凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~   作:冴木甲士

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第147話 呼び名2

 葵の誕生日について俺以外の奴らにも共有されていたらしい。

 そして、忘れてたのは俺だけらしい。

 

 深央から誕生日の件を指摘された日の夜に、誕生日プレゼント選びのための呼び掛けが春野からなされ、早速土曜に集合となった。

 そして今は全員が集合したところ。

「で、今回はグループ分けどうしよっか?」

「グループ分け……ですか?」

「あー、ナオミオは初めてだっけ」

 使った。使ったぞ。

 俺がアドバイスしたわけでもないのに日高が岸姉妹への呼び名にナオミオを使った。

「ナオミオ……」

「すみません、その呼び方はちょっと」

 でも本人達には不評だ。

「あれ、そう?」

「私は可愛いと思う」

「まあまあ、奈央ちゃんや深央ちゃんがイヤそうだから」

 日高やミユマユの評判は悪くないみたい。そりゃそうだ、特にミユマユ呼びを受け入れてるミユマユからしたら。

 

 気を取り直して、前回の日高の誕生日の際はプレゼントを効率よく選ぶために複数のグループに分かれて行動していた旨をナオミオ、もとい岸姉妹に説明する面々。ちなみに日高はその場に居合わせなかったものの後日春野から聞いたとのこと。

「へー、なるほど」

「承知しました」

 と岸姉妹からの了承も得たところでグループ分け。

 

「今回は、私と黒山、リンとミユと奈央、皐月と深央、の3グループとかどう?」

 

 イヤだ。めっちゃくちゃイヤだ。

 俺の頭に真っ先に出てきたのはそんな感想だった。

 何で俺がコイツと? 俺に廃人になれと?

「あー……私はちょっと違うグループで考えてきてたんだけど、聞いてもらっていい?」

 おお、日高。ここで異を唱えてくれるか。

 コイツのことだ、またしても野次馬根性で俺と春野を同じグループにと考えているのだろう。

 ただ俺としても加賀見と二人じゃなければ歓迎なので、同調しておこう。

「どういうグループ?」

「ミユマユの一人ずつがナオミオの一人ずつとペアを組んで、私と凛華はそれぞれ黒山か他のペアと合流する、みたいな。どう分かれるかはグーパーで決める、てなもんだけど、よくない?」

 何かざっくりしたグルーピングだな。いいや、この際文句は言うまい。

「そんな感じでいいんじゃないか。いきなり具体的に決めても何だし」

 すかさず俺は日高に賛成。

「……皆はどう?」

 と加賀見が聞くも、

「私はどっちでも」

「私もどっちでも大丈夫だけど、グーパーで分けた方が公平じゃないかなー……」

「先輩方にお任せします」

「同じくー」

 とどっちつかずの回答。まあ全員仲悪いわけじゃないんだから、グループ分けのモチベーションなんてこんなもんだよな。

 

「……わかった。とりあえず公平で、てことなら全員でグーチョキパーにして、以前と同じ組合せが出たらそこだけやり直ししよ」

 と加賀見が改めて提案した。春野の意見を取り入れた感じだ。

「ん、まあそれでいっか」

 日高も自分の案を推し進めることはせず、全員でグーチョキパーして分けることに決まった。

 

 

 ……結果。

「今日はよろしく」

 俺は目の前のツインテールと二人で行動する運びとなりました。

 何でチョキを出したんだ俺のバカ。パーなら春野と深央でマシだったのに。グーは……日高と奈央はともかく加賀見二号(安達)がいるからなあ。もっとも前回は安達と組んでたのでその場合はやり直しになっちゃうか。

「……すまん、急に胃が痛くなってきたんで今日は早退を」

「そんな子供騙しに引っ掛かるバカはいない」

 いや後数分もしたら胃痛がすると思うよ。ストレスで。

「じゃー分かれよっか」

「そうだね」

「また後でよろしくお願いしまーす」

 かくして3つのグループで、葵のプレゼント選びがスタートした。

 

 

 俺は当然テンションも上がるわけなく、ただ淡々とどのコーナーへ行こうか考えていたら

「どうしたの、ブラック」

 と加賀見が俺の様子を訝しんできた。

 去年のような常につっけんどんな口調ではなくなり、クールな大人しい雰囲気になっているとは言え、内容は去年と大差ない皮肉っぷり。

 やはり中身は変わらず俺に対して攻撃的なんだなと実感する。コイツがこの前男子にされたという告白を断ったことが残念でならない。その男ならきっと俺に代わって加賀見の攻撃も喜んで受け入れただろうに。俺思うんだけど絶対そういうタイプだよその男の人。

 

「お前何でちょいちょいその呼び名使ってくるんだ」

「黒山が気に入ってると思ったから」

「俺のどこを見てそう感じたんだ」

 本気で言ってるなら即で是正するから教えろ。

「いや、勘で」

 お前、勘で生きるのやめたら? 全然当てにならないよ。

「あとブラックって呼んだときのリアクションが面白い」

 理由の十割はそれだろ。お前が楽しいからでしかないだろ。

 

「呼び名と言えば、黒山は同級生のこと下の名前で呼んだりしない?」

「何だ藪から棒に」

「だって、ミユや他の同級生に対して下の名前で呼んでるの見たことない。後輩達には皆呼んでるのに」

「お互い様だろ」

 女子四人はお互いをあだ名や下の名前で呼ぶようになって久しいが、女子四人が俺を呼ぶ際には「黒山」か「黒山君」のどっちかでしか呼ばれた記憶ないぞ。

 それに今更呼び名を変えたところで、

「それとも俺にこう呼んでほしいのか? マユちゃん(・・・・・)

「……!」

 お互いに違和感がハンパないこと請け合いだ。

 

 俺にあだ名で呼ばれた加賀見は急に自分の両腕で自分を抱き締めるようなポーズになった。

 今は涼しさに合わせて長袖を付けているが、その下の腕が鳥肌になっているのがありありと想像できた。

 だって呼んだ俺自身にも今鳥肌が立ってるんだもの。

「……ゴメン、本当勘弁して」

 気持ち悪いとかキツいとか罵るでもなく、俺に容赦を願う加賀見。あ、コレ本当にダメな奴ですね。

 加賀見のリアクションを見て、時々こうやってからかおうかとも思ったが、即座に止めた。これ、俺にもダメージ来るわ。この悪女をちゃん呼びとか冗談じゃねーわ。

「……ああ、俺も本気でこれっきりにするよ」

「……自分で言っておいて」

 加賀見は自分の腕を慰めるようにさすり、俺も悪くなった気分を何とか元に戻そうと努めた。葵のプレゼント選びで何でこんな精神を消耗してるの俺ら。

 




投稿ペースを4日に1回へ戻そうと思います。

ペースが遅れたなかでも拙作の更新を楽しみにして頂いた読者の皆様、どうもありがとうございます。

これからも応援して頂けますと幸いです。
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