凪の気分を ~先輩の妹が何だかしつこい上に周りの女子もおかしくなってきたような~   作:冴木甲士

174 / 174
第174話 連絡忘れ

 用事が終わった俺達は注文した軽食を食べることにした。

 ただ黙々と、というわけではなく春野が俺に話題を振ってきた。

「文化祭だけど、奈央ちゃんと深央ちゃんのクラスの劇がインパクトあったよね」

「そうか?」

 俺としては普通だったが。

「うん。だってあれ、黒山君、奈央ちゃん、深央ちゃんの中学の頃がモデルでしょ?」

「え?」

 そうなの?

「え、て……もしかして黒山君そう思ってなかったの?」

「いや別に」

 何の心当たりもなかった。

 

「むしろ何でそう思ったんだ?」

「女の子の方が中学のときに転校して別れて、その後また男の子と同じ高校に入るって黒山君た達の経緯とそっくりじゃん」

 ああ、言われてみれば。

 じゃあまさかあの変なハーレム状態もアイツらが俺と春野達を見てモデルにしたのか。

「だとしたらだいぶ変な脚色が追加されてるな」

「まあ、いいけどさ。とにかく、それを劇で出すなんて、驚いたよ」

 俺もだな。

 それと同時に、劇の後の奄美姉妹と岸姉妹が意味深なやり取りしてたのはそういうことだったのか、とようやく合点がいった。

 

「黒山君が今回一番印象に残った出し物は何だったの」

 そう言われてもな。特に深く考えず周りに流されるままに巡ってたのだからこれといったインパクトがない。

「例年通りお化け屋敷が沢山並んでたことか」

「えー……」

 春野が自分の巡ったところとかじゃなくて? と言いたげのリアクション。でもあえて言うならインパクトあるのはそのぐらいだ。

「まあ、確かに他の高校に比べると特殊、なのかな」

「ああ。ウチの高校は毎年5クラス以上お化け屋敷やってましたとか他校の奴らにはそこそこのネタになると思うぞ」

「うーん……」

「もっとインパクトある奴は、来年に期待だな」

 そうごまかしたところ、

「ふふ、そうだね」

 春野もご機嫌そうに笑みを浮かべた。

 

 ここで、俺と春野のスマホが同時に震えた。

「どうしたんだろ」

「さあな」

 と言いながらスマホのメッセージアプリを開くと

「二人とも今どこ?」

 という加賀見のメッセージがあった。

 

 あー……。コイツらへの連絡忘れてたな。

「コイツらのこと忘れてた」

「連絡しそびれてたね……」

 どうしようかとばかりに春野がスマホを見たまま固まっている。

「日高は今の俺らがこうしてるのを知ってるのか?」

「あ、うん。皐月ともよく寄るお店だし、ここへ行こうって話はしてたから」

 そうか。

「じゃあとりあえず安達と加賀見向けに言い訳考えるか」

 アイツらに今の現状を説明するのが難しいしな。

「そ、そうだね」

 春野も後ろめたいものはあるんだろうが経緯も経緯だからか特に異論は出なかった。

 

 少し打ち合わせした後、春野からメッセージを返す。俺? やるわけないじゃん加賀見相手なのに。

「スマホは取って来たよ。ただその後、具合が悪くなっちゃって、先に家に帰ることにしたの。ごめんね、連絡忘れてた」

「具合って、リンの?」

「うん。多分疲れからだと思う。黒山君には迷惑掛かっちゃうけど、駅までは一緒に付き添ってもらってた」

「そう。こっちも疲れてるなかゴメン、お大事に」

「リンちゃん、ゆっくり休んでね」

「お大事にー」

 春野の体調不良を伝えたところ、安達や日高からもお見舞いのメッセージが来た。

 日高の口調が少し軽めなのは真相を知ってるからだろうな。

 

「ところで黒山は? この後こっちに来るの?」

 加賀見が俺の予定を確認してきた。

「いや、俺も家に帰ろうかと」

「帰る?」

「ああ。春野を送り届けた後にそっちに行くのもさすがに疲れるし。あと今から行っても打ち上げが終わってるかもしれないだろ」

 特にいつ終わるかは決まっていないが、ということは早めに終わる可能性だってあるということだ。

 なのでそれを言い訳に利用させてもらう。

「そうだね。黒山もムリして来ることはないと思うよ」

 日高もフォローしてくれた。俺のためというより春野のためなんだろうが、今は助かる。

「まあ、それならしょうがない」

 ということで、加賀見も理解したのだった。

 

「これでよし、と」

「あー、うん……。皆に納得してもらえたね」

 春野が罪悪感の交じったように返事するので、

「心苦しいなら俺や日高に唆かされたからってことにしておけ」

 と言っておいた。

「いや、それはしないよ。うん大丈夫、黒山君も付き合ってくれてありがとうね」

 さすがに人に罪を擦り付けるのはためらう春野。こういう変に筋を通そうとするのもらしいと言えばらしいな。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする(作者:烏丸英)(オリジナル現代/恋愛)

尾上雄介は、ある日の休日にクラスメイトの七瀬ひよりが幼馴染の江間仁秀を問い詰めている場面に遭遇する。▼実は二人は一年前からこっそりと付き合っていたのだが、仁秀は同じ時期に他の女子とも付き合い、ひよりに二股をかけていた。▼開き直った仁秀から最低な言葉を浴びせられ、傷心のままにその場を飛び出したひよりを放っておけなかった雄介は、彼女を追って話をすることに。▼この…


総合評価:3678/評価:8.13/連載:426話/更新日時:2026年03月30日(月) 07:30 小説情報

ダンジョン深層住みです、いつからかは忘れました(作者:蓮太郎)(オリジナル現代/冒険・バトル)

ある日に現れたダンジョンの混乱から長い時間が過ぎた。▼人々は新たな資源を夢見てダンジョンに潜る時代。▼だが、そんな人々よりもダンジョンが現れた初期から既にダンジョンの最も深い深層と呼ばれる場所で戦い続ける男が居た。▼そして、いつの間にかそこに住むようになっていた。▼そんな男に世界のスポットライトが当たるお話。


総合評価:7960/評価:7.28/連載:78話/更新日時:2026年03月14日(土) 12:03 小説情報

貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。(作者:はめるん用)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

いつの間にかウマ娘の世界に転生した貴方は、何故か身に付いていたチート能力を駆使してウマ娘のトレーナーとなり大金を得て好き勝手に生きることを思い付きます。▼そして、いざトレーナーの資格を獲得し、これから中央トレセン学園で面接が始まるというタイミングで貴方は気が付いてしまいます。▼「そもそもチートあるんだから、わざわざトレーナーになって働かなくてもよくね?」▼さ…


総合評価:90706/評価:9.2/連載:223話/更新日時:2026年05月06日(水) 21:14 小説情報

水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?(作者:mono-zo)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

気がつくとそこは別世界、魔法がある▼もう少しなにかあるでしょ?普通……王族貴族とは言わないでも平民ぐらいはさぁ。▼あるのは痛みと魔法と現代知識。▼しかしここは常識が違う。顔を殴られたとわかる少女がいても誰も助けてくれないし、人権なんてものは存在しない。▼せめて、せめて屋根ぐらいは欲しかったなぁ……。▼カドカワBOOKS様より小説1~5巻の情報!▼https:…


総合評価:8690/評価:8.34/連載:403話/更新日時:2026年07月15日(水) 11:00 小説情報

異世界転生したので本物のくっころが見たい! ~悪役を演じているのに、なぜか女騎士たちがみんな俺に落ちていた~(作者:砂乃一希)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

あるところにくっころガチ勢がいた。▼収入のほとんどをくっころの漫画や同人誌に使い込むほどの筋金入り。▼しかしひょんなことから早死にしてしまい異世界転生することになる。▼異世界での名はジェラルト=ドレイク。▼剣が主流のこの世界でジェラルトが思ったのは……▼「この世界でなら本物のくっころが見れる!」▼しかもジェラルトは誰かのおこぼれではなく自分が悪役を演じて女性…


総合評価:355/評価:7.5/連載:45話/更新日時:2026年04月03日(金) 07:05 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>