歳。

 

 職業:冒険者(冒険者歴十二年目)

 

 特記事項:【ヘスティア・ファミリア】団長(団員二名)。尚────

 

 

 

「……おい、見ろよ。【家族喰い(マーダラー)】だぜ」

「は? アレが【家族喰い】? とてもそんな風にゃ見えねえが」

「バッカお前そりゃあ擬態だよ! アイツは同じファミリアの団員を頭からバリボリ食いやがったって話なんだぜ!? 俺は当時から冒険者だったから知ってるんだ! そもそもアイツの主神があの二つ名に訂正を要求して無いのがいい証拠さ!」

「はぁ──……あんな小人族(パルゥム)のチビがねえ」

「レベルの前じゃ種族なんて大した違いじゃねえさ」

 

 リリルカが街道の脇にいた冒険者二人組の横を通って暫く。十М(メドル)程離れたあたりでヒソヒソと話されたその会話を、少女はしっかりと聞いていた。

 

(あいつ等、レベル四の聴力を舐め過ぎですね……)

 

 そう思うも、同時に仕方がないだろうとも思う。

 レベル四は冒険者全体の中でも数えられる程しか居ない。そんな彼女のスペックを身近に体験できる冒険者など、そうはいないのだから。

 

 それに、と彼女は思う。

 

 なんの因果かこうして(ある意味で)有名な冒険者になってしまったのだから、あの程度の陰口は見逃してやるのが人情だろうと。

 

(かといって、言われっぱなしというのも……ヘスティア様からも言い含められていますし)

 

 少女の脳裏に、『悪口言うような奴らなんてギャフンと言わせちゃえばいいんだよっ! 主神である僕が許可するっ!』と可愛らしく頬を膨らませながらブンブン虚無を殴る己が主と仰ぐ神の姿が脳裏に浮かび、思わず口元に笑みが零れた。

 

「……しょーがないですねえ」

 

 口元に薄い笑いを含め、彼女はそう口にした。

 

 そう。しょうがないのだ。

 

 主神命令だから、しょうがない。

 

「……ちょっと、ビビらせてあげますか」

 

 そう一言。

 

 その瞬間に少女は周りの人間のさりげない、しかし確かな注目を浴びる中……ザッ! と音を立て、その場から『消える』。

 

 まるで幽霊のようにその姿を消した彼女は、ザワッとざわめく周囲にも気づかずに顔を突き合わせて内緒話をする男たちの横に再びザッと地面を擦るような音を立てながら現れる。

 

(ここまで接近されても無防備。注意力散漫。冒険者としては失格……とまでは辛口すぎですかね……そもそもここは地上ですし)

 

 まあこの様子ではどれだけ高く見積もってもレベル二といったところだろうと二人の男の格付けを済ませ、

 

「おにいさん、お兄さん、冒険者のお兄さん?」

「お前はまだこの街に来て早いから分からんだろうがな、ああいう狂人を見分けて近寄らないの……が……」

 

 話の流れから、どうやら後輩らしい冒険者が口を手で抑えながら必死で横を指し示すので、御大層な演説を中断してそちらを見た先輩らしき冒険者がサーッと音が聞こえそうなほど見事に顔を青ざめさせる。

 

 それはそうだ。人食いの化け物と決めつけて陰口を叩き、悪意の捌け口にしていた人物が目の前でニコニコと笑顔を浮かべながらじゃが丸くんを食べているのだ。血の気が引かない方がおかしいであろう。

 

 そんな顔芸をおかずにじゃが丸くんの最後の一口をモサッと口に入れた彼女は、見せつけるように手に持っていた油の染みた紙袋をグシャグシャと潰す。

 

 レベル四の人外じみたパワーでゆっくり潰された紙袋は、染みていた油をボトボトと地面に落としながらその体積を減らしていき、最終的には彼女の小指の先ぐらいの小さな小石に見える程にまで圧縮されてしまう。

 

 レベル四の凶暴過ぎる冒険者に陰口を聞かれ、内心で死を悟ってしまった彼らの手にその小石を握らせて、彼女は小首を傾げてニッコリと笑った。

 

「それ、捨てといてくれますか?」

 

 ガクガクガクと壊れたぜんまい仕掛けのように首を振る二人の冒険者にニコリと笑顔を向け、今度は消えるような特殊な移動をする事無く再びテコテコと通りを歩き出した。

 

「さて、ちょっと急がないとですね……」

 

 

 

 リリルカ・アーデ十五歳。

 

 職業:冒険者(冒険者歴十二年目)

 

 特記事項:【ヘスティア・ファミリア】団長(団員二名)。尚────殺人歴あり。

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