「……。」
ギルドに所属している冒険者達が集まり交流する場所、円卓。
そこにゼットンは突っ伏している。
そこへ近づく者がいた。
「…あの?大丈夫ですか?」
「zzz…あと2万年…。」
ゼットンは寝ていた。
「風邪ひきますよ〜?」
肩から鷲の翼を生やした女は、とりあえず指先で角に触ってみる。
「ヒャゥゥン!!?」
「あ、起きました?」
「いきなり角に触らないでくれ…。」
ゼットンの角は重要な感覚器官なので、不意に触られるのを嫌がる。
「一人で寝てたのでつい。」
「…で、俺に何の用だ?」
「もしやることがないのでしたら闘技場で手合わせをお願いしようかと。」
闘技場という言葉にゼットンは闘争本能が掻き立てられる。
「今日はあいつらだけで依頼行ってるしちょうどいい。」
後で休みをくれたバルタンたちにお礼をしなきゃと思い、ゼットンは席を立つ。
「ではではこちらへ〜。」
鷲の女に連れられ、闘技場使用受け付けと書かれたところに着く。
「手続きを済ませてくるのででは此処で待ってて下さいね。」
近くの椅子に座って待っている間、忘れかけていた帝国武闘大会を思い出す。
「そういえばもうすぐだったな…。肩慣らしにはちょうどいい。」
「手続き終わりましたのであちらの扉から入ってくださ〜い。」
ゼットンが言われた扉に入ると、十分すぎるほどの大きさの円形の地形と、それを囲う観客席が目に入る。
観客席にはすでに多くの見物人が集まっている。
「上位冒険者のハピーさんと期待の新星ゼットンの勝負、見るしかないだろ!」
「俺はハピーさんが勝つに全財産賭けるぞ!!」
観衆の声援の中、鷲の女とゼットンが対峙する。
「自己紹介がまだでしたね。私は鳥人種のハピーと申します。」
「ゼットンだ。よろしく頼む。」
ゼットンの向こう側から入ってきた鷲の女はハピーと名乗った。
「ルールは簡単。審判さんが決着がついたと判断されるまで戦います。」
「わかりやすくて助かるな。」
「それではお二方、準備は宜しいですか?」
「はい。」
「もちろんだ。」
一瞬にして当たりの空気が張り詰める。
ハピーが身構えゼットンが大きく身震いしたと同時に、
「開始ぃ!!!」
戦いの幕が切って落とされた。
「ゼッ…トン…」
ハピーはすぐ飛び立てるよう身を屈め、ゼットンは身体を揺すり、怪しく発光器を輝かせ様子を伺う。
一瞬が何時間にも感じられるような緊張が支配する時は、いきなり崩壊する。
「創弓魔法!!」
ハピーが飛び上がり、魔法で弓を作り出す。
「あれが魔法…バルタンが言っていた通り面白い。」
「それはどうも。ですがその余裕も今の内ですよ!」
上空から放たれた黄金の矢は、真っ直ぐ軌跡を残してゼットンに向かっていく。
「舐められてもらったら困る。」
白刃取りのように矢を受け止め、放り捨てたゼットンはお返しと言わんばかりに火球を放つが悉くかわされる。
一進一退の攻防を、観衆に混ざってラルゲユウスともう一人の怪獣が見ている。
「で、アンタはこの状況、どう見る?パワードドラコ。」
「決まっている。出の早い飛び道具を仕掛けている以上確実に鳥人側が有利だ」
「ならこの勝負…いや、早計過ぎるか。」
戦いはまだ始まったばかりだ。