オラリオで斬魄刀打つ転生者の話 作:オリ斬魄刀の小説増えろ
君が明日 蛇となり
人を喰らい 始めるとして
人を喰らった その口で
僕を愛すと 咆えたとして
僕は果して 今日と同じに
君を愛すと 言えるだろうか
(BLEACH47巻より)
ゴバッ!! と吹き飛ぶ建物。衝撃に石畳が舞う中、リリは血を触手状に変形させ瓦礫を幾つも掴んでは飛ばす。
高速で飛んできた人の頭サイズの瓦礫を片手で軽く払ったヴァレッタは今なら楽に殺せると思った事を内心で反省していた。
(やれやれ、無駄に喋ってないでさっさと不意打ちで殺しゃあ良かったな)
そんな事を思いつつ、進路上に居た数人の民間人と冒険者を斬る。
「ぎゃあっ!?」
「ひいっ!?」
「おら邪魔なんだよ退け殺すぞ!」
それを見たリリが隙ありとばかりに血の槍を放って来たのを今度は素手でなく手に持つ大刀形状の斬魄刀、『死絡』で切り払ったヴァレッタは、その手応えに眉を顰めた。
(さっき指に受けたのとは違う。明らかに物理的な衝撃がある。アイツが瓦礫を持ち上げるように物質だとまた勝手が違うのか? ……いや、油断は禁物────ッ!?)
切り払った血の槍、そこから溢れた血の玉がフワフワと空中を浮いている事に気が付いたヴァレッタが全力で身を屈ませると、先程まで彼女の眼球が存在した場所を血の針が凄まじい勢いで通る。
攻撃力がゼロ、とは言えなくなっている現在、感覚器へのダメージは避けるべき。というかそもそも血液が眼球の周りに纏わりつくなど絶対に嫌だ。
そんな、リリの自由自在過ぎる妨害がどうにもヴァレッタの動きの精細を欠いていた。
「ったく、厄介な奴だなてめえは! さっさと死ねよ!」
「…………」
だがしかし、レベル五とレベル一の差は歴然。
膂力、スピード、体力、頑健さ。全てにおいて最早生命として次元が違うと言っていいだけの差がある。唯一リリがヴァレッタに勝っている部分は小回りだけである。
故にここまで路地の細々とした回り道を駆けてきたリリだが、ここに来てその限界が来た。
バッ、と路地裏を飛び出したリリの眼の前に広がっていたのは、馬車も通れる広さの大通り。
もう夜ではあるものの煌々と魔石灯の灯りに照らされた路地には沢山の人々も歩いており、その姿にリリの脚はガクッと止まる。
……そして、その瞬間を見逃すヴァレッタではない。
「ハッハァ!!」
少女の脚が止まった瞬間に加速していた彼女は、その甘っちょろさを嗤いながら大刀を振り下ろす。
寸前でそれに気が付いたリリが身を翻した事により命だけは拾うが、代わりに左腕を切り落とされてしまう。
「ッギァァァッ!!!!」
「……ふぅ、なーんか呆気ねえな……しっかしお前も馬鹿だな? そこらに居るやつなんて無視すりゃ良いものを」
ブルブルと震えながら左肩の切断面を押さえるリリに、ヴァレッタは大刀を振り上げ、しかしそれを止めた。
それは何故か。
彼女は、視界の端に動くものを見つけたのだ。
それは、大通りにあった一つの青果店。
そこに積まれている果物を必死に齧っている鼠の群れが居たのだ。
『赤黒い血の鼠』の群れが。
(……は?)
その鼠の群れはヴァレッタが呆けたその一瞬でその果物の山を全て貪り尽くし、最初はリリの拳大だった大きさを膨れ上がった水風船のように人の頭サイズにまで大きくしていた。
……そして、それは破裂するように無数の鼠の群れに『分裂』し、彼女に襲い掛かる。
「うおォ気持ち悪いッ!?」
まるで一つの生き物のように飛びかかってきた鼠の群れを咄嗟に振り上げていた大刀で払ったヴァレッタは、リリがまた路地に入っていく所を見た。
ヴァレッタに襲い掛かってきた血の鼠は既に塵となって消え始めている。
それをグシャッと踏みにじって、彼女は額に青筋を立てて舌打ちをした。
「……逃げんのもいい加減に、しやがれッ!!」
そう吐き捨ててから大刀を地面に深々と突き刺した彼女は、ククッと喉の奥を鳴らしてから宣言する。
それはまるで、『遊びは終わりだ』と言うように。
「いくら逃げようともよぉ、もうお前には『糸』が付いてんだ──括れ、『死絡』ッ!」
瞬間、大刀から濃密なヴァレッタの魔力が地面に迸り、路地の奥から「あがっ!!」といううめき声が聞こえる。
悠々とした足取りで路地に入るヴァレッタ。
そこには、建物の鎧戸を外して中に入ろうとしていたのだろうリリが足を踏み外して地面に倒れていた。
ゴミだらけの路地にうつ伏せになってうずくまるリリの前に屈み込んで、その髪を掴み上げ視線を合わせるヴァレッタ。
「うぐ……」
「……お前、斬った腕がもう治ってやがんのかぁ? 斬り甲斐のねえやつ……しかし、お前一人の血にしては操ってる量があんまりに多かったのは納得したぜ。『自分の血に飯を食わせて増血』か。まさに鼠だな……だがあの鼠は一瞬で消えちまった。つー事は、鼠に食わせるものの種類で増やした血の持続時間も変わるって訳だ。それともお前がもう限界なだけか?」
最早睨むほどの元気も無いながらも、血塗れの顔で尚もヴァレッタから目を逸らす事無く見続けるリリに鼻を鳴らした彼女は、「もうお前の身体は動かねえぜ」と言う。
「まぁ、あたしの『死絡』の能力でな? この刃で斬った奴の中には暫くの間あたしの魔力が残るんだよ。んで、その魔力と『死絡』とを繋げてやれば……もうそいつは立派な『操り人形』ってワケだ……まぁ、レベルが上がってくると抵抗もされるが、お前程度なら楽勝だよ」
そう言ってスックと立ち上がった彼女は、リリに背を向けてその場を立ち去る。
「……まぁ、ここに居て死に際の憎しみでザニスみてえに噛みつかれるのも嫌だから……相手はこいつらにやってもらうわ」
そうにやりと笑ったヴァレッタの横から、血塗れの複数人の人影が現れる。
それは、先程のリリとの逃走劇の最中に彼女が斬り伏せた者達であった。
「っぐううううううう!!!!!!」
最早唸る事しか出来ないリリの四肢を操り人形達が抑え込み、残った者達が容赦無くリリをゴスゴスと蹴り始める。
「……そいつらの『眼』を通してお前の死に顔はシッカリ拝んでやるからな〜っと」
そう嗤って、最早口すら利けないリリを操り人形に任せた彼女は、ゴッ、グシャッ!! と鳴り始めた打撃音を心地良さげに聞きながらその場を去る。
(さーぁてと。コレで後はタナトスの奴が上手くやってりゃ言う事もねえんだが……)
そう思いつつも彼女は早速操っている人間の一人の視界を覗いた。
別に、彼女がリリに言った『死に顔を拝む』という事を真面目に守った訳では無い。
ただ、気紛れだった。
『自分を多少手こずらせたガキの顔をもう一度見とくか』という程度の、ほんの気まぐれ。
その気まぐれが、この瞬間の命運を分けた。
覗いた視界では、男達が死に体のリリを踏み躙っている筈だった。
そこで彼女は驚愕する。
そこには操り人形達が掴んだリリの脚が、腕があった。
そう、
「………………あ?」
一瞬の精神の空白。
その空白の中で、しかし幾重もの修羅場を潜り抜けてきたヴァレッタの肉体は本能的にリリの居る筈の方に振り向いた。
果たして、そこにリリは居た。
両腕を、両脚を切断された達磨状態のリリが、子犬サイズの血鼠四匹の背中に乗り、『猫嚙』を砕け散らんばかりに噛み締めた状態で、血みどろの表情を憤怒に染め上げてヴァレッタに飛び掛かるその瞬間だった。
そのあまりにも意味不明な光景に再びヴァレッタの脳に空白が産まれる。
(なんッ……!?)
その思考の空白を縫うように四匹の鼠の内二匹がヴァレッタの両肩に飛び掛かり、ガギッと肩に牙を食い込ませる。
その肩に鋭い痛みを感じた事以上に、ヴァレッタが焦りを覚えたのは己の肩に齧りついた鼠の尻尾がリリの肩の切断面に繋がっていた事だ。
(こいつ……正気じゃねえッ! あの状況で身動きする為に!
ここまでリリの動き方をずっと確認していたヴァレッタは、今リリが己の頸へとギロチンを掛けた事を正確に理解した。
このままでは、己の肩に齧りついた鼠をガイドとしてリリの口に咥えられた『猫嚙』が己の喉笛を切り裂くのだろう。
「ふッッッ……ざっけんなッッ!!!」
……だが、たかが不意と意表を突かれた程度で覆せる差ではないのだ、『四レベル差』という壁は。
叫んだヴァレッタは形振り構わずに飛びかかってくるリリに向けて拳を振り抜く。
ゴジャッ!! と、耳を塞ぎたくなるような水っぽい破砕音と共に血の鼠ごと再び路地裏へと吹き飛ばされたリリ。
……タイミングは完璧だった。
……完全に隙を突いた。
……リリは彼女の持つ全てを賭けた。
……流石にザニス達に向けるものほどではないものの、ヴァレッタの外道の所業にリリはこれ以上無く怒り、少なくない憎しみを抱いていた。
…………盤面は、全てがリリ有利に働いていた。
だが……それでもリリは、ヴァレッタの両肩にほんの掠り傷しかつけられなかった。
「死ね!!」
顔面をグチャグチャに潰されて地面を転がったリリに駆けるヴァレッタ。
しかし彼女はその脚を止める。
……何故ならば。
リリを殺そうと駆け出した彼女が見たのは、制御を手放して木偶の坊となっていた操り人形達の手からリリの手脚がすっぽ抜けている所だったからだ。
その断面にはリリの血の縄が伸びており、それは糸巻きのようにスルスルとリリの身体に戻り、バチッ、バチュッと音を立てて彼女の身体に戻っていく。
そして四肢を取り戻したリリが先ほどの拳で平衡感覚が潰れたらしくガクガク震えながらも必死に立ち上がろうとしているのを見て、ヴァレッタの脳裏にとある『確信』が産まれる。
「────は」
一瞬、ヴァレッタは確かに言葉を忘れた。
それ程に、衝撃的な確信だった。
それは、リリルカ・アーデの斬魄刀の能力の
(アイツの斬魄刀の能力は『血の操作』。それは間違いねえがその応用力がありえねぇ程に広い! さっきまで確かに手も脚もあいつにゃ無かった、だがアイツは現に今手脚を動かしてる! 恐らくは『手脚に張り巡らされた血管』に自分の血を流し込んで、その血を操ることで筋肉やら神経を使わずに動かしていやがるんだ!!)
だとすれば、そうだとすれば……リリの全身がボロボロの内出血だらけで皮膚が黒黒としてしまっている事にも説明がつく。
いくら【ステイタス】があれど、たかが六歳の小人族に数だけは多い【ソーマ・ファミリア】の殲滅など出来る訳が無い。人には『体力』というものが有り、そして体力は最低限身体が出来上がっていないととても身につかないものなのだから。
だがしかし、今のリリならばその問題は簡単に解決する。
『体内の血液』を操作して、まるで操り人形のように己を動かせば良いのだから。
このやり方であれば、手足の腱が切れていようが骨折していようが、なんなら切断されていようが関係が無い。
今のリリであれば、心臓を潰されても戦い続ける事が出来るだろう。
だが、それは致命的なダメージを伴う行為だ。
それはそうだろう。血管は所詮血管であり、人体を動かす為の強度など有りはしないのだから。それを使って無理矢理に動かしているから細く細かい毛細血管から順に人体のあらゆる部分でそれが裂け、リリの皮膚上に夥しい内出血という形で目に見えている。
本来ならば死ぬしか無いような重傷……否、致命傷だ。
それでも、彼女は生きていられるのだ。血液の完全な操作さえできるならば、何処の血管が破れようが自分自身で血液の動きを制御出来るのだから。
「っくく、すげえよお前。本当に凄え。認めてやるよリリルカ・アーデ」
ヴァレッタは気が付いた。
────リリルカ・アーデの斬魄刀、『猫嚙』の能力は『憎しみで力が増す能力』等ではない。
むしろ、リリの能力の真髄の前ではそのような
……『猫嚙』の真髄、それは圧倒的な、それこそ他の全てを超越するような圧倒的な『生存能力』にある。
自身の血液を操り、どれだけ傷を負っても失血をする事が無くなる。
脚が折れようが腕が飛ばされようが血を操って行動が出来るようになる。
そもそも『生存』が主目的であるならば戦闘能力など寧ろ邪魔。戦うよりも逃げた方が生存率は高くなるなど誰が考えても当たり前だ。
それでも自身をしつこく追い回してくるような敵には、『恨み』、『憎しみ』をトリガーとして致命的な一刺しを見舞える。
……リリの能力の全ては、彼女自身が他の何を犠牲にしてでも生きる事だけを考えられたものだ。
……だが。
「しっかし、致命的に噛み合ってねえのが哀しいねえ。だってよ、『生きる為の斬魄刀』を手に入れちまったお前自身が『死んでもあたしを殺す』って覚悟だったんだからな」
そう。
……生まれてこの方、生き延びる事だけを考えていたリリだからこそ発現した『生存闘争の為の斬魄刀』。
だが、それを発現したこの瞬間……リリは自分自身の生を望まず、自分の大好きな者達の生を望んだ。
その哀れさを嗤いながら、ヴァレッタは再びリリに向かって駆けた。
大刀も……『死絡』すらも最早必要無い。
今、四肢が戻ったとは言え先程のカウンターの拳でグシャグシャに顔を潰されたリリがほぼ戦闘不能になった今、その頭蓋を踏み砕く。
ヴァレッタの脳裏にはその事だけが占められていた。
(こいつは、今殺す! 今、殺さなきゃいけねえっ!!)
この盤面では、ヴァレッタがリリに負ける可能性など無い。
『万に一つも』とか、『十中八九』とか、そんな言葉すら無い。ヴァレッタの敗北の可能性は『ゼロ』だった。
……この盤面にある駒が、『リリだけ』ならば。
……ヒンッ、と、風を切るその音を聞いたヴァレッタは咄嗟にその脚を止めるが、勢い付いた身体は止まらずその頬に一筋の傷が付く。
ヴァレッタの頬を掠めて地面へと当たったそれは、金属製の『矢』であった。
そしてそれを確認したのは、夜闇に包まれたこの周囲で一番高い建物にて弓を構えた一人の女性。
そしてその横には、草臥れた旅人風の格好をした金髪の神。
「……躱されましたね」
「えー? 躱されたの? あの子あんなに周り見えてなかったのに」
「相手はレベル五ですよ? 私程度の弓ではどうにもなりませんよ」
「うーん、そっかあ」
【ヘルメス・ファミリア】の主神ヘルメスと副団長のアスフィは互いに顔を見合わせる。
そして、ヘルメスが笑って頷いた。
「よし、アスフィ撤退だ!」
「……良いんですか?」
「うん! 完璧に不意を突いて無理ならもう無理でしょ! さあ睨まれない内に帰ろう帰ろう!」
一発当てて即逃げるという行いに眉を顰めるアスフィに、ヘルメスはニコニコと胡散臭く笑いながらもその瞳の奥に理知的なものを光らせる。
「……それに、ちゃあんと『手助け』はしたからね……まぁダンジョンの方も上手くいったようだし、親友を助けたって事でコレでアイズ君の件はチャラに……」
「なりませんよ」
「なりませんよねえ……ハイ」
「アイズさんは私は知りませんが、リリさんは絶対に覚えていますよ、ヘルメス様の顔」
「だよねえ……結果オーライでどうにか……」
「なりませんよ」
「ですよねえ……ハイ」
二人はそう言いながら、街の夜闇に消えていく。
その頭上には、闇に紛れる服装をした二人とは違う、純白の服装の女神。
その女神が空中で何事かを叫びながら地上で許される全力の【神威】を解放した事を確認しながら、ヘルメスは帽子を深く被り直した。
「……やれやれ、裏方も大変だ」
「御自分がしでかした事の後始末で苦労神面は流石にどうかと思いますが」
「ええ!? 【
「どこがですか! 今日の詰まりに詰まったスケジュールは全部ヘルメス様のやらかしのせいでしょう! それが無ければもう少しリリさんを護れたというのに!!」
「わぁごめん! ごめんって!」
「私に謝ったってしょうがないでしょうに!!」
そんな呑気な遣り取りをする神と眷属の背後で、地面が大きく揺れた。
(……眼が、見えない。音も……聞こえない)
暗闇の中、リリは最早自分が立っているのか座っているのかも分からなかった。
【
(……悔しい)
『……嗚呼、そうさなあ』
ここまで心に語り掛けてくる『猫嚙』の導きに従って様々な技や、斬り落とされた四肢を操るなどしたが、流石に高レベルの眷属らしい女には勝てなかった。
(……けど、私……頑張りましたよね?)
『嗚呼。お前と儂に出来る事は全てやった……だが、これ以上出来る事は無い』
そうだ。
頑張った。
……頑張ったじゃないか。
それなのに。
(それなのに……私は……リリは、こんなに頑張ったのに、ここで、死んでしまうんですか?)
こんな暗い場所で。
独りで。
(……嫌だ)
独りは。
(嫌だ……)
独りぼっちは。
(リリは、何か悪い事をしたのかな)
『……さてなあ。儂にも分からんが……』
(うん、でもきっと……)
運が悪かったのだ。
(ああ……師匠……)
もう一度、あの手に髪を混ぜてほしかった。
(ヘスティア、様)
もう一度、抱き締めて欲しかった。
(独りは……嫌……)
だって独りはこんなにも……寒いから。
『大丈夫』
一瞬。
ヘスティアの声が聞こえた。
そんな筈は無い。
自分のような人殺しの怪物の元に、あの神がやってくる筈が無いのだ。
だが、最期に幻聴でも声が聞こえて嬉しかった。
「……へす、てぃあ」
「大丈夫、リリ君」
……そこで、リリは気が付いた。
神経が麻痺しているからか、身悶える程ではないがそれでも全身に痺れるような壮絶な痛みがある事に。
先程まで感じなかった手脚の痛みが、復活している事に。
そして何よりも、音と視界がボンヤリとではあるが戻り始めている事に。
……そして、その視界には。
「ヘスティア、さま……ぁ」
「大丈夫、大丈夫だよリリ君」
何度も何度も、何度も何度も。
ボロボロと大粒の涙を零しながらリリの頭を撫で、リリの動かない口に少しずつエリクサーを含ませながら大丈夫だよと繰り返すヘスティアが居て。
「ヘスティア……さま……」
「うん……何だい、リリ君」
「さ……む、い」
リリの口から出たその言葉を聞いたヘスティアは、リリの小さな小さな身体をきつくきつく抱き寄せた。
「……大丈夫だよ、リリ君」
「今までごめんね、辛かったね」
「もう、二度と離さない……離すもんか」
「これから先、君の魂がこの世を離れるまで……」
「二度と、君を独りにはしないぜ」
そして、ヘスティアと同じくその言葉を聞いていた『彼』は。
「そうだろ、オーエツ君!」
「……無論だ!」
ヘスティアの宣誓にそう叫び返し、『雛鎚』を手に眼前の敵を睨み付けた。
「……無論だ……とか格好つけてる所悪いけどよ、一応勧告するぜ。そのガキ離して帰れ」
「断る」
「……おいおい、お前確かレベル三だろ? 知ってるぜ。私はレベル五だ。そしてお前の斬魄刀はそこのガキみたいに特殊じゃねえ、物理攻撃の範疇だ……諸事情あってコッチはお前を殺したくねえんだよ。見逃してやるからそのガキ置いて消えろボケ」
「……此方の台詞だ」
ヴァレッタのダルそうな警告を受け、オーエツは(夜なのに)掛けていたサングラスを外し、火の熱で濁った眼で彼女を睨む。
その額には幾本かの青筋が浮かんでおり、歯は剥き出しになっていまにも歯ぎしりをしそうなほどに噛み締められている。
「死にたく無ければ……俺に殺されたく無ければ、今すぐに消えろ」
「……殺す」
ガシャ、と大刀を構えるヴァレッタ。
そしてオーエツは、雛鎚をガツンと地面に叩き付けた。
────これは余談になるのだが。
「卍」
────この世界でセルバンと名を受け、今はオーエツと名乗る彼は、前世と今世の両方を合わせても、今この瞬間が一番
「解」
A.「そんなの、当たり前じゃないか!!」
ホンクルイビトさん、誤字報告ありがとうございます。
『現実逃避アンケート』ダンまち本編のアイズは『リリは私のお姉ちゃんだから』と言って事情を知らない人間から宇宙猫されるか、『私はリリのお姉ちゃんだから』と言って事情をよく知る人間から宇宙猫されるかどっちが良いですか?(実年齢はアイズが一つ上)
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リリを『お姉ちゃん』だと思ってるアイズ
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自分を『お姉ちゃん』だと思ってるアイズ