オレが魔法少女になったと思ったら、幼馴染も訳ありだったと知った不具合 作:社畜だったきなこ餅
最近ジャークの連中おとなしくなったと思ってたんだよ。
酷いときは毎週のペースで襲撃をかけてきてたのに、ここ最近はなかったから。
そんなことを思ってたらさ。
「キュ~~~キュッキュッキュ!我々ジャークにひれ伏すがよいッキュ!」
「キュキュー!」
「汚物は消毒だキュ~~~!」
オレ達魔法少女の前にぞろぞろと現れたイルカ怪人共が、好き放題騒ぎながら手に持った火炎放射器を振り回している。
何を言ってるかわからないと思うけど、オレ達も何が起きてるのかよくわかってない。
「しゃらくせえですわー!」
「キューー!?」
あ、火炎放射器の猛攻で接近できなくてイライラしてたモミジが……破壊された建物から大きな瓦礫を持ち上げてイルカ達に投げつけてる。
「ワカバ!サクラさん!遠距離であいつら仕留めますわよ!」
「うん!」
「……任せて」
魔法少女の力によってダメージに耐えれるようになっているオレ達とは言え、一斉に放たれた火炎放射器に突入して無事なわけがなく。
自然とオレ達は持てる力を以って迫りくるイルカ軍団に遠距離攻撃を敢行する、が。
「マジカルライトアロー!」
「……吹けよ嵐、マジカルストーム!」
「どっせぇぇぇぇい!ですわー!」
サクラがソウルパワーで作った光の弓矢でイルカを倒し、ワカバが放った魔法の嵐がイルカを何匹も吹き飛ばし……モミジが投げた瓦礫が直撃したイルカが断末魔の叫びを上げながら吹っ飛んでいく。
オレ? オレは時折炎が届いてダメージを負った仲間達の治療に専念してる。
悲しい事にオレに遠距離攻撃手段はないのだ。
「オレもモミジみたいな剛力あればなぁ……」
「適材適所でしてよ! おらっしゃぁぁぁぁぁ!!」
思わずボヤくオレにモミジはウィンクをすると、今度は倒れていた自動販売機を鼻息荒く持ち上げてイルカ達へ投げつけてる。
戦いが終われば直せるのを良い事にこのお嬢様、やりたい砲台である。
「……数が多すぎる」
「だけどここで引き下がったら、町の人達が危ない……みんな、頑張ろう!」
確かにイルカ達をオレ達は次々と減らしていってるのだが、それ以上にゲートから続々と現れるイルカ怪人の群れが増える方が早い。
更にイルカ怪人軍団は町の破壊や人への襲撃よりもオレ達を追いつめる事を優先しているのか、オレ達はイルカ軍団の火炎放射器や猛攻で少しずつ追い詰められていってしまう。
「あっぢぃぃぃ!ですわーー?!」
モミジ自慢の縦ロールが火炎放射器によって引火し、モミジはごろごろと地面を転がって慌てて消火している。
オレは急いで火傷を負ったモミジの治療にかかるが、回復役であるオレもまたイルカ軍団に優先的に狙われておりレオタードの上に羽織っていた巫女服はすでに消失。
レオタードもあちこちが焼けこげて穴が空き、一部素肌が見えてしまっている。
「キュ~~~キュッキュッキュ!魔法少女恐れるに足らずッキュ!」
「数の暴力は最高だキュ~~~~!」
勝ち誇ったように笑うイルカ軍団の様子にオレ達は歯噛みするしかない。
サクラもワカバも消耗が激しく、強力な遠距離攻撃はほとんど使えない状態。
普段は前に出て殴り合うオレとモミジは、イルカ軍団の火炎放射器で前に出れない。
イルカ軍団の増援は打ち止めになり、襲い掛かって来たイルカの半数は仕留められたがこれ以上はもう厳しい有様になっていた。
最早絶体絶命となり、イルカ軍団が勝ち誇った笑みを浮かべて一斉にオレ達へ火炎放射器を向ける。
しかし、その時。
「キューーーーーーーーーーーーーー?!」
はるか上空から何本もの雷光の槍がイルカ軍団に降り注いだと思った次の瞬間、まるで爆撃でも始まったのかと思うほどの爆音と衝撃が辺りに広がる。
(もしかして、また来てくれたのか!?)
オレ達が雷光が降り注いだ方向を見上げると、そこには翼を広げ右手には雷光の槍を携えたシュヴァルツフィーダーがいた。
正直な事言うと、すっげぇかっこいい。
「で、出たッキュねシュヴァルツフィーダー!」
「待つッキュ小隊長!アイツは確かに怪人軍団で足止めをしたはずッキュ!」
「そ、そういえばそうだったッキュ!シーキューシーキュー!シュヴァルツフィーダーがこっちに来たッキュ!」
現れたシュヴァルツフィーダーにイルカ達は混乱しながらも、何やら作戦をしていたのか別動隊と思しき連中に通信をしている。
あいつら、あっち側も対策済みだったのか……もしかして最近おとなしかったのは、戦力を貯めてたとかそういう事か?
「……随分と手間取らせてくれたが、貴様らが言う怪人は既に始末した」
「ッキュー!?」
シュヴァルツフィーダーはオレ達とイルカ軍団の間に降り立ちながら、静かだが良く徹る声でイルカ達へ告げる。
その言葉にイルカ達は戦慄するが、どうやら通信相手が応答しない事からシュヴァルツフィーダーの言葉がガチだと悟ったらしい。
「サクラ、ワカバ、モミジ。オレ達も頑張るぞ……いつもいつもシュヴァルツフィーダーに頼ってちゃ、情けない!」
「うん、そうだね!私達も頑張らないと!」
「……頼るのと甘えるのは、違う」
「おっけーですわー!やったりますわよー!」
シュヴァルツフィーダーの頼りになる背中に、ギリギリまで追い込まれた体が疲労を訴えるが無視して仲間達を鼓舞する。
オレの言葉にみんなは力強く頷くと、一足飛びでシュヴァルツフィーダーの横に並び立つ。
「……下がっていろ」
「いつもありがとうございます!だけど頼りっぱなしは良くないと思うんです!」
「……そうか、だが……乙女が素肌を晒すもんじゃない」
オレ達を一瞥したシュヴァルツフィーダーは、まるでオレ達が戦う事を良しとしないようなことを言うがサクラはその言葉を真っ向から否定。
その言葉にシュヴァルツフィーダーはどこか愉快そうにその目を細め、オレ達がかなり際どい格好になってることに気付いたのか慌てて目を逸らした。
(もしかしてコイツ、めっちゃ初心?)
オレがそんなことを考えていると、シュヴァルツフィーダーは右手に携えていた雷光の槍を消して黒い鱗に覆われた右腕を高く掲げると。
そこから放たれた柔らかい黄金色の光がオレ達を包み込み、その光が止むとオレ達の体を包むようなゆったりとしたローブが着せられていた。
「……お前達の衣装は俺と力の種類が違う、それで我慢しろ」
光ったと思ったら着せられていた肌触りがシルクみたいに良いローブにオレ達が戸惑っていると、シュヴァルツフィーダーはオレ達に火炎放射器を向けていたイルカ軍団に突っ込んでいく。
当然イルカ軍団は火炎放射器を一斉に放ち、自身に向かってくる敵を焼き尽くそうとするんだけど……。
うん、シュヴァルツフィーダーやっぱつええわ。火炎放射器でもダメージ負うどころか自身に炎を纏ってイルカ軍団片っ端から薙ぎ払ってる。
「往こう、みんな!」
サクラの声と共にオレ達もまたイルカ軍団へ突撃する。
その後も色々苦戦はしたが、しかしオレ達は頼もしい味方のおかげで無事勝利することが出来たのであった。
そしてまた、戦いを終えたシュヴァルツフィーダーは飛び去ろうと翼を広げる事はなく。
オレ達に振り返ると、逡巡した様子を見せながらも口を開く。
「そのローブは魔力の集合体だ、武器なり装備の素材にしろ。お前達は見ていて危なっかしい」
それだけ言うとオレ達が何か言う前に翼を広げ、どこかへと飛び去って行った。
今日は妙に饒舌だった上に、援助までしてくれたシュヴァルツフィーダーに思わずぽかんとするオレ達なのであった。
「……もしかして、シュヴァルツフィーダーって過保護?」
「ぐぬぬ、悔しいですわー!」
ワカバが呟き、自身のプライドを傷つけられたモミジは地団駄を踏んで悔しがっている。
だけど……。
(今、もしかしなくてもシュヴァルツフィーダー。オレの方見てなかった?)
「シュヴァルツフィーダーさん、今アサヒちゃんの方見てなかった?」
「やっぱりそう思う?でも心配されるほど知り合いじゃないと思うんだけどなぁ……」
「もしかしてだけど、シュヴァルツフィーダーさんの正体ってアサヒちゃんの事良く知ってる人じゃない?」
オレの気のせいかと思ったが、同じことを思ったのかサクラはオレに近寄ってくる。
しかしそんなことを言われても、オレにはとんと心当たりがない、いや、まさか。
(もしかして、たっつん?)
そう考えてみると色々しっくりくる。
あのぶっきらぼうな喋り方、たっつんの余所行きモードの口調にめっちゃ近いのだ。
(今度たっつん問い詰めてみるかぁ、本気で嫌がったら諦めるけど)
内心で一つの決意をしつつ、オレ達はイルカ軍団に好き放題破壊された町の修理に取り掛かるのであった。
イルカが攻めてきたぞ!な回でした。
当初は魔法少女達がきゃいきゃい言いながら水着を買いに行く回にしようと思ったんですけど、最近魔法少女してなかったから急遽こうなりました。