凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~   作:冴木甲士

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第149話 気に入ってたから

 葵の誕生日である、11月6日。

 葵をカラオケボックスに案内してパーティーが開かれた。

「おめでとう」

「おめでとう、葵ちゃん!」

 などと口々に生誕を祝われた葵は、

「あ、ありがとうございます、先輩方、奈央ちゃん、深央ちゃん」

 気恥ずかしそうにお祝いの言葉を受けた。

 葵はどうにも素直に祝われるのが得意でないらしい。

 春野並みに友達多いみたいだからこういう陽気なノリには慣れてるかと思っただけに意外だった。

 

 まずは各々が誕生日プレゼントを渡すことになった。

 春野・深央のグループからは俺でも知ってるブランドのチョコレート、安達・日高・奈央のグループからは何かハートの形をしたヘアブラシがプレゼントされていた。

「わあ、ありがとうございます!」

 葵は笑顔で皆に感謝をしていたが、普段のコイツのイメージのせいで社交辞令か本心か今一つ掴めなかった。きっと社交辞令だな、うん。

 

「最後は胡星先輩と加賀見先輩ですか」

「うん」

「そうだな」

「お二人で、じっくりプレゼントを選んだんですね」

 さっきより控えめになった笑顔で葵が念を押してきた。

「気に入るかはわからんが、とりあえず受け取ってくれ」

 さっさとプレゼントボックスを渡して葵に包みを解いてもらう。

「この大きさ、アクセサリーでしょうか」

「やっぱわかるか」

「黒山、そこはとぼけるところ」

 そんな会話を交わしながらプレゼントの中身を見た葵は、一瞬ハッとした。

「あれ、これって確か……」

「ああ、夏のときにお前から聞いた分」

 本人が忘れてた可能性も頭にあったが、それでも本人が気に入ってたから問題ないだろうとの判断もあり選んだ雫の耳飾り。

 葵の反応を見れば、記憶に留めていたのは明白だった。

 

「まさか、覚えてたんですか?」

「プレゼント選びの際に思い出した」

 と聞いたところで

「ん?」

「夏って、何の話ですか?」

 岸姉妹が俺と葵に説明を求めた。

「奄美先輩の誕生日を俺と葵でお祝いすることになってな。二人で奄美先輩へのプレゼントを選んだことがあって、このアクセサリーが話題になったんだ」

「私も、先日コイツからその話を聞くまで知らなかった」

「へー」

「私達も初めて聞いた」

「そうなんだ……」

 岸姉妹だけでなく女子四人からもコメントが出てくる。皆一様に驚いた感じになってるがそんな意外か。意外だな。俺が一人で過ごしたがってるのはコイツらもいい加減わかってるんだろうから。

「ま、まあとりあえず何か歌いません? 時間内にしっかり楽しみたいです!」

 葵がカラオケの話に切り替え、

「……そうだね」

「それじゃ本日の主役の葵ちゃんからどうぞ!」

 皆もそれに応じて、歌う流れになっていった。

 

 

 誕生日のパーティーでカラオケの満喫が終わり、放課後。

 パーティーに参加した面々とは三々五々に別れ、葵と俺が電車で二人きりになった。

 電車の間は互いに無言でいたのだが、葵が降りる前になって、

「先輩、次の駅なんですが」

「ああ」

「私の家まで付いてきてくれませんか?」

「なぜ?」

「今の時期もう結構暗くなってて怖いですし」

 とのやり取りがあって渋々同伴することに。

 

 

 電車を降りた直後、

「いやー、ホントに楽しかったです」

 と意気揚々に隣の女子がしゃべり出した。

「おお、電車にいたときとはえらい違いだな」

「え? いや、そうでしょ。車内であまり騒げないのに」

 ほう、お前もそういう配慮ができるようになったのか。以前はそんなこと気にせずくっちゃっべってた気もするが。

「だから胡星先輩も車内だとずっと小声なんでしょ?」

「まあ、そうだが」

「それなら外に出てから思いっきりしゃべろうかと」

 さいで。

 

 そんなわけで道中葵との雑談に付き合うことに。

 葵の言ってたように夕日はまだ出ているもののそれなりに暗い。

「そう言えば、奄美先輩が出ないのは意外だったな」

「まあ受験勉強で忙しいみたいですから。あと家族でお祝いする予定にもなってますよ」

「そうなのか」

「ひょっとして姉にも来てほしかったんですか?」

「いや別に」

 奄美先輩も俺や春野の誕生日には参加していたから、何となく違和感があっただけだ。

 しかし振り返ってみると先輩の誕生日でも特に女子四人は居合わせなかったし、先輩も日高の誕生日には来なかったからお互い様なのか。

 そうなるとなぜ奄美先輩は俺や春野の誕生日に足を運んだのだろうか。

 

「あの、胡星先輩」

「ん?」

「家に帰る前に、近くの公園寄っていきたいんですがいいですか?」

「なぜ?」

 こんな暗がりに包まれた公園で何をするつもりなんだ。

「先輩に少し用事があって。道中でするのも何ですし」

 いや怖いよ。

 暗がりの公園での用事なんて不意の襲撃からの強盗とかそんなもんでしょう。

「今日私、誕生日なんですよね」

「ああ。そのパーティーもプレゼントも済ませたばっかりだ」

「もうちょっと先輩におまけしてもらいたいなー、なんて」

 もし俺が今のコイツと同じことしたら周囲からどう評価されれるんだろう。コイツがやると妙に似合うから不思議だ。

 




インターネットで女子に人気の誕生日プレゼントを検索して初めて知るグッズの多い筆者

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