凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~   作:冴木甲士

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第170話 引き返す

 文化祭が終わった後は片付けの時間に入る。

 教室の窓に付けられた暗幕を外し、小道具が取り払われた教室は見る見る平時の姿に戻っていった。

 

 その過程で、こんな会話があった。

「クラスの打ち上げどうする?」

 きっかけは、加賀見のこんな一言から。率先して打ち上げの話とかやっぱコイツ普段より浮かれてるな。

 

 二年二組はどこからともなく片付けて解散となったあとにクラス内で打ち上げをやる流れになっていた。

 去年も俺のいたクラスでは同じく打ち上げをやったらしいが俺は当然参加しなかった。

「主催者じゃないから何とも」

「内容がどうこうじゃなくて参加するのかどうかってこと」

 そうか。

 

「もちろん行か……」

「行かない人には私からちょっとした余興を披露しようと思ってるから確認しておきたくて」

 欠席の意思を伝えようとする自身の言葉が途中で止まった。

「お前、とうとう見境なくそんな凶行を」

「全員には無理だから苗字が黒から始まる人だけに代表で受けてもらおうかと」

 決め打ちじゃん。このクラスで苗字が黒スタートなの俺だけじゃん。

「黒山君大変だねー」

「あ、あはは……」

「まあ行くか行かないか黒山の自由なんだし、任せるよ」

 そばの女子三人も加賀見を特に止めようとせず俺達二人を見守っていた。いや皆わかってる? コイツのいう余興って間違いなくトラウマ級の悲劇だよ? 俺がかつて受けた極悪イリュージョンとかそんなレベルの門外不出のエンターテインメントだよ。というか余興ってまず間違いなくそのイリュージョンのことだよね。

「行けば何もしないんだよな」

「うん、行かない人限定のだし」

 行かない人というか行かない俺限定の余興を免れるべく、打ち上げに行くことにした。どうか打ち上げが二次会へ延長とかそんな展開になりませんように。

 

 

 片付けも粗方終わり学校を出た俺はクラスメイト達とともに駅近くのファミレスへ向かっていた。

 クラス全員で移動しているとはいえ全員でまとまって会話ということにはならずおのずとそれぞれがいつもつるんでいるグループで固まり、今日の文化祭の話題で盛り上がっていた。打ち上げでも多分同じくグループで固まることになるな、これ。

 

 というわけで俺の方も周りが安達・加賀見・春野・日高といういつもの四人になっていた。

 春野と日高の二人は俺達以外の友達も同じクラスに何人かいるのだが今はミユマユのいるこっちを優先したようだ。

「いやでもホント疲れたー」

「明日確実に筋肉痛になりそう」

「まあ明日はお休みだし」

「でも楽しかったよね」

 他愛のないやり取りを聞きつつ、俺はいつものように話を振られるまで無言でコイツらの隣をただ歩いていた。

 

「あ」

 そうしていたら春野が何かに気付くような声を上げた。

「どうしたの?」

「いや、ひょっとしてスマホを学校に置いてきちゃったかも……」

「え⁉」

 ほう。結構な重大事だな。

「どうするの?」

「ちょっと学校の方へ戻ろうかなー、なんて……」

 もう日が暮れているのもあって心細いのか、春野の歯切れが悪い。

「ねえ、黒山、悪いけど……」

 日高の方から俺に頼み事をしようとしてくるのを、途中で遮った。わかってるよ、言いたいことぐらい。

 

「あー、はいはい。さっさと戻るか」

「あ、黒山君、そんな申し訳ないし……」

「別にそうでもないさ」

 ミユマユと一緒にいる時間を削減できるわけだし、本当にやぶさかでもない。

「これはしょうがない」

「黒山君、リンちゃん、気を付けてね」

 春野のことになるといつも優しくなるミユマユの後押しもあり、

「……ゴメン黒山君、よろしくね」

 俺と春野は一旦学校に引き返すことになった。

 




今更だけど加賀見ネタってホントに作りやすい
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