オレが魔法少女になったと思ったら、幼馴染も訳ありだったと知った不具合   作:社畜だったきなこ餅

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閃いたんですよ。
そしたら3時間ぐらいで仕上げてました。


狐とタコとドラゴン

 

 

世の中、世界ってのはとにかく理不尽だと思う。

中間テストでヤマを張ったら盛大に外して赤点を取った上に母ちゃんには小遣いを減らされるし。

『諸事情』あって家の手伝いサボったら、今度は父ちゃんからコンコンと説教される始末だ。

 

 

「酷いと思わねーかぁ?たっつん」

 

「いや、盛大に自業自得なんじゃないのか?」

 

 

学校からの帰り道、幼馴染の顔を見上げながら思わず愚痴る俺に容赦なく現実を突き付けてくる幼馴染。

この男の名前は“黒羽竜弥(くろは たつや)”、俺はたっつんて読んでる。

 

 

(しかしやっぱこいつでっけーな……190cmはあるんじゃね?)

 

 

「お前が小柄なだけだろ」

 

「おぉん?!それはオレがちびって事かこのやろー!というか人の心読んでんじゃねーよ!!」

 

「顔に書いてあったぞ」

 

 

たっつんは俺の抗議を鼻で笑って受け流しつつ、伊達眼鏡の向こうに見える目を鋭くさせると軽く周囲を見渡して誰もいない事を確認すると口を開いた。

視力悪くないのに何でコイツ眼鏡つけてるんだろ、昔何か言ったような気するんだけど忘れたわ。

 

 

「しかし驚いたぞ、数年ぶりに会った幼馴染が女の子になってんだからな」

 

「コレには説明したいけど出来ない不快で深いな事情があるんだよ」

 

 

たっつんが周囲を確認してたのはこれか、と納得すると同時にオレはもうやってられないとばかりに溜息を吐く。

オレの名前は“日月旭(たちもり あさひ)”、今年で高校二年生になる中堅神社の一人息子……だった。

今は『諸事情』あって女の子になり、誰にも言えない案件に身をどっぷり浸からせている。

 

 

「たっつんも変な事に巻き込まれないよう気をつけろよー?最近なんか変な怪人とか痴女が暴れてるから」

 

「……そうだな、気をつけるとする」

 

 

オレの忠告にたっつんは伊達眼鏡の奥に見える目を細めながら苦笑いして頷いた。

しっかしこいつカッケェなぁ、目の色とか金色だしドイツとやらの血が入ってるだけあるわ。

 

 

「そう言えば話変わるけどたっつんのお袋さん元気か? 一緒にドイツ行ったけどあの人は向こうに残ったんだろ?」

 

「ああ元気だよ、色々あったけど母さんはまだあのクソ親父を愛してたみたいでな。まぁ元鞘に収まったというかなんというかというヤツだ」

 

「そっか」

 

 

オレ達が中学一年でまだオレが男だった時にたっつん達は親父さんがいるとか言うドイツへ行った、あの時は今生の別れだと思ったからそりゃもうワンワン泣いたわ。

でもあの儚げで優しいたっつんのお袋さんが幸せになれたなら、それが一番だ。

 

(去らばオレの初恋)

 

 

しかしそうなると気になる事がある、たっつんが帰ってきてまだ一週間ぐらいしか経ってなくて聞けてない事が。

 

 

「でもなんでたっつんは帰ってきたんだ?」

 

「帰ってきたら都合悪かったか?」

 

「い、いやそういう事じゃねえよ! ただ、さ、やっぱり親父さんとお袋さんと一緒の方がいいじゃん」

 

 

だがオレの問い掛けにたっつんは動揺し、少し困った顔をしながら聞いてくる。

 

 

(やっべ、コレたっつんめっちゃ傷付いてる)

 

 

慌ててオレが言い直すとたっつんはホっとした表情を浮かべ。

 

 

「クソ親父と母さんが仲睦まじい所を見るのは精神的にキツい、それに……」

 

「それに?」

 

「……いや、なんでもない」

 

「なんだよそれーーー!?」

 

 

たっつんは俺の言葉にホっとした様子を見せつつ、どこか遠い目をして呟き……オレの質問の答えを露骨にはぐらかした。

思わず地団駄を踏むオレを微笑ましく見るなこんちくしょう!

 

 

(ああもうブラで抑えた胸が揺れて殊更腹立つ)

 

 

しかしオレのそんなささやかな日常をぶっ壊す、最低最悪のボケナスの声が聞こえてくる。

 

 

『悪意の気配がするぴゅん!アサヒ!』

 

 

思わずギョっとして声がした方、俺が手に提げてた鞄を見るとそこから白いふわふわしたぬいぐるみみたいなナマモノが顔を出していた。

たっつんが声の出どころを探るようにキョロキョロしてるのを横目に、俺は両手で鞄を抱えて電柱に鞄を押し付けて小声で怒鳴る。

 

 

「他人が居るところでしゃべるなっつったろボケナス!」

 

『しょうがないぴゅん!緊急事態ぴゅん!ジャークが出て町で暴れてるぴゅん!!』

 

 

(ぴゅんぴゅんぴゅんぴゅんうっせーんだよボケナス!!!!)

 

 

この腹立つボケナスことぬいぐるみの名前は“ぴゅんぴゅん”、自称魔法の国からやってきた妖精で。

 

 

「だからってなんでまたオレが行かなきゃいけねーんだよ!他の連中もいるだろ!?」

 

『他の子達は大苦戦してるぴゅん!それにあいつら倒さないとアサヒを男の子に戻せないぴゅん』

 

「地獄に落ちろくそボケ!」

 

 

オレを魔法少女と言うトンチキな存在に変えた諸悪の根源である。

しかしこのボケナスの言う事を聞く事は大変遺憾であるが、人の魂の力を求めて異次元世界からやって来たとか言うジャークは名前の割に危険な連中だ。

ましてやオレ以外にいる魔法少女は、オレと違ってちゃんとした女の子だし良い子達だから見捨てるなんてできるわけがない。

 

 

「ああもう……! わりぃたっつん!オレちょっと行ってくる!」

 

「あ、旭!?」

 

 

慌てて走り始めるオレに何か異常を察したのか、たっつんは本気で心配してるであろう声で俺を呼ぶ。

 

 

(わりぃたっつん、行くなって言われてもオレ行かなきゃ)

 

 

「何が何だかよくわからんが大事な事なんだろ?頑張れ!」

 

 

しかしオレが思っていたことと違い、たっつんはオレを応援してくれた。

ならばオレの答えはただ一つだ。

 

 

「もちのロン!ゲーセン行くのまた今度な!」

 

「困った事あったら駆け付けるからな!『あの時』お前が駆けつけてくれたように!」

 

 

ほんとたっつんは最高の幼馴染で親友だ。

そんなことを俺は心で噛みしめながら、ボケナスが導く方向へ全力で走る……のではなく。

 

誰もいない路地裏へ飛び込み、少し躊躇しながらもたっつんに聞こえない程度の声で叫ぶ。

 

 

「ソウルパワー、ウェイクアップ!」

 

 

オレがそう叫ぶと共に巻き上がった七色の光がオレの体を包み、手に持っていた鞄とブレザー……それに下着が光の粒子となって消え。

すぐに新たに光の粒子がオレの体に張り付くと同時に、レオタード状のスーツへと変わりその上に羽織るように巫女服のようなジャケットが現れる。

そして、俺の頭にぴょこんと狐の耳が生えお尻からふわりと尻尾が生え、七色の光によってオレの髪色と瞳の色が変化して変身は完了する。

 

ちなみにソウルパワーと言うのは言ってみれば魔法少女のパワーであり、魂を持つ者すべてが持つ力で。

オレが魔法少女なんぞになって戦っている敵が求めている力でもあったりする。

 

 

『アサヒ!ジャークはあっちの方ぴゅん!』

 

「応!」

 

 

そしてオレの隣にふわふわと浮いているボケナスが導くままに、オレは黒髪から金髪へと変わった長い髪をたなびかせながら一足飛びに飛び上がって適当な家の屋根に着地。

変身によって跳ね上がった身体能力を用いて、全速力でボケナスが指し示す方角へ奔る。

 

そしてオレが駆けつけた町の中は、大変な騒ぎになっていた。

 

 

「ギョ~ギョッギョッギョ!魔法少女!お前たちの魂の力を吾輩たちに捧げろぉっ!」

 

「く、ぅぅ……!」

 

 

道路に罅が入り外套がへし折れ、ボロボロになった車が転がる街の中。

その騒動の中心で、タコみたいな頭をした怪人が魔法少女仲間のピンク髪が可愛いサクラをその吸盤が付いた足で拘束し締め付けていた。

 

 

「何してやがんだゴルァァァァァ!!」

 

「タコヤキ!?」

 

 

オレは怒りで視界が真っ赤になる錯覚を感じながら、飛び上がってビルの壁面を蹴ると三角蹴りの要領でタコ怪人の顔面に渾身の飛び蹴りをお見舞い。

サクラを甚振る事に夢中になっていたのかタコ怪人はオレの飛び蹴りを諸にくらい、衝撃の余りサクラを離し地面を何度もバウンドして吹っ飛んで行った。

 

 

「大丈夫かサクラ?!遅くなってすまない!」

 

「か、ふぅ……アサヒちゃん、ありがとう」

 

「ぅぅ……」

 

 

触手で締め付けられたダメージが大きいのか、サクラは膝をつきながら大きく深呼吸を繰り返している。

よく見ると足元にはサクラと連携して戦う事が多いワカバにモミジも倒れていた。

 

 

「気を付けてアサヒちゃん、あの怪人……今までよりもずっと、強い」

 

「無理して喋るな、お前もワカバもモミジもすぐに治して」

 

『アサヒ!危ないぴゅん!!』

 

 

しゃがみこみサクラを助け起こしながら、オレは魔法少女なパワーで手に入れた癒しの力でサクラの傷を癒す。

しかし切羽詰まったボケナスの声にもしやと思い視線だけタコ怪人を蹴り飛ばした方向へ向けると、高速で迫る触手がオレへと向かってきていた。

 

 

「ぐぁぁぁ!?」

 

「アサヒちゃん!逃げて!」

 

 

ある程度治療を終えたサクラと同時にその場から逃れようとするが、思った以上に素早い触手の動きにオレは躱しきる事が出来ず。

タコ怪人の触手に足首を掴まれて宙づりにされてしまう。

 

 

「ギョ~ギョッギョッギョ、さっきは痛かったですよぉ。片目を奪われたお礼はたぁっぷりしてあげますからねぇ」

 

「はん!タコ野郎が何ほざいてやがる、てか。何がギョーギョッギョだよ、そんな笑い声すんなら魚になっとけよ!」

 

「無礼な小娘め、自分の立場を思い知らせてやりましょう」

 

 

オレの飛び蹴りで潰れた片目を痛そうにしながら偉そうにほざくタコ怪人に、オレは逆さ吊りにされながら中指を突き立ててやる。

しかしタコ怪人はオレの言葉に怒りを露わにすると。

 

 

「がぁっ?!」

 

「まずは一回、二回、三回、まだまだ続きますよぉ」

 

 

タコ怪人はオレの足首を掴んだまま俺を何度も何度も地面や車、ガラスの割れたビルへと叩きつける。

あちらこちらへ叩きつけられるたびに衝撃でオレの視界は揺れ、ダメージに耐え切れなくなってきた魔法少女スーツが少しずつボロボロになっていく。

 

 

「ギョ~ギョッギョッギョ、良いザマですねぇ」

 

「アサヒちゃん! これ以上やらせない!」

 

「……覚悟」

 

「タコ刺しにして差し上げますわぁ~!」

 

 

幾度も続く叩きつけに意識が朦朧とし、口の中を切った事で流れた血が逆さづりされたままのオレの視界を塞ぐ中。

勝ち誇った声を出すタコ怪人にサクラとワカバ、そしてモミジが猛攻を加える。しかし。

 

 

「そんなボロボロな体で仲間の為に立ち上がるとは、哀れですねぇギョ~ギョッギョッギョ!」

 

 

タコ怪人はオレの脚を掴んでないフリー状態の触手で何度もサクラ達を薙ぎ払い彼女達を痛めつける。

 

 

「おい、やめろよ、やめてくれよ」

 

 

思わず呟くオレの声が聞こえたのか、タコ怪人はにやりと笑う。

 

 

「しかし我らがジャークに歯向かう魔法少女と聞いてましたが、大したことありませんねぇ」

 

「く、この……わたくし達が一斉に手を出せないよう人質を取った分際で、えらそうにほざくんじゃありませんのよ!」

 

「こっちは一人ですからねぇ、そりゃぁ対策を取らせていただきますとも」

 

 

朦朧とする意識の中、弾き飛ばされても何度も立ち向かうモミジが叫ぶがタコ怪人はどこ吹く風とばかりに受け流す。

 

 

(そっか、そうだよなぁ、サクラ達がこんなヤツに一方的にやられるなんて、おかしすぎる)

 

 

そう考えると、なんか変に笑えてきやがった。

しかしどうやら、その笑いはタコ怪人の癪に障ったらしい。

 

 

「何がおかしいぃ?」

 

「……っへ、人質とって甚振って、満身創痍になった魔法少女嬲って悦に浸ってるてめーが無様過ぎておかしくてな」

 

「小娘がぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

オレの言葉にタコ怪人はぷっつんしたのか、オレの両腕と両足を広げるように触手で拘束すると。

百舌鳥の早贄みたいにするつもりか、折れた街灯めがけて俺を叩きつけようとする。

 

 

(あー、こりゃだめか。無理だな)

 

 

タコ怪人を止めるべく立ち向かい、あしらわれるサクラ達の絶叫がどこか遠くに聞こえる。

 

 

(ごめん母ちゃん父ちゃん、オレ最後まで親不孝だったわ)

 

 

オレのソウルパワーは癒しの力、こういう時に切り抜けれるような爆発力はない。

目を閉じ、オレは最期になるであろう言葉を呟く。

 

 

「ごめんたっつん、ゲーセン行くって約束守れそうにねえわ」

 

 

そして肉を貫き切り裂く音がオレの狐耳に響く。

 

 

(ああ、こんな音したら死ぬわ。でも思った以上に死ぬときって痛くねーんだな)

 

 

ぼんやりとそんなことを考えるオレ、しかし。

 

 

「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」

 

 

タコ怪人の聞いた事のないような絶叫と共に、オレの体は何かに受け止められる。

その受け止めてくれた何かは大きくて硬くてゴツゴツしていたが、とてもやさしかった。

 

覚悟を決めてぎゅっと閉じていた瞳を開く、その視線の先にいたのは。

 

 

「…………どら、ごん?」

 

 

黒く輝く鱗に覆われ、頭からは二対の鋭い角を生やした金色の瞳をしたドラゴンがそこにいた。

思わず呆然とするオレ、しかしドラゴンはオレが生きている事にどこかホっとした様子を見せるとゆっくりと地面に俺を下ろすと。

 

俺を背に庇うように痛みに叫ぶタコ怪人と真正面から相対した。

下ろされてわかったけども、ドラゴンはゲームとかに出てくる感じじゃなくて二足歩行のなんと言えばいいか困るけども……人間をドラゴンにした、そんな感じの見た目をしている。

ぱっと見怪人にしか見えないんだけど、オレは何故かそのドラゴンの背中を見て安心していた。

 

 

「アサヒちゃん、大丈夫?!」

 

「……アサヒ!」

 

「生ぎてて良がっだでずわぁ~~~!」

 

 

地面に下ろされたオレに駆け寄ってくる魔法少女仲間達。

皆ボロボロだけど、それでもなんとか動けるぐらいには元気みたいだ。

 

 

「……あのドラゴンは、怪人?」

 

「くそ強そうですわぁ……」

 

 

オレ達を背に庇う格好になっている黒いドラゴンに畏怖の視線を向けるワカバとモミジ。

しかしサクラはふらつきながらもドラゴンへ近付くと。

 

 

「アサヒちゃんを助けてくれてありがとうございます!ドラゴンさん!」

 

 

ぺこりと勢いよく頭を下げてドラゴンにお礼を言った。

思わず思考が止まるオレとワカバとモミジ、だけどその通りだ。

 

 

「かふっ……こほっ……わりぃ、助かったよドラゴンさん」

 

「……ありがとうドラゴンさん」

 

「感謝ですわよドラゴンさん!」

 

 

サクラのお礼の言葉、そして俺達の感謝の言葉。

その言葉を受け取ったのかどうかわからないが、ドラゴンはタコ怪人から視線を外すことなく背中越しに俺達へ向けて右手をヒラヒラと振る。

全く関係ないはずなのに、なぜかオレはドラゴンのその仕草がたっつんがお礼を言われて照れ隠ししてる時の姿と重ねていた。

 

 

「貴様ぁ、どこの怪人か知りませんがぁ……覚悟はよろしいでしょうねぇぇぇ?!」

 

 

そうしている間に触手の再生が終わったのか、タコ怪人は最早オレ達など眼中にないのかドラゴンへ向けて殺意に満ちた叫びを上げる。

タコ怪人のその言葉に対し、ドラゴンがとった行動はただ一つ。

 

 

「ゴァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

 

それ以上の殺意に満ちた空と大地を揺るがすほどの大咆哮だった。

背後に庇われてる俺達ですら思わず怯え竦むほどの殺意と憤怒、そんなものを向けられたタコ怪人はもっと原初的な恐怖を感じたのだろう。

ドラゴンが折り畳んでいた翼を広げ、ギラリと鉤爪が輝く右腕を振りかぶりながら音を置き去りにしたと錯覚するほどに早いドラゴンの突進に対して。

 

 

「ひぃ、来るなァァァァァァァ!?」

 

 

まるでホラー映画で化け物に襲われる一般被害者が棒を振り回すように触手を振り回すが、サクラ達を簡単に薙ぎ払い蹂躙したその触手はドラゴンの体に当たってもその突進を止めるには力不足で。

 

オレ達をあんなにも苦しめたタコ怪人は、最上段から振り落とされたドラゴンの鉤爪によって一撃で屠られ。

いつもやっつけた怪人達と同じように、その体に蓄えた収奪されたソウルパワーの噴き出し粒子になりながら空間へと溶けていった。

 

後に残されたのは破壊された町と傷付いた俺達、そして背を向けているドラゴンだけ。

だがすぐにドラゴンは俺達へ振り返ると……破壊された町をきょろきょろと見回している。

 

 

(もしかしてこのドラゴン、町壊された事に困ってる?)

 

 

思わずそんな事を思ったオレは、ソウルパワーで自分と仲間達の傷を癒すとドラゴンへと歩み寄る。

 

 

「安心してくれドラゴンさん、ジャークに破壊された町はオレ達のソウルパワーで直せるんだ」

 

「そうですよドラゴンさん!だから気にしないでください!」

 

「……奪われた命は戻せないけどね」

 

「ワカバ、それを今言うのは野暮天でしてよ!」

 

 

オレの言葉を皮切りにサクラもドラゴンを安心させるように言葉を続ける。

ワカバがぼそりと呟くが、それについてはモミジが頭にぺしとチョップをして黙らせていた。

 

ともあれ、その言葉に安心したのかドラゴンは翼を広げはためかせるとその体を浮き上がらせ、俺達が止める間もなく何処かへと飛び去ってしまった。

 

 

「しまった、名前きいときゃ良かった」

 

「うっかりだったねアサヒちゃん」

 

 

頬をぽりぽりとかきながら呟くオレにサクラも同意を示す。

高校一年になった直後に魔法少女にされて早一年ちょっと、最初は色々衝突もあったが今では仲良しだし頼れる仲間達だ。

 

 

「さっ、町を直そう!」

 

「下々の庶民もこれじゃお困りになりますわね!」

 

「……一代で成り上がった自称お嬢様がなんか言ってる」

 

「むきぃぃぃ!」

 

「いや喧嘩は後にして早く直そうぜ」

 

 

そしていつも通りモミジがアホな事言って、ワカバがいらん事呟いて喧嘩が始まりそうになるのでオレは二人の脇腹を手加減しつつ突いて町の修復を促す。

町の修復は戦いに比べれば簡単だ、4人で力を合わせてソウルパワーを解放すればいい。

問題はコレを使うと変身に使ったソウルパワーも使い切ってしまうから、修復した後は4人とも大急ぎで人目に付かないところに行かないと正体バレするという事である。

 

 

「ふぅぅ……疲れたわマジで」

 

「お疲れ様、旭ちゃん!」

 

「……お礼を言うのが遅れた、駆け付けてくれてありがとう旭」

 

「感謝してあげてもよろしくてよぉ~!」

 

『みんなお疲れ様だぴゅん!』

 

 

誰もいない路地裏で変身解除したオレ達4人は、連れ立って修復された町を歩く。

変身した時は金色だのピンクだの緑だのオレンジだのと言ったカラフルな装いだった俺達であるも、変身解除すれば普通の髪色である。

 

ちなみにサラっと出てきたボケナスはひっつかんで鞄の中にシュゥゥゥト!した。

コイツ戦闘時はどこかに隠れて援護すらしねえから割と腹立つ。

 

 

「折角だしそこのカフェで皆でお茶しない?」

 

「よろしくってよ!」

 

「……戦いの後は糖分、糖分が要る」

 

「若葉、お前いつもそう言ってケーキ食ってるけど体重大丈夫なんか……」

 

『ぴゅんぴゅんはケーキ食べたいぴゅん!』

 

 

オレが元男だって皆知ってるのに、もはや女子会メンバーの仲間入り状態なのだけが納得いかない。

こいつらは女子のオレしか知らないからしょうがないかもしれんが、年頃の乙女的に元男ってのは色々思うところあったりしないものかね。

 

 

「だって旭さん、下手な女子より乙女ですもの」

 

「……家事料理万能とか、乙女ポイント高い」

 

「旭ちゃん刺繍とか編み物とかも上手だよね!」

 

「喧しい!」

 

『アサヒは男に戻るとか言わず女の子続ければいいぴゅん、そっちの方が向いてるぴゅん』

 

「ぶち殺すぞくそボケ」

 

 

女子たちできゃいきゃい騒ぎながら『喫茶あずき』と看板に書かれたカフェへと足を踏み入れる。

地味にオレとこいつらは通ってる学校が違って、この3人娘は市でも有名なお嬢様学校と名高い女子高に通ってるからオレが知ってる女子と吸ってる空気が違うのかもしれん。

 

ちなみにふざけた事抜かしたくそボケは髪留めのゴムで丁寧に折り畳んでやった。

 

 

「ここはコーヒーが有名でしてよ!」

 

「……でも椛、ブラック飲めないじゃん」

 

「じゃかましいですわ!」

 

 

丁度空いてたボックス席に4人で座るや否や、若葉と椛の漫才じみた口げんかが始まる。

こいつら仲良いよなぁ、最初はめっちゃギスってたけど。

 

 

「旭ちゃんは何頼むのー?」

 

「そうだなぁ、エスプレッソと店長おすすめって書かれてるおはぎでも頼んでみる」

 

「コーヒーにおはぎって合うのかなぁ?」

 

 

ちらりと客席から見える厨房スペースを覗けば、たっつんよりも身長がでかい店長と思しき人が忙しなくも手際よく動いている。

 

 

(なんかこう魔法少女的勘と言うか、実家的勘にあの店長引っ掛かるけど無害そうだしいいか。怪人とかでもなさそうだし)

 

 

そうしてる間に桜達も注文を終え、ほどなくして注文の品が届く。

結論から言えばエスプレッソと店長おすすめと書かれたおはぎの相性は抜群であった。

 

しかしソレよりも気になった事がオレに一つある。

 

 

(なんでたっつんがここにいるんだ? 家の方角的にこっち反対だしかなり離れてるのに)

 

 

それは、オレ達に気付いてるのか気付いてないのかはわからないが。

帰り道で別れた筈のたっつんが、この喫茶店のカウンター席に座っていた事が気になってしょうがなかった。

席を立って聞きに行くことも考えたが……。

 

 

「そう言えば旭さん、共学ってことは当然男子とも色々お話する事多いんですわよね?」

 

「……気になる、赤裸々男女体験」

 

「ねーよ、というかあるわけねーよ! オレは元男だろが」

 

 

この場でたっつんに話しかけた日には、こいつらが何言ってくるか全く持ってわからんからである。

そんなわけでオレは、男子に夢見る女子高校生にアホすぎる男子の生態を説明する事に専念するのであった。




続くかどうかはわからない。
でも長く続けると事故る気がする。
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