オラリオで斬魄刀打つ転生者の話 作:オリ斬魄刀の小説増えろ
誤字報告来ていましたが、おゆはんは誤字ではありません。が、分かりにくい方もいるかも知れませんのでルビを振っておきました。よろしくお願いします。
「アールフィーアくううううん!!! 君ヘラのとこの
どっかの馬鹿が自分の所属している【ファミリア】を漏らしたらしい。
別に自己保身でもヘスティアを気遣った訳でもない、できれば知らない方が色々楽かな程度の考えではあったが、それでも己の思惑をぶち壊された事は気分が良くなく、アルフィアは布団を目元まで引き上げて受け入れ拒否のポーズをとった。
だがしかし今や完全にアルフィアを身内判定した*1ヘスティアはそんな態度にもめげること無く、「このこのぅ」と布団越しに頭を撫でくりまわしている。
アルフィアは無言で更に布団を引き上げたが、ヘスティアは笑顔で布団ごとアルフィアの頭を撫でた。
無言でガサガサと布団を繰り寄せ、両手を使って耳に押し当てるアルフィアの生白い指をキュッと摘んで弄んだりしながらもヘスティアは喋り続ける。
「リンゴ食べる? ツヤのいいのあるよ? それとも〜? アルフィア君は梨が良いかなぁ! あ、お昼は卵粥作ってあげるからねえ。僕の卵粥は美味しいよ〜? それにほら、手触りのいい布と中に入れる蕎麦殻も買ってきたからね! 最初は綿にしようと思ったんだけどねぇコレは背もたれみたいに扱うから硬いほうが良いかなって! それとねそれとね、あとディアンケヒトのところに寄って昔君が買ってたっていうお薬も買ってきたからね! あと〜……」
喋る喋るまぁ喋る。ンまァ〜〜〜、喋る。
ついにはモゾモゾと布団に頭の先まで埋まり込んだアルフィアの頭をなでくりなでくりしながらヘスティアは鼻歌まで歌わんとばかりに上機嫌だった。
「ねぇねぇアルフィア君! アルフィア君はご飯何が好きかなぁ? 今日の
「ヘスティア様ぁ〜、軽い荷の積み下ろし手伝ってもらって良いですか?」
「あ、うん! ……また後で話そうね、アルフィア君!」
まだ喋ろうとしたヘスティアを遮ったリリの協力要請にトテテ、と部屋を出る。
ヘスティアの言葉にアルフィアは、包まった布団ごと己の頭を強く抱きかかえる事で返答とした。
そして、ヘスティアと入れ違いに革の手袋を取りに来たリリ(鍛冶系の重い荷物担当)に無言でポンポンと布団を叩かれた。
布団に頭まで包まったままのアルフィアに、その手を無言で払い落とされた。
「アルフィアよ。お主レベル七だそうだな。そりゃあ全く大したもんだ」
夕飯時に帰ってきたセルバンからの指摘は、たったそれだけだった。
神が神なら眷属も眷属だと言わんばかりの反応の薄さに、当のアルフィア自身が「……他にもっと何かないのか?」と眉を顰める。
「そりゃあお前、あるがなぁ……だが俺達に隠していたという事はお前、それを聞けばお前の心は傷つくんじゃあないのか」
「……傷つく?」
「俺はお前の心の内を、お前の心を踏み荒らさずに聴く術を持たん。であれば、お前から俺達に話してくれるまで待つしかあるめえよ」
「お。良いこと言うじゃ〜ん、セルバン君ったらさ!」
「普段から考えられないくらい良いこと言いますね師匠。それ誰の言葉ですか?」
「朽木ルキア!」
全く人間性に信用の置かれていないセルバンが自慢気に胸を張ってシチューを頬張る姿を見ながら、アルフィアは己のスープ皿から芋を持ち上げ、咀嚼した。
曲がりなりにもオラリオを追放された自分をこうして匿っているのだ。周囲の人間やファミリアからの突き上げは彼女をして容易に想像できる。
だがこの三人は、アルフィアによって齎された苦労をおくびにも出さずにこうして温かい食卓に自分を置いてくれている……何も、何も聞かずに。
「…………ありがとう」
咀嚼した芋を飲み下すと同時に溢れたそんなかすれるような、かつての彼女を知るものからすれば目を剥くような素直なその小声を、二人と一柱は軽々と受け入れる。
「いいよ! 君の気が済むまで、なんならこれから先もずっと居てくれたって良いんだからね」
「あぁ、収入の心配も要らんぞ。俺達は小金持ちでな」
「……まー、厄介人間二号が三号の事をどうこう言う権利もありませんしね」
「ワハハ! リリ坊よ、その言い方じゃあ俺が一号になっちまうぞ」
「いや師匠は一号でしょ? 何言ってるんです?」
「ん? いやいやハハハ、まさかそんな」
「いやいやいや!! え、嘘でしょ本気で言ってます!?」
「あっはははは!!!」
自分はあくまで常人だと言い張る狂人とその狂人に振り回される常人(諸説アリ)。そしてその二人を見て腹を抱える神。
そんな三人を見つめるアルフィアの脳裏に、朝方に聴かされた悪神の言葉が蘇る。
────決行は、一月の後。
────ここまで来たけど、今の君に参加を強制はしない。だがその代わりに……
────……期待している。君が僕らの下に来てくれる事を。
温かいシチューを掬って喉に流し込む。
もはや味を感じる余裕も無かった。
ただ────
護りたい
これ以上この家族達と一緒にいるのは不味い。そんな事はよく理解しているのに、アルフィアの身体は縛り付けられたようにどうにも動かない。
(……私は、こんなにも弱い人間だったのか)
ただ閉じた瞼の裏で、己の中に存在する二つの
「アルフィア対策会議〜〜〜〜」
「俺が! ガネー」
「司会はこの俺、ヘルメスが行うぜ!」
アルフィアのオラリオ侵入が発覚した一週間後の、バベルの中層辺りにある窓の無い一室。
そこには錚々たる顔触れが集まっていた。
この街の現支配神が二柱、神ロキと神フレイヤ。そしてそれぞれの眷属の頭、団長であるフィンとオッタル。
街の治安を維持する役目を担う、【ガネーシャ・ファミリア】の神ガネーシャと団長のシャクティ。
治安の維持ではなく犯罪者の積極的取り締まりを主とする、ガネーシャとはまた違うスタンスの正義を持つ【アストレア・ファミリア】の神アストレアと団長のアリーゼ。
そして、ファミリアの立場上今回の件に大した関わりも無いくせに司会進行役として上手いことこの集まりに一枚噛んだ【ヘルメス・ファミリア】の神ヘルメスと団長のリディス。
「……んで? どないやねんアルフィアの様子は」
「うん、昨日は朝は教会の庭でヘスティアと日光浴をしつつうたた寝、昼頃にリリ君とセルバン君の剣の稽古を少しつけてやって、夕方に洗濯物を取り込んであとは教会から出てこなかったね。最近じゃ暇なアルフィア君を見かねたヘスティアが毛糸を沢山買ってきて、暇があれば二人で編み物をしてるよ。最初はヘッタクソだったけど一瞬でヘスティアよりも上手くなってて今は冬に備えて全員分のマフラーと手袋を……」
「平和か!!!」
バァンっとテーブルをぶっ叩いて叫ぶロキに、ヘルメスは「そうだよ」と悪びれもせずに頷く。
それに同調するように、ガネーシャとアストレアもまたちょっと気の抜けた表情で己の報告をする。
「アルフィアに関してはそう秘匿している訳でもないようだ。ガネーシャの
「私の所もそれは確認してるわ。それにあの……【車椅子】だったかしら? 押して動く椅子をセルバンが作ってからは人通りの少ない路地をリリやヘスティアが押して散歩しているところをウチのライラが見ているの。人目を避けている様子もないから、多分大通りに出ないのは普通に人通りの中じゃ車椅子を動かしづらいのと……アルフィアの嗜好じゃないかしら?」
情報が出揃えば出揃うほどに浮かび上がってくる平和ボケした事実に、その場の神々は各々頭を抱える。
その中で、あくまでも優雅にカップを摘み、紅茶で唇を濡らしたフレイヤは会合の結論をつける。
「……つまり、今のところアルフィアはごく普通の街娘として暮らしていて。ヘスティア達もあくまでただの居候として扱っている……と。そういう事かしら?」
「そうなるかな」
「そうなるわね」
「俺が! ガネ」
「理解……でけへんッ!!」
ガネーシャの言葉を遮ってガックリと肩を落としたロキは、そのままバターっとテーブルに上半身を預けた。
「レベル七やぞ!!!! レベル七って、おま……今のオラリオの天下取れるわ! それが日向ぼっこて……!! 編み物て! 洗濯物てッッ! しかも相手はあの【才禍の怪物】!! ホンマどーなっとんねんアイツの引き運は!! その引き運ウチにもくれやぁぁッ!!」
「無欲の勝利ねえ……」
もだもだもだっとテーブルの上で上半身をくねらせるロキを笑うように紅茶を呷るフレイヤだが、カップを手元から口元に運ぶペースが普段よりも若干早い。どうやら彼女もまた平常心というわけにはいかないようであった。
「……で? 斬魄刀はもう手にしとるんか」
「してないし、セルバンの仕事中工房に入ろうとして門前払いされてたね。それ以来工房に近づいていないらしいから、どちらにもコチラの要望はある程度聞き届けられているようだ」
あの日、セルバンにアルフィアの事を尋ねられたヘルメスがなりふり構わず
それは、『アルフィアに斬魄刀を渡さないで欲しい』というもの。
アルフィアが追放されたレベル七だという情報と共に頼み込まれたその要望に、セルバンは別に躊躇もせず素直に頷いた。
『うん、まぁそういう事情なら仕方が無かろ』
普段変なことばっかりしているくせにこういう時に限ってヤケに物わかりの良いその姿に逆に不信感を持ったヘルメスだったが*2、経過観察の結果として問題無しと判断していた。
「……しっかしなぁ。あの【才禍の怪物】が……信じられんけど、まぁそっとしとくしか無いわな」
「ふぅん。態々この事態を把握してる私達が集まるタイミングで接触掛けてる
会議を纏めようとした言葉を混ぜっ返したフレイヤに、ギクリと身を震わせるロキ。
その言葉に周りの神々が怪訝な顔をする中、フレイヤは目を閉じてカップを口元に運んでから、「ヘルメス?」と話を向ける。
「ヘルメス、どういう事かしら?」
「うん、ガネーシャ疑問!」
「お前ェ……」
「あ〜〜〜、ハハハ……」
最初は笑ってごまかそうとした彼だが、周囲からの視線でそれが不可能だと察してからは寧ろ胸を張って宣言する。
「あー、皆には悪いんだけど、俺の眷属達に君等全員の動向を監視させていた」
「ンでそれをフレイヤだけに報告してたっちゅう訳や。ナメとんな」
「おいおい、そう怒るなよぉ! そもそも監視の発案はフレイヤだぜ? フレイヤに報告するのは当然だろう? というかそもそもロキが抜け駆けしようとするのが悪いんだろう?」
「あーホンマこいつシバきたいわ〜、マジで……っちゅうか別にウチはアルフィアに接触するつもりとか無いし。単純にウチのアイズたんがリリと遊びたいっちゅうから『エエよ行ってき〜♪』って言うただけやし」
「ふーん、俺の情報網じゃ副団長のリヴェリアまで付いていってるみたいだけど?」
「お前は知らんかも知れんけどな、アイズたん今年で八歳やねんで。あないなオラリオの端の端とか一人で歩かせてエエ距離やないやろ? 最近治安も悪いしな〜。せやからアイズたんの保護者のリヴェリアママに付いてってもろてん」
「己のファミリアの副団長を連れて行って、相手を刺激するとは思わなかったのかしらね?」
「あーその辺は考えてなかったな〜。なんせアイズたんがヘスティアんトコ遊びに行く時はリヴェリアが付いていくんが当たり前になってたからな〜。配慮とか全然考えんかったわ〜いやホンマにゴメンな〜?」
茶請けのクッキーを「コレうまっ」と摘みながら嘯くロキの言葉を、全員が困ったものを観る目で見ていた。
実際その理論には何の間違いも無い。アイズがリリの友達なのも、アイズくらいの歳の子供が一人で歩いて良い街ではないのも、一年前はアイズがよくリヴェリアと一緒に【ヘスティア・ファミリア】に遊びに行っていたのも本当なのだ。
(流石にコレは、いち早く【ヘスティア・ファミリア】と個人的な友誼を結んでいたロキの判断勝ちかな)
ヘルメスが軽く他の席に目配せをすると、皆表情はそれぞれに違えど気持ちは一致していたようで、肩を軽くすくめたり首を傾げたりしてロキの行動を黙認する姿勢を伝える。
「……ま、しょうがないよね。子供は遊ぶもんだしね」
「せやな〜。まぁアイズたんにもアルフィアっちゅう怖ぁ〜いのが
「うーん、それすっごいフラグっぽいから言ってほしく無かったな〜!!!」
こうしてロキがゲラゲラ笑っているその頃、話題に出たアイズは刀を正眼に構えていた。
「……よろしく、おねがいします」
「挨拶をする暇があるなら、一撃でも多く斬れ」
「……ッ!?」
三
「がッ!?」
「レベル三、しかし成り立てか。まだまだ身体操作が甘い」
こっそりと後ろから近づいて不意を付いたリリの横っ面を後ろ回し蹴りで蹴り飛ばしたアルフィアはアイズの顔をつかんだまま振り回し、倒れ伏すリリに向けて投げ飛ばした。
「あがっ!!」
「ギャプッ!!」
頭からリリのみぞおちに突っ込んだアイズを、痛みを堪えながら恩恵により強化された筋力で無理やり投げ飛ばしたリリは紙一重でアルフィアの追撃を避ける。
「……お前は追撃をさせない事と致命傷を避けることが抜群に上手いな」
「…………」
「そこで返事をしない所も良い。よく殴られ慣れているといったところか」
つま先で地面を掘り、出てきた石ころをアイズに向かって蹴り飛ばす。
何とか立ち上がった所に追撃として放たれた小石を何とか手に持った鞘付きの斬魄刀で受けたアイズは、再び瞬歩でアルフィアに迫る……が。
「なるほど。魔力を足の裏で爆発させて高速加速を行っているのか。便利な技術だ」
「……ッもう出来ッ……」
「想定外に一々驚くな、愚か者め」
ほんの数回見ただけの瞬歩を見稽古で習得したアルフィアに追いつかれ、再び胴体に蹴りを入れられる。
「ッッッ」
今度は先の経験を活かし、アイズと全くの同時にアルフィアの頭上から飛び込んだリリがその灰の脳天を
(……貫く?)
「お前もだ。想定外に慣れろ、
誰にも見せてもらってすらいない【隠密歩法】を人生二回目の瞬歩で編み出したアルフィアは、刀を振り下ろした体勢のリリの顔面に膝蹴りを叩き込んだ。
「どうした? 手加減をしている今の私の動きは【レベル三】相当でしかないぞ。攻撃が通用するしないの以前に、一太刀浴びせることすら出来ないのか? 最新の冒険者も大したことが無いな」
「…………ぐっ」
「ッ痛ゥ゙……!」
「どうした? 認めるのか? 鈍間共」
「「もう一回っっ!!」」
「……だから」
再び武器を構える二人の横に瞬歩で移動したアルフィアは、その頭を鷲掴みにしてガヅッ!! と凄まじい勢いで打ち合わせた。
「一言でも話す暇があるなら身体を動かせと言っているだろう、愚鈍な奴らめ」
「ッァァァアアア!!!!」
「がぁあああ!!!」
リリとアイズ。それぞれが上段と下段に分かれた拙い連係でアルフィアを攻め始めるその姿を、敷地の端でリヴェリアが見ていた。
「あれほど! 大人しくしろと! 言ったのに……!!」
正確には頭を抱えて見ていた。
その横にはお茶会用のクッキーと紅茶を持ったヘスティア。
「あー、やっぱりかー。お茶淹れてる間にこうなるんじゃないかとは思ってたけどねー」
包帯とポーション取ってくるねーとパタパタ建物の中に戻っていくヘスティアを頭を抱えたまま見送って、チラリと現実逃避気味に裏庭を見回すリヴェリア。
その裏庭の端っこの方では、セルバンが座禅を組んで刀を足に乗せる……所謂刃禅を行っていた。
(卍解とやらが出来た後でもああやって刃禅を欠かさぬのだな……)
現在、リヴェリアは己の斬魄刀を一段階解放している。
しかしセルバンの努力する姿を見ると、やはりそこで緩んではいけないのだなと改めて身を引き締める思いだった。
そんな所にふっ飛ばされたリリが転がってきて、セルバンの足にゴンとぶつかる。
「うぅ……ごめんなさい師匠」
「……」
「…………師匠?」
全く反応を返さないセルバンに首を傾げるリリ。
その眼前で、セルバンの顔中の穴という穴から勢い良く血が噴き出した。
「ブブオォッ!!」
「おぎゃー!?」
どうやら刀との対話に失敗したらしいセルバンを見て、リヴェリアは一つ頷いた。
やっぱり何事にも程度はあるな、と再確認したその日だった。
アルフィアが大人し過ぎる気もしますが、今作でのヘスティア様に対するアルフィアはこのくらいで通します。