オラリオで斬魄刀打つ転生者の話   作:オリ斬魄刀の小説増えろ

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斬魄刀じゃないやつ出ます。


ガレス・ランドロック

 ガレス・ランドロックという一人のドワーフ族の男が居た。

 

 豪放磊落、破天荒な人柄が多くの人に好かれる彼は、迷宮都市オラリオという世界の中心というべき街にて冒険者をしていた。

 

 この街に来て一年以上、やっとこさ駆け出しと言われる域を抜ける頃の彼は、最初いがみ合っていたたった二人の同じ神を主と仰ぐ眷属(こども)達とも上手く打ち解け、最初は『ケンカ三兄弟』『ダンジョンの外でやれ』『ケンカするなら店来んな』『とっとと死ね』などと散々だった評判も最近はマシになってきた。

 

 ……の、だが。

 

「……今日の探索の『アレ』は何だ? 隠すとためにならんぞ」

「悪いけど、教えてくれるまで酒は無しだよ」

「お、おう……?」

 

 彼は今、その信頼できる仲間にガン詰めされていた。

 

「……なぁ、儂は何故こんなにも責められとるんじゃ? 今日のアレとは何じゃ? 儂が何かしたか?」

 

 本気で分からず首を傾げる彼に、仲間の一人であるエルフの王族、ハイエルフのリヴェリアがかつては『下品に甘いだけで不味い』と蔑んでいた蜂蜜酒を喉に流し込んでテーブルに空のジョッキを叩きつけた(そういう行為もかつての彼女は蛇蝎の如く嫌っていたのだが、今の彼女にその余裕は無いようだ)。

 

「何やよーわからんけど、リヴェリア怒らす前に言うたら〜?」

「もう怒っとるように見えるんじゃがのう……」

 

 同じテーブルに着いている彼らの崇める主神、ロキと首を傾げ合うが、いよいよもって理由が分からない彼の首元にリヴェリアが手を突っ込み、まさぐり始めた。

 

 その普段の彼女らしからぬ、そしてエルフらしからぬ積極的すぎるスキンシップに色めき立ったのは何を隠そう乙女*1の柔肌を触る機会を常に狙っている事を公言している、主神のロキである*2

 

「ゲェーッ!! リヴェリアあかんてこんなところでおっ始めようなんてふしだらやでガレスも困っとるそんな溜まっとるんならウチが相手に!!」

 

 爆速で理論武装を終え自身の服を脱ぎ散らそうとし始めるロキを無視し、リヴェリアはガレスの服の中から円筒形の銀細工を取り出した。

 

 その銀細工には細い鎖がついており、ソレはガレスの首にネックレスのように掛けられていた。

 

 アルコールと、勢いに任せてみだらなこと(ボディタッチ)をした羞恥で顔を赤く染めながらもリヴェリアは目を吊り上げて問い詰める。

 

「コレだ! 何なんだコレは!? ただのドワーフ族の御守りじゃなかったのか!?」

「……ああ! コレのことか」

 

 そう言われれば彼は首元のソレを最初親友から貰った御守りだと説明したし、ソレを二人の前で使ったのはたしかに初めてだったな、とガレスは一人納得した。

 

「確かに、親友に貰った御守りじゃとしか話とらんかったな……分かった。いい機会じゃろう。話そう……だから、とりあえず酒をよこせ」

 

 どうやら隠していたわけではないらしいということをなんとなく察したリヴェリアはとりあえず矛を収め、フィンは手元に置いていたドワーフの火酒をテーブルに滑らせる。

 

 それを受け取ったガレスは、リヴェリアに誘いをかけた状態のまま半裸になっているロキとジョッキを打ち合わせ、今もドワーフの郷に居るであろう一人の幼馴染の話を始めた。

 

 

 

 セルバン・ハルウッド。

 

 ドワーフの村の、戦士の家系に生まれたガレスと同じ年に鍛冶師の家系に生まれた彼は、自身でも認める頑迷な男であるガレスとは違い、ドワーフにおいて珍しいほどの柔軟で自由な男であったと言う。

 

「鍛冶師の家系に生まれた癖して既存の武器に興味の薄い男でな。『誰もが見たこともない新しい武器を創る』というのがあやつの口癖じゃったよ」

 

 鍛冶は大の得意で日がな一日鍛冶場に籠ることも多かった彼は、しかし奇妙な程に在り来りな武器に対する執着が薄く、自身の作る刀剣にあまり価値を見出していないように感じたという。

 

 そんなセルバンが初めに生み出した……否、創り上げたのは、彼が後に『魔力武器』と命名するシリーズであったという。

 

「この【銀筒】は奴の歳が十を超える頃の……最初期の作品だ。この筒は純銀に魔石の粉末を混ぜ込んで作られていてな。表面と内側に奴独自の言語で刻まれた呪文は、内部に溜め込んだ魔力を外に出さない事に成功しておる。リヴェリア、お前がこの筒から何の魔力も感じんかったのは、それが原因よ」

 

 そう言って蓋を開けた銀筒の内側に指を入れ、魔力を注ぎ込むガレス。

 

 何の性質も帯びていない純魔力特有の仄かな光が賑やかな酒場を照らすが、確かに銀筒内部に入った筈の魔力は周囲に発散される事なくそこに留められているようだった。

 

「……マジで? ホンマに【恩恵(ファルナ)】も受けてへんただのドワーフが作ったん? 凄ないそれ?」

「……その魔力を使って、今日君はリヴェリアを守った、と」

 

 彼らのリーダーをしている【小人族(パルゥム)】のフィンはその光景を思い出していた。

 

 今日、探索中にウォーシャドウの大量発生に見舞われた三人。

 

 倒しても倒しても次から次へと湧き出てくるその死闘の最中、探索と連戦に次ぐ連戦の疲れで脚をもつれされたリヴェリアに襲い掛かったウォーシャドウの攻撃から身を守ったのが、この小さな筒から発生した、強い衝撃波だったのだ。

 

「ヴォルコール、だっけ?」

「そうだ。補助技【緑杯(ヴォルコール)】。強い衝撃波を出すが、攻撃力は無い。落下ダメージの軽減などにも転用可能。詠唱は盃よ西方に傾け(イ・シェンク・ツァイヒ)。あの時は必死で銀筒を三本も使っちまったが、ありゃ別に一本で良かったのう」

「それを使う本数で威力が変わるのか……」

 

 リヴェリアは自分を襲おうとしていたウォーシャドウがダンジョンの壁まで吹き飛んでいたのを思い出して頷く。一方でフィンはその道具の有用性に気付いていた。

 

 ガレスはコレを、込めた魔力を使って発動すると言った。

 

 つまり、この小さな筒は使っても魔剣のように無くなったりしないのだ。

 

 ……それを、他のファミリアには無い独自の流通ルートで、自分達だけが独占して使える可能性がある。

 

「僕等もそれを使うことは?」

「出来る。コイツに蓄えた魔力の元の持ち主の詠唱にしか反応せんから、リヴェリアが手っ取り早く蓄えて儂らが使うというわけにはいかんがな。ちなみに儂の魔力では使い物になるまで二週間かかる。【恩恵(ファルナ)】を受ける前は一月半だったがな」

 

 本当に御守りじゃな、とガレスは締めくくり、グビリとジョッキを空にした。

 

「もう一杯!!」

 

 二杯目を受け取ってそれを一息で半分飲み干すガレスに『予算』の二文字が浮かぶ零細ファミリアの団長フィンだが、今日ばかりはそれを飲み込んで違う言葉を口に出す。

 

「他の用途にも使えるのかい? この道具は」

「無論じゃい。攻撃の【聖噬(ハイゼン)】、防御の【五架縛(グリッツ)】。威力の融通は効かんがいい【御守り】じゃろう?」

 

 そう言って、テーブルに置いたものとは別の、首のチェーンに付けた五つの銀筒を見せるガレス。

 今の今まで言わなかった癖してそのしたり顔には言いたい事も多々あったが、そんな文句以上にフィンは彼に二つ質問をしたかった。

 

「……ガレス、それを僕等に黙っていた理由はなんだい?」

「初めは、そこのエルフが未知なるものを探しにオラリオへ来たと言うとったから、これを見せれば寄越せだなんだと面倒な事になると思って言わんかった。で、そのうち忘れた。何せ普段の戦闘に組み込む事など出来んからな」

 

 リチャージに二週間かかるのならそうなるか、とフィンは頷く。

 

 自分が原因で見せなかったと言われたリヴェリアは憮然としていたが、今はそれも無視してフィンは本題へと切り込む。

 

「この御守りは、そのセルバンという人に言えば作ってはくれるのかな?」

「うむ、うちの村では奴の能力はあまり評価されんからな……それをチマチマと気にするような男ではないが、作ってくれと依頼をやれば奴なら嬉々として作るじゃろうて」

 

 その言葉で腹を決めたフィンは、「皆、今日から節約をしよう」と言う。

 

「発注するん?」

「短い詠唱で汎用性の高い効果、ある程度は威力調整も可。これを見逃す奴は冒険者なんて名乗っちゃいけないさ……オラリオ外に秘密を厳守してくれる者を選んで遣いを出す金、その筒の注文の金……ガレス、これはどのくらいの金額になるのかな」

「知らんが、儂が村の外に出る時に餞別に十個程もくれたからのう、まあ、大して高くは無いのじゃろう」

 

 他のファミリアには無い独自性を持ちたいフィンと、竹馬の友たる幼馴染に連絡を取れると喜ぶガレス、そして未知を知る事こそが目的のリヴェリアに、とりあえず面白ければ良いロキ。

 

 全員が一丸となり、その日から半年ほどでガレスの故郷近くを通る商隊に言伝を預ける事に成功する【ロキ・ファミリア】。

 

 

 暫く後、帰ってきた商隊は了承の手紙を携えていた。

 

 それから更に半年程。

 

 新人であった彼等もいよいよもってレベル二へと成長した頃に、彼らの下に小包が届けられた。

 

「ついに来たか……これは機能説明、これは領収書、これは……ガレスへの村の人達からの私信だね」

 

 小包を切り開き、ガレスへ紐で縛られたたくさんの手紙を渡した後に彼等は中身を検める。

 

 この一年の間にも幾度か、激化する戦闘の中で【御守り】に助けられていた彼等は、逸る気持ちで中身を取り出した。

 

「二百万ヴァリスで銀筒が十個、一個二十万ヴァリスか……」

「ふーん……高ない?」

「いや、むしろ安過ぎるな」

 

 僅かに笑みを浮かべながら厚い手紙の束を一つずつ読むガレスを置いて、フィンとロキとリヴェリアは一つずつ蓋を開けては魔力を注ぎ、動作を確認する。

 

「単純に考えて、自身の【精神力(マインド)】に依らない魔法をこれで十個持てる事になるんだ」

「しかも、魔剣とは違って再利用可能……無くしたり踏み潰されたりしなきゃね」

「使用の為には放り投げねばならんからな……元々持っていたガレスの銀筒も、もう半分以上が潰れるか行方知れずだ」

「素材が銀だから、頑丈でもないしね」

「ガレスが酒場で喧嘩して一個ペチャンコにしてもた時、リヴェリア火ィ吹いとったもんなあ」

「アレはあいつが悪い」

 

 なんのかんのとお喋りしつつも全ての検品を終えた後、包みの底に細長い木箱が入っているのをロキは見つけた。

 

「あり? フィン、まだなんか入っとんで」

「うん? 他の注文はしてないんだけど」

 

 首を傾げながら木箱をロキから受け取るフィン。

 

 ガチッと釘で封されているその箱は、彼等に読めない言語で何かが書かれているが、それが何かは彼等には分からなかった。

 

 ソレをドワーフの言語だと当たりをつけたフィンは、ガレスの肩を叩く。

 

「ガレス、悪いんだけど手紙より前にこれを読んでくれないか」

「うん?」

 

 故郷からの手紙に没頭していたガレスは、フィンに差し出された木箱と、そこに描かれた文字を見て、読み上げる。

 

「……『新作【魂を切り裂くもの(ゼーレシュナイダー)】……試作品だが動作は確認済み。耐久性は未試験。使用方法は銀筒と同じ。かなり危険:セルバン・ハルウッド』……と書いておるな」

「【魂を切り裂くもの(ゼーレシュナイダー)】……? 大袈裟な名前だな……」

「大げさかどうかは、開けてみりゃあ分かる」

 そう言って木箱を握力で、紙箱をそうするかのように引き千切ったガレスは中から出てきた細い棒を手に持ち、外に出る。

 

「アイツの試作品は外で試すのが吉じゃ。下手すりゃ爆発するからのう……何じゃあこりゃ、魔力を馬鹿食いするぞ……!?」

 

 そう言って、ファミリアの小さな拠点の小さな裏庭に立った彼は、手の中の棒に少しずつ魔力を込める。

 

「む……」

「これは!」

「……へぇ」

 

 三者三様の感嘆の感嘆。

 

 ガレスの手に収まっていた棒の端からは、魔力で形作られた、仄かに光る刀身が生まれていた。

 

 ガレスがそれを収めるより早く。

 

 リヴェリアが仕組みを考察するより早く。

 

 フィンがその姿に新たなる希望を見出すより早く。

 

 ロキが、その腕に飛びついた。

 

「か、かっけえええぇぇぇ!? すげえええ!!! ガレス貸してえなソレちょっと振らしてや! なぁええやろ!?」

「ぬ!? 待てロキ! 危ないじゃろ! おっ……と!?」

 

 光る剣先に集中していた為、ロキの突撃に対応する事が出来なかったガレス。

 

 そのまま倒れるのは不味いと光剣を手放して両手でロキを支える……と。

 

 サクッ。

 

 そんな音を立て、光る刃部分が全て地面に沈んだ。

 

『…………』

 

 柄の部分まで完全に地面に突き刺さった剣を見て、今度は沈黙する面々。

 やがて内に込めた魔力が切れたのか、力尽きるようにパタリと柄が倒れる。

 

「……取り扱いには気をつけないとだね」

 

 そう言いながらフィンが柄を持ち上げると、その地面には深い深い穴が開いていた。

 

 それを覗き込んで、フィンはこの剣の切れ味の凄まじさを改めて理解した。

 

 横から覗き込んだガレスは直ぐに頭を振り、フィンから借りた光剣をブゥンブォンと振るリヴェリアは、数度そうしてから再びフィンにそれを返した。

 

「フィンよ、そりゃあお前が持っとけ。儂には扱いが繊細すぎて使いこなせん」

「同意だな。お前ならば戦闘スタイルにも合っている……魔力消費が多いから切り札だろうがな」

 

 二人にそう言われ、フィンは柄に魔力を流す。

 

 ブンッという音と共に伸びる光の刃をジッと見つめるフィンにオイと一声掛け、ガレスが地面にあった石ころをいくつか放り投げる。

 

 そしてそれらは全て、フィンの光剣による一閃で斬って落とされた。

 

「気に入った」

 

 その一言だけを言って、バシュッと魔力を霧散させたフィンはベルトにソレを差し入れる。

 

「ありがとう、ガレス。大事に使うよ」

「構わん。それと、セルバンの奴次からは現金じゃなく魔石で支払って欲しいそうだ。質は求めんから小樽いっぱいの魔石につき六本作ると言うとる。大体小樽一つで買い取り値が百万ヴァリス程じゃから、一本多めな分は魔石の時価の上下を考えた分じゃろう……それとその剣は消耗品と書いとる。小樽一つで二本作ると書いとる」

 

 ヒラヒラと手紙を風に泳がせながらそう言うガレス。

 

「しかし何故魔石で?」

「金よりも名声よりも誰も見たことのない武器を作る為の素材を求める。アイツはそういう奴じゃ」

 

 リヴェリアも(実際に小樽一つ分の魔石の店売り値は二倍近くなる事も考えた上で)その言に納得したのか、軽く頷き了承を伝えた。

 

 これにより【ロキ・ファミリア】は他のファミリアには無い独自性を元に躍進を始める事となり、やがてはこの都市を二分する存在となり、何より団長の【勇者(ブレイバー)】(彼のこの二つ名は【光騎士(ジェダイ)】という案と二日に渡る神々の激論を繰り広げた結果として採用された案である)フィンが振るう光の剣は多くの者に憧憬を抱かせた。

 

 

 

 ちなみに。

 

「なぁなぁフィン、あの剣振ってぇな!」

ゼーレシュナイダー(あの剣)はおもちゃじゃないよロキ……アレ戦闘で十回も使えないのに五十万ヴァリスするからね?」

 

 下界に降りている制約で魔力を扱えないロキは、度々フィンに光の乱舞をおねだりしたという。

 

 

 

*1
Q.リヴェリア・リヨス・アールヴ(九九歳)は乙女に分類されますか? 

*2
A.………………




てな訳で、死神要素より先に滅却師(クインシー)要素です。

というか【ヘスティア・ファミリア】にとっての主戦力はこちらになります。やっぱし消耗品は強いッスわ……
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