オレが魔法少女になったと思ったら、幼馴染も訳ありだったと知った不具合 作:社畜だったきなこ餅
お蔵入り予定だった、たっつん側事情を手直しして投稿する暴挙。
これは、そう。
旭達がシャコ怪人とやらと死闘を繰り広げていた時の話だ。
友達と遊びに行くという旭が心配で後ろ髪を引かれる中、俺は転移陣を潜りクソ親父の領域へ飛ぶ。
アイツはなまじ性根が底抜けに明るい善性の人物からか、他人のどす黒い悪意を察知してもそこまでひどい事はならないだろうという謎の楽観的思考がある。
何なら小学生の頃も不審者に連れていかれそうになったのを、阻止したことがあるぐらいだ。アイツは幼女どころか雛鳥並の警戒心しかないのか。
「次期当主様だ」
「今日はお妃様つれてきていないな」
飛び交う竜達の雑談を聞き流しながら俺はクソ親父が待つ居城の広場へ降り立つと、そこには先の戦いで下した異母兄弟姉妹がすでに勢揃いしていた。
全員が俺に気付くと傅くような姿勢を取り、大きく頭を下げる。
「お待ちしておりました、偉大なる次期当主様」
「兄貴か、随分と物々しい出迎えだな。何か知っているか?」
「ええ勿論存じ上げておりますとも、父上がお待ちです。こちらへどうぞ」
その中から一歩歩み出てきた兄貴、俺が下すまでは次期当主第一候補だった兄弟に案内されて俺は歩き始める。
俺が歩き出すと同時に他の兄弟姉妹がぞろぞろついてくる辺り、今度の話は公布する内容か何かと思われる。
(竜王就任とか急に言われたら面倒だな、旭の所に帰るのが遅くなるのは困る)
そんな事を考えながら歩く事しばし、やがてクソ親父の玉座のある広間の入口に付くと大きな扉はゆっくりと開き始め。
広間にはクソ親父や古竜と呼ばれるクソ親父の側近の竜までが勢揃いしていた。
「来たかクソガキ共、おいクソガキ筆頭。一歩前に出てこい」
「こっちは忙しいんだ、用件は手短に済ませろクソ親父」
「相変わらず口の減らないガキだ」
気怠そうな声でクソ親父がそんなことを抜かしたため、俺は売り言葉に買い言葉を叩きつけながら前に進む。
俺の傲岸不遜極まりない言葉にクソ親父の側近は色めき立つが、俺が鬱陶しそうにそちらへ視線を向ければ押し黙った。
「話ってーのは簡単だ。まず一つ目はクソガキ……いや、終焉王ファフニール。貴様を当代の竜王として任ずる」
「おいクソ親父、その名前で俺を呼ぶな。それに俺は竜王になる気はないと言っているだろうが」
「いいから聞けクソガキ、貴様は後ろに並んでいる継承者候補全員のみならず儂の側近に儂すらも打ち倒して力を示した」
クソ親父が俺の抗議を遮りながら強く告げると、俺の態度に不満を見せていた側近の古竜たちは一斉に俺に対して臣従の意志を示す姿勢を取る。
思わず兄貴を振り返れば、兄貴を筆頭に兄弟姉妹達……よく見るとエレクもいる中、全員が俺に対して平伏していた。
「どういうことだ兄貴」
「偉大なる次期当主様、いいえ当主様。発言の許可を願います」
「……いいだろう、言えよ」
「当主様は父上のみならず歴代竜王、古竜の方々の悲願である神を僭称するモノの討伐を果たし。竜の未来を切り開きました」
思わず平伏している兄貴に問いをぶつければ、酷く他人行儀ながら傲岸不遜な兄貴が全身全霊の礼儀を込めて口を開く。
俺が呆気にとられる中、兄貴は言葉を続ける。
「我輩を含む全ての竜よりも強く、歴々の竜に不可能だった事を成した偉業。それを成した当主様を竜王と仰ぐ事に何の不満がありましょうか?」
「……だが、アンタは次期当主筆頭として誰よりも努力していたのだろう?」
「そのような事最早些事でございます偉大なる当主様、貴方様以外では竜をまとめ束ねる事は叶わないとご理解下さいませ」
俺と死闘を繰り広げた時の兄貴は次期当主筆頭候補である事に誰よりも誇りを抱いていた、何ならあのエレクも兄貴の努力と実力は認めていたほどだ。
だが、俺はエレクが前に俺に言っていた事を思い出す。
『親愛なるお兄様が当主にならないと間違いなく兄弟姉妹で、今度は止まらない殺し合い始めますよ』
あの時はあいつの冗談めかした物言いだと流していたが、違ったのだ。
俺の普段の立ち居振る舞いに不満を抱いているクソ親父の側近も、次期竜王の座を得る為に死闘を繰り広げていた兄弟姉妹達も皆。
感情はどうであれ、俺以外の誰が新たな竜王となっても納得しない。
その事を俺は今この時になって、心の底から理解してしまった。
「漸く理解したようだなクソガキ」
「……趣味が悪いぞクソ親父」
「こうでもしないと貴様はやってこないだろうが」
声に愉悦を織り交ぜながら、愉快そうに体を揺らして笑うクソ親父に俺は苛立ちを覚えながら負け惜しみのように呻く。
最早当主として収まる事をのらりくらりと逃れる事は不可能だろう、だが俺にだって事情はある。
「だがクソ親父、はいそうですかと俺はすぐに領域に帰るわけにもいかんぞ?」
「学業とか言うお題目などどうでもいいわ、どうせあの娘と離れたくないのだろう?」
「……ぐぅ、ああそうだよ。その通りだ」
俺の抵抗もクソ親父に容易く本心を見抜かれ、俺は敗北感を感じつつ呻くように答える。
そんな俺がよほど愉快で胸が空く思いなのか、クソ親父は心底愉快そうに笑っているのが非常に腹が立つ。
「これ以上貴様を揶揄っては今度こそ殺されそうだな、安心するが良い。たまにこちらに帰り政務をせよ」
「戻るタイミングと頻度は調整させてもらうぞ」
「ああソレでよい、これでまず一つは片付いたな」
クソ親父にやられっぱなし、と言うよりも掌の上で踊らされた感が非常に強い。
何故俺はいきなり呼び出されてこのような公開処刑のような扱いを受けねばならんのだ。
だがクソ親父はここまでが前座と言わんばかりに身じろぎして姿勢を少し変えると、がらりと纏う空気を換える。
オイクソ親父、俺が言うのも何だが次期竜王の使命を前座のように扱うのは流石にどうなんだ。
「儂ら竜の領域に対し、様々な組織がアプローチをかけてきておる」
「ソレは魔法少女達が関係している、魔法の国とやらか?」
「その連中もそうだが、リソースを奪うために現世へ襲撃をかけている連中もアプローチをかけてきておるわ」
旭達を担当している魔法の国の担当者らしい、ぴゅんぴゅんの姿が頭に浮かぶがソレだけではないらしい。
(襲撃をかけている連中……ああ、あの海産物怪人の連中か)
「ジャークと言う連中の事か?」
「何か勘違いしているなクソガキ、そもそもその手の連中が一つの組織だけだと何時から勘違いしておった?」
「……どういう事だ?」
「口で説明するのも煩わしい羽虫の連中だ、資料を側近から受け取って確認しろ」
クソ親父の発言に俺は少しだけ驚きを隠せなかった。
しかし言われてみれば、他の町や海外でも悪の組織を名乗る連中の襲撃は発生しているらしいし。
それらを撃退する魔法少女やら正義のヒロインとか、そう言うのがいるというのも旭から聞いてはいた、のだが。
「……おいクソ親父、なんだこの冗談みたいな連中は?」
「笑えて来るだろう?」
クソ親父の側近から情報を刻まれた宝玉を受け取ると、俺の脳裏に矢継ぎ早に情報が送られてくる。
既に壊滅した組織を除いても、かなりの数の組織が居る事がわかる。
そいつらの現世への襲撃理由も様々だ。
自分達のエネルギー危機を乗り切るためにソウルパワー収奪を目論む、旭達の敵であるジャークみたいな生存闘争のために襲撃をかけている連中もいれば。
自身の闘争欲を満たす為に襲撃をかける連中に、人間社会への復讐のために襲撃をかけている連中。
中には女子供を奴隷にし、弄ぶためだけに収奪しようとしている胸糞が悪い連中までいる始末だ。
なんか魔法少女達との戦いが世界的娯楽になっており、フェアな戦いを繰り広げてる悪の組織と言う珍妙なのもいたが。
お前ソレ最早悪の組織じゃなくて、プロレスのヒール団体とかそういう類だろが。
ともあれ……その情報量、そして内容に思わず頭痛を堪えながら呟けばクソ親父はゲラゲラと広間中に広がる声で哄笑する。
「貴様の母が戦っていた連中を駆逐した際に目をつけられてな、それ以来アプローチが絶えんのよ」
「……待てクソ親父、今何つった?」
「何だ知らなかったのか? 貴様の母であり儂の寵姫であるアヤツも元は魔法少女よ」
「うっそだろ」
クソ親父の発言に思わず目を見開きながら、震える声で問い掛ければ今まで知る由もなかった事実を知らされる。
その時、一つの仮説が頭をよぎった瞬間俺はクソ親父をいつでもぶちのめせる姿勢を取りながら、口を開いた。
「まさかクソ親父、母さんを孕ませる為に襲い掛かったのか?」
「何を勘違いしているクソガキ、あやつは自身が護っていた人間の裏切りで戦えなくなっていただけよ」
「……どういう事だよ」
「儂の口から言うのも馬鹿馬鹿しいわ、そのうちあやつに会える時間を作ってやるから直接聞くと良い」
俺の殺意が籠った詰問もクソ親父はどうでも良さげに否定した。
(いかん、情報が多すぎて混乱してきたし思考がまとまらん)
「……わかった、今は一旦納得しておく。それでそのアプローチとやらに対して俺はどうすればいい?」
「簡単な話よ、貴様は魔法少女に肩入れしておろう? ならば彼奴らの会合とやらに出席して、そこで宣戦布告してくれば良い」
「正気かクソ親父」
魔法少女や正義の勢力の仇敵である悪の組織、その集まりにわざわざ出席してそこで宣戦布告するという事。
ソレは全面戦争の開始と同じとしか思えない。
「おい、何言ってるかわかってるのか? クソ親父」
「貴様より理解しておるわ、ソレに貴様も無関係ではないのはわかろうて」
クソ親父の言葉に俺は押し黙る。
渡された資料情報にある連中の大半は、非常に胸糞が悪い連中だ。
初期の頃は犠牲者を出すほどに暴れていたジャーク達が可愛らしく見える有様なのだから、その酷さが窺い知れると言えよう。
何よりも、俺にとって気に食わない事、それは。
敗北、ないし降伏した魔法少女はヒロインを弄び甚振る連中が多い事だ。
(万が一ジャークを倒した後に、こいつらがあの町に手を伸ばしてきた場合……)
旭が共に戦っている魔法少女達は皆善人だ、その手の下衆の欲望とは無関係と言える精神性をしている。
最近はジャークの強化された怪人に苦戦する事も多いが、戦闘能力においては彼女達が集まれば貧弱な竜ぐらいなら撃退する事ができる。
しかし、積極的に人質を取るばかりか辱めを仕掛けてくる相手が出た場合、果たしてまともに戦えるかと聞かれたら。
(無理だな)
何故か彼女達がその手の手段を用いてくる連中相手に、無事に戦闘を終えられるビジョンが全く見えてこない。
そして、そうなった場合旭達は間違いなく……。
「……クソ親父、アンタの思惑に乗るようで非常に不本意だが乗ってやるよ」
「わかりやすいなぁ貴様は、だがそれぐらい青臭い方がいい。戦力配分や派遣する竜は貴様に一任する」
話は以上だ、とクソ親父が告げると広間に集められた竜は俺を含めて全員がそのまま解散となる。
俺はそのまま自宅へと戻り、旭が無事かすぐに確認したいところだったが……。
血気盛んな兄弟姉妹のみならず、クソ親父の側近である古竜まで戦力として売り込みをかけてくるものだから帰るのに時間を要してしまった。
前々から思っていたが、竜って連中は血の気が多すぎやしないか?
ドラゴンは割と一枚岩ではないです。
しかし圧倒的強者であるたっつんが君臨してる間は、結果的にまとまる。そんな面白生物です。