オラリオで斬魄刀打つ転生者の話   作:オリ斬魄刀の小説増えろ

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アルフィアがなんか押しに弱い人になってしまっている……

きつねのキュウビさん、誤字報告ありがとうございます。

それと御指摘来てましたんで解説させて頂きますと、今現在(過去編)において【ヘスティア・ファミリア】の団長はセルバンです。過去編からダンまち本編に至るまでの何処かでリリのレベルがセルバンに並び、その時に団長をリリに交代する流れです。

リア10爆発46さん、誤字報告ありがとうございます。


ファミリア復活

 

 

 

 

 昼間に散々街の人々に帰還を喜ばれ、最近はすっかり行われていなかった街ぐるみの宴会のようになった騒ぎに巻き込まれた三人が戻ってきたのはすっかりと日の暮れてからで、その頃にはホームレスも目を覚ましていた。

 

 灰色の長髪をした美女のホームレスはその名をアルフィアと名乗った。

 

 そして、流れは当然アルフィアの来歴になるのだが……

 

「……と、そんなこんなでファミリアは壊滅。不治の病は治らず最愛の妹とも死に別れた私は残り少ない最期の時間を家族の思い出深いこのオラリオで使うことにしたとさ。昔話終わり」

「うわぁぁん!! いくらでも泊まっていきなよおぉ!!」

 

 アルフィアのかなり色んな部分を端折った昔話を聞き終わり、反応は綺麗に三分割された。

 

「ずずっ、ズビィーッ!! 僕のベッドも好きに使いなさい! 満足するまでずっと居て良いんだからね!」

 

 アルフィアの言葉に嘘がない*1事を神センスで理解してべしょべしょと泣きはらすヘスティアと。

 

「父さんは今……三人目の娘ができましたー!!」

 

 アルフィアの身の上話を聞くというこの一連の流れにルキアが黒崎一家を丸め込んだ時と同じようなシチュエーションを感じ取り一心のマネをするのに夢中なアホと。

 

「……………………別に、お二人が良いなら構いませんけどね」

 

 うっっっさん臭ぁ…………と眉を顰めているリリだ。

 

 懐かしの食卓に頬杖をついてアルフィアと名乗った女を眺めていると、その意識(・・)がこちらを向いた気がした。

 

 何故意識と言ったのか。それは簡単で、アルフィアが常に目を閉じているからだ。

 

 ただでさえ衰えている体力の消耗を限界まで抑えるためだとかこの女は言っていたが、普通目を閉じて生活する方が体力を使う気がするが。

 

「私の顔に何か付いているか? 少女」

「……いーえ。あと私の事はリリで良いですよ」

「そうか」

 

 とっつきにくい人だなーと思っている間に、光の速さでベッドメイクを終えたヘスティアがアルフィアの背を押してベッドに横たわるよう促す。

 

「さあさあ!! 病気なら座っているのも良くないよ! ほらベッドに寝るんだ!」

「……あぁ」

「明日にはベッドに座って話せるように大きめのクッション繕ってあげるからね! あ、そういえば君は誰の眷属なんだい?」

「…………すまないが、言えないんだ」

「ふーん、秘密主義の神なんだねえ」

 

 仕える神の名を言えない等という怪しさ満点の回答をさらっと流すヘスティアにリリは目を剥く。こいつ正気かと。

 

「ちょちょ!! 待って下さいヘスティア様! 仕える神の名前も言えないような人間をヘスティア様の側に置いておけませんよ!」

「えー、大丈夫大丈夫!」

「何を根拠に────!!!」

 

「だって、アルフィア君は悪い子じゃ無いからさ!」

 

 そんなヘスティアの明るい笑い声に、リリは二の句を継げずにパクパクと口を開閉させる。

 

 セルバンはワハハと笑いながら寝間着の準備を始め、リリの頭にソレを載せた。

 

「……師匠ぉ〜!!」

「諦めろ。主神殿の決定だ」

 

 頭に載せられた自分の寝間着越しにワサワサと頭を撫でられたリリは、プックリと頬を膨らませたぶすくれた表情で師の脛を蹴った。

 

(駄目だこいつら……私がしっかりしなきゃ!)

 

 そんな決意を込めた目でアルフィアを見る……と、なんと己の主神がアルフィアのベッドにそそくさと潜り込もうとしている姿を見てしまう。

 

「ちょおおおおお!!!!!」

 

 思わず瞬歩を使ってまでヘスティアを押し留めるリリ。そのレベルに不相応な予備動作の極めて少ない超加速にほんの少しだけアルフィアがその瞳を開いていた事にも気付かず、ヘスティアの肩をガックンガックンと揺らしまくる。

 

「何してるんですかぁぁぁ!!! ヘスティア様ァァァ!!!」

「え……いや〜、ほら、病気の時って心細いって聞くし……」

「分かりました! 寂しがりのアルフィアさんとは私が一緒に寝ますので! ヘスティア様は私のハンモックを使って下さい!」

「おい、私は一人で寝るぞ」

 

 スポーンと服を脱ぎ去り*2スパーンと寝間着に着替えたリリにアルフィアは抗議するが、今の使命感に囚われた彼女はソレを聞くことはない。

 

「居候は黙っててくださいよ! アルフィアさんは歯を磨きましたか!? 磨きましたね! ほら寝ますよほら! ねんねんころりよおころりよー!」

「そのテンションの子守唄で寝るのは無理があるだろ」

「うーん、僕はちゃんと寝やすいようにゆったり歌ってあげてたんだけどな」

「リリ坊、お前子守唄歌ってもらっとったのか」

「二人ともうるさい!」

 

 ガルルル! と威嚇して二人をベッドから遠ざけたリリは、己の得物(斬魄刀)をベッドの下に置き、アルフィアをズイと壁際に寄せて己が刀の側に寝転んだ。

 

「とにかく私はアルフィアさんと一緒に寝ますので!」

「えー」

「えー」

「『えー』とか言わない! コレはもう決定です!」

「リリ君、子守唄歌った方が良いかな?」

「リリ坊よ、『オッサンがえーとか言っても可愛くない』とかツッコまんのか? *3

「寝 な さ い !」

 

 聞き分けの悪い大人二人をハンモックとソファに押し込んだ彼女は、プリプリと怒りながらアルフィアの入ったベッドに潜り込み、刀の鞘に取り付けてある紐を片手に握り込んで目を閉じた。

 

「おやすみなさい、アルフィア様」

「おやすみ〜リリ君」

「おやすみリリ坊」

「おやすみなさい、お二人共」

 

 そして静寂と暗闇が支配する部屋の中で、しばらく後にポツリとヘスティアの声が響く。

 

「……また僕ら家族が全員集まれて、本当に嬉しいよ」

「無論、俺もだ」

「私もです」

「……」

 

 黙って空気に徹そうとしたアルフィアだが、ヘスティアが「しかもアルフィア君も居るしね!」と言ってきたので溜息を吐きつつ「私はいいだろう」とだけ言って壁側に寝返りを打った。

 

「本当に……長かったねぇ、一年間は」

「俺はあっという間だったがな」

「そりゃそうでしょうよ、毎日あれだけ炎ブチ上げてたら。というか寝ましょうよ」

(炎……?)

 

 

 

「……というかさぁ、本当に修行しかしてなかったのかい? いくらフレイヤのトコと言えどもさあ」

「ん? いや、俺は卍解の精度向上の為に【フレイヤ・ファミリア】の洗濯物乾燥係も請け負っていたぞ。俺の鳳鎚(おうづち)の『熱を叩き込む』能力で水分を蒸発させつつ布が燃え上がらないように霊圧をコントロールしてな」

「いや、あの卍解ってそんな事に使っていいんですか? あと寝ましょうよ」

(バンカイ……?)

 

 

 

「……あーもー! 昼間は忙しすぎて全然話せなかったんだから!! 気になる事が多過ぎる! こうなりゃ徹夜でおしゃべりだ!! セルバン君、コーヒーだ!」

「よし来た主神殿」

「寝ろ!!」

「ハイごめんなさい」

「すいませんでした」

(何処のファミリアも身内のノリは同じだな……)

 

 何とかして夜更かしを決行しようと頑張る二人を叱りつけ、本格的に目を閉じた彼女は二度、三度と見じろぎをした後にすうすうと規則正しい寝息を響かせるようになった。

 

 そして、構ってくれるリリが本格的に寝の姿勢に入ったことを察した二人もまた言葉少なに姿勢を変える。

 

 それから暫く経って、二人と一柱が完全に眠ったことを気配から察したアルフィアは横目でちらりとリリを見て、もう一度瞼を閉じる。

 

(……押し切られたな……)

 

 本来彼女は静寂をこそ好む人間だ。このような喧騒は彼女の好むものではない。だが、今日の喧騒はどうにも避ける気にならなかった。

 

 本当は、帰ってくるとは予想していなかったが……【ヘスティア・ファミリア】が帰ってきたら大人しくこの教会を辞そうと思っていたのだ。

 

 それがしかし、今はこのファミリアの三人と同じ部屋で布団に包まれている。普段の唯我独尊を自認している自分の感覚からすればコレはあり得ない事だ。

 

 アルフィアは静寂をこそ好む人間だ。

 

 ヘスティアのむにゃむにゃと何か言っている寝言も、セルバンのドワーフらしい低いイビキも、リリのベッドの中で小さく丸まってピクリとも動かない息を潜めるような寝姿も、そして己の浅ましくも命を惜しむような心音も。

 

 今日は、どんな音も普段ほど気にならなかった。

 

(久しぶりに人と触れ合ったから……かもな)

 

 そんな事を思っていると、胸の奥を刺すような痛みを感じる。

 

 それは別段比喩的なものではなく、純粋に……彼女の持病の症状であった。

 

 その痛みと息を吸う暇もなく只管咳き込み続けさせられる苦しみを無理に飲み下し、アルフィアは一切の音を立てずに上体を起こす。

 

 三人が眠っているこの場所で喧しく咳き込むわけにもいかない。

 

「……外に……こほっ」

 

 音のしない歩き方程度、症状が出ていようと訳はない。アルフィアは誰も起こさないように地下室から物音一つ立てること無く外に出て、教会の裏庭に出る。

 

「────っゴホッ、ゴホ!! がっ、ゲホッ!!」

 

 狭い地下室であの三人が騒いだから……等というつもりはまるでないが、それでもここ最近は落ち着いていた反動か数分に渡り大小の波はあれど中々収まることの無い咳にいよいよ血が混じり始めたその時、背後にザリ……と砂利を踏む音がした。

 

「……お水、どうぞ」

「…………」

 

 蹲った状態の姿勢でチラリと上をみれば、そこには木のマグカップを持ったリリが何とも言い難い表情で立っていた。

 

 黙って彼女の差し出したマグカップを受け取った彼女は、しかしそれに口を付ける前に再び激しく咳き込んでしまい、カップを取り落としてしまう。

 

 中身の水を撒き散らして地面に転がったソレを無言で取り上げたリリは、そのままアルフィアの背をゆっくりと撫で始める。

 

 暫くの間只管咳き込んでいたアルフィアだが、リリが背中を撫でたお陰か、少しばかり余裕が生まれる。

 

 その時すかさず手渡された、砂汚れを洗った為表面の濡れたマグカップを奪って中身を飲み干すと、そこまで来てようやくと周囲を見渡す余裕が生まれた。

 

「落ち着いたかい?」

 

 自分がカップを奪い取ったのは、神ヘスティアであった。その横にはホカホカと湯気を立てる湯の並々と入ったタライを持ち、手拭いを腕にかけているセルバンも立っている。

 

「私とした事が、まさか非戦闘職である鍛冶師どころか神にまで隠密を気取られるとはな」

 

「気取ったのはリリ君だけさ。僕らはリリ君が外に出た音で起きたからね」

 

「……横で寝てたから気付いただけですよ」

 

 そんなふうに己を卑下しながら、セルバンの持つタライで手拭いを濡らし、血と唾に汚れた己の口元を拭うリリに好きなようにされながらも(同じファミリアの、しかも要警戒状態のダンジョン内での野宿でも妹にしか気付かれた事が無いのだが)と思う。

 

(まぁ、外に対し警戒するダンジョンでのそれと私個人を警戒する事は勝手が違うかもしれんな)

 

「……少なくとも、ご病気は事実のようですね」

「えっ、疑ってたのかいリリ君!?」

「あんな壮大かつ悲劇的な身の上話を初見で全て信じられる人間の気が知れませんけど」

 

 そんな話をしている間も、リリの掌はずっとアルフィアの背中を撫で続けていた。

 

 

 

 そして次の日。

 

 

 

「これ、近所のおばあちゃんに貰ってきた咳止めの薬草ね、潰した汁を滲ませた布をね、首に巻いとくと良いんだって!」

「ほれ、取り敢えずありものの端材で湯たんぽを作っといたからな。もし水漏れがあったら直ぐに布団から出すんだぞ。良いな?」

「アルフィアさん、水差しここに置いておきますからね。水瓶もベッドの近くに寄せときますから、水分補給はちゃんとしてくださいね」

 

 アルフィアは人生でもなかなか無いぐらい献身的に世話をされていた。

 

 最早下に置かないレベルの対応に彼女らしからぬ戸惑いを見せていると、三人は火鉢やらタオルやらとドンドン新しいものを運んでくる。

 

 ついにはリリの宝物だというブッッッサイクなぬいぐるみ*4まで出てきたあたりでようやっと戸惑いを乗り越え「私は子供じゃないんだが」と口応えできたアルフィアは、名残惜しそうに何度も自分をチラ見しながら出口でまごついている三人を鬱陶しそうに睨んだ。

 

「……大丈夫かいアルフィア君? やっぱり僕ぐらい付いていた方が……」

「……早く行け」

 

 このホームの住人である三人が帰ってきたとはいえどまだまだ再始動には準備が必要な【ヘスティア・ファミリア】。それぞれがまだまだ忙しい身分であった。

 

 団長であるセルバンはギルドにファミリア運営再開の手続きを。

 

 ヘスティアは離散前に関係のあった各ファミリアに挨拶がてら金物店営業再開の為の諸々の材料の買い付けを。そしてリリは主神の護衛としてその同道を。

 

 生活基盤を再び整える為に奔走しなければならない彼等は(面倒を見る義理もないのに)アルフィアを放っていく事に対して非常に申し訳なさそうにしながらウダウダしつつ教会を出ていった。

 

「ふぅ……全く」

「あ、アルフィア君。何時間かに一回近所のおばあちゃんに確認に来てもらうようにお願いしてるからね。お行儀よくしてね」

「うるさい早く行け」

 

 

 

 最後にもう一度ベッドに戻ってきたヘスティアがアルフィアに布団をかけ直し、ポンポンと胸のあたりをあやすように叩いてから「いってくるね」と笑った。

 

 それを無視して目を閉じたままのアルフィアを微笑ましく見送った神は、ようやっと外に出ていった。

 

 静まり返った部屋の中で、目元を手で覆って深い溜め息を吐く。

 

(むず痒い……)

 

 アルフィアは昔から最強の存在であった。

 

 誰が呼んだか、『才禍の怪物』。彼女はあまねく全てを蹂躙するだけの才能を持ち、またその才能を活かす努力を欠かさなかった。結果として、彼女はあらゆる者に畏怖され、己に好意を持つ者たちも皆そこには畏敬の念があった。

 

 何が言いたいかと言うと、アルフィアは生まれてこの方こんな赤ん坊にするような猫可愛がりをされた事が無かったのだ。

 

 これまでに経験の無い事の上に向こうには親切心しか無いのだからどうにも拒絶しづらい。こちらとて体が確かに弱っている手前拒否する理由もないし別に世話を焼かれること自体は悪い気もしないが、それはそれとして非常に腰の据わりが悪かった。

 

 そんなアルフィアは、目元を覆っていた手をどけて、天井を見つめながら一言呟く。

 

「……私を笑いに来たのか? ……ザルド、そして……エレボス」

 

 いつの間にかベッドの横に立っていた二人の男。

 

 その二人は……

 

ああ、そうだが?

ぬいぐるみ抱いておネムなアルフィアたんかわよ

 

 アルフィアは二人に向けて同時に膝蹴りと拳を繰り出した。

 

 

 

 それとほぼ同時刻。

 

 

 

「やぁ! 久しぶりじゃないかオーエツ! いや今はセルバンを名乗っているのだったかな?」

「…………」

「うん? お~いオーエツくーん、セルバンくーん? 聞こえてる? 聞こえてない? おーい」

「…………ああ、何やら無礼で不愉快な声がすると思えばヘル何とか様ではないか。久しぶりだのう」

わあお棘があるう

「当然でしょう……ヘルメス様、貴方自分が何したか覚えていないんですか」

 

 ギルドに書類を提出したセルバンがその対応を待っている間の時間に、ひっそりと寄ってきていたヘルメスに痛烈な一言を発していた。

 

 尚、【家族喰い(マーダラー)】事件の聴取の中で全ての事件の発端(あくまで発端であり決して元凶ではないのが厄介)がこの男神である事は既に関係者にはバレている。

 

 アイズは色々といっぱいいっぱいであったためヘルメスの容貌などは覚えていなかったが、リリはそのへんを目ざとく記憶していたが故である。

 

『リリ君、アイズ君にランクアップを唆したのはどんな神だい?』

『胡散臭くて金髪で鬱陶しそうな髪しててムカつくニヤニヤ笑いでくたびれた格好してて気取って夕暮れの路地の木箱に座ってドヤ顔でオカリナとか吹いてそうな……』

『そんなのヘルメスしか居ないじゃないか!』

『フィィン!! ヘルメスのボケ連れてこいやぁ!!』

 

 因みに抵抗虚しく引きずられて二柱の前に投げ捨てられた彼の神はロキによって顔の輪郭が変わるまでボコボコに殴られ*5、その上しばらく四つん這いでしか歩けなくなるくらいにヘスティアに執拗に股間を蹴り飛ばされる*6という仕打ちを受けた結果居た堪れなくなった関係者(特に男連中)は一応の許しを出さざるを得なかった。

 

 しかしそれはあくまで一応であり、今でも会えばこうして唾でも吐かんばかりの対応をする。

 

 尚、対応を許されているヘスティアはまだマシな方であり、ロキの側に至ってはヘルメスの側からの全団員への接触を禁止されている有様である。

 

「まあせっかく久しぶりに会ったんだし、世間話でも……」

「誰がするか……と言いたいが、お前に一つ聞きたいことがある」

「うん?」

 

「アルフィアという冒険者を知っとるか?」

 

「…………何処でその名前を?」

 

 

 

 ヘルメスの顔から、笑顔が消えた。

 

「どうも、知っとる様だな。話せる事は全て話してもらうぞ……奴は何者だ? どう考えてもただの冒険者では無かった」

 

 

 

 また同時刻、別の場所でも。

 

 

 

「ほーん、ほんなら今日から運営再開な訳や」

「まーね。これから一大ファミリアへのスターダムを駆け登るのさ」

「ぬかせアホ」

 

【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)、【黄昏の館】の庭でキャアキャアと歓声を上げながら転げ回って遊ぶリリとアイズを眺めながら、ロキとヘスティアは紅茶を飲んでいた。

 

 尚、そこにはアイズの母親役であるリヴェリアも同席していた。最初は給仕に徹しようとしていた彼女だが、神二人の「ドチビに給仕なんか要らんわ。自分で()がせェ」「ロキの世話なんてしてないで僕と一緒にお茶飲もうよ」という言葉に甘えた形になる。

 

「そういえば斬魄刀はどうなんだい?」

「ん。まぁボチボチやな〜。何人かは……ってとこや。オラリオ全体でも刀の名前を聞いた奴は増えとるからな。その噂にアテられて浅打の需要も増えとる。これからドチビんとこは忙しなるで」

 

 実際には、この場に居るリヴェリアの斬魄刀は解放されているのだがそれをおくびにも出さずにサラッと話題を流すロキ。そしてヘスティアはそれに違和感もなく乗っかる。

 

「うーん、セルバン君はヘファイストスにちゃんと斬魄刀の作り方を教えたって言ってたんだけど、どーもあそこでもヘファイストス以外には全然再現できてないみたいなんだよねえ」

「技術の独占とか考えへんのかお前んとこのセルバンは」

「セルバン君は趣味でやってるだけだからねえ。日々を食べていけるだけ売れればあとは特に気にしないと思うよ? 銀筒もそうだけど、あの瞬歩の靴も【フレイヤ・ファミリア】で散々強請られて鬱陶しかったから簡単に作れるだろうアスフィ君とかに設計図売ろうと思ってるとか言ってたしさ」

(こいつホンマ情報の秘匿とか考えへんな)

 

 ロキ側はロクに情報を出さず、ヘスティアばかりが情報を吐き出すお茶会の中、縦横無尽に空を跳んで鬼ごっこをする二人を眺めながら、ヘスティアは「ねぇロキ」と声音を変えた。

 

「ん、何や」

「アルフィア君っていう灰髪の元冒険者、って聞いて何か思い当たるところ無いかい?」

 

 

 

「…………お前。ソイツをうちが知ってるとして、何が聞きたいんや」

 

 

 

 リヴェリアが息を呑む気配を感じながらもロキは紅茶のカップを置いた。

 

 そんなロキに、ヘスティアは。

 

「うーん、取り敢えずすぐ知りたいのは何処の医療系ファミリアのお世話になってたか、かなぁ」

「はぁ?」

「掛かり付けのお医者さんがまだこの街に居れば楽なんだけど」

「…………はぁ?」

*1
嘘がないだけで大分誤魔化されてはいるのだが、そのあたりはまだまだ下界三年目のヘスティアには気付けない所だ

*2
茶色い毛糸のかぼちゃパンツ

*3
破面編で平子が結界の構築を渋るハッチに言ったセリフ

*4
一年前の一家離散直後、どうにも悪夢と夜泣きの酷かったリリの為にヘスティアが縫ったもの。ヘスティア曰くかわいいクマさん、対外評価は瀕死の豚

*5
ヘスティア:ロキはほんと残虐なこと平気でするよね……僕にはとても真似できないよ

*6
ロキ:いやホンマ流石は処女神というか……ホンマに男の身体の仕組みを知らんのやなアイツ。ウチにゃとてもやないけど真似でけんわ




Q.リヴェリアができたならアイズは?

A.アイズはまだ。
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