オレが魔法少女になったと思ったら、幼馴染も訳ありだったと知った不具合   作:社畜だったきなこ餅

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評価人数が20人超えたので投稿です。

前回のプールハプニングからの続きです。
今回からまた旭くんちゃん視点に戻ります。


狐とプールとドラゴン

 

 

桜達にコーディネートされ、もらった優待券でたっつんとやってきたプール。

椛なんかはデートですわ!とか盛り上がってたけど、別にオレとたっつんはそんな関係じゃないので普通に遊びに来ただけなんだが。

 

それでもすっげぇ楽しかった、たっつんにギャル二人が迫ってたの見た時はなんかむしゃくしゃしたけども……。

たっつんを引っ張り回して施設の中の色んなプールで遊んで、オレは凄い気持ちがスッキリしていた。

余りの楽しさにたっつんの怪しい所を問い詰めようとしていたのを、うっかり忘れてしまったぐらいだ。

 

そうだというのに。

 

 

「ヒーッヒッヒッヒ!逃げ惑うがよい!」

 

 

人が楽しんでる場所に限って、ソウルパワーの集積効率がどうたらと抜かすジャークが襲い掛かってきやがった。

すぐに変身して戦おうにも、逃げ惑う人達の目がある関係で変身は難しい。

その上……。

 

 

「ヒーッヒッヒッヒ!一際イキが良いのがいますねぇ!」

 

 

ヒトデ怪人の野郎、オレを抱えて逃げるたっつんを狙い撃ちにしてきやがった。

 

 

「すまない旭、少し荒っぽくいくぞ!」

 

「へ?わぁぁぁぁぁ?!」

 

 

さっきまで遊んでいたウォータースライダーでビキニブラ部分が流され、露わになったオレのおっぱいを晒さない為にオレを抱きしめているたっつんの腕に力がこもる。

思った以上に逞しいたっつんの腕に思わずドキっとしたのは気のせいだ、オレはホモじゃないのだ。

 

 

「ぬぅっ?!」

 

 

その見た目からは想像できない速度で襲い掛かり、腕を振り降ろしてきたヒトデ怪人の剛腕を紙一重で回避すると。

オレを抱き上げたままヒトデ怪人の足、そして頭を踏み台にして大きく跳躍。

 

 

「旭、どこか適当なところで……っ?!」

 

 

しかし次の瞬間、もう片方の腕を伸ばして薙ぎ払ってきたヒトデ怪人の腕がたっつんを背後から襲う。

オレはたっつんが庇ってくれたから大して衝撃を受けなかったが……何かがひしゃげるような音と共にオレを抱きしめたままたっつんは吹き飛ばされ。

 

逃げ惑う市民の悲鳴を聞きながら、オレ達は飛び込み用の水深が深いプールへと叩き落とされてしまった。

 

 

(急いで変身しないと、たっつんが危ない!)

 

 

もしかするとシュヴァルツフィーダーかもしれないたっつんなら平気かもしれない、しかしそうじゃなかった場合。

トラックも一撃で破壊する怪人の一撃をもろに受けたたっつんは危険な状態になる。

 

 

(ソウルパワー……)

 

 

たっつんと共にプールに沈みながらオレは、魔法少女への変身をすべく力を籠める。

だが、それよりも早くたっつんは抱きしめていた腕をオレから緩めると、その体からゴキリゴキリと体の内部からまるで折れた骨を直すかのような音を立て始める。

 

 

『旭、すまない』

 

 

突如オレの脳裏に響くたっつんの声、思わずたっつんの顔を見ると。

 

たっつんはまるで今生の別れを告げるかのような笑みを浮かべ、オレに背を向けるとオレの目の前で怪人の一撃で抉られたであろう背中の傷跡を再生させながら。

水中で舞う様に両手を回して頭上に光り輝く魔方陣のようなものを作り出すと、水中を蹴って魔方陣へ向かって飛び上がる。

 

そして、魔方陣を潜り抜けた先に出てきたたっつんの姿はたっつんではなく、何度もオレ達の危機を救ってくれたシュヴァルツフィーダーの姿になっていた。

 

突然の事態についていけてないオレへ振り返る事なくシュヴァルツフィーダー、いやたっつんは水中でひときわ強く水中を蹴りつけると弾かれたように水中から飛び出していった。

 

 

(いけない、オレもすぐに加勢しないと!)

 

 

たっつんがシュヴァルツフィーダーだったという衝撃の事態に思考が止まるが、息が苦しくなってきた事でそんな場合じゃない事をオレは思い出すと。

気合を入れてソウルパワーを身に纏い、変身を始める。

 

 

「ぷはぁっ!たっ……シュヴァルツフィーダー、加勢するぜ!」

 

 

そしていつもならしっかり変身するが時間が惜しいオレは狐耳と尻尾が生えた事を確認するや否や水面から飛び出し、ヒトデ怪人と向き合っていたたっつんの隣に立つ。

しかし、何だか妙に騒がしい。

 

 

「ふほっ、トップレス……」

 

「丸出しだなんて、マジカルアサヒって大胆」

 

 

聴衆の呟く声を狐耳が拾い、思わず視点を下にずらす。

そこには大きく揺れて震える、邪魔な事極まりないオレのおっぱいが激しく自己主張していた。

 

 

(し、ししし、しまったぁぁぁぁぁ?!)

 

 

オレは慌てて変身し、衣装が構成完了するのも待たず飛び出してしまった。

その結果が上半身裸の丸出し状態という大問題を引き起こしていたのだ、不幸中の幸いか下はちゃんと構成されていた。

 

 

「……マジカルアサヒ、俺の翼の中から出るなよ」

 

 

オレを庇うようにたっつんは翼を広げると、すっぽりとオレを翼の中に隠してくれる。

逃げようとしない野次馬の中からたっつんに対して激しいブーイングが飛ぶが、隠されてるオレでもわかるぐらいたっつんが怒気と殺意を振り撒いたからかすぐに野次馬達は逃げ出していった。

 

 

「ヒーッヒッヒッヒ!流石のシュヴァルツフィーダーも庇いながらではまともに戦う事はできまい!」

 

 

たっつんの翼によって外の状況がわからないが、どうやらヒトデ怪人はオレを庇ってるせいで身動きがとれないたっつんをその剛腕で一方的に嬲り始めたらしい。

 

 

(まずいまずいまずい、たっつんを援護する筈だったのに足引っ張ってる……!)

 

 

考え無しに突っ込むからこうなるんだ、といつものたっつんなら言ってくるようなことをしてしまい焦るオレ。

しかしその時であった。

 

 

「マジカルアサヒ!コレを!」

 

 

駆けつけてくれたサクラの声と共に、たっつんの翼の隙間を縫ってサクラの光のソウルパワーに包まれた何かがオレへと投げ入れられる。

投げ入れられたもの、それはウォータースライダーで紛失したオレのビキニブラそのものであった。

 

 

「サンキュー、サクラ!」

 

 

大急ぎでビキニブラを装備して紐を硬くシメ直す、硬く締めすぎて少し苦しいが今はそれどころじゃない。

 

 

「シュヴァルツフィーダー、こっちはもう大丈夫だ!」

 

「……わかった」

 

 

オレの言葉を受けたっつんはオレを庇う様に広げていた翼を畳む。

そうしてようやく見えるようになったたっつんとヒトデ怪人の状況だが、オレを庇っている間猛攻を受け続けていたのかたっつんの体の鱗のあちこちに罅が入っている。

 

 

「ご、ごめん、オレが考え無しに飛び出したから……」

 

「気にするな」

 

 

オレの言葉にたっつんはどこか苦笑いを浮かべているかのような声音で応じると、自身に向かっていたヒトデ怪人の腕を鉤爪がついた腕を叩きつけるように振って弾き返す。

 

 

「ヒーッヒッヒッヒ!魔法少女達も来たようだ、ワタクシの真の力を見せてやろう!」

 

 

巻き込まれた市民の避難誘導も終わったのか、サクラとワカバとモミジも揃ったところでヒトデ怪人は醜悪に笑うと。

その体にまがまがしいパワーを集め、次の瞬間には身長10m越えの巨体へと変貌する。

 

 

「ヒーッヒッヒッヒ!シュヴァルツフィーダー、そして魔法少女ぉ!貴様たちがいくら強かろうとこのスーパーヒトデ怪人様には勝てんのだぁ!」

 

「しゃらくせぇですわ!人の恋路うきうきウォッチングを邪魔した報い、覚悟なさいませぇーーー!!」

 

 

巨大化したヒトデ怪人の口上に、目を見開きブチギレ全開のモミジが突進する。

いつもと違いモミジの両腕には頑丈そうなガントレットのようなものがついている、前にたっつんがオレ達にくれたローブを加工して作り直した強化装備だ。

その威力はすさまじくて……。

 

 

「これはぁ、デートを邪魔された市民の方の分!」

 

「ぐはぁ!」

 

「これもぉ、デートを邪魔された友達の分!」

 

「ぐほぉ!?」

 

「そしてこれはぁ!うきうきウォッチングを邪魔された私の怒りですわぁーーー!!」

 

「ぐひぃぃーーーー!?」

 

 

モミジが怒りの雄たけびと共にガントレット付きの鉄拳を叩き込むたびに、まるでビル解体用の鉄球が直撃したかのような轟音が響いてヒトデ怪人の巨体が陥没。

だがその一発で終わる事はなく、モミジの雄たけびと共に拳の乱打が叩き込まれ……とどめとばかりに放たれたアッパーカットでヒトデ怪人の巨体は浮き上がり、地響きを立てて地面へと倒れる。

 

 

(やっぱモミジの怪力おかしいって、後なんで水着なんだよ。いやさっきまでトップレスだったオレが言えた義理じゃないけどさ)

 

 

そんなことを考えつつたっつんの治療をする中、その顔に憤怒を浮かべたヒトデ怪人は起き上がりオレ達へ襲い掛かろうとしてくる。

しかしそれも、激しい勢いで放たれた嵐の弾丸によって阻まれた。

 

 

「……せっかく人が優雅に涼みながら友人の恋路を眺めてたのに、邪魔するなんて許すまじ」

 

 

嵐の弾丸を放ったのはワカバ、彼女の手にはまるで銃のような装備が握られている。

元々遠距離攻撃が得意で手から放った魔法的な攻撃を得意としていたワカバだったが……。

明確に狙いをつけ易い上威力が増幅される装備を手にしたワカバは、ヒトデ怪人が何か言おうとするたびにその顔面を狙い撃ちしていく。

 

 

(え、えげつねえ……涼みながら恋路云々って、やっぱこいつらどこかからオレ達の事見てたな?)

 

 

『アサヒ!こいつを使うぴゅん!』

 

「ありがとよ」

 

 

たっつんの治療を終えたオレはちょうど飛んできたボケナスから、ローブを加工したネックレスを受け取ると頸から提げる。

オレの追加装備は攻撃とかそういうモノではない、何故なら。

 

 

「人に迷惑をかけた上、お友達の恋路を邪魔した貴方は絶対に許さない!」

 

 

ズタボロになったヒトデ怪人へ向けられる、普段は穏やかなサクラから発せられたとは思えない怒りの咆哮。

彼女の手には実体を伴った魔法の弓が握りしめられ、もう片方の手では必殺の一撃と呼ぶに相応しい光の矢……否、光の杭がつがえられていた。

 

 

「これで終わりよ、セイントソウルアロー!!」

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!?!」

 

 

這う這うの体で回避しようとする巨大ヒトデ怪人であったが、それよりも早くサクラの怒りの一撃が放たれヒトデ怪人に直撃。

今までも並の怪人なら一撃で屠ってきたサクラの光の弓矢だが、たっつんから受け取ったローブを加工して作られた装備の効果かその威力は文字通り桁違いの代物だった。

 

でもさ、さっきから人の恋路だのなんだの言ってるけど……。

 

 

「デートじゃねえから!!」

 

「アサヒちゃん、説得力ないよ流石に!」

 

「……認めたら楽になる」

 

「式場手配は任せろですわー!」

 

 

渾身の突っ込みを叫ぶオレ、しかしサクラ達は取り合ってくれない。なんて時代だ。

あの一撃を食らってヒトデ怪人が生きてるわけでもない、そう考えたせいかオレ達の間から緊張感が解けて消える。

 

しかし。

 

 

「……まだ終わってはいない」

 

 

油断することなくヒトデ怪人を見ていたたっつんが、呟くとオレ達の視線はヒトデ怪人へと集中する。

サクラの一撃が致命傷になったのか、ヒトデ怪人は全身をぼろぼろにしており巨大化も解けていた、が。

 

 

「ひ、ヒーッヒッヒ……まさか強化された装備を魔法少女達が手に入れていたとは、誤算!しかし……」

 

 

ヒトデ怪人は霧散しそうになっていたまがまがしい力を再度自身へ集めると、その体を大きく膨れ上がらせる。

 

 

「ひ、ひひひひひひ!ここで自爆し、貴様たちごと葬ればその強化も無駄となるぅ!」

 

 

膨れ上がって自爆ってお前、どっかのバトル漫画の敵か何かかよ。

そんな事を思いつつも、オレはにぃと口の端を吊り上げて笑うとネックレスに手を当てもう片方の手をヒトデ怪人へ向ける。

 

 

「ひ、ひひひひひ……ひ?」

 

 

今にも自爆しようとしていたヒトデ怪人を、無数の光の板が取り囲んでいきやがて一つの球体となってヒトデ怪人は閉じ込められる。

確かにあのまがまがしい力全部使って自爆されたらオレ達は危ないし、それどころかこの周辺すら甚大な被害を受けただろう。

 

本来は仲間や自身に魔法の防御壁を張る為の強化装備だったし、ぶっつけ本番の使い方だったけど上手い事ハマったようだ。

 

 

「自爆するなら……てめえ一人で孤独死しやがれ!」

 

「ひひひひひ!ば、ばかなぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」

 

 

中指突き立ててヒトデ怪人へ言葉を叩きつけてやると同時に、ヒトデ怪人は断末魔の叫びを上げながら爆裂四散。

あいつを取り囲んでいた光の球体はそれでも罅一つはいらず、あのはた迷惑な怪人は何一つ成果を残さずにこの世から退場した。

 

 

「っしゃぁざまぁみやがれ!人様を半裸にしたバツだこのやろー!!」

 

「……アサヒ、貴方が半裸になったのはむしろはしゃぎ過ぎが原因では?」

 

「ちょっと待て、そこも見てたのかお前!?」

 

 

折角のプール遊びを邪魔された上、人様のおっぱいを衆目に晒してくれた怨敵を屠った清々しさに思わず叫ぶオレ。

すかさずワカバが突っ込んできた言葉に、こいつらがどこから見てたのか思わず心配になる。

 

もしかしてこいつら、たっつんがギャルに絡まれて悶々としてるオレまで見てないだろうな?!

 

 

「アサヒさん、嫉妬は恥ずかしい感情ではありませんのよ」

 

「そうだよアサヒちゃん!」

 

 

悲報、全部最初からみられてたらしい。

そうやってやいのやいの言い合ってるオレをたっつんは一瞥すると、満足げに瞳を細めて飛び去ろうとしていた。

 

何故か、オレにはそのたっつんの姿がもう自分が守れなくても大丈夫だとたっつんが思っているように感じた。

 

 

「ま、待てよ!まるでもう手助けできないみたいな雰囲気出してんじゃねーよ!」

 

 

思わずたっつんへ駆け寄りながら呼びかける。

シュヴァルツフィーダーの姿に変身する時、たっつんはオレに確かにごめんって言った。

オレは何故かソレが無性に引っ掛かっていた。

 

しかしいつもなら待ってくれるたっつんは、オレに振り返る事なく翼を広げると施設の屋上を突き破ってどこかへと飛び去って行った。

オレはただ、その姿を呆然と見送る事しかできなかった。

 

 

 

そして、その後は勿論のこと休日明けの月曜日になってもなお。

たっつんはオレの前に姿を現さないばかりか、連絡も取れなくなってしまった。

 




強化装備及び必殺技お披露目回と同時に、たっつん正体バレする回でした。

書いててもやもやする展開ではあるが、やっぱりTSのラブコメは喪失から来る感情の再認識ってプロセス必須だと思うんですよ(熱弁)
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