凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~ 作:冴木甲士
お化け屋敷から出てきた俺達に最初に反応したのは、葵だった。
「あ、おかえり……あれ?」
葵は奄美先輩を見て、不思議がった。
「お姉ちゃん、何か平気そうだね」
「平気に決まってるでしょ」
「いやお姉ちゃんお化け屋敷は……うん、何でもないね」
奄美先輩からただならぬ気配でも感じたのか、葵は素早く発言を撤回した。この口ぶり、葵も自分の姉がお化け屋敷苦手なこと知ってたな。
「胡星先輩は、まあ何ともないですよね」
「まあな」
「お化け屋敷に怖がる先生が想像付きませんしね」
「まあな」
「むしろお化け屋敷で怖がる人と一緒とか鬱陶しがりそう」
「ま……人によるがな」
奄美先輩という該当する人がいる手前、答えをとっさに濁した。
「ふーん?」
奈央は何を思ったか、口元をつまらなそうに閉じる。
「ま、いいや。次は僕と葵ね」
「そうだね」
と言ってさっさと二人が入っていく。ということは残った深央が俺と組むのか。
「次はお願いしますね、先生」
「ああ」
奄美先輩・深央・俺の三人はしばし待機となった。
「深央さんはお化け屋敷得意なの?」
所在のなさをごまかすように、奄美先輩が深央へ話を振る。話題については妥当というか無難というか、まあそんな感じになるよね。
「得意ってわけでもないですが、まあ普通でしょうか」
深央もいきなり話を振られ多少戸惑う様子を見せつつ返答した。
この二人がこうしてきちんと会話するのは以前の外食のとき以来になるのか。
だとすると互いによく知らないことのが多いから探り探りだよな。かく言う俺も奄美先輩や深央(というか周りの女子全員)の趣味嗜好を聞かれたら当てられる自信ないな。日々の雑談によく巻き込まれてるもののあんま記憶してないし。
「奄美先輩はこういうホラーに対しても動じない雰囲気ありますね」
現に深央はこうして奄美先輩の実態とは離れた見解を持っている。
「まあ、私もそんなに苦手じゃないけどね」
そう見られて悪い気はしないみたいようで、奄美先輩は鷹揚に受け答えた。
「私からも一つ気になったんですが、お二人は今でも一緒にお出掛けになってるんですか?」
お化け屋敷とは全く関係ない話題を深央がぶっ込んできた。
「月に一回はな」
「それがどうかしたの?」
「いえ、個人的な興味です。ただ、お二人だけの外出だと同じ学校の生徒が見たときにカップルと誤解されて大変じゃないかな、と」
うん、そうだね。君ら双子も最初鉢合わせたときはそんな確認してきたもんね。
「心配ありがとう。そうならないように行き先などは考えてるから大丈夫よ」
「そうですか。すみません、余計なこと言ってしまって」
「いいの。黒山君も可愛い後輩を持ったものね」
ウフフ、と奄美先輩と深央が互いに笑っているのを見て、この二人が何だか気が合いそうに思えてきた。