凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~ 作:冴木甲士
深央とともにお化け屋敷となった教室から出てきた俺達。俺にとっては二度目。このまま三度目が起きないことを切に願う。
「あ、おかえり」
「どうだった?」
奈央の挨拶の後、葵が深央に感想を聞いてきた。
「そうですね……ここではちょっと言いづらいことがあったとだけ」
「え」
「え」
え。
「言いづらいって何で?」
「いや、少し恥ずかしいというか」
手をグーにして口元へ持ってきた深央は言葉に詰まりつつ、もじもじと体を少し揺らした。何なの。
「ちょっと胡星先輩?」
「深央に何したの」
「いや何でだよ」
色々と意味不明過ぎるわ。
「まあ別にそんなこともなかったんですけど」
深央がもじもじとした様子をやめてケロリと発言撤回する。その突然の変わり身やめてくれ。
「うん、やっぱりね」
奈央はさすがに身内だけあって色々わかってるらしい。わかってるならさっきのような悪ノリをしないでほしい。
「あ、あー、冗談か。そうかもなとは思ってたけどさ」
葵、お前結構真に受けてただろ。実は春野の次ぐらいに騙されやすい?
「ほら、おしゃべりもいいけどそろそろ次に行く場所決めましょ」
俺らの様子を見守っていた奄美先輩の呼び掛けで、この場を離れることとした。
その後は特に大したことも起こらず、文化祭が終わった。
奄美姉妹・岸姉妹と別れた俺は二年二組の教室へ戻る。
「あ、おかえり」
「楽しかった?」
例の女子四人は教室の中に集まっており、俺が教室に入るなり安達と春野が話し掛けてきた。
「楽しかったな。一人だったら」
「それ楽しめてないってことじゃ……」
「間違っても葵ちゃん達の前で言わない方がいいよ、それ」
心配無用。さすがにさっきの深央みたく思ったことがついつい口に出るタイプではないさ。……そんなタイプじゃないよね、俺?
「残念だけど黒山。貴方が一人になる機会は訪れない。永遠に」
「いやあるだろ」
風呂とかトイレとか就寝前とか日常でいくらでもあるわ。
加賀見の戯言をいつものごとくあしらっていると日高が
「ホント黒山ってこういうイベントのときでも平常通りだよね」
そんな感想を漏らしてきた。
「どういう意味だ?」
「今日の文化祭でもこの前の球技大会でも、特にテンション上げることなく淡々と過ごすじゃん」
「いや、そういうタイプ結構いるんじゃないか」
全員が全員イベントごとに浮かれはしゃぐような人ばかりじゃないと思うぞ。
「加賀見も至って無表情の平坦な態度のままだしな」
「まあ、そうかも」
「マユちゃんは楽しさを表に出すタイプじゃないけど、きちんと楽しんでるよ」
安達がすかさずフォロー。お、親友アピールですか?
「ミユ、何を」
「文化祭の前日から今まで送ってくるメッセージが多かったからね。それもずっと文化祭のことで」
「あー、言われてみれば」
「文化祭歩いてる途中でも周りの出し物にいちいち目を向けてたもんね」
安達の言い放った根拠を皮切りに日高と春野も同意する。
「……え、冗談?」
「いやホント」
「私、そんな感じだった?」
加賀見が皆に確認を取る。自覚なかったのかよ。かくいう俺も今のコイツらの指摘で加賀見がそんな様子だったことに気付いたわけだが。