凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~ 作:冴木甲士
お化け屋敷の出し物となっている教室に入っていた葵と奈央が、そこから出てきた。
「どうでした?」
「まあ……普通?」
「ちょっとビックリはしたかな」
うん、まああの内容じゃそんな感想になるわな。
「怖いという感じでしたか?」
「入ればわかる」
「つまんなくはないと思うよ」
ネタバレを避けるべく出来る限りぼかした二人の感想に首を傾げる深央に
「それじゃ行くぞ」
と声を掛けると、
「はい貴方」
深央はそう返事した。
「え、何そのやり取り」
「何か夫婦っぽいような……」
いや一年共よ、妄想たくましすぎるだろ。今の会話だけで夫婦扱いってどういうことだよ。
ちなみに受付はまたもお化け屋敷に入る俺に「え、また入るの」的な反応もせずさっきと同じくらい丁寧に対応してくれた。
「あ、やはり何か吊り下げてきましたね」
入ってすぐに深央が天井からの火の玉を発見。
「指摘してやるなよ……」
俺らの会話、仕掛け人に丸聞こえだと思うぞ。
「あ、すみません、つい」
深央は俺のすぐ横に付いて、火の玉に少し注意を払っていた。
少し進むとさっきも見た穴だらけの壁が左右を陣取っている。
「あの穴から火の玉とか出てくるんでしょうか」
それを見て深央が展開予想。
「だからよせって」
「あー、その、つい……」
深央がバツの悪そうに続く言葉を考えている姿は、普段と違って演技ではないように思われた。
あんまり意識してなかったが、深央はひょっとして思ったことが口を衝いて出るタイプなのだろうか。
振り返れば中学時代の演技指導でも俺が考えたシナリオに対して
「これって○○からパクッてません?」
とか、
「内容にあんまり目新しさがないと思うんですが、これで問題ないんでしょうか」
とか、それなりに率直にものを言ってきてたような記憶がある。
何なら奈央の方がもっと事前に言うこと言わないことを選んでいたような。
「お前、その調子でクラスメイトに接してたりしないか?」
思わずそんなことを尋ねてしまった。
「奈央と同じ心配してくれるんですね」
どうやら既に身内から同様のことを言われてたらしい。双子で同じ学校に通ってるなら自分も巻き添え食らいかねないしさすがにツッコむか。
「昔よりはこういうこと言うのは控えてたつもりだったんですが」
「そうか」
まあ確かに再会してからは、ここまでズバズバものを言う様子も特になかったように思う。
「貴方と一緒にいる内に昔に戻っちゃってたのかもしれないですね」
そしてなぜか俺のせいにしてきた。
「意味がよくわからんが」
「貴方と主に過ごしてたのは中学のときでしたから、接するときも中学の頃の調子についついなってしまうみたいで」
そうなのか。
穴から出てくる火の玉をたまに二人して避けていきながら、会話を続ける。
「俺はそうでもないが」
「今の先生も昔からそんな変わってませんよ」
深央の横顔に壁から飛び出た火の玉がぶつかりそうになる。
「周りの人間関係以外は」
深央は火の玉へ顔を向けるまでもなく片手でポーンと勢いよく弾き飛ばした。