凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~ 作:冴木甲士
「えっと……私は構わないけど」
奄美先輩は特に気にしない、とばかりに腰に片手を付けた。
断られたらどうしたものかと思っていたが、どうやら俺との同伴を引き受けてくれるようで一安心だ。
「えーと、どうして?」
一方、奈央は俺が奄美先輩とのお化け屋敷探訪を希望した理由を聞いてきた。
深央と葵も答えを聞きたいのか俺に注目している。何で後輩達の方が納得いってない感じなんだよ。
「お前らと回るよりは面倒なくて済みそうだからな」
特に遠慮する理由もないので、率直に答えることにした。
どう考えてもこの面子の中なら奄美先輩の方が一番マシだと思う。
普段は落ち着いた雰囲気を保ち、自分の主張を控えめにし、後輩相手でもきちんと配慮をしてくれる。
先程の唐揚げ棒を落っことしそうになるというようにドジなところはたまにあるが、そんなの俺にとっては全然大したことじゃない。
そして普通なら後輩の方が気を遣わなくてよさそうなもんだが、ことコイツらとなれば話は別だった。
「てっきり誰でもいいと言うのかと思ってました」
深央、だけじゃなく恐らくは奈央と葵も似たようなことを予想してたんだろうな。
事実最初は俺も奄美先輩に続いて「誰でもいい」と答えようかとも頭を過ったが、より楽な方へと瞬時に頭を回転させた結果だ。
「誰でもっていうのが一番損しそうな気がしたんでな」
「なかなかに失礼な話ですね」
「それよりすみません奄美先輩、改めてよろしいですか?」
後輩達との会話をそこそこに、こちらからも最低限の礼儀として奄美先輩に確認した。
「……ええ、こっちもお願いね」
奄美先輩が瞬時に笑顔を向ける。愛想笑いお上手なんですね。そこらの男子ならこれだけで軽く魅了するんじゃないっすか。
さて、そろそろすごく気になっていたことを聞くとしようか。
「で、残りの3人はどう組むんだ?」
「え?」
「いや2人組なんだろ。このままじゃ1人あぶれるぞ」
「え、それは先生が2回組むんですけど」
何?
「ん、どういうこと?」
「ですから、先生が奄美先輩と、もう1人とも組んでもらうという段取りですけど」
「そんな段取り了承した覚えがないが」
「私も了承してもらった記憶は特に」
つまりいつものごとくゴリ押しで行く気満々らしい。
「他の2人も何ら疑問を持っている様子がないんだが、最初からそのつもりだったのか?」
「いや、まあ」
「5人なのに2人組で、ていう提案を聞いたときからそんな感じだろうなって」
どうやら後輩達にとっては暗黙の了解みたくなってて確認すら取らなかったらしい。結局いつもそんなオチになってるのは否定できないがあんまりじゃなかろうか。
「じゃあもう俺らは先に行ってるから出てくるまでに決めといてくれ」
「あ、もう行くんですか」
「まあ時間も押してるし、しょーがないか」
「先輩、隙を見計らって逃げるとかはやめてくださいね」
葵、それを言われるとますます逃げたくなっちゃうよ。
「こら、葵。ゴメンね、黒山君」
「いや大丈夫です。行きましょう」
ということでいざ何度目かのお化け屋敷に突入。俺この高校だけでお化け屋敷に入った回数が2桁いきそうな気がするよ。
あと今思い出したけど奄美先輩お化け屋敷苦手じゃありませんでしたっけ。