オラリオで斬魄刀打つ転生者の話   作:オリ斬魄刀の小説増えろ

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前回ラストは投稿してから「この小説のリリならあんな泣くとかじゃなくてアイズを傷つけた自分に対する嫌悪感と忌避感からゲロ吐くとかぐらいするよなぁ」とか、「アソコでライラに泣きつくぐらいなら半過呼吸になりながら手に付いたアイズの血液を必死になって何度も何度も拭い取ってる方がずっとソレらしいよなぁ」とか色々と思うところがありました……未熟!

予約投稿もミスるし、誤字脱字も多かったし、やっぱり小説は慌てて書くもんじゃ無いね……

日向ひなたさん、誤字報告ありがとうございます。

以前にフィンとリリは面識があるのにフィンの台詞が面識ない感じになってるという指摘がありましたので、修正しました。


対峙の時

 

 

 

 一年近く前にリリと友人になった事で最近では少しばかり力への執着が薄くなっていたアイズが、斬魄刀との対話を成功させた辺りからまた不安定になり始めた事は【ロキ・ファミリア】上層部としても気がかりな事柄であった。

 

 だからこそ、アイズが彼等に【ランクアップ】の方法を尋ねてきた時は(ついに来たか)としか思わなかったものだ。

 

『地道に冒険を続ければ必ずできるさ』

 

『斬魄刀を解放するという道もある。焦りは禁物じゃぞ』

 

『アイズ、お前は前に進んでいる。そう生き急ぐな』

 

『アイズたんは一人やないんやで〜?もっと皆ァに甘えぇや』

 

 ここ最近はアイズが【ランクアップ】を求めて無茶をやらかさないかと彼等は彼等で気を揉んでいたのだ。

 

 ……だが、そんな彼等でも輝夜から聞かされたその一報には耳を疑った。

 

「……今、何と?」

「疑う気持ちは分かるが、事実だ。お前の所の団員の『人形姫』と、【ヘスティア・ファミリア】の……居候のリリがギルド前広場で真剣を使って戦っている」

「え〜……マジで言うとる?」

「あぁ、マジだ」

 

 正義の眷属【アストレア・ファミリア】の副団長がアポイントメントも無しに自分達の本拠地に乗り込んできたという一報を受けて玄関前にやってきた神ロキと三人の幹部……フィン、ガレス、リヴェリアの三人は目の前の輝夜の言葉に言葉も出ない程に驚愕していた。

 

 しかし、特別二人を思いやっていたリヴェリアは一歩前に出て輝夜に詰め寄った。

 

「馬鹿な! あの二人が……」

 

 そんな事をするものか。

 

 そう言いかけたリヴェリアだが、その言葉は最後まで続かなかった。

 

 リヴェリアとて分かっていたのだ……否、リヴェリアだからこそ分かっていたのだ。

 

 彼女は、ダンジョンの中では常に二人の事を見ていたから。

 

 二人の境遇についても、その多くを理解していたから。

 

 アイズの絶望も、リリの悲観も理解していた彼女は表面上は穏やかな関係性のあの二人が決して相容れないであろう事を心の底では理解していた。

 

 過去こそが希望であり、未来に絶望しか見えていないアイズと、過去には絶望しか無く、未来にこそ希望を感じているリリでは、いずれ決定的な破綻が訪れる事はひしひしと感じていたが、それが……まさかそのような、最悪の形でとは思っていなかった。

 

「……私のせいだ」

 

 その楽観視が齎したこの状況に、彼女は涙を堪えるように目元を隠す。

 

 その姿に思う所、言いたい事数有れどもとりあえず団長として言いたい言葉を全て飲み込み、言わなければならない言葉を舌の上に乗せる。

 

「教えてくれ、輝夜……君が見た内でどれほど周囲に被害が出ている? ……アイズは、どれだけの人を、物を、傷つけた?」

 

 この暗黒期において、人々は被害に敏感だ。

 

 例え最大派閥の自分達であっても……否、自分達だからこそ、そこに所属するアイズが出した被害を冒険者も、市民も許しはしないだろう。

 

 いざという時は強硬手段を使う事も視野に入れなければいけない。そんな覚悟を込めたフィンの言葉は、微妙な顔の輝夜に否定された。

 

「……いや、被害は私が見た限りゼロだった……というか、お前達は『人形姫』から何も聞いていないのか?」

「何をだい?」

「……あいつ、空飛んでたぞ」

「はぁ?」

 

 深刻な顔をしていたフィンに突如叩きつけられる理解不能な情報。

 

 間抜けな表情でそれを聞いたフィンはこの中で一番アイズの現状に精通しているリヴェリアに振り向き、しかし彼女はフィンと似た表情で首を振る。

 

 しかし、ガレスはそれに心当たりがあったらしく「のあぁ!?」と突然に叫んだ。

 

「……まさか、瞬歩による空中歩行か!? まさか、セルバンの奴……あの技術を完成させていたとでもいうのか!?」

「知っとるんかガレス!?」

 

 突然叫んだガレスに尋ねるロキ。

 

 その場に居る輝夜含めた三名一柱の視線を受けながら、彼は深く頷いた。

 

「うむ……それは、セルバンの奴が作り出した技術の一つでな」

「セルバン? 誰だそれは」

「お前にはオーエツと呼ぶのが分かりやすいか? 儂の幼き頃からの親友よ」

 

 まさかの新事実に驚く輝夜に話を続けるぞと言いながら、ガレスは言葉を継ぐ。

 

「まだまだ儂が子供の域を出ん頃、ある日セルバンが『俺は瞬神になる』とか訳の分からんことをほざきだしてな、言ったかと思えばそれから何週間も自分の工房に籠もって、やがて一足の鉄靴を作り出した……履いた人間から魔力を吸い取り、それを足の裏で態と暴走させて小規模な爆発を起こし、それを推進力にして予備動作の無い高速移動を実現するという凄まじい代物だ」

「そんな物が……*1

「そして、それを履かされた儂は魔力爆発が大き過ぎてドワーフの里の岩盤に人型の跡を作り、岩盤が割れる程に頭部を強打した儂は二日間生死の境を彷徨った。今でも頭に古傷がある」

「そんな事が……*2

「アイツの発明品にはままある事じゃ。試作品には特に気をつけろ……そんで、その靴の試験をしとる際に、アイツが言っとったのじゃ。『最終目標は空に立つ事』じゃと」

 

 アイズが瞬歩を使っている事自体は知っていたが、それはただの魔力を使った高速移動術だと思っていたロキ達は驚愕する。

 

 そして、相変わらず動揺しているリヴェリアよりもまだ冷静なフィンは一つの危険性に気が付いた。

 

 同年代の中でも飛び抜けて優秀なアイズが、境遇を聞く限り決して優秀ではないのであろう少女との真剣を抜く程に本気の喧嘩をしていて、上空故に誰もそれを邪魔できないという危険性に。

 

「不味いリヴェリア……このままだと、アイズがあのリリっていう子を殺してしまう可能性がある」

 

 それを聞き、その可能性に思い至った彼女は顔色を変えて頷く。

 

「それは……させてはいけない! 今すぐに止めにいかなくては!」

「ああ、僕達も行こう」

 

 三人がそれぞれに頷きあうが、しかしそれを止めるものがあった。

 

 都市を揺るがす轟音である。

 

 彼等は知らぬ事であるが、これは闇派閥(イヴィルス)がアイズを闇に堕す為に起こした陽動であった。

 

 ギルド前広場での私闘を見た彼等は、ここが勝負の仕掛け時と陽動を始めたのだ。

 

 しかし、それを知っていたとしても彼等はコレを避けられない。

 

「……!?」

「これは……」

「民間居住区の方角!」

「何故、今……!」

 

 何故ならば、闇派閥が暴れているのは確かであり……最大派閥たる彼らには都市を護る義務があるのだから。

 

「リヴェリアァ! 儂らに任せてお前はアイズの方を!」

「……しかし!」

「馬鹿かお前は! 今お前が優先すべき事すら分からんか! あの娘がどういう経緯があろうが友を手に掛けて平気で居られる性質(たち)かどうかぐらい……一番時間を共にしたお前が最も分かっとるのでは無いのか!!」

 

 そのガレスの言葉にハッとした彼女はその場の者達の方を向く。

 

「アイズを、頼むよ」

「構わん、行け……家族(ファミリア)を護ってやれ」

「行ったり行ったり。リヴェリアはママやもんな!」

「……済まない!」

 

 言ってすぐに、彼女はその身体能力を駆使して館の上階にある自室の窓に飛び込み、割れて飛び散るガラスも無視して愛用の杖と斬魄刀、そしてポーション等が入った小さな鞄を引っ掴んで再び庭に飛び降りた。

 

(早まるな……アイズ!!)

 

 暫くして広場に辿り着いた彼女は知る事になる。

 

 アイズは己が思うよりもずっと情に満ち溢れていて、そして、現状は己が思うよりもずっと最悪に近い事を。

 

 

 

 

 

 

 少し時は遡り午前中、リリとアイズが冒険者相手に情報収集を行っているその時、ヘスティアとオーエツの二人は金物屋を臨時休業してオラリオ市街を歩いていた。

 

「…………」

 

「…………」

 

 身一つでスタスタと歩くヘスティアと、無人の教会には置いておけない試作品が満載にされたリュックを背負って後ろを歩くオーエツ。

 

 普段通りと言えば普段通りの装いの二人であるが、その表情は普段とは違い固いものであった。

 

 普段ならば何かと会話が尽きない二人の間に、今だけはピリピリとした沈黙が横たわっていた。

 

 その行き先は、【ソーマ・ファミリア】の本拠地(ホーム)

 

 何時もであればそんな二人に気さくに声を掛ける街の人々も、その何時になく物々しい雰囲気に自然と声を掛けることを躊躇っている。

 

 そうして、誰にも声を掛けられる事無く辿り着いた門の前で、ヘスティアは振り向かずに一言だけ言った。

 

「……行くよ」

「応」

 

 その門前で、酒を飲みながら門番をしていた男の前に二人は進み出る。

 

「……あ? 何だぁ?」

「このファミリアの主神……ソーマに会いに来た」

「……」

 

 ヘスティアのその言葉に、壁に立てかけてあった槍を手にとって警戒心を強める門番。

 

「悪いが、ソーマ様は誰にも会いはしねえ」

「そうかい……オーエツ」

 

 ヘスティアに声を掛けられたオーエツは、既に解放してあった掌サイズの雛鎚を即座にドワーフ一人分近い大きさにまで巨大化させる。

 

「雛鎚は『どんなものでも打てる鎚』だ。そこに偽りは無く、雛鎚に打てない素材は存在しない……雛鎚に掛かれば、空気すらも『打てる』のだ」

「おい、一体何を言って……」

空打(からうち)雛鎚、『達磨打ち』!!」

 

 オーエツのスイングを受けドンッ!! と鈍い音を立てて打ち出された空気の塊は目の前の門番と門扉を巻き込んで敷地の中へと突き進み、本拠地(ホーム)の外壁にめり込んで止まった。

 

 その轟音と本拠地(ホーム)を襲った振動に内側から【ソーマ・ファミリア】の団員達がゾロゾロと出てくる。

 

 門の残骸を通って悠々と敷地内に入り込んだ二人は、団員達を眺める。

 

 彼等の瞳は、酔いと欲でドロリと濁りきっていた。

 

「……情報通りって感じかな」

「だな……主神殿よ」

「うん……上手くいくならそれで良し、駄目なら、悪いけど頑張ってね」

 

 主神の許可を得たオーエツは、鞄の中からそれなりの大きさの小包を取り出してこちらの様子を伺っている団員達に声を張る。

 

「此処に十万ヴァリスが入っとる!」

 

 ざわ、と途端にざわめく眷属たち。

 

 そのざわめきは、『何いってんだコイツ』といったものではなく、明らかにその十万ヴァリスに対し何かしらの希望を持ったものであった。

 

(……本当に、倒れている家族には見向きもしないや)

 

 そんな彼等を哀しみに濡れた目で見つめながら、ヘスティアはオーエツの演説に耳を傾ける。

 

「そして、この鞄の中にはこの袋が残り九つある! つまり総額百万ヴァリス!」

 

「ソーマ神の下に案内してくれた者には、この全てを渡そう!」

 

「選べ!この俺と戦い、勝って金を得るか……それとも戦わずに金を手に入れるか!!」

 

 オーエツのその言葉に、眷属の目が揺れる。

 

 彼の持つ袋と、見せしめとして引き千切られた門の残骸と、その上で気絶している門番。

 

 明らかに己よりも格上の相手と戦うのか、それとも媚を打って酒を買う金を手にするのか。

 

「……お、俺が案内する!」

 

 彼等の主神たる酒の神ソーマあってこその神酒(ソーマ)

 

 そんな事すらも酒に酔った頭では理解できず、彼等はただ盲目に酒を……金を求めて簡単に主神を売り払った。

 

「ご苦労、これは前金だ」

「……! へ、へへへ! 金だ! 見ろ、金だ金!! 本物だ!!」

 

 どうやら本当に金をくれるらしいと分かった眷属達は、まるで先程までの警戒など無かったかのようにヘスティア達に媚を打って近寄ってくる。

 

「……好都合ではあるが……ザニス達幹部連中はおらんのか?」

「へ? ……あぁ、今日は見ていませんぜ。あいつら偶にこうやって居なくなるんでさぁ」

「……そうかい」

 

 恐ろしいほどに幸福感を齎す甘い匂いに包まれながら、眉一つ動かさない二人は誰一人にも邪魔される事無く主神の部屋に辿り着いた。

 

「やぁソーマ、随分久し振りだね」

「お前は……ヘスティア?」

「ああ、そうさ……君に言いたい事がいくつもあってね」

 

 炉の神ヘスティアと、酒の神ソーマ。

 

 己の眷属でない者にも愛を振りまくヘスティアと、己の眷属にすら関心を寄せないソーマ。

 

 二人の神が、ここに対峙した。

*1
驚愕

*2
憐憫




リューさん、無駄足確定。

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