オラリオで斬魄刀打つ転生者の話 作:オリ斬魄刀の小説増えろ
罪深き己の
不様に這い寄り光に
残った
己の全て
リリの暴走を知り、走るリヴェリアとアイズ。
彼女にどのような言葉を掛けるのかさえも分からないままに探し回っていた二人は、見知った顔と出会う。
「押さないで下さい! 此処は立入禁止とします!」
「ふざけんな! 家があるんだぞ!」
「この先では高ランク冒険者と【
地区から締め出された民衆や野次馬に来た神々を押し留めている【ガネーシャ・ファミリア】及び【アストレア・ファミリア】の者達にリヴェリアは近寄る。
「アリーゼ!」
「あ、リヴェリア様……!」
人々と神々を宥めていたアリーゼに声を掛けると、アリーゼは表情を明るくする。
しかしその目元は痛々しく腫れており、涙を流していた事が容易に見て取れた。
「この先で、一体何が……」
「リリはこの向こうに居るのっ!?」
リヴェリアの言葉を遮って、彼女の背中の上からアリーゼにそう詰め寄ったアイズ。
そんな彼女に、アリーゼは目を伏せて言った。
「……今は、この向こうでオーエツおじさまと【
「【
それが誰か分からないアイズを余所に、想像以上のビッグネームにリヴェリアの手は思わずアリーゼの襟首を掴み引き寄せていた。
何故なら、【
無論、戦闘能力など語るまでも無い。
「何を考えている! 【
「で、ですが! オーエツおじさまは一人でやるとそう言って! それに……言われたんです」
それは、リリを捜索する彼女たちの元に『リリがヴァレッタに追われている』という情報が入ってすぐの事。
午前中に見たリリとアイズのそれともまるで違う、まるでそこに地面があるかのように空に立ったオーエツを呆然と見るファミリアの者達全員に、オーエツはヘスティアを抱え直しながら言ったのだ。
『お前達は遠くに居れ。目が届かなくなってもまだ遠くへな』
『何を言っているのですか!? レベル三の貴方一人でヴァレッタ・グレーデを相手にするつもりですか!』
『嗚呼、俺の『最後の切り札』を使う』
『……最後の?』
至極当然の事を言ったリオンに対してそう呟いたオーエツは、続いてこうも言った。
『俺自身、完璧に制御出来るなどと自惚れてはおらん』
『四方三里に居る内は────巻き込んで殺さねえ自信はねえ』
「……そう、言っておられて。他ならぬオーエツおじさまのお言葉ですから、無下にも出来ず……」
「そんな、事が……?」
リヴェリアは東方の書物も読む為、三里が約十二
と、そこに老人と子供を肩に担いだライラが包囲網の内側から駆けてくる。
「やべーやべーやべーって!! 何ッだありゃあ!?」
避難しそびれていた者達を団内一の索敵能力で助けまわっていた彼女は、その最後の二人を地面に置いてから建物の屋上に駆け上る。
「何があった!?」
「何かとんでもねえ事ンなってんぞ!! あの爺さん何したんだよ!?」
屋上でそう叫ぶライラを見て、そこに居た者達はそれで気が付いた。
「……空が、明るい」
そう、まるで火事が起こったように、暗いはずの空が紅くなっているのだ。
「リリが危ない……!」
「あ、オイ待てアイズっ!!」
リヴェリアの背中を離れたアイズは、ボッ! と大きく上空に飛び上がり、一言。
「【
その言葉と共にゴオッ!! と巻き起こる風は、アイズの身体を滞空させ、そして加速させる。
空に立つオーエツとも、空を跳ねるリリとも違った『空の飛び方』を習得したアイズはそのまま明るい空へと飛び去った。
「……ああ、クソっ!! 済まんが私は中に入らせてもらう! 民間人や神々は任せるぞ!」
「え、ええ! お気をつけて!」
「やっぱりあいつは一度叱らないと駄目だ!!」
路地に消えるリヴェリアを見送ってから、アリーゼは額に浮かんだ汗をツイっと指で拭い取った。
そして、その指を見て呟く。
「……熱い」
男は、昔から『空っぽ』だった。
何をするにしてもやる気が無く、そつ無く熟しはしてもそれ以上はしない。誰の上でも下でもない、誰の印象にも残らないような男だった。
そんな男が唯一つ熱中したのが『創作物』だった。
男の産まれた国では毎年毎月毎週毎日毎秒、山のように様々な人間が創作物を世界に向けて放出していた。
その中でも特に人の情熱を揺さぶる『少年漫画』に熱中した男は、人生を万事適当に済ませながらも、『少年漫画』を只管に愛し続けた。
そして、つまらない事で人生が終わった先にあったのは、『少年漫画』でよくあったような神時代真っ盛りのこの世界での生活だった。
男は始めに歓喜した。
自分も『少年漫画』の世界に来たのだと、これから心躍る冒険が始まるのだと思った事もあった。
だがしかし、そうはならなかった。
世界が変わっても人は変わらず。男は一度死んでもどうにも社会に馴染めなかった。
だからこそ『一度目』に最も熱中した『少年漫画』に出てくる物品の再現等に只管に熱を上げたが、それがまた周囲との軋轢を産んだ。
村の伝統技術を学ばずに独自技術を磨き続ける男は『村一番の変わり者』とされ、親と生まれついての親友以外とはあまり言葉も交わさず、そして男の作るものの価値を素直に認めてくれるものは親友しか居なかった。
別に、辛くも悲しくも無かった。
男にとって、誰とも関わらない生活は当たり前の事だったからだ。寧ろ親友がいる分『一度目』よりも幸せだとさえ考えていた。
そして、幾つもの孤独な失敗作の上で出来上がった一振りの刀……『斬魄刀』。
声を聞くのに四年半掛かった。
そこから『対話』をするのに更に半年掛かった。
さらに『同調』するのに二年掛かった。
そして、その『さらに先』を求めた男に彼の刀はこう言った。
「今のお前には『実』が無い。そんな男に『次』を教える理由も無し」
「お前は何のために鎚を振るっている?」
「今のお前は
そう言われて、更に数年。
このままでは己は何も出来ぬと思い、勇気を振り絞り、怠惰を振り払って村を出たのが今より約二年前。
雛鳥は、その日巣を飛び立った。
そして、孤独な男は家族を探す神と出会う。
その時、男は言ったのだ。
この世で誰も見たことのない武器を作る、と。
この世で最強の武器を作る、と。
故郷でも旅路でも、誰に言っても笑われた。大真面目にその道を進んだ結果、親からも半ば見捨てられた。
親友もまた、応援こそしてくれたがその夢を本気にもしなかった。
誰も彼も、『最強の武器』等というお伽話を共に夢想はしてくれなかったのだ。
『いいね! ソレはすごく良い夢だよ! ボクも手伝う! 一緒にやろう!』
……だが、唯一柱。
一柱の女神だけは、男の夢を本気で聞いて、本気で応援してくれた。
『おお、この目標を聞いても笑わずにいてくれるか。嬉しいのう』
口下手な男の、こんな一言の中にどれだけの感謝が込められていたのか、きっと女神には分からないだろう。
『普段の俺を知ってる貴女には嘘に聞こえるかもしれんが……俺は、貴女の眷属になれて良かったと……そう、心から思う』
あの日、民衆に対して慈悲を見せる女神に言ったことは、男の紛う事なき本心だった。
男は女神に出会えて良かったと、心の底から思ったのだ。
『おや、知らないのかい? ……神に嘘は通用しないんだぜ?』
それがどこまで理解されているかは、その女神の能天気な笑顔からは分からなかったが。
巣立った雛鳥は、産まれて初めての温もりを得た。
そして、孤独だった男は真に独りの少女と出会う。
最初の印象は別に悪くはなかったが良くも無かった。
『リリよ……力が……欲しいか……』
『…………はぁ?』
己の夢を叶えるために利用し、相手も強くなる為に利用する。そんな関係で良いと思っていた。
しかし、それも少女と共に暮らす中で変わっていった。
『よ〜〜〜しよしよしよしよしよし!!!! よおぉぉ〜〜〜しよしよしよしよし!!!!』
『うぎゃああぁぁぁぁ!!!! 頭が鉄臭くなるぅ!!!』
ジタバタと嫌がる、しかし決して逃げはしない少女の髪を何度もかき混ぜてやった。
その少女は確かに弱くて、強かで、そして、男が思っていたよりも遥かに素直で可愛らしかった。
『……ごめんなさい、ソレだけは……言えません』
今にして思えば、あの時に力尽くで聞き出しておけば現状は無かったかもしれないが、そんなものは過去の話だ。
いつの間にかかつての雛鳥の足元にはボロボロの雛が居た。
そして、そのボロボロの雛を見て気がついたのだ。
既にかつての雛鳥は、大きく成長していたのだと。
そうして男は、数年ぶりに己の斬魄刀を具現化した。
何年も着続けた筈なのにデザインの詳細があやふやな背広を着た不定形の炎。それが、オーエツの斬魄刀の姿。
その炎は、男に尋ねる。
『改めて聞こうか……お前は何の為に鎚を振るっている?』
『俺は、俺の神の為……そして、俺の護るべき子供の為、鎚を振るう』
顔の無い人形の炎は、それでも確かに笑った。
『合格だ……さて、後は力を示すのみ……分かるだろう? 『屈服』させてみろ! この俺を!』
そして、男は『次』に歩を進める。
その『次』の名は────
「卍解」
「────【
…………ひとりぼっちの雛鳥は、暖かさを知り、それを護る為に
ヴァレッタ・グレーデは非常に頭の良い女である。
故に彼女の戦いは、何時だって敵戦力の推測から始まる。
その頭脳によって相手の能力と自身の能力の差を確認し、危なげの無い戦術を組み立てる。それが、彼女の強さである。
そんな彼女は口では煽るような物言いをするが、その実内心では非常に真剣にオーエツの一挙手一投足を監視し、推測していた。
彼女は決して相手を舐めてかかっていたわけではない。それだけは明言しておかねばならない。
その上で一つ言うのであれば……彼女は『斬魄刀』を理解していても『斬魄刀バトル』を理解していなかったと言えよう。
そう、斬魄刀バトルとは──ひいては能力バトルものとは──
どこまで高度化しても結局は、一回相手の能力を食らわないと話が進まないのである。
(…………何だ?
オーエツの言葉と共に、地面に突き立てた雛鎚が炎に巻かれ、そして消滅した。
そして、オーエツはそれに動揺もせずに只管自然体でヴァレッタを睨む。
そんな睨み合いが数瞬続き……先に痺れを切らしたのはヴァレッタであった。
「どうしたよ? 失敗かぁ? ……何もしねえなら、こっちから行くぜ!!」
そう嗤って【死絡】を担ぎ直す彼女は、オーエツに向かって走り出す。
そう。ヴァレッタは何も知らなかったのだ。
……しかしながら、この先制攻撃については若干ながら彼女の落ち度もある。
……リリの格上殺しが可能な斬魄刀【猫嚙】を見ていたのだから。そして、オーエツの自信有りげな態度を見ていたのだから……
「……失敗だと? 馬鹿者が」
「
……彼女は、少なくとも頭脳明晰を自称するならば『二レベル分の地力の差を強引に踏み越える程に強力な斬魄刀』の存在を考慮するべきであった。
轟、と。
オーエツのその『背中』に小さく、しかし確かに力強く燃える炎が背負われている事に突進の最中気が付いたヴァレッタは、そこで咄嗟に急ブレーキを踏み、死絡を盾にするように眼前に構える。
……そのような対応が取れる辺りは、やはり彼女も一角の人物である事は間違いないのだが……それは今の状況には……ましてやオーエツには、何の関係も無い事。
「……ッズオリャァァァアアアア!!!!」
(……ッ!!)
力一杯思いっ切り振り抜かれた、何も持っていない筈の右手。
その右手から放たれた極炎が、刀ごとヴァレッタの身体を焼き焦がす。
「何……だと……ッ!?」
その炎の圧に負け、ゴッ!! と吹き飛ばされたヴァレッタはそのまま建物の壁に激突する。
そして直ぐに身体の上の瓦礫を跳ね飛ばして起き上がった彼女は、オーエツの右手に物理的に有り得ない物が握られている事に気が付いた。
「……何だ……そりゃあ……!!」
それは、『炎』であった。
正確に言えば、『炎の鎚』。
握る部分が何処にも見えない、不定形の炎そのものにしか見えないそれが、何故か鎚の形となってオーエツの掌に収まって居るのだ。
そのあからさまな超常現象に余裕を無くしたヴァレッタのその言葉に、オーエツは気だるげにコキコキと首を鳴らすのみ。
「何なんだよ、それはッ!!」
しかして、オーエツから返ってくる言葉は冷たいもの。
「……妙なものだな、ヴァレッタ・グレーデ」
「……あぁ!?」
「お前の言う『殺す』……とは、『敵対している相手に質問をする』という意味なのか?」
「っがっ……!!」
吠えようとした。舐めるなと。ふざけるなと。
だが……それ以上にヴァレッタが選択したのは、『逃走』であった。
オーエツから再び放たれる火炎を避けながら、ヴァレッタは身を翻してその場から逃げ出す。
(訳が分からねえ! 訳が分からねえが……なら今戦う必要は無え! 戦うにしても手下の野郎共をけしかけて能力を解析して、対策を打ってからだ!)
しかし、そんな彼女の思惑は阻まれてしまう。
がんッ!! と硬質な音と共に彼女は強く身体を打ち付けた。
「な、こんな場所に壁だと……ッ!?」
絶句した彼女はその壁にひたり、と手を当てる。
無色透明な、『空気で出来た壁』に。
ゾッ、と彼女の全身を鳥肌が覆う。
今、自分は明らかに何か『次元の違う』事態に巻き込まれているという冷たい自覚があった。
このオラリオで良く言われるような、レベル差的な意味での『次元が違う』ではない。
そんな、生物としての延長線上ではない……自分達が二次元に居る所を三次元から干渉されているような、完全に別のルールで戦いを挑まれているような、そんな感覚。
そんな感覚に苛まれながらも空気の壁に向けて拳を振るうヴァレッタ。
彼女にとって幸いなことに、甲高い金属じみた破壊音を立てて空気の壁は崩れた。
(ふざけんなっ!! こんな戦闘、やってられっかよ!!)
絶対に逃げる。何をしてでも逃げる。
既にヴァレッタの中にオーエツとマトモに刀を合わせる選択肢など存在しなかった。
(なら、今するべき行動は一つ!!)
「【死絡】ぃッ!!」
ガッ!! と刀を地面に突き立ててそう叫ぶヴァレッタ。
瞬間、先程リリの四肢を押さえつけていた者達が再び動き始め、オーエツの背後のリリとヘスティアに襲い掛かる。
それだけでは無い。
リリとヘスティアの周囲にある建物が何かに引かれたかのようにガラリと崩れ、彼女達に向かって瓦礫となって降り注ぎ始める。
(いくら炎つっても結局は燃やすだけだ! 死体は骨まで燃やし尽くせるかもしれねえが果たして瓦礫はどうかな!!)
これは、ヴァレッタが今の今まで隠していた【死絡】の能力の一端。
彼女は、その魔力を十全に通せば無機物さえも己の意のままに操れるのであった。
「訳わからねえから私は降りるぜ! じゃあなオッサン!! その炎で足手纏い二人をどこまで護れるかな!!」
そう、捨て台詞を吐いて颯爽と暗闇に消えるヴァレッタ……しかし、その背にオーエツの落ち着いた溜息が聞こえる。
「……二つ、良い事を教えてやろう」
そう言って、オーエツは右手に持った炎の鎚を地面に叩きつける。
地面に叩きつけられた炎の鎚は、そのまま水面に波紋を立てるように炎の波へと姿を変え、オラリオの石畳を広がっていく。
……瞬間、
比喩ではない。
本当に……オーエツを中心としてオラリオの地面がすり鉢状に『変形』したのだ。
ヒビ一つ入ること無く地形が変化する……そのあまりにも不自然なそれに対応できず、思わずヴァレッタは石畳に手を掛ける……その瞬間、『ジュウ』と己の掌の皮が焼ける音がして、慌ててその手を引っ込める。
(……石が、地面が焼けてやがるっ!? ここを炎が通ったのは一瞬の筈だ! こんな短時間で、そんな事があるかよ!!)
「一つ。俺の【
「【雛鎚】で叩く対象に『熱を込める』卍解だ」
そう言って、始めに比べ圧倒的に燃え盛る背中の炎に手を入れた彼は、左手に二本目の炎の鎚を取り出した。
そして、その後ろに居るヘスティアと気絶したリリに向かっていた操り人形と瓦礫の山は……全て巨大な掌の形状へと『打ち直された』地面によって掴み取られていた。
「雛鎚はこの俺の未熟の象徴……覚悟も無く、己で作った力を振り回して楽しんでいた
この状況を恐れることもなく、ただジッと戦況を見守るヘスティアの空色の瞳をチラリと見つめ、そして視線を戻すオーエツ。
「……いかに技術を持った刀鍛冶だろうが、この世のあらゆるものを打てる鎚を持っていようが……熱の籠もっていないものを打てば当然起きるのは『破壊』……しかし、熱さえ入れればどんなものであろうとも、思い通りの形、思い通りの道具を作れる……それが、鍛冶師というものだ!!」
そう、それこそがオーエツの……セルバン・ハルウッドの卍解。
『あらゆるものを望むままに打つことが出来る』始解を『あらゆるものを望み通りに打ち直す』能力に変える卍解。
左右の鎚を交互に地面に叩きつけると、それに合わせて地面を炎の輪が走り、その炎の輪が通った石畳から何本もの赤熱した石の大剣が空中へ跳び出し、彼女にその切っ先を向ける。
一本、二本の大剣を打ち払った彼女の肩を、不可視の空気で出来た大剣が抉り取る。
「クソがっ!!」
「そして、二つ」
「し、がら、みいぃぃぃぃ!!!!!」
最早脚を着けている事さえ出来ない程に赤熱した地面を爪先で叩きながら、ヴァレッタは必死に斬魄刀に魔力を込める。
「お前は、絶対に逃さ──」
「……ッおらオッサン!! お前は知らねえだろうがな!!」
逃がさない、そう言いかけた瞬間……ヴァレッタがオーエツに……その背後に、鋭く指を指す。
「この【死絡】で!! 魔力を過剰に注がれた人間はなぁ!! 私の魔力が暴走して『爆弾』に変わっちまうんだぜ!! たった今レベル五の魔力をありったけ注いだ爆弾が、たかが石畳の守りで防げっかなぁ!?」
「……!? 、待て!!」
焦りを見せた目の前の男に汗だくの顔をニヤリと歪ませ、ヴァレッタは嗤う。
「やだね」
…………轟音。
そしてその轟音の中、彼女はコレまで隠していた【死絡】の能力をフルに使い、地面を変形させ掘り進めて逃亡した。
「ックソ、あんなん反則だろうが、クソっ……!!」
そう悪態を吐きながら死絡に魔力を食わせ続ける彼女だが、背後から先程嫌になる程に聞いた音が迫ってくる事を察した。
「……クソッ、クソクソクソ!!!!」
それは、オーエツの炎。
周囲の地面を猛烈な勢いで鋭い刃物に変えながら迫りくる炎に追われ、ヴァレッタは汗を掻きながらも地面を掘り進める。
「こんな、こんな所で! 私が死ぬわきゃ無えだろうがッ……!!」
所変わって再び地上。
ヴァレッタが潜っていった穴に全力の熱を叩き込んだオーエツは、そのままガクッと地面に崩れ落ちる。
そして、ゴロンと仰向けに姿勢を変えたオーエツは、震える腕で最後の力を振り絞るようにガンッ!! と炎に包まれた拳で地面を殴る。
そこから生み出された炎の輪が、オーエツの変形させた全てを元通りに打ち直していく。
建物が、石畳が、その全てが元の形に戻っていくのを確認したオーエツは、大きく息を吐いて毛むくじゃらの腕で目元を覆った。
そして、その瞬間に彼の肉体を覆っていた、そして彼の周囲で燃え盛っていた炎は全てボッ!! と霧散する。
「オーエツ君っ!!」
「……おう、主神殿」
ヘスティアの声が聞こえ、腕をチョイと退かしてその姿を見る。
傷一つ無いその姿を確認して安堵の溜息を吐いた彼は、その横に居る少女に視線を向けた。
それは、気絶した血みどろのリリを背負った同じく血みどろのアイズであった。
先程、爆発に巻き込まれる寸前で空中を飛んで現れた彼女が二人を抱えてその場を退避してくれた。その御蔭で彼は傷もなく、ヴァレッタの追撃を行えたのだ。
「……まさか、お前さんに助けられるとはな……アイズ嬢」
「……さっきの、何?」
「ナイショ」
スッカリと元の暗さと静けさを取り戻した路地で、オーエツは大きく息を吸って、吐いた。
「……今日は、酷く疲れた」
「はぁ〜、全くだよ」
「……私も、凄く疲れた」
倒れ込んだオーエツに凭れ掛かるように座り込んだヘスティアは、大あくびをする。
「……あー、ねむたい」
「……グゥ」
「えっうそオーエツ君寝た? ……はぁ、もう……あ、アイズ君も寝てる!?」
いつの間にかオーエツにリリの身体を預け、自身もその太い腹を枕にして眠り始めているアイズを見て、ヘスティアは「あーもー!」と頭を掻いた。
遠くから、リヴェリアの声が聞こえていた。
Q.オサレバトルに持ち込まれても負けない方法。
A.そもそもバトルしない。
というわけで逃げの一手のヴァレッタさん。彼女は本当に能力解説してくれるしヘイトも集めてくれるし本当にヤバけりゃプライドもクソもなく直ぐに逃げるだろうという信頼もあるし便利だ……
ちなみに、ヴァレッタさんが本気でオーエツと戦っていれば勝てた可能性はあります。
というか実力差は卍解一角とエドラド・リオネスぐらいです。ぶっちゃけどっちが勝ってもおかしくないです。
ぼるてっかーさん、祐☆さん、ミタさん、geardollさん、誤字報告ありがとうございます。
感想欄でご指摘ありました鳳鎚の読み方は『ほうづち』ではないのかという事ですが、確かに鳳の音読みは『ホウ』ですが口に出した時の響きの良さを優先し『おうづち』としています。
漢字の誤読が気になる人はマジでゴメンね。
『現実逃避アンケート』ダンまち本編のアイズは『リリは私のお姉ちゃんだから』と言って事情を知らない人間から宇宙猫されるか、『私はリリのお姉ちゃんだから』と言って事情をよく知る人間から宇宙猫されるかどっちが良いですか?(実年齢はアイズが一つ上)
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リリを『お姉ちゃん』だと思ってるアイズ
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自分を『お姉ちゃん』だと思ってるアイズ