凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~   作:冴木甲士

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第123話 誰かに

 球技大会がやって来た。

 

 去年に引き続きクラスでスポーツの勝負をして競い合うわけだが、

「いやー、今年も見学メインかー」

「私には大満足。頑張れー、て言うだけで済むから」

「マユちゃん去年頑張れーとか言ってたっけ」

「……そう言えばそういう応援送ったことないかも」

 俺とミユマユは何の種目にも参加しません。

 

 全種目が自由参加のこの競技、どのクラスも運動が好きな奴や負けず嫌いな奴がそれなりに真剣に勝つための布陣を計画し、我こそはという人達が参加しているのだ。

 俺達みたいに運動にあまり関心のない人達はこれ幸いにと傍観する観客、時には声援を送る即席応援団の役に回る。それはもう自然に。全くと言っていいほど自然に。

 それで大が付くほど運動を嫌っている、何なら憎んでいる加賀見にはいつもの起伏の乏しい表情ながら、どこか満たされた気分を感じた。変に付き合い長いせいでわかってしまった。

 でも正直、この自由な制度に喜んでいる運動嫌いは加賀見だけではないだろう。

「今日は一日中試合を見て支給されるお弁当を食べてまったり過ごす。そう決めた」

「マユちゃん、そんな情けない決意表明なかなかないよ……」

「ミユだって今日出る種目はない」

「そうだけどさ」

 会話がミユマユだけで盛り上がっているこの状況。例のごとく「俺要る?」な状況なわけだが離脱しようとしてもどうせ二人が止めてくる。

 なので俺は振られたときだけ会話に入るというスタンスで、公園の景色を眺めていた。

 

 

 そうしているうちに春野と日高も俺達の元へ到着。

「おはよー」

「おはよう、皆!」

 今日も今日とて暖かく明るい声音や振る舞いを見せてくる活発なお二人。

「おはようリンちゃんサッちゃん」

「おはよ」

「おっす」

 対して覇気のない暗い声で返事する俺とミユマユ。明暗がはっきり分かれてる感すごいな。

「今日のバレー応援するよ!」

「今年は去年より勝ち進むの期待してる」

 春野と日高はクラスメイト達の推薦もあり、去年に引き続きバレーの種目への出場が決まっている。

 何の種目にも参加しない日陰者とは立場が違うわけだ。というわけで俺この場から離脱していい? ああでもその理由だとミユマユと離れるのが難しくなるか。

「ちょっ、プレッシャー掛けないでよ」

「バレーの練習、あんまやってないからどうかな……」

 苦笑しつつ日高・春野が安達・加賀見と他愛のない会話を交わす。

 

 昨日までならここで葵・奈央・深央が何らかの口を挟むところだったろう。

 しかし我が校の生徒の多さは伊達(だて)じゃない。

 全学年の試合を一斉に(さば)けるような場所など学校はもちろん周囲の公園にもないため、球技大会の舞台は学年ごとに分かれている。

 今年は三年が校庭、一年が運動公園、そして俺達二年はまた別の運動公園だ。余談だが俺達の学年は去年(つまり一年のとき)に体力テストをここで行っている。

 というわけで本日一年生達はこちらにいない。俺としては気が楽だ。

 

 

 ちなみに葵からは前日の下校時にこんな会話をば。

「先輩達、容姿に優れた人達ばかりですよね」

「どうした藪から棒に」

「明日、誰かに告白されるんじゃないですか」

「だからなぜ……ああ、球技大会の話をしてんのか」

「はい」

 告白云々の噂についてよほど気になるんですね。他人の色恋に興味ある辺り最高に青春って感じするよ。

 奄美先輩の恋愛成就作戦に付き合ってた時期もあったしそういうのには関心が強いのかもな。

「去年は春野が告白されたからな。アイツは可能性高そうだ」

「ああ、何かお話ししてましたね。あの人未だにウチの学年で人気ですよ」

 そうなのか。まあ噂になるレベルの美少女と考えれば無理ないな。アイツの友達の多さを考えるとそのネットワークから情報が広まっていくのも速いんだろうな。

 

 あと他人事みたいに言ってるけど、

「お前ら一年も警戒した方がいいんじゃないか」

 葵・奈央・深央も容姿のレベルは大概だからな。

「……そうですね。いざというとき頼りになる先輩もその日はいないわけですし」

 告白される可能性は否定しないのな。それだけ告白や男に言い寄られた数も多いのか。

「ああ。あの女子四人なら充分力になりそうなのに残念だな」

「……ええ。ホントに残念です」

 葵さん、何でこっち睨んでくるの。怖いんだけど。

 

 

 以上、回想でした。

 球技大会が開かれる直前の現在に戻ります。

「さて、皆にお願いがあるんだけど」

 日高は言った。

「今年こそはアイツを凛華と接点持たせないようにしないと」

 アイツとは誰のことか、なんて聞く奴はこの場にいなかった。

 




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