凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~   作:冴木甲士

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第116話 新たに仲良く

 岸姉妹は翌日の休み時間も顔を合わせてきた。

「こんにちは」

「やー、先輩達!」

 奈央の挨拶、それってホントにギャルがやるそれなんだろうか。

 コイツらの演技に偏りというか何か妙なものを感じるが、俺はもう指導から外れた身なので何も言わなかった。

 先輩達こと女子四人も俺も適当に挨拶を返し、雑談が始まった。

 

 いつものように安達・加賀見・春野・日高・葵が奈央・深央を加えて会話に花を咲かせていると

「先生はおしゃべりに混ざらないんですか?」

 深央が俺に話を振ってきた。いつもは加賀見の役目なのだが、今日は加わったばかりの新入りが買って出たようだ。心底どうでもいいですね。

「ああ、今日は喉の調子が悪くて」

流暢(りゅうちょう)に声を発してるように聞こえますが」

「喉飴30個ぐらい舐めても効果ないんだ」

「よく知りませんがかえって喉悪くするんじゃないですかそれ」

「医者からは未知の病気だと言われたよ」

「学校に通ってる場合じゃないのでは」

「コイツ、いつもこんな調子だから」

 深央と俺が話をしているのを、加賀見が割り込んできた。

 

「真面目な話なんだ、邪魔しないでくれるか」

「今の冗談のどこにそんな真面目な要素があんの」

「自分で考えろ」

「そんなんでごまかされないから」

「しつこい奴だな」

「ま、まあまあ二人とも。喧嘩(けんか)はやめよ?」

 春野が取り成してくる。冗談を真に受ける性格のために、俺と加賀見がマジで喧嘩しているように捉えたようだ。

「大丈夫大丈夫。全部ジョークだから」

「え、そうなの?」

「うん。何かゴメン、リン」

「いい加減慣れようよ、凛華」

「もうこの二人のこれは定番みたいなものだよ」

「私でも察したぐらいなんですが……」

「えー……」

 加賀見が謝るのに対し、日高と安達は呆れ顔。ついでに葵も便乗。

 

 そして、そんな具合を見て話に付いていけてなさそうな奈央と深央。

「あ、あはは、いつもこんな調子なんですね」

「ちょっとへ……今までに会ったことない雰囲気のグループって感じ」

 奈央、今「変な」って言いそうになったんだな、うん。わかってるぞ。お前が飲み込んだ言葉、少なくとも今微妙な反応した安達や加賀見は聞き逃してないと思うぞ。

 何なら今葵が奈央の言葉の後うんうんと頷いて奈央側っぽいアピールしてるけど、お前も岸姉妹からしたら俺達(変な人達)と同類と見てるぞ、多分。

 

 

 そんなことがあった放課後。

「もー、遅いですよ先輩」

 本日の休み時間にも見た後輩が昇降口付近で俺を待ち伏せていた。

「遅いも何も待ち合わせを約束した覚えはないんだが」

「えー、もう忘れたんですか? 昨日一緒に帰るって言ったでしょ」

 ああ、言ったっけ。記憶が吹き飛んでたよ。

「そんなこともあったなぁ……」

「しみじみするほど懐かしいことじゃないと思います」

 今度はこちらの後輩とサシで相手しなくてはいけないらしい。やけに後輩と縁あるな、俺。

 

「先輩、今度姉と一緒に出掛けるんですよね」

 ……耳の早いことで。

「ああ。相変わらず俺の情報は奄美先輩からお前へ筒抜けなのか」

「まあ。私も胡星先輩と友達になったことでより胡星先輩に関する話は増えましたかね」

 何てこったい。

「ひょっとしてお前も奄美先輩と俺の外出に付いてくる気か」

 それならさすがに奄美先輩への抗議も視野に入れねば、と思ったところで

「あいにく姉から来ないよう止められまして」

 おお、ナイス奄美先輩。抗議を視野に入れようとしてすみません。

「私に来てほしかったですか?」

「いや、俺にとっては助かる」

「え……それってまさか姉のことを……」

「騒がしいのは苦手なんでな」

 葵とかミユマユが来られるのは極力勘弁願いたい。

「はあ。私のときと違って他の人は巻き込まないんですね」

「何の話だ」

「水族館で加賀見先輩をお呼びになった件、もうお忘れですか?」

 最後の疑問符のところで妙に葵の語気が強くなったような。いや、そうでもない……か……?

「お前と加賀見なら気が合うと思ったんだ」

 頭に真っ先に浮かんだ言い訳をとっさに出す。

「ふーん……」

 葵の目つきが少し細くなった。

 

 ここはちょっと話題を変えてみることにしよう。

「それはそうと、お前も新たに仲良くなれそうな奴ができてよかったじゃないか」

「仲良く? ……ああ、奈央ちゃんと深央ちゃんですか」

 岸姉妹、とは言わず名前呼びか。親しみが感じられていいね!

 ふと思ったが岸姉妹の呼び名をミユマユに寄せてナオミオと呼ぶのはどうだろう。日高辺りは好んで使いそうだな。

「あの二人すごいですよ。もう有名になってますからね」

「ほう」

 双子の転校生というのが珍しいからかな。

「やっぱあの口調と振る舞いだと注目浴びるでしょうね」

「え」

 どういうことだ。

 あの二人、俺以外の前では例の演技をやらないとか言ってなかったか。

「口調って、俺達に会ったときまんまの奴か」

「そうみたいです。別クラスなんで又聞きですけど」

 それはまた奇特な……いやいや熱心なことで。

 でも何で今になってそんな演技を皆に披露してるんだ。

 あの二人は俺が演技指導をした理由を忘れてたっていうのに。

 




岸姉妹とナオミオ、どっちの呼び方が好ましいんでしょう……。
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