オラリオで斬魄刀打つ転生者の話 作:オリ斬魄刀の小説増えろ
というか大抗争始まったら日常回なんてやれなくなるからそれを惜しんで増やしてるところもあるので皆様もコレが最後の平穏だと思っておいて下さい。
最後の最後で誤字ってんじゃねえよ!!アルフィアとリヴェリア間違えてたわ!!みんなありがとうね!!
読者諸氏はご存知であろうが、現在アルフィアの動向は【ヘルメス・ファミリア】によって逐次監視されている。
そして、アルフィアもまたその事を把握している……つまり彼女は、甘んじて監視を受け入れているのだ。
つまり何が言いたいかと言うと……
「アルフィアの馬鹿は何処だぁぁ!!!!」
「ここだ」
「貴様ァ!! ウチのアイズを誑かしたな!!!」
アルフィアがド級の深夜、ド深夜に【ロキ・ファミリア】のホームに忍び込んでアイズを誘拐した事は即座に彼等の耳に入れられていた。
ちなみにその報告を受け取ったのは団長であり治安維持活動の為毎晩遅くまで策を練っているフィンであり、そんな彼はまずアイズの部屋に行き争い事が無かった事、そして監視役の言葉から彼女自身の意思で付いていったらしい事を確認。
その後信頼の置ける二級冒険者の部下を送り込んでどうやらアルフィアとアイズがこれまでとは違う本格的な修行を始めた事を確認した後。
『リヴェリアも最近は気を張りっぱなしで疲れているだろうし、報告は朝にしようか』
と、そのまま部下をヘルメスの眷属と共にアルフィアの監視任務につかせ、翌朝にリヴェリアへの報告と相成った。
そんな訳で怒髪天を衝く勢いでオラリオの隅っこに突撃してきたリヴェリアがアルフィアに折檻を与えんと肩を怒らせて近付き……その手元に赤汚い汚れの飛び散った木桶を見て、その歩調を緩めた。
思わず彼女の全身を上から下まで見れば、口元や首筋、着ている深緑のワンピース*1に至るまで赤黒い点がポツ、ポツ、と散見された。
かつての『都市最強』のファミリアが一人として力を振るっていたアルフィアの力無き姿に、眉を悲壮に歪めるリヴェリアを鼻で笑い、彼女は顎で教会の奥を指し示す。
「お前の所の餓鬼ならあそこだ。連れ帰るなら連れ帰れ」
その言葉に視線を向ければ、そこにはサイズの一回り小さい服*2を着たアイズが刃禅を組んで心の中に潜っていた。
明らかに全身余すところなくボコボコにされた跡が痛々しい少女に言葉をかけようとして思い留まった彼女は、目元に険を浮かべたままに、アルフィアへと向き直る。
「……何故、このような事を?」
「お前たちとしても次世代の幹部候補が育つ事は悪くないだろうに」
らしくもない、言い訳じみた言葉。
そのような言葉に対し表情を変えないリヴェリアは、無言で一歩迫った。
「私は、何故、このような事を。と聞いている」
その口調から誤魔化しは効かないと察したアルフィアは、木桶をゴトンと脇に置いてその中身を指差した。
その赤黒い液体……喀血の跡を見せた彼女は、珍しくその瞳を薄く開き、その冷たい眼差しでリヴェリアを見やった。
「私には時間が無い。降り積もり続けるヘスティア達への恩義を返せる宛も無いどころか、むしろ
「リリやセルバンで良いだろう」
「奴等には才能が無い。二人共それぞれの強みを活かして力を振ることはできるがその本質はこのオラリオに最も向いていない部類の人間だ……アイズは違う。奴の才能は群を抜いている……あの年齢で私が…………」
「………………」
「…………………………五歳の頃と遜色の無い動きをする」
「逆にお前が何なんだ」
尚、アイズはもうすぐ九歳である。
そう、もうすぐ九歳なのだ。
「え〜っと。コッチの花と、あとこの黄色い花と……暖色系に揃えた方が良いですかね」
「う〜ん、アイズくん花に興味ないからなぁ。あ、この赤い花はどうかなあ? 分かりやすく目立つしさ」
「わっ、良いと思います! すみません、真ん中にこの赤い花をお願いします」
(言ってから気付いたけどこれロキの髪色じゃない?)
その日、花屋に二人並んで仲良く笑い合っていたのは慈愛の神ヘスティアとその眷属のリリである。
「全部で……720ヴァリスね」
「はい、丁度お願いします」
「はい、ありがとうねえお嬢ちゃん。神様も、またいらして下さいね」
人の良さげな老夫婦の営む花屋で花束を買った二人は、花束の入った麻布の手提げ鞄を二人で片方ずつ持ちながら揃って小さいコンパスでてってこ歩く。
尚、その片割れがあの【
完全にただの仲の良い神と眷属の二人であった。
「あのお花屋さん、いつも頑張ってますね」
「売ってるものがお花だから店先を荒らされたりはしないみたいだけど、資金繰りは厳しいだろうからねえ」
そう二人は思っているものの、意外と花屋の需要というのは大きいものだ。
歓楽街の娼館を飾り立てたり、あるいは神々が見栄の為に己の
確かに、暗黒の時代において一般人が花を買い求める機会は減った。しかし、消耗品の需要が完全に尽きる事は滅多に無い。世の中というのはそういうものだ。
「あとは〜、お魚と、お野菜と」
「じゃが丸くんですね」
「だねー」
「山盛りですね」
「ふふふ、山盛りだねえ」
そんな見かけはただの少女二人でしかない姿……もっと言えば、ほんの数分前に取り出していた財布の厚みに目をつけた冒険者崩れがその背後ににじり寄る。
ちょっとでも脅してやればすぐに金を出すだろうとニヤついた笑みで近付いた男は、自身の獲物をチラリとこれ見よがしに揺らしながら……
「おう、そこのオバァっ!?」
何者かにブーツを引っ張られ、ビターン!! と盛大にすっ転んだ。
「うわっびっくりしたぁ!!」
「思いっきりコケましたね……」
「ンだぁ!? いきなり誰かが足を……」
引っ張りやがったと言いかけた男はすぐにその言葉を引っ込める。
代わりに出てきたのは、大笑いだった。
「うおっ!? おっ、うわはははは!!!!! ちょっ、やべろっ!! 何か、何か中にっ!!!」
というのも、今男の服の内側では何か小さい生き物が何匹も入り込んで脇腹やら背中やらを徹底的にくすぐり回っているのだ。
「なはははは!!! わーははははは!!! やめっ、やめろっクソっ!! わはははは!!」
男は何度も服の中を思い切り叩き、中の生き物を潰すのだが何度潰した感触を掌越しに感じても一向に小さな生き物は居なくならない。
「ヘスティア様、行きましょう」
「え、大丈夫かなぁ」
「ええ、何の問題もありませんよ*3」
「アッハイ*4」
笑い転げる男を横目にその場を辞する一人と一柱。その影が街角に消えるとほぼ同時に、男の腕や足の裾から豆粒のように小さな赤黒い鼠がチョロチョロと這い出て何処かに消えていった。
「ひっ、ひいーっ、ふぃっ」
後に残されたのは過呼吸気味になってその辺に転がされた男一人。
ある意味で、この街の割といつもの光景であった。
そこから数時間後に始まるのは、アイズの誕生日パーティーである。
「アイズ君! 誕生日おめでとうっ!!」
「ありがと、ヘスティア様」
両手をガバっと広げたヘスティアの笑顔と温かい言葉。
それに対し珍しく薄い表情に喜色を滲ませたアイズがハグを受け入れる。
そのまま「ふぬっ!!」という気の抜ける気合の声と共にアイズを持ち上げてクルクルとその場で回転したヘスティアは、ほんの数秒で息を荒げて彼女を地面に下ろした。
「っぶはぁ!! 勢いでやったけどアイズ君割と大きい……こりゃあ来年は持ち上げらんないねえ」
「ほれ、入れ入れ。ごちそうも用意しとるぞ」
「ごちそう……じゃが丸くんは?」
「山盛り」
その言葉を聞いて一言もなしに風のように教会に飛び込んだアイズを追いかけたのは無論リリとリヴェリア。
「ちょっと!! 先に食べ始めないでくださいよ!? 皆で食べるんですから!!」
「アイズ!! 食べる前は手を洗えと毎回言っているだろう!!」
瞳どころか顔中をキラキラと眩しいほどに*5表情を輝かせながら食卓……の中心に置かれたじゃが丸くんタワーに釘付けになっているアイズを引き剥がす二人を、室内のベッドからアルフィアが迷惑そうな顔で見つめている。
アイズの名誉の為に一応言うが、彼女は別に先走って食事に手を伸ばしたりはしていない。
ただ、じゃが丸くんタワーに鼻先がくっつくのではというぐらいに顔を迫らせてピョンピョンしているだけで。
「すごいねアレ」
「すごいだろーすごいだろー! 僕とリリ君が選んで買って来たからねあの
「じゃが丸くんタワーなんて初めて見た」
「まぁそっちだよね知ってた」
下に降りてきたヘスティアにキラキラとした顔を押し付ける少女を宥めながら、保護者は恐縮した様子で頭を下げる。
「申し訳ありません、ヘスティア様……」
「いーのいーの。君んところは人数が多いから個別で祝ってらんないんでしょ? このくらいなんてこと無いさ」
そう、人数の多い【ロキ・ファミリア】ではいかに家族といえど全員分を祝うとなると多ければ月の半分近くが誕生日会になってしまう。
よって、彼等のファミリアでは誕生日などは主神たるロキや同じパーティーメンバー等だけが祝ってくれるイベントであった。
尚、ロキはこの時に贈る誕生日プレゼントに関しては他の家族との差別感が出ないように、かつ各個人の嗜好に合うように、かつ己の小遣いの範囲で全員分を賄えるようにと相当に苦労して選出している……が、男の分は全体的に何となく選び方が雑だと専らの噂である*6。
因みにアイズが今年かの神から貰ったのは、広場にある屋台の【一日一個じゃが丸くん無料券(一年間有効)】。アイズは珍しくロキに抱き着いて感激を伝えていたが、予算はどう考えてもオーバーしていた。
何はともあれ、そんな大手パーティーらしいお誕生日会事情を聞いたヘスティアが「じゃあ僕等がお祝いしてあげよう!」と何の打算もなく、輝く笑顔でそう言ったのだった。
「ほら見てみて見てください!! け〜〜〜き〜〜〜!!!!」
「やた!! 食べよう食べよう食べよう!!! ほらアイズ君!! 見て砂糖菓子で作ってもらったんだよ!! ほらこれ〜! アイズ君人形!!」
「おお……!!」
サプライズ的に用意されていた、キラキラと輝く一抱えもある二段ケーキ。
頂点にはキラキラと輝く砂糖菓子の人形が乗ったそれを、目を輝かせて眺める美少女三人組を戦慄した表情で見るのは、無論大人組である。
(特注ケーキだと……おい、セルバン……一体幾ら使った?)
(主神殿の小遣いの使い道なんぞ把握しとらんわ)
(昔ファミリアでヘラに贈った時と物価が変わっていなければあのサイズなら五万ヴァリス以上はするな)
(……あとで礼をしておかなければ……)
リヴェリアは頭を抱えた。
この神、一年前の一件以降アイズを完全に身内として見てくれているのは有難いが……時折タガが外れるのは玉に瑕だ。
「……んだら、そろそろ誕生日プレゼントでも渡していくか」
じゃが丸くんタワーを始めとした種々の料理の解体が粗方終わり、全員が人心地ついたあたりでセルバンがそう徐に呟きガサゴソと布の包みを取り出す。
砂糖菓子で作られたアイズ人形に、机にベッタリと頬を付けて目線を合わせていた少女がその言葉にピョンっと起き上がる。
「……誕生日プレゼント!」
「まぁアイズ嬢は色々な者から色々な物を貰ってはいるのだろうが、俺は一味違うぞ……ほれ、リリ坊と同じ真央霊術院の制服だ! 染め上げの手法も昔に比べて随分と上達してな、手前味噌ではあるがこれまでで最高傑作の……」
「あんまりいらない……」
ニコニコ笑顔で素晴らしい出来栄えのコスプレグッズを手渡したセルバンが一刀両断されてしまいガキッと固まったのを哀れそうに横目で見ながら*7、リヴェリアもまた小包を手渡した。
「これは……?」
「エルフの伝手で用意してもらった特別の香油でな。かつて私が郷に居た頃に世話をしてくれていた者に頼んで作ってもらったもので、使っている材料のメインはエルフにとって厄除けの香木として使われている……」
「あんまりいらない……」
ニコニコ笑顔で素晴らしい出来栄えの王族御用達の香油(一瓶で屋敷一軒建つ)を手渡したリヴェリアが一刀両断されてしまいガキッと固まったのを見兼ねたヘスティアが包み紙を丁寧に剥がし、その中に入っていた練り香をアイズの手首に少しだけ着けてやる。
……一応念の為に言っておくと、完全に自分の趣味でしかないセルバンとは違い、リヴェリアのチョイスは的外れというわけではない。実際に彼女の用意した香油は落ち着いた素晴らしい香りで、お洒落に興味を持つ年頃ならば手放しで喜んだ事だろう…………ただちょっと……まだ年齢の割には精神的に未成熟気味な九歳の子供にはちょっと速いだけで。
「ほら、ウン、いい匂いじゃないか!! アイズ君もお姉さんなんだからお洒落しなきゃね! ウンウン!」
「……リヴェリアの匂い」
「ち、違うぞアイズ! その香に使われているのは樹齢二百年を超える香木で、私が使っているものはもっとリーズナブル(一瓶で荷馬一頭買える)な普段遣いをする為のものであってその香りの違いは歴然と……」
「ええ……いやリヴェリア様、何てものあげてるんですか子供に……」
「いや!! 違っ!! 子供が物心ついた頃に誕生日の祝いとして古木の香を渡すのはエルフの慣わしで!!」
結構必死で自分のブルジョワ疑惑(疑惑ではない)を晴らそうとしているブルジョワエルフを哀れそうに横目で見ながら、今度はヘスティアとリリが二人でアイズに包みを渡す。
「これは……?」
「風除けの為のケープだよ! アイズ君、結構激しい動きをするからあってもいいかなって思ってさ!」
「同じ理由で私からはバベルの店で見つけたゴーグルを。戦闘中は砂埃がついてもアレですし流石に着けないにしても、高速で空を跳ね回るアイズさんなら使い途もあるかと思いまして、ヘスティア様と相談したんです」
「おお……」
ニコニコと笑顔で手渡された肩から二の腕あたりまでを覆う程度の大きさの、滑らかな羊皮のケープと魔物の素材を使っている様子のゴーグルを着けてみたアイズは、ワクワクとした表情でピョンっと飛び跳ねた。
レンズ部分に軽く黄色の入ったゴーグルと動いても邪魔にならない軽い茶染めのケープに、アイズの表情がにわかにパッと明るくなる。
「おお……!」
「空を跳んでると風って結構気になりますからね〜」
「気に入ってくれたかな!」
「うん!!」
「次は霊王宮で一護が貰ってたターバンみたいな装備にするか……」
「仕方がないではないか……私はアイズに戦闘ではなく日常を見て欲しいのだ……」
ヘスティアとリリと三人で抱き合ってきゃあきゃあとはしゃいでいる姿、そして敗北感に打ちひしがれているセルバンとリヴェリア*8をぼんやり見ていたアルフィアだが、そこでふと思い至る。
(まさか、私も何か渡す流れか?)
そう考えて、しかし内心で首を振る。
そう、そもそもの話としてアルフィアはアイズと出会ってまだほんの少ししか経っていない。最近になってちょいちょいと面倒を見てやったりはしているが、そんなプレゼントを渡すような間柄ではないはずだ。
だがしかし、現実はそんなアルフィアの甘臭い予想を超えていく。
「じゃあ後はアルフィア君だけだね!!」
「は?」
んなもん用意してないが? と言いかけた彼女を遮るように、ヘスティアがアイコンタクトの後、やたらサマになっているウィンクでバチコンと合図を送る。
「……あぁ」
現実はアルフィアの甘臭い予想を超えていく……更に甘臭い方向に。
軽い溜息を一つ吐き、らしからぬ緩慢な動きで部屋の隅のベッドの下を覗き込み、
「……ほら」
私はこの流れに不満を感じています、という表情を隠しもしない彼女から手渡されたものをアイズがフサッと広げると、それは……
「セーターと、手袋」
それは、前をボタンで留められるタイプのセーターと、ミトンカバー付きの指貫手袋であった。
双方共に、一般的に用いられている無染色糸の他に高級な朱色と藍色の染色糸も用いられており、各所の仕上げの丁寧さも相まってちょっとした高級品……とまでは流石に言わないが、出す人はそれなりの金を出すであろうという仕上がりになっていた。
「……最近寒いからな。普段遣いにあって損は無いだろう」
どことなく言い訳がましい言葉を吐きながら、ヘスティアの指示によって何も考えず作っていた編み物を着けてみて無邪気に喜ぶアイズから顔を逸らす。
(出来上がったモノを渡さずに取っておけと言われた時は何事かと思ったが……)
基本他人が喜ぶ顔はすぐにでも見たいタイプのヘスティアが焦らすような事をするのが不思議だったが、アレはアルフィアがアイズの誕生日など知らない事を理解した上での行為だったのだ。
それが自身の不手際であるとは彼女は思っていないし、実際に誰もアルフィアにその事を教えていない以上は誰もそれを責める謂れは無い。が、それはそれとしてまたもやヘスティアに手取り足取り世話を焼かれたという事実は彼女の中で無性に気恥ずかしい事実として刻まれていた。
「……一言ぐらい言ってくれても良かったんじゃないのか」
「うーん、言ったらアルフィア君は馴れ合いたくない〜! って変に意地張って誕生日前に渡したり、今日渡さなかったりしそうだなって……ちょっと邪推しちゃった。ゴメンね?」
まるで悪戯を咎められたかのような困った顔で眉を下げ、心底申し訳なさそうに親切を謝る女神に、それ以上は何も言えずに彼女は無言でそっぽを向いた。
たしかに、やるかやらないかで言えばやらないとは言えない塩梅であった事もある。だがそれ以上に、どうしてもアルフィアはヘスティアにそういった負の感情を向けることができなかったのだ。
「まぁ……良いが」
「アイズ君も喜んでるしね〜!」
負け惜しみじみた言葉にニコニコとなんの裏も無い笑みで返す女神に、ハァと溜息を付いて席を立った。
「もう寝る?」
「……あのはしゃぎ様では、今日は修行もせがんでは来ないだろうさ」
そもそも修行は夜中に、二人で行っているのだ。その為にも多く眠って体力を保っておかなければならない。
アルフィアが眠る準備を始めた事を察した皆が皆パーティーの片付けを始めたのを察し、彼女は心の中でもう一度溜息を吐く。
(一体何をしているのだ、私は……)
この街に敵対する為にやってきた身の上で、こうして弱小の一ファミリアに絆され誕生日パーティーなるものにまで参加している。
適当に口を目を閉じて最早何も思うまいとしていた彼女の枕元に、トタトタと軽い足音。
それが誰かは理解していたが、寝た振りを続けた彼女の耳元に口を寄せた少女は、コショコショと囁いた。
「これ、あげるね」
その囁きと共に、コトリと軽い何かが置かれる音。
「はやく、元気になってね」
それから暫くして、誰の気配も無くなった部屋の中で目を開いたアルフィアは、ベッドサイドの水差しの横に置かれた小皿を見る。
そこには、先ほど食べたやけに豪華な誕生日ケーキに乗っていた、金髪の少女を象った砂糖菓子がチョコンと座っていた。
あぁ。
きっとリヴェリアはアイズに何も話していないのだろう。
己の病がきっと治るものなのだと信じている、無垢な少女の
全然そんなつもりなかったんだけど、なんかリリがバチクソ吹っ切れたからって次の曇らせ要因としてアルフィア連れてきたみたいになってない?