凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~ 作:冴木甲士
舞台が終わり体育館の外で奄美姉妹と過ごす。
ここで岸姉妹と落ち合う流れになっている。
「アレが評判よかったんだな」
「そうですね」
「評判よかったのってアイツらのことなんじゃね」
リアクションが一層大きかったのは男装した奈央が舞台に現れた瞬間だった。
いつもの髪型を男性風に整え中高生の男子の制服を着こなしていたその姿はとてもサマになっていた。
どっかの女子の一団が黄色い声を上げていたようにも聞こえたが、今回の劇で奈央のファンの女子達が一気に増えたんじゃなかろうか。
「まあ……そうかもしれませんね」
葵もその辺りは特に異論なかったようだ。
俺達が他愛もない雑談をしているうちに、岸姉妹がやって来た。
「奈央ちゃん深央ちゃん、お疲れ!」
「やー、ありがと」
「御覧いただきありがとうございます」
葵、奈央、深央の後輩三人で軽い挨拶を交わすとさっそく奈央が切り出した。
「で胡星さん、感想は?」
なぜか俺オンリーで。
「何か見てて恥ずかしかった」
「何でだよ」
「劇で俺らの中学のときの制服使ってたろ」
ギク、という擬態語が漫画なら入ってそうな反応をかすかに見せた岸姉妹。
「その姿で高校生にもなった我が後輩が中学生の演技を本格的にやってるのが、なまじ知り合いだけにいたたまれない気分になったというか」
奈央が着用してた男物の制服でさえ俺らの中学のものそっくりだったんだがどうやって調達したんだよ。実は男の兄妹でもいたのか?
「胡星先輩、いくら何でも頑張ってた人達に失礼ですよ」
葵に注意される。
「いやそうなのかもしれないけどよ。感想聞かれたから答えただけで」
俺だって自分から積極的にこういう意見を発しようとは思わない。
「ほ、他に思ったことはありませんか?」
顔を赤くしながら深央がごまかすように新たな感想を求める。
「ん、そうだな。カイトが典型的なハーレムものの主人公に見えた」
「へー……」
奈央、何だその色々含んだような「へー」は。
あと深央と葵と奄美先輩まで何でこっちに訝しげな表情を向けるんですか。
「あれそういうハーレムものをモデルにしたんだろ」
「そうですね」
「そういうの好きな野郎が脚本書いたんだろうけど、度胸あるなあと」
「あれ私と奈央で考えたんですけど」
「……」
この後に続く言葉が考えつかず、黙る。
だってコイツらが主演兼脚本やってるなんて予想しなかったもの。
ましてや男性向けに多い設定をコイツらが取り入れるなんて思ってないもの。
「なかなか良かったんじゃないか。演技もストーリーも」
「いきなり取って付けたような物言いに変わりましたよこの人」
「黒山君、それはさすがに……」
「胡星先輩、こうなったら本音で押し通した方がまだ潔いです」
「もういいからそういうお世辞」
その場にいた姉妹達から糾弾されてしまう。俺の味方は誰もいないらしい。この場に二年の女子四人がいれば……いやもっとひどくなるだけか。
「それはそうとあの劇、モデルは架空の作品じゃないと思いますよ」
と葵が大胆予想。
「何でそう思った」
「身近に思い当たる人がいるからです」
何のこっちゃ。
「まあ、やっぱ察しが付くよね」
「あ、特に隠さないんだ」
「隠すぐらいならこんな話、最初から劇に出しませんし」
「そうよね」
何か奄美姉妹は当たりを付けているようだ。
「何の話ですか」
「自分で考えてください」
「僕も教えないよー」
「とのことなので私もバラすのは遠慮しようかと」
「……皆がこの調子だし、ゴメン、私も自分から話すのはやめとくわ」
なぜ?