凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~   作:冴木甲士

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第160話 綿飴

 出し物「ありのままの教室」から退室した俺達は、屋台を見て回った。

 葵の要望で葵のクラスの出し物からは敢えて遠くの屋台へ来て物色をする。

 ……昨日も思ったけどやっぱたっかいなあ、どれもこれも。

「あれ、胡星先輩は何か買わないんですか」

 葵は綿飴、奄美先輩は唐揚げ棒を購入しているのを見ていたら、葵が手ぶらの俺に疑問を呈した。

 

「だってたっけえんだもん、ここらの食べ物」

「貧乏臭いこと言わないでくださいよ」

「それなら私が奢るわ。今日は月一回の外出も兼ねてるしね」

 奄美先輩が颯爽と提案をしてくれる。もう既に何度も奢られているし情けないなんて今更だ。

 しかし、

「大変ありがたいんですが、実はこれと言って何か食べたい気分でもないってのもあって」

 というのも理由の一つにあるのだ。

「ああ、そう……」

 奄美先輩がトーンダウン。何かすみません。

 

「デートでこんなことやられたらテンションだだ下がりですね……」

 葵がムダな心配をしてくれる。俺恋人作る気ないから支障ないよ。

「クリスマスイブのときはもう少し付き合い良くしてくださいね」

 そこに引っ掛けるのかよ。

「できればな」

「いやできるでしょ流れに合わせるぐらいは」

「とりあえず次行きましょうか」

 俺と葵が不毛なやり取りに突入する前に奄美先輩が話題を変えてくれた。

 

「ところでそろそろ劇の時間じゃないですか?」

「あ、ほんと」

 葵がスマホを見ながらそう言うと、奄美先輩も同じポーズでスマホを確認。

 本日は奄美姉妹と一緒に岸姉妹のいる一年二組の劇を()て、終了後に岸姉妹と合流する予定となっていた。

 文化祭用に女子四人、奄美姉妹、岸姉妹、そして俺でグループチャットがメッセージに組まれ、そこで打合せがあり決まったことだった。

 ちなみに俺は議論に一切参加せず空気を貫いていたら、いつの間にか先程述べた予定が組まれていた。世の中って俺がいなくとも回るんだなということをまた一つ実感した。

「それじゃ体育館の方行きますか」

「はい」

「ええ」

 というわけで食べ物を持った奄美姉妹とともに体育館へ。

 

 

 なお、その道中。

 葵の綿飴が一向に減ってないな、と思いながら葵の方を見てると

「何ですか胡星先輩、綿飴食べたいんですか。あげませんよ」

 と葵が警戒してきた。

「何でだよ。いやほとんど食ってないように見えるけどいいのかと思って」

「そんな急いでガツガツ行くような食べ方しませんよ」

「そうか」

 ふと奄美先輩を見ると、串に5個刺さっていた唐揚げは買ったばかりのときに1個奄美先輩が食べたっきり、全く個数に変化なし。姉妹揃って小食なんんだろうか。

「あら、食べたいの?」

「いやそういうわけでは」

「そう」

 俺の視線で唐揚げ棒の存在に気付いたように、奄美先輩がここでもう一口唐揚げを食べようとした。

 

 ところがここで奄美先輩のドジが発揮。

 唐揚げを口に持ってこようとする最中で手が滑り、串を落としそうになった。

「あ」

 と奄美先輩がぼやいた間に俺は奄美先輩の手から落ちていく串をキャッチ。

 唐揚げ本体なんてところではなく、もちろん手に持つ部分を捕らえた。

「はい、どうぞ」

 そして奄美先輩の元へ。

「あ、ありがと……本当にスゴいのね」

「そうですか?」

 と会話する間、一連の様子を見ていた葵からは

「花を差し出すみたいに唐揚げ棒を……」

 とよくわからん感想を漏らしていた。

 

 

「混んでますね」

 体育館に来たところ観客席はほとんどが埋まっており、俺達も適当に3人座れる席を何とか見つけてきた、という具合だった。

 ちなみに並びは端から葵、俺、奄美先輩の順。いや何でさっきの教室に引き続いて俺を間に挟むの。姉妹で隣同士になるのが普通なんじゃないの、こういうのって。

「何か好評みたいだぞ」

「らしいですね。クラスの子も話してました」

「へえ、期待できそうね」

 雑談で劇の開演まで時間を潰す。いやスマホでよくない? 暇潰しといえばスマホが昨今の常識でしょう?

 

 というわけでスマホを取り出し画面を見ることに。

「胡星先輩、今何見てます?」

 すると隣に座っていた葵が突然俺のスマホへ顔を近付けてきた。何だお前は。外で弁当食ってたらあげる気ないのに近寄ってくる鹿か何かか。

「何ってスマホの画面を見てるんだが」

「そういうことではなく何のアプリで遊んでるのか気になっちゃって」

 スマホはとっくに画面をオフにしているが、葵が全く引っ込む気がない。

 

 葵の頭が俺の顔とスマホの間に割り込んできたような位置を取ってるせいで、スマホでなく葵の髪が俺の視界いっぱいに入っている状態だった。

 視界だけでなく葵が使ったシャンプーと思しき香りが葵の髪から俺の鼻へ鮮明に伝わってくる。そのぐらい俺の顔に近かった。

「葵、人のスマホを覗き込むのやめなさい」

 奄美先輩が見るに見かねて葵に注意するが、

「お姉ちゃんは気にならないの? 胡星先輩の趣味」

 などと言ってくる。何だそれは。

「……黒山君に迷惑でしょ」

 奄美先輩が葵の問い掛けをスルーし、再度注意を促した。

「はーい。すみません胡星先輩」

 と葵は頭を引っ込めた。

 

 

 そんなやり取りの後しばらくして、劇の幕が開いた。

 

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