ゼットンは、アクロス帝国で開催される武闘大会に出場するために長い間休みなしで歩いていた。
「しっかし遠いな…疲れてきたし休むか…。」
街道沿いに生えている低木に寄りかかろうとすると、前方から違和感を感じとった。
身が凍り動けなくなってしまう様な恐ろしい殺気。
その方向を見ると、漆黒の外套を纏い、赤い鎌を持った女が近づいてくる。
「部下に強化させた飛竜の反応が消えたけど…あなたの仕業?」
女はうっすらと笑みを浮かべたが血のように赤い目は笑っていない。
「だったら…どうする?」
「簡単よ。死王の計画の邪魔をした貴方を殺す。」
女はそう言うと一瞬で間合いを詰め、鎌を首めがけて振り下ろす。
しかし、その鎌は空を切る。
「そっちがその気ならこちらもやらせてもらう。」
ゼットンが女の背後に現れ、パンチを叩き込む。
女は吹き飛ばされ、倒れ込む。
(瞬間移動でエネルギーをほぼ使い果たした…まずいかもな…。)
疲労したゼットンは能力が使えず肉弾戦だけなのに対し、女は鎌を持っている。
リーチの差で負けているため有利不利は明確だった。
女は起き上がり、目を輝かせ鎌を振り上げ襲いかかる。
「こんな獲物…久し振り♪」
ゼットンは鎌を見切り脇腹にキックをし、怯ませるが、全くダメージを受けていない。
「まだまだ楽しみましょう!!」
次の瞬間、放たれた無数の斬撃にゼットンの体表が切り刻まれる。
「うぐぅ…!」
(万全な状態であれば…!)
血が吹き出し、今にも倒れそうなゼットンの首に女は鎌をかける。
「もう終わり?でも命令だししょうがないわね。」
鎌で首を刈ろうとした瞬間。女の眼前は炎に包まれた。
無理を押して放ったが、威力は十分だった。
火球が直撃し、大ダメージを受けた女はゼットンを見た。
「ゼッ…トン…ピポポポ…。」
ゼットンは血を流しながら低くうなり、ゆっくり向かってくる。
全身が痛い。
失血と疲労で今にも倒れそう。
弱りきっているはずなのに、女は仕留めることができなかった。
怖かったのだ。
本能のままに敵を排除しようとする獣が。
「…お、覚えておくといいわ。魔族エレナ。貴方を刻む、刃の名よ。」
女は小物感満載のセリフをいい、黒い霧に包まれ消えた。
「ぅ、うぅ…。」
ゼットンはダメージと疲労で、その場に崩れ落ちて、気を失ってしまった。
ゼットンが目を覚ましたのは、建物の中だった。
「…は?何が起きている?」
戦いで負った傷はある程度治癒し、包帯が巻かれ、ベッドに寝かされていた。
「フォッフォッフォ。ようやく目を覚ましたかゼットン。」
ドアの奥から、鋏の手を持った角が生えたセミのような宇宙人、バルタン星人が現れた。