オレが魔法少女になったと思ったら、幼馴染も訳ありだったと知った不具合   作:社畜だったきなこ餅

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5人の人に評価してもらった上に感想もらえたので続き書けちゃいました。



狐とゲーセンとドラゴン

 

 

ゲームセンターと言うのはいつになっても男の子の心の故郷だと思う。

大型アミューズメント施設的なサムシングに追いやられつつあるが、それでも子供の頃からある大きなゲームセンターと言うのは特別な存在だ。

そしてそれは高校生になり、ついでに女体化と言う不本意な事態を迎えた今でも変わらない。

 

 

「たっつん、援護!援護して!」

 

「任せろ」

 

 

オレこと日月旭とたっつんこと黒羽竜弥は今。

オレ達が産まれる前から町にある大型ゲームセンターにて、ガンシューティングゲームを協力プレイで進めていた。

 

ちなみにやってるゲームは、めっちゃ元気に走ってくるゾンビやら化け物をガンガン撃って進んでくヤツ。

 

 

「もっとしっかり狙えよ旭、撃ち漏らし多いぞ」

 

「たっつんは狙い撃ち過ぎなんだよ!敵の処理追いついてないだろ!」

 

 

ワーワーギャーギャー叫びながらオレ達二人はゲームの最終ステージを突き進み、とうとうラスボス戦に突入。

ちなみにオレはすでに残りライフ1でたっつんも同じだ。

 

 

「これきっつい!きっついって!」

 

「弱点狙ってたら敵の攻撃が捌けん……」

 

 

そしてそのままオレ達はボスの猛攻に押され、あえなくゲームオーバーとなる。

 

 

「あー悔しいー!初めてワンコインでクリアできそうだったのにー!」

 

「まぁもう一回やればクリアできるだろ。次は何プレイする?」

 

「そうだなー、アレやろうぜ!アイアンスラッグ!」

 

「アレもう家庭用ゲーム機でプレイ出来るだろ……」

 

 

そう言いながらもアイアンスラッグの筐体に向かうオレの後に続き、隣り合って筐体の席に座る。

 

 

「しかし制服のまま来たが良かったのか?校則だとアウトだろ」

 

「かてー事言うなよたっつん、よしやるぞー!」

 

 

なんせ女の子になってからつるんでた友人連中皆余所余所しくなったから、久しぶりに男友達とゲーセンに来れて楽しい事この上ないのだ。

 

 

(桜とかとゲーセンに来てもこういうゲーム一緒に遊べねーしなぁ)

 

 

そんなことをぼんやり考えつつ、オレとたっつんはジャンジャンバリバリ銃を撃ったり敵をしばいたりしながらステージを進めていく。

 

 

「ヘビーガトリング出たぞ、取っておけ」

 

「たっつん残弾少ねーけど大丈夫なのか?」

 

「ハイパーグレネードだからな、まだ10発ちょっとあるから消すのは勿体ない」

 

「いやナイフで雑魚処理するぐらいなら素直にガトリング取れよ」

 

 

小学生の時一緒に遊んでいたゲーム、しかもその頃の時点でレトロゲー扱いだったから古いゲームなのは間違いないんだけど。

まるであの頃に戻ったみたいでとても楽しいから大満足。

 

 

「いやぁ、しかし今日は変な連中に声かけられないから快適だわ」

 

「変な連中?」

 

「あー、うん。やれ一緒に遊ぼうだの言って馴れ馴れしい連中が湧いて出てくるんだよ。一人でゲーセン来るとさ」

 

「……旭、お前これからは絶対一人でゲームセンターに行くなよ」

 

「えー!なんでだよー!?」

 

 

中盤の難所ボスを撃破した時にオレがポロっとこぼした言葉に、たっつんが不思議そうに伊達眼鏡の奥にある瞳を向けてくる。

そして質問されたから素直に答えたら、たっつんはまるで頭痛をこらえるように眉間に手をやるとどうしようもないアホを諭すかのように告げてきた。

 

思わず声を上げて反論するオレであるも、さっきからちらちらと背後から感じる不快な視線にぐぬぬってなってしまうのであった。

 

ともあれそんな事はさておき。

 

 

「あー遊んだ遊んだ!この後どうする?」

 

「どうするも何ももう夕方だし、解散でいいだろ」

 

「そうだなー」

 

 

ゲーセンからたっつんと並んで出つつ、凝り固まった体をほぐすようにぐっと体を伸ばす。

その時に邪魔でしかない大きな胸が揺れて存在感を主張するが、それすらも気にならないぐらい今は清々しい気分だ。

 

 

「……すまん旭、ちょっと野暮用が出来たから先に帰っててくれ。真っすぐ寄り道せずに帰れよ」

 

 

しかし突然たっつんが目つきを鋭くさせると、オレが返事するよりも早く何処かへと走り去る。

たっつん足早くね?下手すると変身したオレより早くね?

 

 

「変なたっつんだなぁ」

 

 

しかしまぁ、たっつんにも何か事情があるんだろうとオレは結論づけて家路に付こうとする。が。

帰ろうとしたオレの視線の先にあるゲーセンの駐車場に、ジャークが現れる前兆の真っ黒なゲートが出現した。

 

 

(あいつらほんとによぉ!楽しかった気分台無しじゃねーか!!)

 

 

『アサヒ!ジャークが来るぴゅん!急いで変身するぴゅん!』

 

「わぁってるよ!」

 

 

鞄の中に押し込んでいたボケナスが急かすより早くオレは物影へ向けて走り出す。

とにかく怪人が現れた瞬間しばかないと、どれだけ被害が出るかわかったもんじゃないからこっちは大急ぎだ。

 

 

『ここなら人目もないぴゅん!』

 

「よっしゃぁ! ソウルパワー、ウェイクアップ!」

 

 

オレがそう叫ぶと共に巻き上がった七色の光がオレの体を包み、手に持っていた鞄と制服……それに下着が光の粒子となって消え。

それと同時に現れた新たな光の粒子がオレの体に張り付くと同時に、レオタード状のスーツへと変わりその上に羽織るように巫女服のようなジャケットが現れる。

そして、俺の頭にぴょこんと狐の耳が生えお尻からふわりと尻尾が生え、七色の光によってオレの髪色と瞳の色が変化して変身は完了した。

 

 

「……いっつも思うんだけどよぉ、なんでサクラとかワカバとかモミジは普通なのに。オレだけ狐耳と尻尾生えんの?」

 

『ぴゅんぴゅんも知らないぴゅん!』

 

「せめて調べる努力はしろよ! ああもう、行くぞ!」

 

 

めっちゃ他人事な事を抜かすボケナスに苦情を申し立てつつ、俺は狐尻尾をゆらりと振ってゲーセンの駐車場へ急行すると。

出現したゲートは更に大きく広がり、今にも怪人が出現しようとしていた。

 

 

「お前ら散れ!見世物じゃねーし危ねーだろーが!」

 

「マジカルアサヒだ!」

 

「ふほっ、相変わらずスケベな体」

 

「狐耳尻尾ハァハァ」

 

「変態共が!怪人より先にぶっ殺すぞゴルァ!!」

 

 

そしてゲートを取り囲みスマホを向けてた野次馬共をとっとと追い散らそうとするも。

こいつらスマホをオレに向けて好き放題抜かすだけで一向に逃げようとしねー。

 

ガチ目に怒鳴り散らして漸く不満そうに離れてくから始末に負えねーわほんと。

 

 

「おいボケナス!サクラ達は?!」

 

『こっちに急行中ぴゅん!』

 

「オーケー、なら前のタコ怪人みたいに強敵でも時間稼げばなんとかなるな!」

 

 

野次馬共が多少安全な距離まで下がったのを確認しつつ、オレはゲートが広がっていたゲートが収縮すると同時に現れた怪人と相対する。

その怪人は全身をぶ厚い甲羅で覆われ、両腕はオレの胴体ぐらい簡単に両断しそうな凶悪なハサミになっていた。

 

 

「さしずめカニ怪人ってとこか」

 

 

その外見から真正面からの足を止めての殴り合いは危険と判断しつつ、オレを視認するや否や戦闘態勢を取ったカニ怪人に対して構える。

オレは総合的な肉弾戦は仲間達より強いと自負しているが、一撃は軽いからカニ怪人に対して有効打を与えられる自信がない。

モミジなら馬鹿力で真正面から甲羅ごと叩き割れそうだが……アイツが来るまではマジで時間稼ぎするしかなさそうだ。

 

 

「ブークブクブク!相も変わらず我らジャークの邪魔をする小癪な魔法少女め!」

 

 

そしてオレに対して威嚇するようにハサミを振り上げながら、口から泡を噴きながらお約束の前口上をカニ怪人は言い始める。

しかしそれよりもオレは先ほどから気になっている事があった。

 

 

(なんか上空から超高速で降ってきてね?)

 

 

「今日こそは引導ヴォ!?」

 

 

そしてカニ怪人は最後までその前口上を言う事なく、上空から降ってきた黒い何かに甲羅ごと頭上から叩き割られて木っ端みじんになった。

思わず何か隕石でも降って来たのかと思うほどの衝撃と轟音が辺りに響くが、落ちてきたのは隕石などではない。

 

落ちてきたのは、前にオレを助けてくれた黒いドラゴンだった。

空を飛んでたらうっかり墜落したとかそういう訳ではないのは、カニ怪人に直撃する瞬間鉤爪を叩きつけていた事から間違いない。

 

 

「え、ええと……」

 

 

オレは勿論、遠目に見物していた野次馬も絶句。

更に急いでやってきてくれたであろう、サクラ達も現場を見て絶句。

 

何とも言えない沈黙の中、カニ怪人がソウルパワーの残滓を残しながら雲散霧消する。

 

 

(敵ながら哀れなヤツ……)

 

 

衝撃的過ぎる瞬間を目撃した余り、そんな現実逃避じみた事を考えながら暗くなり始めた夕焼け空を見上げてしまうオレ。

だが黒いドラゴンが翼を広げて飛び去ろうとしたので、オレは慌ててドラゴンを呼び止める。

 

 

「ま、待ってくれドラゴンさん!」

 

 

しかしドラゴンはオレに一度だけ視線を向けると、軽く身を屈めて飛び上がろうとする。

このまま行かせて何か困るとか嫌な予感がするとかそんなんじゃないけど、でも。

 

 

「せめてアンタの名前を教えてくれよ!助けてくれた恩人の名前も知らないなんて嫌だ!」

 

 

オレの叫びに対してドラゴンは動きを止めると、何か考え込む仕草をする。

 

 

(もしかして、このドラゴン名前がない?)

 

 

思わずそんな考えがよぎる中、ドラゴンは屈んだ体を起こすとオレへ振り返り。

 

 

「……シュヴァルツフィーダー」

 

 

そう一言だけ言い残すと、今度こそオレに背を向けて高く飛び上がるとどこかへと飛び去って行った。

オレはドラゴン、いや。シュヴァルツフィーダーが飛び去って行った方角をサクラに呼びかけられるまでただ見続けるのであった。

 




シュヴァルツフィーダー(黒い羽)……一体、何者なんだ。
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