凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~   作:冴木甲士

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第161話 無題の劇

 とある中学に通う少女、ルリ(深央)は日々に退屈していました。

 いつもの日常。

 いつもの家族や友人。

 いつもの学校生活。

 不幸というわけでもないけれど、変わり映えもしない毎日に飽きていた彼女は、何か刺激が来ないかと望んでいました。

 

 

 そんなある日のこと、ルリはとある男の人に話し掛けられました。

(ここで客席の一部、主に女性のものと思われる歓声が上がる)

「ねえ、君」

 突然話し掛けられたルリは、彼を警戒しつつ、返事をしました。

「何ですか?」

「ちょっと演劇に興味ない? 劇のヒロインをやってくれる人を探しててさ」

「……別に」

「そーお? ちょうどいい暇潰しになるんじゃない?」

 ルリはその言葉が気になりました。

「私が暇だとでも?」

「おや、図星かい? 何となく君がそう見えたから勘で言ってみただけなんだけど」

 何だろうこの人、とルリは思いました。

「別に暇じゃないんですが」

「そうか、ごめん。でも、興味あったら演劇部の部室に来てね。役に空きがある間は歓迎するよ」

 そう言って、男の人は去っていきました。

「……演劇……」

 その日のルリは、この出来事が頭から離れませんでした。

 

 

 翌日、ルリは演劇部の部室を訪ねました。

 そこには昨日会った男の人がいました。

「やあ、ヒロイン君」

「何ですかその呼び方」

「ここに来たってことはその役を演じたくなった、てことだろう?」

「……貴方困ってそうでしたし、役に空きがあれば助けてやってもいいかな、と思っただけです」

「いやそんなに困ってないけど」

「は?」

 ルリは頭に来ましたが、とりあえず流すことにしました。

「まあいいです。それより昨日の話、詳しく聞かせてください」

「うん、でもその前に」

 男の人はルリに近付きました。

「僕の名前はカイト。三年二組。君の名前は?」

 カイト(奈央)はルリにそう自己紹介しました。

「……ルリ。二年五組です」

 こうして、カイトとルリは一緒に演劇をやることになりました。

 

 

 カイトとルリは演劇を通じて次第に仲良くなりました。

 これは、とある一日のこと。

「……こんなシーン演じるんですか?」

「何だ怖いのかい? それならもっとお子様向けに書き直そうか」

「いえ、確認しただけです。このまま行きましょう」

「ホント、挑発に乗りやすいね君は」

「そんなわけじゃないです」

 と言いながら、互いに抱き合うシーンを演じることもありました。

 

 

 ルリにとってカイトとともに過ごした演劇の活動はとても刺激的で、楽しいものでした。

 二人がやった演劇は成功し、これからルリはカイトとともに部を続けていくものと思っていました。

 しかし、それから数日後。

「さて、次の劇ですが、そろそろ案は決まりましたか」

「ああ、それなんだけどね」

「カイト先輩?」

「ちょっと話がある」

 カイトは、ルリにそう切り出しました。

「僕、転校することになったんだ」

 ルリに衝撃が、走りました。

「転……校?」

「ああ」

 カイトのことを好きになっていたルリは、この日のことをとても悲しみました。

「縁があればまた会えるさ」

 彼はそう言いました。

 

 

 それから暫く二人は、交換した連絡先で互いにやり取りしていました。

 しかし、段々とカイトからの連絡が少なくなり、ルリが高校一年になる頃にはすっかり互いに疎遠になっていました。

 そんなルリに、チャンスが来ました。

 ルリの家も転校となり、カイトの通う高校の近くに引っ越すこととなったのです。

 ちょうど進学の時期とも重なったので、ルリは勉強を頑張ってカイトと同じ学校に入りました。

 

 

 そして、カイトと再会したルリは、とても驚きました。

 カイトの周りには、複数の女の人がいたのです。

「カイト……先輩?」

「お、ルリ。久しぶりだね」

 カイトは、以前のような飄々とした雰囲気でした。

「カイト君、こんな可愛い後輩いたんだね」

「ルリちゃんだっけ? よろしくねー」

 周りにいた女の人達が話し掛けるのも、ルリは気にしなくなっていました。

 

 

 その日の放課後、ルリはカイトと一対一になるよう呼び出し、事情を聞き出しました。

 何でも高校に入った辺りで複数の女の人達と縁を持つようになり、全員と仲良く学校生活を過ごしているのだとか。

 中学のときには見られなかったカイトの女性関係に、ルリは衝撃を受けました。

「私のいない間に、そっちは随分と刺激的な生活を送っていたんですね」

「まあね」

 カイトの調子に、ルリは腹が立ちました。

「君はあれからどう? 楽しく過ごせてる?」

「どうですかね」

「いいねその感じ。中学のときの君のままだ」

「そうですか」

 他愛のない話の後、ルリは言いました。

 

「それならまた、中学のときみたく私も貴方と関わるとしますか」

 

 カイトは呆気に取られました。

「へえ。そりゃまたどうして」

「私、引っ越してきたんで中学からの知り合いが貴方ぐらいなんです。後輩らしく先輩を頼りにしようかと」

「そう。まあいいけど」

「ついでにまたあのときのような暇潰しも、お願いしますね」

「約束できないな。今は演劇もやってないし」

「そうなんですか」

「あの後やる気をなくしてね」

「へえ。何でですか」

「さあね」

 

 

 こうしてルリはカイトと再び学校生活を送ることになりました。

 月日が流れ、カイトの卒業式のとき、一人の女子がカイトの隣で恋人のように仲睦まじくしていたそうです。

 その女子とはもちろん――

 

(ここでナレーションが終わり、幕が閉じる)

 

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