オラリオで斬魄刀打つ転生者の話 作:オリ斬魄刀の小説増えろ
リア10爆発46さん、誤字報告ありがとうございます。
轟轟と火を噴く大地。己を焼き尽くさんとヒリつく熱気を孕んだ空気。
この世の終わりのような光景を目にするアレンは、己の手の中にある槍を静かに構えた。
ゴボ、と遠くに見える『大地』が隆起する。
その大地は瞬く間に色を赤らめ、そして一瞬にして炸裂する。
噴火と言って相違無いそれを前に、アレンは叫ぶ。
「行くぞ、
アレン・フローメルの目覚めさせた力、突槍の斬魄刀【
石突から噴射する
正しくアレンという男の長所も短所も見事に表した、実に斬魄刀らしい斬魄刀である……とかつて評論したセルバンは手加減無しに殴り飛ばされた事がある。
ボッ、ボバッ!! と空気を突き破りながら重力に逆らい天に向けて加速するアレンの後ろで溶岩の
「遅えんだよッ!!」
熱が抜けて冷え始めた溶岩流の、その側面の複数点が盛り上がり、アレンへと向かっているのだ。
その盛り上がりの形状は、セルバンと
スッと細く伸びた円筒、膨らんだ先端、弾を発射する際の爆煙を逃がす為の砲口制御器。
……それ即ち、
「っクソが!!」
ドドドドドド!!!! と凄まじい勢いで赤熱する岩石を複数の砲口から凄まじい勢いで撒き散らすセルバンの卍解に歯軋りをしたアレンは、自身の明確な不利を悟り吠える。
それは、成形されているとはいえ所詮柔らかな
だがしかし、彼の卍解はその範囲と物量が最大の売り。
数十門を超える圧倒的な砲口の量から繰り出される溶岩の雨に追い立てられ、アレンはセルバンが居るであろう場所に近づくことすら出来ない。
そこに、さらなる一手が指される。
ドオオッ!! と途轍もない音と共に飛行していたアレンの目の前に飛び出した赤熱した巨大な刀。
地面から飛び出した刃渡り数十
ドゴァッ!!! と壮絶な衝突音を響かせて刀に穴を開けたアレン。自身の服に燃え移った火を速力だけで掻き消した彼の眼の前にあるのは……数十
先程の刀は所詮一
「……この程度……!! 全部ッ、
槍の穂先から
「おおおおおおおおおおおぁぁぁぁッッッ!!!!!」
熱に外殻が焼かれ、アレンの髪が焦げ、
それでも、と。
アレンは吠える。
「っがぁぁぁぁぁっ!!!!」
この程度。
そうだ。この程度、何のことは無い。
負ける苦しみに比べれば。置いていかれる痛みに比べれば。
この程度……!!!
「屁でもねえんだよォォォッ!!!」
ボッ!!! と、溶岩の鎚が爆ぜる。
全身に火傷を作りながらもセルバンの鎚を砕いたアレン。
そして、その。
砕け散った『鎚の破片』の中から一人のドワーフが出てきたのを見て、彼は目を見開く。
そのドワーフは全身を己の卍解の炎に焼かれ、火達磨と化している。
特に発火点であるその背中から肩にかけては特に酷く、最早炭化しているようにさえ見える。
その燃えるドワーフがその焼ける手に持った炎で作られた不定形の鎚を振り上げるのを見て、彼は悔しげに歯を食いしばり、叫んだ。
「【限定解除】ッ!!!」
…………今更言う事でも無いだろうが、【フレイヤ・ファミリア】に所属する眷属達は、一人残らず神フレイヤを敬愛している。
時にフレイヤ自身が持て余すほどに苛烈なその愛情故に眷属達は自分と同じ眷属をすらも『敵』と見做し、常に切磋琢磨と言うには暴力の香りの強すぎる研鑽を積んでいる。
まぁ、詰まる所は女神の寵愛を独占する為、日夜家族で殺し合いをするのが【フレイヤ・ファミリア】なのである。
そんな所に突然放り込まれる他所の【ファミリア】の、しかも男。
家族にさえも容赦の無い彼等がそんな男に容赦をするはずも無く……
「ゲホッ、ゲーホ! ゲェッホ!! オエッ、おぼろぇっ!! ぐぼおぉう…………」
「おい、生きてるかセルバン」
「ハァ……ハァ……い、生きとる……」
「ほれ、ポーション追加」
するはずも無い……筈が、実際には割と良好な関係を築いていた。
コレにはおおよそ彼を取り巻く三つの要素が関係していた。
一つに、鍛冶師オーエツことセルバン・ハルウッドにはどういうわけか女神に魅了される気配が無いこと。
コレはまぁ、ままある事ではある。
女神フレイヤの『魅了』に抗うことのできる者など存在しないが、かの神が自分から積極的にその力を振るっていない時であれば、ある程度の精神力さえあれば心を奪われない事は可能だ。
コレはまぁ、セルバンの心が強いという事で特段何かいうべき事でもない。
二つに、神フレイヤがセルバンに対して一切『魅了』の力を使おうとしない事にある。
この街に住む冒険者にとっては周知の事実であるが、セルバンの魂は天界に御わす何方かの神によって改造を受けている
そして、神フレイヤにとってはその事が非常にマイナス点となっているようで、「どんなに綺麗な色をしていても、
以上二点で既に眷属達のセルバンへの悪感情は完全に無くなる。
女神に色目を使わず、女神自身も欠片たりとも興味を抱かない相手など最早空気同然。嫌う理由も無ければ好く理由も無い。そのへんの石ころと等価値である。
その上で、眷属達が多少なりとも彼に好感を抱く理由は一つ。
「……しかしまぁ、【霊圧限定】状態で俺と戦うのは無理だとアレだけ言うたろうが」
「……うるせぇ」
「幾らオッタルが【限定】状態で俺に勝ったからと言うてもな……」
「うるせぇつってんだろうが!!」
そう。この男、チートキャラだけあって何かと便利なのだ。
「そもそもだな、【限定霊印】は隊長格の死神が現世での任務の際に霊なるものに不要な影響を与えんようにその力を制限する為のものであってつまりやるのであればダンジョンの入り口に自動霊印機とかを仕込む感じでやるべきであってこんな簡単に解除とかするような」
「うるせぇ黙れ」
「おぼぼぼぼっ」
ブツクサと限定霊印の扱いについて文句を言うセルバンの口にポーションをぶち込みながら、アレンは軽く肩を回して鼻を鳴らした。
この限定霊印は、敬愛する女神フレイヤがある日「何か面白いことして」ととても気軽にセルバンに求めたところ、「んじゃコレどうだ?」ととても気軽に言ってきたものであり、この技術は『【恩恵】の効果をおよそ五分の一に制限する』というちょっと洒落にならないものである。
この霊印はその者に【恩恵】を与えた神の血を使い、その者の身体に解除する度に一回一回つけ直さなければいけないという手間があり、その上刻まれた者の意思次第で何時でも解除できるという拘束の弱さもあり、あまり実用的ではない。
ちなみにこの技術は【
勝手に刻めないし刻んだとしても自分の意志で普通に解除できる枷という犯罪者の拘束にも使えず、ファミリアへの懲罰にも使えない本物の無用の産物であるのだが、しかし【フレイヤ・ファミリア】の高ランク冒険者達には恐ろしいほどウケた。
というのも、修行というのは基本的に実力が伯仲している程に意義のあるものになるのだが、この街では【恩恵】の成長率によっては実力の近い相手というものが身の回りに居ない事が多く、そういう者は自分の実力が相応になる深さまでダンジョンを潜るのだが、それもやはり時間が掛かる。オッタルのような強さになると、修業をするにも数日かけてダンジョン奥深くに赴き、数日程度修行したら食料が足りなくなり帰ってくるというような事になり、効率があまりに悪過ぎるのだ。コレにはオッタルもションボリである*1。
しかしこの霊印を使えば、レベル差は変わらないので
尚、ちょっとつついただけでこんなもんが出てきた事に対しフレイヤは「やっぱりこの子を眷属にするのに収入の一割はあまりにも安すぎるわね……」と確信を深めていた。
尚、フレイヤに霊印を刻み直して貰う事は敬愛する女神に「ごめんなさい負けました」と報告するのと同じなので今現在アレンの心中は屈辱たっぷりである。
「……にしても、お前の卍解どうにかならねえのかよ」
「んぁ?」
「その身体に炎が燃え移るやつだよ。それさえ無きゃ、お前はもっと……」
戦える。
そう言おうとしたアレンの言を、セルバンは「無理」と一言で叩き切った。
「……言い切んのか」
「おぉ、言い切るぞ。俺の
満足気にそう語るセルバンに、えぇ……とドン引きするアレン。
「そうさなぁ……アレンよ、お前は『鳳凰』という鳥を知っとるか?」
「さぁな」
「うむ……鳳凰とはな、伝説上の霊鳥であり、平安の世……つまりは平和に安全、幸福や繁栄、不老不死など……まあ要するに完全なるもののような意味があるのだな」
「……はぁ」
何の話だよ、と思いながらもアレンは目線で続きを促し、セルバンもまたそれに応える。
「しかし、俺の卍解ときたらどうだ? 鳳凰の
「知らねえよ」
「即ち俺の卍解は『不完全な紛い物』なのだ!!」
いきなり起き上がって叫びだしたセルバンにアレンはビクッとしたが、テンションの上がったキモいBLEACHファンは最早そんなものを気にしていられない。
「アレン! お前に分かるかこの素晴らしさが! 斬魄刀というものがどれだけ素晴らしいかが!」
「知るか! 何で不完全な紛い物が素晴らしい扱いなんだ! 意味分かんねえんだよ!」
ガクガクと自分を揺らしてきたセルバンを地面に叩きつけるが、テンションの上がったキモいBLEACHファンはその程度では止まらない。
「俺の作った斬魄刀は『二枚屋王悦』という男が創ったそれを模倣して作っているのだ。分かるか? 俺の作っとる刀はあくまでもただの模造品! あくまでも一ファンがそれっぽく創ったものに過ぎんのだ! そしてその事を一番! 心の底から! 理解している!! この俺の魂を写し取った斬魄刀の
「知るか死ね!!」
もう一度掴みかかってきたアホを投げ飛ばしたアレンは三回目が来るかと身構えるが、テンション上がりきって賢者モードに入ったらしいセルバンは寝転がったまま、ポツポツと呟く。
「…………俺には霊魂が見えんし、ココはBLEACHの世界ではない。故に
「…………」
「……だが、俺の心が言うのだ。『コレは本物じゃない』と」
「……本物と同じ事が出来るんなら、そりゃ本物だろ」
「ほう、ならお前は神フレイヤと同じ顔同じ声同じおボォ!?」
セルバンの言いたいことを魂で理解したアレンは無言でセルバンの頭を蹴り飛ばした。
「……なるほど、よく理解できた」
「あがが……理解できたようで何より……あぁ」
そういえば、とセルバンは蹴られた側頭部をさすりながら、一つ名言を思い返す。
「『憧れは理解から最も遠い感情』……藍染が言っとったが、アレの正しさを痛感するものだ」
「はぁ?」
「分からんか? お前がオッタルに抱いとるような『敵対』の感情ならば、お前は相手の目前に立ち、相手を見て、理解し、勝とうとするだろう。『友好』ならば、相手の隣に立ち、言葉を交わし、理解し、相手の手の届かん部分を補おうとするだろう。だがしかし……『憧れ』は違う。憧れは、自分の手の届かん距離から相手の背中を見るだけだ。憧れでは、相手の背中しか見えん……そしてまっこと厄介なことに、憧れは止められん……俺がこの卍解をどうにかできる事があるとすれば……それは、俺が俺ではなくなる時にだろうな」
セルバンがBLEACHへの憧れを捨てる時。
それはセルバンが、前世を含めたコレまでの人生と、コレからの人生を全て捨てる時だ。
「俺はコレまでBLEACHを追い続けてきた。これまでの人生は俺の誇りだ。俺の夢だ……だが……」
「もしも主神殿に、リリに、危険が迫った時……家族を護る為に、俺は果たして誇りを、夢を、人生を……俺を構成する全てを、捨てられるのだろうか」
「…………」
アレンには何も言えなかった。
それはアレンも通った悩みだ。
アレンはその岐路に立った時、『家族』ではなく『愛』を選んだ。
だからこそ、その岐路で悩んだ身であるからこそ、アレンはセルバンに何も言えなかった。
「……その時になりゃ、わかるさ。嫌でもな」
「そーさな」
次回、アルフィアさんホームレス扱いされる!